mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆幸あれと願ってくれた(初ムク♀)

※骸さま視点です。

・妊娠、赤ちゃんが出てきます

・ジョットが骸さまに無理矢理手を出す表現があります。

 

 

 

 

 

お腹に触れると小さな鼓動を感じた。

望んでいた訳じゃないのに、僕の元へと来てしまった命に知らず知らずのうちに涙が溢れてしまう。

 

こんなに泣くのは、本当に久しぶりだった。

罪にまみれ、山を築く程の死体を作りあげたこの手でどうやって尊い命を抱けるというのか。血縁など作る事なく果てるだけだったこの身に命を宿すなど、あってはならない事だ。

僕が犯した罪は全て僕だけのもの。子供に受け継がれないために血縁者を作る予定はあり得なかったのに。

 

それなのに、生きようとする己の子を産まれてすらいないのに殺すことなんて出来ようもない。

だからこんなにも涙が溢れて止まらないのだ。

 

「骸、泣くな」

「…ジョット…なぜ、何故ですか!この僕に…っ!」

 

腹の子の父親となる男は、ボンゴレを創設したジョット。

僕を輪廻に巡らせた原因のマフィア界の頂点に君臨していた男。

部下たちの生存の為にマフィアに首元を鎖で繋がれようと決して赦す事はないと誓ったのに、ジョットに迫られて抗うことも出来ずに何度も、何度も過ちを繰り返した。

 

その過ちの象徴が、この腹の中にいて、息づいてる。

 

「俺は、凄く嬉しいよ」

「貴方は分かっていない!罪しかない僕が、母親になれる訳がないんです…っ!!」

 

叫ぶ僕を、ジョットはそれでも離してくれない。

涙で濡れている頬を優しく拭られ、強く抱き締められる。ジョットの胸に身体を預けながら思い至る。

 

「…貴方、僕を嵌めましたね…」

「何の話だ?」

「いつから避妊具を使わなかったんですか」

 

顔を上げてジョットを見つめると否定も肯定もなくただ柔く微笑まれた。それだけで、計算した上での計画だったのだと強く確信した。

 

「ジョット…!貴方って男は…!!」

「怒るな骸、お腹の子によくない」

「誰の所為で怒っているんだと…!!」

 

ドンっと拳でジョットの胸を殴ってもジョットが堪える様子はない。

逆に嬉しそうに力を込め過ぎて震える両手の拳を包まれて額にキスされる。避ける為に後退りするも追いかけられて結局逃げられなかった。

 

「骸と同じ美しい青い瞳の子が良いな、男でも女の子でもどちらでも構わないよ。骸との子ならお前ごと守るから何も心配する事はない、大丈夫だ」

「っ…う、く…」

「もう、諦めて俺と一緒になろう骸」

 

悪びれる事なく清々しいくらいの笑顔で言われてその顔を殴りたくなった。手を掴まれているから実行出来なかったけれど、手が自由だったら平手打ちだけじゃ絶対に済まさなかった。

 

周りの人間はこの男を温厚やら物腰の柔らかい好青年と評価しているが僕からしたらとんだ食わせ者の頑固でズル賢い男でしかない。一体どこをどう見ているんだ。

騙し討ちなんて出来ない顔して拒否する僕に迫り孕むのを計画するような男だったのだ。

 

「…貴方なんて、嫌いだ…」

「それは残念だ。俺は骸がとても好きだよ、誰よりも愛している」

「……本当に、馬鹿ですね…」

 

それがジョットの事なのか、または抵抗するのも諦めて大人しく抱き上げられて運ばれる僕の事なのかは、考えたくもなかった。

 

それからジョットは表向き長期任務と申請して僕を仕事から遠ざけ、自分も海外出張だと綱吉くんに告げて同じ時期にボンゴレ本部から出て隠れ家の方に匿われた。

隠れ家には二人だけで暮らし、お腹が大きく膨らんで中で赤子が腹を蹴る時期になっても変わらずジョットは僕から片時も離れることなくいつも近くで守ってくれていた。

必要不可欠な日用品や食材は部下の者が調達してくれているらしいのでジョットは離れる事はない。

 

身体が重くなって思うように動けない時も、気分が優れず投げ遣りになってもジョットは嫌な顔一つせず僕を抱えて移動したり快適に過ごしやすいように家事全般をやったりと全力で僕のサポートをした。

隠れ家に来てから46時中そんな調子なものだから憎んで邪険にするのも馬鹿らしくなり、もう良いか…とジョットの想いに応える事にしました。

 

だから僕の所に来てしまった子供を哀れと思うことなく僕とジョットの子供としてちゃんと産みます、とジョットに伝えるとジョットはもの凄く喜びその日はずっと僕にしつこく好意を囁いてきた。

 

上手く情報を誤魔化してるからか襲撃も来訪もなく僕は何事もなく臨月を迎え、出産予定日にボンゴレお抱えの口の硬い医者の手によってジョットとの子が元気に産声をあげた。

出産の疲労で意識がぼんやりする中でタオルにくるまれた我が子を看護師によって腕に抱かされて見下ろすと紅葉のような小さな手をきゅっと握って泣いている。

 

目はまだ開いていないがその面影はジョットそっくりで、本当にジョットの子を産んだのだと実感した。

壊さないように、そっと頭から頬にかけて優しく撫でると泣き止んでまるで手にすり寄るかのようにもぞもぞと動いた。

 

僕が、母親に…お腹の中で腹を蹴っていた時から少なからず親になった自覚はあったけれどこの子に会って更に強く自覚する。

会って分かったのが…この子を愛しているのだと、守りたいのだと今更になって気付いた。

 

思わず笑みがこぼれてお産の時からずっと僕の手を握ってくれてたジョットに視線を向ければ腕を上げ、この子を抱いてあげて下さい、と赤ん坊を渡した。

ジョットは僕から赤ん坊を受け取り、その顔を見つめて徐に涙を流して笑った。

 

「あぁ…愛しいな。産んでくれてありがとう、骸…。君も…俺たちの所に生まれてきてくれてありがとう…」

「っ……は、ぃ…」

 

赤ん坊を抱えながら僕の頬にキスして泣いて感謝するジョットに僕まで涙が溢れてしまった。

たくさんの罪で血に染まった両手だけど、ジョットと二人一緒なら大丈夫だろうと思った。

 

それから暫くの間は医者の元で過ごし、母子ともに異常はないと判断されてからは元の隠れ家に戻り、赤ん坊の体調を考えて半年経ってから本部に戻る事となった。

誰に似たのか赤ん坊は大人しくて夜泣きもそんなにひどくなくて余り大変な思いはしなかった。

2週間もすると赤ん坊は瞳を開いてその目の色を見せてくれた。

僕と同じ、青い瞳だった。

 

ジョットは嬉しいと言っていた。ジョット似の、僕の青い瞳を受け継いだジョットと僕の子供。

将来、とんでもない子になると予想してしまう、それくらい我が子はとてもお利口で可愛かったのだ。

 

ジョットは我が子をとても可愛がってくれて良き父の見本みたいだった。

親の愛情というものを知らない僕だったけどそう思うほどショットは赤ん坊の面倒もおむつ交換もミルクをあげるのも率先としてくれているのだ。

だから僕は育児に疲れることもなく、ゆっくりしたい時にはジョットが代わりにあやしてくれてとても助かっている。

 

一日が終わる頃になり、赤子が眠るとジョットは今度は僕を甘やかす。喉が渇いたな、とふと思った時にはタイミングよくココアを淹れてくれてつまめるブラウニーも欠かさなかった。

寝転んでいると足と腰を重心にマッサージをしてくれるしお風呂上りは髪を乾かして優しく梳いてくれるのだ。

僕はお姫様か?ってくらいの至り尽くせりな状況に僕は慣れつつもこれじゃあジョットの方が疲れてしまう、と僕はジョットに赤ん坊の世話だけ良い、僕の世話まで焼かなくても大丈夫ですよと告げた。

 

「何故だ?」

 

ジョットは不思議そうに首を傾げ、骸の事が可愛いから好きで勝手にやっている事だ、疲れても傍にお前とあの子がいれば疲れなんてあっという間に吹っ飛ぶ。それくらい俺は今幸せなんだよ、と抱き上げられて言われた。

そのまま寝室に運ばれて、あの子が産まれてから初めて最後まで閨を共にして朝日がのぼるまで愛し合った。

 

3人で過ごす時間はあっという間に過ぎて、そろそろ本部に戻ろうかという事になった。

一年と半年も仕事から遠のいていたから身体も訛ってしまっている。帰還することに異論はなく、僕とジョットは子供を連れてボンゴレ本部に帰った。

 

本部に戻ると僕がジョット似の子供を抱いてるから当然、大きな騒ぎとなった。犯罪歴がある僕が産んだことに難癖つけようとする者は居たがそれを口に出すこともジョットが許さなかったため、僕らに向かって直接何か言う者はいなかった。

僕は後から聞いたが否を唱えた者がいたらしく、何処かに追いやられたらしい。殺さない所はまだ優しいなと思うが当人からしたらクビみたいものだから今頃悔やんでいる事でしょうね。

 

現在のボスである綱吉くんは帰って来た時に泡を吹いて今にも倒れそうだったが僕がジョットの想いに応えてまた家族が増えた事をとても喜んでくれた。

本当に、甘い男だ…と相変わらずな事に呆れてしまうと同時にそんな男だからボンゴレに居着く事を選べたのだ。

綱吉くんは仕事の合間を見つけては子供に会いに来て遊んでくれたから将来、この子は綱吉くんに懐くと予想出来た。

 

僕が任務で留守にする時は子供の面倒をジョットが見てくれている。

これ以上ない世界一最強なボディガードで僕も安心して任務に行けるのでジョットが旦那で本当に良かったと思った。

任務から帰るとジョットと子供、それと綱吉くんがいて同じ面影の顔が揃って僕の方に笑顔を向けてくるから少々面白いのだ。

 

綱吉くんが以前、ハッと思い出したかのように骸が家康さんの奥さんってことは実質俺と骸って家族じゃん!と大発見!と目を輝かせていた事があった。

確かに、ジョットは綱吉くんの叔父にあたるからその通りなのだが…そう改めて家族と言われると歯がゆいくて落ち着かなくなってしまう。

 

「うわ〜…骸と家族かぁ、なんか嬉しいなぁ」

「そう、ですか…」

「うん、凄く嬉しいよ」

 

何とも言えない顔していると綱吉くんはこれからも改めてよろしくな、骸!と屈託ない笑顔を見せるものだからそうですねと嫌がらせで抱き締めてやれば綱吉くんの顔が胸にのめり込んでジョットに怒られてしまいました。

甥でもそれは駄目らしい。その後、まだ何も分からない子供を綱吉くんが預かって僕はジョットにベッドの上で説教されてしまったので今後は気を付ける事を決めた。

 

ローム達も僕が決めた事に否を唱える筈もなく、僕がジョットの女になったことと子供を産んだことをとやかくいう事は一切なかった。

本当に可愛い部下たちである。子供を抱かせると受け入れて可愛がってはものの数分でメロメロになっていた。

僕の子供だから可愛いのだと言っていた。僕に盲目的で異常なほど忠誠心を捧げてくる子たちだ。

 

思ったよりも、僕は今悪くない人生を歩んでいる。

こんな僕でも愛する男がいて、可愛い子供が産まれて、僕の幸せを願う家族が増えて、昔のように犬たちの生活を守るのに泥水啜ったりせずに済んで衣食住に、お金の心配もない。

今の僕なら余程の規格外じゃなければ殺されるほど弱くもないし、順風満帆だ。

 

これからもマフィアを赦す事はないし、悪と定めた組織を破滅させていくがボンゴレの元…ジョットの隣で生きて行こうと決意するには充分、僕は幸せだった。

 

 

続?

骸さまの幸せが私の幸せです😌