mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆初ムク

 

ランボの誤発弾で過去に飛ばされる骸。その時代に骸はいない筈だったが魂の形が似ていた散る間際の蓮の花と入れ替わった。

 

骸が飛ばされたのは7~8世紀時代の辺りだった。

 

ボヴィーノファミリーが開発したあのバズーカは5分の間だけ入れ替わるというモノだったけど5分経っても骸は現代には戻れずに居た。

 

失敗作だったか、と骸は取り敢えず移動して落ち着きたいと辺りを散策するが、昔の時代だから治安が悪い。

貴族程でなはいにしろ、身なりの良い骸は視線を集めてしまう。

幻覚で周りの目を誤魔化せば良かった、と思うも時すでに遅し。

骸はごろつきに囲まれる。

 

目立つつもりはない骸は大人しく着いて行き、身包み全て寄越せ!と襲われるも難なく避けて逆に身包み剝いで返り討ちにした。

 

そこを哀れに思った街の住人が助けを呼んでくれたのか人が駆けつけて来た。

 

その姿が見て顔に出さないものの、骸は驚く。駆けつけて来た男は初代ボンゴレだったからだ。

どうやら骸はかなりの過去に飛ばされた模様だ。

 

骸は関わるべきではない、と判断してさっさとずらかろうとするも不審に思ったGに呼び留められる。

 

拒否する骸に益々怪しいと捕えられそうになる。

骸は力を駆使して相手すると幻術士が格闘をするなんて聞いた事がない、と驚かれる。

 

これも過去への干渉に入るんですかね?と骸は未来を変えない為にも早々に消えた方が良さそうだ、と姿を霧で隠そうとした瞬間にⅠ世に背後を取られた。

 

不覚…!と表情を歪ませた骸にⅠ世は手荒にするつもりはないから武器を下してくれ、と頼む。

先に攻撃を仕掛けてきたのはそちらでしょう、と睨めばⅠ世はG達に武器を下ろすように言う。

 

渋々武器を下せばⅠ世に促されて骸も武器を下した。背後は取られたが武器がなくても幻術を使えばこの場を切り抜ける事は可能だったから。

 

Ⅰ世は超直感で骸がどこか空気が違う事に気付いてこの時代の人間ではないだろう、問い掛けた。

骸は隠すだけ無駄だろうと、えぇ、そうですよ。と認めた。

 

ざわめく周りだがどこかの組織がそんなものを作ろうとしている噂を聞いたからか直ぐに収まった。

Ⅰ世は何故ここに?と問うと骸は誤った発弾に巻き込まれたんです、本来なら5分で戻る筈が、失敗作だったのか戻れない、と話すとⅠ世はじゃあ戻るその間は俺の所に来ると良い、と迎え入れると手を伸ばした。

 

勿論Gたちは得体の知れない者を招き入れるな!と首を振って拒否するがⅠ世は頑なだった。

路頭に迷うよりは有難く利用するのが良いだろう、と骸は僕はこの時代の事を知る気もありませんし未来を変える気もないので何も話せませんよ、それでも?とⅠ世を見つめるとⅠ世は分かっている、ただ困っている人がいたら助けるのが当然のことだろう?と答えた。

 

別に困ってませんけど。と骸は言うがⅠ世は行こう、と骸の手を掴んだ。

こうして骸は現代に戻るまでⅠ世の元に暮らす事となった。

 

 

この時代に来て骸は既に1ヶ月が経過していた。

そろそろ本格的にこれは可笑しい、と骸も思うが出来る事は何もないのでただⅠ世の元でのんびりしてるだけだ。

 

Ⅰ世は忙しい身でありながらも毎日骸の元まで足を運んだ。

僕の事は気にしなくて良い、と言ってもⅠ世は聞く耳持たず骸を構うのだ。

だからⅠ世にだけ骸が警戒を解くのも難しくなかった。

それというのもやはりあの沢田綱吉の祖先、人の懐にするりと何の警戒もなく入って来るのだ。

調子が狂うが沢田綱吉と違ってⅠ世は甘い面だけじゃなく厳しい面もあったのが骸は好感が持てた。

 

ただの客人に随分なもてなし様に骸は疑問に首を傾げるがこれといって問題はないから好きにさせている。

だから骸は陰でⅠ世の愛人、と言われていた。

 

しかしいつまで経っても戻る様子がないので骸は何もせず過ごしているのが苦痛になってきた。

 

この時代は何かと不便で現代より科学技術がまだ劣っている。ゲームや携帯、そういうモノがまだ未発達なので平たく言えば暇なのだ。

いい加減何かしたい、とⅠ世の仕事を手伝うようになり、前線にも出たいと直談判した。

却下された。

 

しかし身体が訛ると訴えればⅠ世が共に行くならと、許可は出た。

本当は許可なんかどうでもいいが一応面倒見てくれる訳なので伺う骸。

 

前線で大活躍する骸。

なんせ遠距離攻撃も接近戦も得意なので。

適度に満足したら骸は当てられた部屋でくつろいでどこに居ても自由気ままにしていた。

 

Ⅰ世はそんな骸から目が離せないようで時間がある時は部屋に訪れては話をしたりトランプで遊んだり外に連れ出しては色んな所に一緒に出掛けた。

 

それはまるで恋をしてるようだとGは言った。GはⅠ世に骸は違う時代の人間だ、距離は置いた方が良いと忠告する。

いつか消える女を追い掛けるな、と釘を刺せばⅠ世は悲しそうな顔を見せた。

 

Ⅰ世は骸の部屋に来た。

そんなⅠ世に骸は何かあったのだと察する。

Ⅰ世はまだ若いから聡い骸は人の感情を敏感に感じ取れる。人を欺く為にも必要な手腕だから。

 

どうしたんですか?と骸が訊ねればⅠ世はお前が戻る前に本当の名を聞きたい、と骸に願った。

骸は驚いた。Ⅰ世も感じていたのだ、骸がそろそろ元の時代に帰るのを。

 

骸もここ最近、胸の辺りがざわざわしていた。術士の直感でこれは現代に戻る予感なのだと、分かった。

そう知った時、骸はやっと戻れる安堵と、寂しさを感じた。

 

骸もⅠ世に惹かれてしまったのだ。

生きる時が余りにも遠くて違うって分かってても次第に惹かれてしまっていた。

だから帰ったらもう二度と逢えないのだと、悲しかった。

 

骸は首を振った。

何が起こるか、分かりませんから僕の名前は知らなくて良い、と告げる。

骸はタイムパラドックスを避ける為にⅠ世達に”クロウ”と名乗っていたのだ。

 

どうしても駄目か、と再度問われ骸は困ったように笑ってⅠ世に口付けた。

僕の名前は覚えなくて良い、ですが僕の温もりは覚えていて良いですよ…と身体を開く。

Ⅰ世は骸を強く抱いた、ここに引き留めるかのように。

激しく交わりながら骸はⅠ世に全部中に出すように求めた、骸もⅠ世を忘れたくなかったから。

Ⅰ世は骸が望むまま全部骸の中に注ぎ込んだ。

 

愛し合いながら骸はⅠ世に囁く。

僕は過去に生きた記憶を持っています、輪廻を幾度も渡っているんです…ですからもし貴方が輪廻を巡り僕の時代に貴方の魂が在るのなら…僕を強く求めるのなら…探して。

そしたら僕の本当の名を教えます、とⅠ世にキスした。

 

Ⅰ世はその話を聞いて、ならお前と巡り逢う為に俺はお前の事を強く求めるよ、お前の時代に居る俺が思い出して見つけ出せるように、と決意を強くした。

 

現代にあるⅠ世の魂は曾孫である綱吉がもつボンゴレ指輪に在った。

他の守護者たちの魂も指輪にあるがシモンファミリーとの事件が遭った時に壊され、新しく生まれ変わったボンゴレギアでⅠ世達の魂は薄れていた。

既に10代目と守護者たちの意思によって力となっていたからだ。

 

だから骸はⅠ世の魂がボンゴレ指輪から解放された時に輪廻転生し、生まれ代わると思った。

そしたら再び出会えると希望を持って帰るのだ。

 

骸はⅠ世の気持ちを信じてみる。

僕は僕がいる時代に戻っても貴方を忘れる事なんて出来ません、だから僕が誰かに攫われる前に見付けて下さいね?と骸は微笑む。

口ではそう言ったが骸はⅠ世以外、誰とも結ばれる気もないし例えⅠ世が元の時代で現れなかったとしても

また輪廻を廻ってⅠ世を待つつもりだ。

待つのは飽きるだろうから自分から探しに行くのも手だった。

 

Ⅰ世は頷いて必ず見つけ出して迎えに行く。と応えた。

素性も得体も知れない女を求めるなんて…貴方も物好きな人ですねぇ。と骸は表情を綻ばせた。

 

名前も素性も知らなくてもお前という人間は知ったつもりだよ。

だから惚れるには何も問題なかったさ。俺の直感がお前なんだと言ってる。とⅠ世は優しい表情で骸の髪を撫でた。

 

間もなく時間だ、と骸がⅠ世を見つめて待っていますよ。と口にした瞬間に骸はボフンっと煙に包まれて消えた。

 

僅かに目を見開いたⅠ世はしかし直ぐに戻ったのだと感じて愛した女がもう居ないのだと、顔を伏せた。

 

 

 

現代に戻った骸。

煙の向こうから綱吉の安堵した声が聞こえた。半年振りに聞く声にほんの少し感傷深くなる。

 

煙が消えれば視界が晴れて綱吉とその肩に乗るリボーンを目に映す。

二人は骸の服がドレスに変わっているのに気付いてどうしたのだと問う。

骸がひらりと舞う服を纏うのを初めて見たし服が異なっていたから過去で何があったのか、首を傾げる。

 

骸は二人が聞きたいことを聞き流して僕が入れ替わった時間は?何と入れ替わりました?と問い返す。

綱吉はえ?入れ替わった時間は5分だったけど、本来なら未来の骸と入れ替わる筈なのに誰も居なかったから心配したんだよ!何もなくて良かったよ、と綱吉は苦笑いしたが骸は成程、ここでは5分しか経ってないけれど過去だと時間がかなり進んでいたらしい…5分で半年も経過するとは、なかなかの技術だが効果を知らなかった辺りはまぐれで出来たのだろう。

 

下手したら戻れなかったかもしれない事を考えると危険な橋を渡らせられたものだ。

 

骸は踵を返して疲れたので帰ります。

今回の事はそちらの落ち度なので僕が貴方方に報告する義務はありません、詮索はしないで下さい、と骸はそのまま黒曜ランドへと帰った。

 

それから2年が経った。

骸はボンゴレ霧の守護者として仕事をこなし、マフィアになりたくないと愚図る綱吉をリボーンが背中を蹴飛ばしていくのを遠くで眺めながら日常生活を送っていた。

 

そんなある日、黒曜ランドで広間として使ってる部屋に皆でくつろいでいると骸は突然吐き気に襲われてのどをこみ上げてくるのに口を覆った。

 

急変した骸に賑やかだった広間に緊張感が走り皆が骸に駆け寄って心配した。

骸は身体に違和感を覚えるが取り敢えず不安そうにする部下たちを安心させる為にいつものように微笑んだ。

 

骸は時折吐気に顔色を悪くさせながら黒曜ランドを出た。

皆は買い出しに出かけているから誰も居らず静かだった。

急変した身体に骸はある事に思い至り確認する為に都内にある高級ホテルまで訪れたのだ。

 

ロビーに入るとそこには前以って連絡した相手、スクアーロが待っていた。

近付くとスクアーロは僅かに顔色が優れない骸に気付き大丈夫かぁ?と骸をエスコートした。

骸はバレる程顔色が良くないのか、と改めて思いながら大丈夫です、と頷いた。

 

スクアーロに着いて行きながら最上階まで行けばヴァリアーが泊まる部屋まで案内されて中に通された。

XANXUSがいる部屋に入るとザンザスは骸の身体の異変に気付き鋭い目付きでその腹はどこのドカスの仕業だ、と凄んだ。

 

骸はザンザスの言葉にやっぱり、と笑った。

僕は妊娠しているのですね、と自覚した途端重く感じるようになった薄い腹を撫でて骸は呟いた。

骸の言葉に驚くスクアーロ達。骸は確信がもてるまでボンゴレに情報を流出させたくなかったから医師の腕をもつルッスーリアに診てもらう為にザンザスの元に来たのだ。

 

ルッスーリアに診てもらう間もなくザンザスには分かってしまったようだが。

取り敢えず念の為と骸はルッスーリアに診てもらった。結果は妊娠4週間だった。

 

あれから2年は経っているのに今更何故?と骸は疑問を浮かべる。

しかし不思議に思うもののⅠ世との子供がこの中に存在している、愛し合ったという証がここに。と骸は嬉しくて優しい笑みを浮かべていた。

それを見てルッスーリアは少なくとも骸は子供を受け入れている事が分かった。

 

検査を終えて骸とルッスーリアはザンザスたちが待つ部屋に戻る。

待っていたスクアーロ達に妊娠4週間目よ、報告すれば骸の腕を掴み座ってろ身体を冷やすな、今温かいレモンティー淹れてやる、俺は毛布持ってくる!と甲斐甲斐しく世話をする。

 

身体に気を遣ってくれるヴァリアーの面々に骸はくすぐったそうに微笑む。

ザンザスは骸が嬉しそうな事から同意の上である事を知りただ骸を見返す。

 

ザンザスの視線を受け止めながら骸は心配してくれたのですか?と笑う。

フン、と鼻で笑えば骸は心配ご無用ですよ、ちゃんと同意の上ですから。僕がただでやられる訳がないとこのアルコバレーノならご存じでは?と腹を冷やさないようにと赤ん坊特有の高体温を利用して骸の膝に座るマーモンを示せばマーモンは悔しいけど、そうだねと頷いた。

 

ザンザスが相手はボンゴレか?と聞けば骸はまぁ、そうですね…と答えを濁す。

ザンザスが先を促すように組んだ腕を指でトントンと叩く。

ちょっと有り得ない話になってしまうので纏まるまで待って貰えると助かります、近い内にちゃんと話しますので。と切り出せばザンザスは頷いた。

 

綱吉たちの事はガキ臭くて好かん、と言うザンザスだが骸の事だけは気に入ってるヴァリアー達。

どっちかと言うと骸の性質はヴァリアーの方に向いているから仲は良い。

ザンザスの存在に震える綱吉たちと違って骸はザンザスを恐れたりしないし同等の立場でモノも言えるのだ。

 

ベルフェゴールがマーモンを抱き上げて骸の隣に座ればお腹触っていい?と聞くので骸はまだ動きませんよ、と言いながらも許可をした。

 

ベルは骸のお腹を触ってここに赤ん坊がいるの?しししっ変な感じ!と笑い声をあげる。

大きくなって蹴るようになったらまた触らせてよ、と笑うベルに骸は良いですよと頷いた。

 

スクアーロたちと楽しく談笑をしてから骸はヴァリアーが泊まるホテルを後にした。

 

お腹を撫でながら黒曜ランドに戻る道すがら骸は今になってⅠ世との種が芽吹いた理由を考える。

 

骸は可能性を一つ思い浮かべた。

この時代にあるⅠ世の魂が目覚めたという可能性だ。

あの時たった5分でⅠ世がいた時代は半年も経っていた。だから今から数えればⅠ世は当の前に息を引き取っている事になる。

 

それまで骸は普段通りに過ごしていたが初代の魂は輪廻転生し、この時代に生まれていたのだろう。

だけど切っ掛けがないからずっと眠ったままで、最近の出来事で目覚めた。という仮説を骸は考えた。

 

甘かった綱吉もここ最近ボスである自覚を持ちつつある。

血を争うのは嫌だと言っているが守る為ならと前線に出るのも惜しまなくなったがボスが易々と前に出るなと怒られている。

初代の意思…魂はボンゴレ指輪から解放されていると、骸の勘が告げる。

だとしても妊娠は今じゃなくても良いのに、と骸は思う。

戻って来た時にちょっとだけ初代の子を身籠ったんじゃないか、と期待したのだが一年過ぎれば諦めてしまった。

まさか本当に身籠っていたとは思わなかったが凄く嬉しい骸。

 

化け物と言われた自分が人並の幸せを味わえるとは思ってない、幸せを掴むのにこの手を血に染め上げすぎた。

後悔も改める気もない、それが六道骸という人間だしそういう生き方しか知らないからこのまま突き進むつもりだ。今更甘っちょろい生き方なんてしたくもない。

それでも好いた男の子供を望むくらいの幸せは願っていた。

そしてその願いはこうして今お腹の中で少しずつ大きく成長している。

今隣に父親がいれば更に満足なのに、一体どこにいるのだろうか。

産まれて来る前に見付けて欲しいものだ、骸は少女のように頬を染めて微笑んだ。

 

 

ヴァリアーの所まで行ったあの日から骸宛てにヴァリアーの面々から贈り物がひっきりなしに届いた。

どれも身体に良い食品ばかりで事情をまだ知らない犬たちは首を傾げて目を点にさせていた。

直ぐにでも犬たちに言っても良かったがサプライズで言うつもりだ。

 

妊娠発覚から三週間、その日は突然やってきた。

子供の世話はなんとなく出来るが赤子となると全く話が違う。

本屋に行って少し調べに外出すると後ろから声をかけられた。

 

どこか聞き覚えのある、その声に心臓が一つ跳ねる。

まさか、と思いつつ後ろを振り返るとそこには想像していた通りあの時と違って少し歳を重ねた、しかし若い男が骸を見つめていた。

 

初代だ。

骸は目を見開く。姿形がそのままだった。

男は立ち尽くす骸の目の前までやってきて、愛した女と巡り合う為に強く求めてきた。攫われる前に迎えに来たのだが間に合っただろうか?と別れる前に約束した事を問う男に骸は頷いて間に合いましたよ、笑った。

男は安堵の笑みを浮かべて骸の手を優しくすくうの握り締め、名前を教えてくれるか?と乞うた。

骸はあの時に教えられなかった名前を口にして初代に手を伸ばしてその腕の中に飛び込んだ。

 

骸の名を口にしながら初代はやっと、捕まえた。と骸を強く抱き締めた。

 

 

End