◆宿虎SS
悠仁はただ、見てるしか出来なかった。
いつもなら反射のように体が動くのに今は体の力が抜かれたようにピクリとも動かすことが億劫な程、体が思うようにいかない。
その原因は目の前に佇む一人の男によってもたらされた。
両面宿儺。
史上最強の呪いの王に君臨した男だ。
宿儺の視線がつい、と合わさる。
ビクリと体が小さく跳ね上がって震えた。
違う。
何で俺は怖がってんだ?
そんな筈ない…俺は宿儺なんか怖くない。
そう思う程、体が震えた。
己の体が震えて宿儺の視線から外れたいと萎縮する。
宿儺がスッと足を踏み出して近づいて来た。
ビクッ!とまた肩が跳ね上がり、ガタガタ震える。
違う…
震えたくないのに、本能的に体が宿儺の存在に恐怖している。
「ぁ…っ、や…だ」
蒼褪めて等々足に力が入らなくなり、悠仁はその場に崩れた。
座り込みそうになった時、直ぐ傍まで近付いていた宿儺が悠仁を背中を支えた。
「拒むか、小僧」
「う…っ…」
紅い眼を見たくなくて悠仁は宿儺の胸元に顔を埋めて隠した。
頑なな悠仁に宿儺は眼を細めて笑みを浮かべる。
「今更拒んでも既に遅い」
言い含ませるように言えば悠仁はイヤイヤと首を左右に振る。
だけど宿儺の腕の中から逃れる事は、出来なかった。
End