mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆気付いたら愛が生まれてた(初ムク♀)

 

綱吉は霧の守護者の骸の事をそんなには知らない。

初めて会った時は善良な生徒の振りをして騙されたし体を狙われてとても怖い思いをしたし友達を傷付けられて絶対に許せないと思った。

 

だけど骸にも骸なりの理由があってマフィアを憎んでいると分かって心底嫌いになる事が出来なくなった。

リボーンには骸の事を許しちゃいけないと言われたけど俺には母さんがいて幼い頃から何不自由なく暮らせたんだよ、友達は居なかったけど人並みに恋もしていたんだ。

 

俺が布団の中で温まりながら寝ている別の場所では骸がいつ襲われるかもしれない危機感の中で蹲って浅い眠りを繰り返していたかと思うと…悔しくて仕方ないんだ。

分かっているんだ、そんな子供は骸だけじゃないんだって。でも俺は骸と出会って、知り合ってしまったから骸の事を放って置く事が出来ない。

 

だからお前は甘っちょろいんだ、と言われようとこれからは骸が不自由なく生きて欲しいって思うんだよ。

 

それでも骸は平気で人を殺したりするしおっかない人である事には変わらないから会う時はちょっとドキドキしていたけど今じゃ骸は仲間の事をとても大切にする奴であんな憎まれ口を叩くのにいざ困った時には力を貸してくれる頼れる強い俺の守護者だって、俺はそう思っている。

 

リボーンと出会ってから仲良くなった皆とは既に5年以上の付き合いになる。

何かと手助けしてくれて困った事もあれば皆で対処するとあっという間に片付いて今じゃ少しだけ時間に余裕が持てるようになった。

だから守護者の皆の様子も落ち着いて観察出来て俺は今、骸の事を見ていた。

 

「離せ」

 

「骸」

 

「離せ」

 

「骸、手をどかしてくれ」

 

「嫌です!」

 

ボンゴレ本部の廊下の突き当りの所で骸と、俺の叔父になる家康さんがもみ合ってた。

何あれ…思わず困惑した俺は立ち止まって二人を眺める。家康さんの手は骸の腰を逃がさないように掴んでて、何故か口を塞いでる骸の手をもう片手で添えて外そうとしているみたいだ。

 

いや、これどういう状況なの…??

 

「照れているのか?」

 

「違います!拒否しているのが分からないのですか?貴方の目は節穴か!?」

 

背中を精一杯のけ反らして家康さんから距離を取ろうとしてる骸は苛付いたように青筋を浮かべながら家康さんの口元を両手で塞いで顔を背けてる。

家康さんが腰を抱いてるから距離が取れないみたいだけど…嫌がる骸に家康さんが迫っているという図にしか見えないし骸があんな切羽詰まった声を上げるのを初めて見た。

 

「む、骸?叔父さんも何やって…」

 

廊下だから二人の様子は控えめに言ってもめっちゃ目立ってて声を掛けるとこっちに気を取られた骸が僅かに手の力を緩めた隙を逃さなかった家康さんが骸の手を避けると油断した骸にあろうことか、キスをした。

 

「ん、んぅー…っ!!」

 

「ひぃぃぃいや何でぇ~?!!」

 

身内のキスシーンに顔がぼわっと一瞬で赤くなったのが分かった。

いやでも何でこの二人が?!家康さんが骸に迫る理由が分からないし骸はマフィアを憎んでるから家康さんの事も嫌っていた筈だった。

さっきも骸は拒絶していたしそれに間違いはないようだけど叔父さんが骸に迫っているのが本当に意味分からない。どゆこと?!!!

 

「いや、叔父さん何やってんのー!??」

 

視界を手で隠しつつ思い切り叫べば生々しい水音の後に骸の掠れた息遣いが聞こえた。

その合間にちゅっちゅっと啄むような可愛い音も聞こえてきてその音の発信源が目の前の身内かと思うと居た堪れなくなってきた。

 

「っ…は、しつこいっ!」

 

骸が声を荒げて家康さんを怒る。濡れ場が終わったみたいだから視界を遮る手をずらすと骸が家康さんを見上げて睨んでいる所だった。

怒る骸とは裏腹に家康さんは世の女性が見れば赤くなる事間違い無しの笑みを浮かべながら微笑んで骸の背中に両腕を回していた。

 

「怒っている顔も美しいな、骸」

 

「僕はマフィアと慣れ合うつもりはないと言いましたよね?」

 

「マフィアの前に俺とお前は男と女だろ」

 

今にも武器を取り出し殺しそうな雰囲気なのに家康さんは骸の殺気を物ともせず受け止めている。こっちはさっきから肌を刺すような痛みに襲われてるのに叔父さんマジで強ぇ~!と感心してる場合じゃなかった。

 

「む、骸も!その辺で!!部下たちが今にも倒れそうだからっ!!」

 

慌てて二人に駆け寄って骸を宥める。

この騒動に気付いた部下数名が何事かと駆け付けたのは良いが骸の殺気にやられて顔を青くして立つのもやっとな状態なのだ。

 

沢田綱吉…!」

 

ギロリと骸に凄まれてビクッと肩が跳ねた。骸の怒りの矛先がこっちに向けられてしまったみたいでもう滅茶苦茶に怖いです。

 

「ひぃ!な、何ぃ?!」

 

「君の所為で…!」

 

「骸、気を抜いたのはお前でツナヨシは何も悪くないよ」

 

声を掛けたことで油断してしまったのを骸は怒っているようだ。

しかし家康さんが俺は何も悪くないんだとフォローしてくれたけどその前に先ず家康さんが骸に迫らなければ俺が睨まれる事はないんじゃ…と思ったがそんなこと怖くて言えなかった。

 

俺は言えなかったけど骸が凄い剣幕で本はと言えば貴方の所為です!!と家康さんを怒った。全くその通りです、と内心頷くとチラリと家康さんがこっちを向いた。

 

やば、心読まれた?と挙動不審になってしまったが家康さんは特に何も言わずそのまま骸の腰を抱いたまま行ってしまった。

骸はずっと抵抗しているけど家康さんに敵わず、終いには赤ん坊のように抱き上げられて連行されていた。成す術もない骸なんて初めてみた…と半ば啞然と二人を見送る。

 

その日から家康さんが骸に迫っている場面を度々見掛けるようになった。

普段は冷静沈着な骸なのに家康さんの前だと嫌悪感丸出しの表情で家康さんを邪険にするのにそんな事も些細な可愛い抵抗とばかりに骸を追い掛けていた。

あんなに拒否されているのに、叔父さんはよく諦めずに追い掛けるよな…俺だったらくじけてしまうのに。と家康さんの鋼のメンタルに称賛を称えてしまう。

 

一度だけ、骸の事を気にして家康さんに嫌がっているし骸のことはもう諦めたら?と遠回しに言った事がある。

今でも何であんな怖い物知らずのように聞けたのか分からないけど、まぁ骸が心配だったからなんだけど…聞いた時に家康さんは俺に言ったんだ。

 

″骸の幸せを心底望んでいるのは俺だから、骸を幸せにするのも俺なんだ。″

 

家康さんは俺にそう言って愛しそうに微笑んだ。

それだけで家康さんが骸のことをとても愛しているんだと理解したから俺は心の中で骸がいつか諦めて家康さんの愛を受け止めると良いな、と応援した。

 

それから3年ほど経って俺もボスとして何とか上手くやっていけてるなと思っていたし家康さんは変わらず骸を追い掛けて骸はそんな家康さんを断固拒否していたと思ってたら骸のお腹が若干膨らんでないか?とふと思ったのが切っ掛けに骸が長期任務で本部に寄り付かなくなった。

 

それに伴い、家康さんも海外の方に出張に行ってしまって寂しいなぁと思いながら過ごした一年半後、骸と家康さんが帰って来た。

帰って来たんだけど、骸の腕の中には家康さんにとても似た顔の赤ん坊が抱かれていたしその子の瞳は骸と同じ青い瞳だった。

 

本部は勿論、同盟ファミリーも騒然となったのは言うまでもない。