mikotoの呟き

美琴の小説、日記やお知らせ置き場*^^*

◆忘れられない(高土)

 

 

静寂に包まれた暗闇の部屋の中…押し殺したようなくぐもった小さな声が響く。

声を出すのを我慢してるからか時折苦しそうに息を吐き、零れ落ちた声が震えている。

 

部屋の中央にあるベットは膨らんでおり人が眠っている事が伺えるのだが些かその膨らみは大きくて一人の人が入っているようなものではない。ベットに眠っていたのは一人ではなく、二人。

 

高杉と、土方の二人だった。

二人は同棲をしていて今日もいつものように共に眠っていたのだけれど眠っている途中に土方が夢から覚めて涙が溢れて止まらなくなってしまった。

 

暗闇の中では深い蒼の瞳を見る事は叶わなずけれど暗闇のおかげで涙に濡れて赤くなった目を隠してくれた。            

思い出してしまった。あの時、限られた時間の中で最期に己のやるべき事を見つけ、自分の最期を知りながら迷いもなく突き進んで逝ったあの時の高杉の姿を…土方は夢見た。

 

どうしょうもなかった。

どうにも出来なかった…無力な己を呪っても高杉は過去奇跡的に生きてきたがその奇跡の数だけ…死んでいたのだ、何回も。

悪運強くも生き延びていたが最期の時は奇跡でも何でもなかった、限られた時間の中でやるべき事をやってのけて高杉は生に背中を向けた…。

 

人をも巻き込んだ数々のテロを起こしてきた生粋の悪党だったがそれにも理由があり、その理由には胸を締め付けられる。

悪党だったけれど、江戸が大変だった時にはその身を呈して江戸を救ってくれた…それだけで充分ではないのか。今まで辛い道を一人、共に戦った仲間を置いてまで心を偽り誰にも頼る事なく歩いてきたのだからもう良いんじゃないのか。

 

笑って、日の下を歩いて良いではないのか。

 

 

土方は過去を思い出して声を押し殺す。

隣の高杉を起こさないように身を小さくして枕が涙で冷たくなって頬を濡らすがそれを止める術を土方は今は知らなかった。

 

 すると、

 

 

「ッッ……」

 

震える身体を力強い腕が抱き締めた。

びくっと肩を跳ねさせる土方が目を凝らすと高杉がしっかりと目を開けて土方を見つめていた。

土方が何か言おうと口を開くけれど何も紡げず中途半端に口を開けたままそっと閉じる。

 

何と言えばいいのか分からなかった。

高杉はそんな土方に何も言わず濡れた頬を掌で覆い涙の跡を拭うとそのまま後頭部に手を滑らせて引き寄せた。

 

コツン、と額を付けて小さく息を吐く。

声を出さないようにと血が滲むまで噛み締められた唇にそっとキスして力を抜くようにと舌でなぞった。

はっ、と力を抜いた唇に続けてキスをすると土方の手が高杉の背に回りシワになる程キツくシャツを握り締められる。

 

「…た、かすぎ…」

 

まるで迷子の幼子のような声だ。

ふっと小さく笑って高杉は土方を更に強く抱き締める。いつの間にか身体の震えは止まっていたがまだ嗚咽が止まらない。

 

背中をテンポよく撫でながら高杉は腕の中に収まる恋人の事を可愛く思う。

 

何故泣いていたかなんて、大体予想は付く。

コイツが己の死の事で泣く訳がなかった。真選組の最期は天寿を全うして潔いと聞く。ならば、コイツが他に涙する理由なんて…自分しかいない。

 

自惚れではない。

土方は間違いなく自分の事を愛していたし、自分も土方を危ない橋を渡ってしまうまでには酷く愛していた…。

 

たがらあの時の自分の最期を悔やんでいる事は分かっていた。知っていた。

それでも自分はあれで良かったのだ。最後の最期で先生を守る事が出来た。先生を殺めてしまった悲しみの呪縛を背負った銀時をやっと開放させる事が出来た。

 

10年も掛かってしまったが…思い残す事もなく逝けた。ただひとつ、土方の隣で老いる事は叶わなかったがそれ以上に愛していたから満足だった。

 

もう、良いのだ。

忘れてしまえばいいのに、と高杉は思いながら自分を思って涙する土方が愛しくて愛しくて仕方ない…。

 

「…土方」

 

俺はここに、お前の前に居るだろう…?

 

高杉が涙が溢れそうな目尻に指を這わせると土方は頷いた。高杉が言わんとしてる事が暗に理解出来た。確かにやるせない気持ちでたくさんだけど今は目の前に高杉がいる。

 

それは紛れもない事実で確かな事。

土方は小さく笑って高杉にキスをした。それだけで、もう涙は止まった。

 

END

 

 

(仕事が繁忙期に入りましたのでこれから更新が遅くなります~😭💦でも月に3個くらいは上げられるようにします…。2018/5/22)

◆つき(高土♀)

 

教室に入って早々、高杉は顔をしかめると眉間にシワを寄せた。

 

教室にいる者はそんな高杉を気にするも怖くて誰も声を掛けられずそっと様子を窺っていると高杉は奥の席で机に腕を組んで顔を伏せて蹲る土方に近付いた。

 

「土方」

 

知る声が上からきて土方はそっと顔を横にずらすと目線だけを動かして高杉を見上げた。

その顔は悪く、傍目に見ても体調が悪いって事が分かり高杉がそっとその背中を優しく撫でるとホッとしたように表情が和らぐが顔色は良くなっていない。

 

「…立てるか?」

 

土方がこんなにも具合が悪い理由には何となく検討がついていた高杉はこのまま学校に居ても授業なんか聞いてられないのだろうと思い、帰ろうと促す。

 

言わんとしてることが分かったのか土方は小さく頷くとお腹に手を当てて上半身を起き上がらせる。

土方に代わり高杉がスクールバックに教科書や筆記具を入れると自分のカバンと一緒に肩にかける。立ち上がった土方の肩に自分のカーディガンを羽織らせて冷えないようにしてから肩を抱きそのまま教室を後にした。

 

その一部始終を見ていた者はえ、一体何が…?!と困惑していたという。

 

 

 

 

「薬は飲んだのか?」

「効かなかった…」

 

土方の歩くペースを歩を合わせながら高杉が問い掛けるとふるふると弱々しく首を左右に振って土方は効果がないと溢す。

 

そうか、と仕方なさそうに返すと高杉は更に土方を引き寄せて額に口づけた。

 

「帰ったら直ぐに暖めような」

 

ん、と土方は僅かに嬉しそうに笑みを浮かべる。確かにお腹は激痛ともいえる程に痛いがこんな時高杉はそれはもう周りが呆れる程に甘やかしてくれるのだ。

 

当たり前のように尽くされる側の高杉が土方の為だけにあれこれととことん尽くしてくれる。それだけで少し痛みが和らいだ気がした。

 

 

 

END

(生理痛って薬飲んでも効かないしホントにツラい…(泣)

◆いつからか(高土)

 

開け放たれた窓から風が入り込み頬を撫でて髪を優しく揺らす。

風に乗って僅かに花の香りが鼻を擽って春に咲き誇る花たちを感じられた。

 

10階建てのマンションの8階にある高杉の部屋に土方は今日も訪れていた。

窓から入る風が白いカーテンを揺らしバルコニーに置かれた寝転べられる椅子に寝転びながら高杉は外の景色を眺めていた。

その傍らに土方が椅子の縁に腰を下ろして同じように8階という高さから眺める街並みを見下ろす。

 

二人の間に特に会話はなかった。

それでもお互いから流れる空気は針積めたものでもなく気まずくもない。

ゆったりとした空気が二人を包み言葉がなくとも落ち着いてる事が分かる。

 

土方は高杉の傍に居るのが好きだった。

だから何もない時は高杉の傍でただ同じ空間で過ごすのが日常だった。

 

高杉は寡黙な男だ。

不良だなんだと言われているが此方がアクションを起こさない限り他人に関わろうとしない。だからといって他人を見下してる訳でもなく、自分以外どうでもいいと思ってる訳でもない。

その証拠に高杉を慕う鬼兵隊と名乗る河上万斉を筆頭に来島また子、武市変平太、岡田似蔵が騒いでる所を咎める事なく端から見たら分からないが長く高杉を見つめてきた土方には微笑ましそうに眺めている事に気付く。

 

人を惹き付ける不思議なカリスマ性をもつ高杉に土方は何時しか惹かれて気付くと傍にいた。

高杉の他にも周りを惹き付けるカリスマ性をもつ男は他にもいる。

その一人に坂田銀時が入る。死んだ魚のような目をしている男だが時に心に響く言葉を向けてくる。ちゃらんぽらんに見えて実は情に厚い男だと知れば人は知れず彼の周りに集まり何かあれば手を差し伸ばさずにはいられない程に人を惹き付ける。

 

桂も同様だ。普段はまるで天然のバカだがいざという時は頼りになる頭のキレは銀時や周りが頼る程に素晴らしい。彼に着いて行けば正しいと思わせられる。だから普段バカには関わらないようにしょうと桂を放っておくが桂の周りにも人は絶えない。

 

坂本もそうだしこの四人が集まると自然と周りもこの四人がいればと心強くなるものだった。けれどやはり土方は他の3人を凄いと思うけれど何故か抗えない引力に引き寄せられ高杉に惹かれた。

 

そして土方が隣にいることを高杉は快く受け入れた。何も言わない。けれど二人には分かっていた。

 

言わずとも目の奥を覗けば何を求めているのかお互いに分かった。それはお互いに欲していたから分かることだった。

いつの時代もこの想いが変わることはない。

 

「…高杉」

 

優しい表情で見返してくれる高杉を見下ろして土方はふわりと笑った。

ただ傍に居られる事がこんなにも胸を締め付ける程に嬉しいと、素直に思えたのはもう何度目か。

武骨だけれど細くて長い指がそっと頬に添えられるのを目を細めて享受する。その手に手を添えて甘えるようにスリッと目を閉じた。

フッと柔らかな笑みが高杉から聞こえると頬に添えられた手が後頭部に回り引き寄せられるので逆らわず従えば土方は寝転ぶ高杉の上に体を倒した。

 

土方の方が幾分か身長はあるが高杉の身体は逞しく完成されていて引き締まった筋肉を感じて土方は自分で確かめるように高杉の体にに触れた。

 

まだ冷たく感じられた風が二人重なった事で別け隔すものがなくなり体温を分け合い寒さが緩和した。

触れ合って戯れる時間が土方は好きだ。離れた距離があとは服だけが隔てるだけで見下ろすと隻眼が見つめ返す。

距離をなくして唇を触れ合わせれば二人の間に笑みが溢れて空気にそっと消える。

 

飽きることなく顔中に唇を落とせば高杉の手がくしゃりと土方の髪を優しく乱す。

啄むような口付けが次第に激しくなると二人の目の奥に隠しようもない欲望の炎が灯る。

二人はフッと笑い、高杉が土方の背中に手を回すと腹筋だけで起き上がり膝裏に手を添えるとそのまま抱き上げて椅子から立ち上がった。

 

高杉の首に腕を回して二人は目を合わせると軽く口付けをして寝室へと足を踏み出した。

二人を送り出すように風が吹きカーテンが揺れた。

 

 

 

END

 

即席だからちょっと自分でも意味わかりませんがただ二人が一緒にいる事がただ幸せ。

土方さんお誕生日おめでとうございます💕

◆変われたのは貴女の為(百合高土)

 

「十四乃ちゃんって可愛いよね~!」

「使ってる化粧品なにー?」

 

教室の窓際の後ろ、土方十四乃は周りをクラスの女子に囲まれながら質問責めに合っていた。猫のようにつり上がった蒼い目が透き通って輝き、深緑の髪が三つ編みに編まれ肩に綺麗に流されている。シミ一つない滑らかな肌に目も綾な姿を女子たちが羨ましそうに見つめている。

 

今日は高校の入学式でさっき式が終わって教室に戻り、先生が来るのを待っていたのだ。

 

生徒はみな、各々好きに過ごしていてグループで集まって喋ってる者がいればわざわざジャンプを持参して読み込んでいるものもいる。

ボーッとしてる奴もいれば、遠い他校から来てまだ友達がおらず寝てるフリして馴染めないのを誤魔化してるのもいた。

 

そんな今日の様子を土方は周りを囲む女子に当たり障りのない事を返しながらただ眺めていた。

 

今日来ねーのかよ…。

 

窓から見下ろせる正面出口を見て土方はムッスリとする。待ち人を待っているのだ。

学校は午前で終るからせっかく一緒にカフェを巡ろうと約束したのに、一緒に行こうと誘ったその相手が学校に来てない。

 

土方は拗ねたように黙り込むと女子たちがどうしたの?と聞いてくるが何でもないと返そうとしたらガラッと教室のドアが開けられ口を閉じた。

 

先生が戻ってくる5分前なのに今教室に入ってきたのは誰だ?と生徒の視線がドアに向くとそこには紫紺の髪を靡かせ、漆黒の長い睫毛が鋭い碧の瞳に陰影を落として妖しげな雰囲気を漂わせ左目は医療用の眼帯で隠す高杉の姿があった。

雪も騙す程の肌が紅い唇を際立たせ男子の視線を奪っている。

 

「高杉!」

 

土方が席を立ち上がって高杉に走り寄ると高杉は小さく笑みを浮かべた。

 

土方が待っていたのは高杉だった。

 高杉が来ると土方の席を囲んでた女子たちは直ぐ様自分の席へと戻り、高杉に視線を奪われていた男子はハッと我に返ると視線が合う前に目前の机を見つめた。

それに高杉がフンと嘲笑を浮かべると丁度戻ってきた先生の号令で二人は席に着いた。

ムッスリとしていた土方の表情はさっきと打って代わって少しホッとしたように見えた。

 

土方と高杉は元々仲なんて良くなかった。

何故なら今は周りが羨む程の大和撫子のように美しいと言われる土方だが昔は成人男性を横二人に並べられる幅をも取れる程にそれはもう太っていたのだ。 

 

人というのは自分と違うものに対しあれこれと比べるものだから自分と違い醜く太っている者をまるで悪者ようにからかい罵詈雑言を吐き付ける。

土方もそうで大のマヨネーズ好きが仇となって中学の頃には体重は200㎏をゆうに越えていた。

男子からは醜い豚だと罵られ、女子からはブス等と影口を言われてきた。

同じクラスだったからその中に高杉もいた。けれど高杉は影口を言うのではなく面と向かって「デブ」とハッキリと言ってきた。

 

土方は吃驚して目を見開いたが大人しく虐められるような性格ではなかったから直ぐに言い返し、騒ぎになる程の喧嘩をしたものだった。

 

それからだった。

顔を合わせては口喧嘩をし、時折殴り合いにもなった。高杉は顔が綺麗な割りには喧嘩っ早くてその慇懃無礼な不遜な態度が気に入らないと他校の男から絡まれるも返り討ちにしてしまう程だったから不良というレッテルを貼られた。

 

だから平和な学校生活を送りたい者は関わらないようにと高杉を避ける。

 

不良だから避けられる高杉と肥満体系なだけで虐められる土方は次第に話す事が多くなった。それも高杉が土方によく突っ掛かるからだ。

口を開けばデブと言われる土方もうるせぇよチビ!と言い返すのが二人の日常となった頃、土方への虐めがエスカレートして体育の授業を終えた土方が教室に戻ると制服が見るも無惨に鋏で切られておりとてもではないが着られるようなものじゃなくなっていた。

 

絶句する土方をクラスの者がクスクスと後ろで笑みを浮かべているのをカッとなって殴りたかったがその衝動を抑えて土方は教室を飛び出して走った。

教室を出る際に遅刻してきた高杉にぶつかり高杉がよろめいたが涙を浮かべる土方を見て大きく目を見開いた。

 

声を掛ける間もなく土方は走り去って高杉が一体何だ?と訝しんで教室の中に入ると土方の机に置かれた無惨な姿の制服を見下ろして合点がいった。

 

ブスが泣いてたね、と面白がる奴らを高杉は近くにあった机を蹴り倒して睨み付ける。

その鋭い視線に教室がシーンと静まり返ると高杉はてめェら覚えてろよ?と低い声で脅し教室を後にして土方を追った。

 

 土方を探して走ってた高杉は土方の行きそうな所を片っ端から足を運んで校舎の裏庭を見てみるとそこにはしゃがみ込む土方をやっと見つけることが出来た。

 

そっと近付いて同じようにしゃがみ込むと土方は眉間にシワを寄せて怖い顔をしていてさっきは涙を浮かべてたから泣いていると思っていた高杉は内心ホッとした。どうやら悔し涙のようだ。

 

俯く土方の頭をポンと撫で、高杉はおいデブ。と切り出すのに青筋を浮かべる土方だったが構わず続けて高杉は痩せるぞ、と真顔で告げた。

 

勿論土方はキョトンと間の抜けた顔をしては?と困惑したが高杉はあんな奴らをさっさと見返せよ、てめェは今デブだけど可愛いンだから。と続けられて土方は反応に困った。

顔を合わせれば口喧嘩をしてきた高杉がここにきて可愛いって何だよ、と訳分かんなくなったのだ。 

 

戸惑う土方を構うことなくその事件があって高杉は土方が痩せる為にダイエットに付き合った。

 

クラスの者は高杉が牽制した日から恐れて土方に手を出さなくなり快適に過ごす事が出来た。

先ずは大好きなマヨネーズを目的の体重まで落とせるまでは絶えて過度にならないように食事制限を設けて毎日3時間の運動とストレッチを行った。これが肥満体系には辛くて弱音を吐く度に高杉が土方を励ました。(励ますというには辛辣な言葉ばかりだったが)

 

 体に良さそうなものと体脂肪率を下げるレシピを高杉がわざわざ調べてノートにまとめてくれたり、時間があれば休みの日でもダイエットに付き合ってくれる高杉に何度か何でこんなにまでしてくれんだよ、と問い掛けたが高杉は必ずいつもお前は可愛いよ、としか言わない。

 

答えにもなってないが土方は一人じゃここまで徹底的に出来なかったかもしれないから手伝ってくれる高杉に感謝した。

マヨネーズが食べれなくてイライラして高杉とよく衝突もしたが売り言葉に買い言葉で喧嘩腰にそのまま次のトレーニングについて考案してしまうからまともに喧嘩にもならなかった。

そのおかげで口を聞かなくなるなんて事にはならなかったから今思うと可笑しい光景だったろうなと土方は笑う。

 

そんなある日、高杉の家の脱衣室でかなり痩せてきた土方が久しぶりに体重計に乗ってみると高杉の手助けの甲斐もあってなんとか1年と半年で60㎏までに減量する事に成功していた。

 出された数字を見て土方が涙ながらに嬉しがっていると目の前にいた高杉がやっとだな…と溢し土方を抱き締めた。

 

驚く土方を抱き締めたまま脱衣室を出るとリビングのソファに腰を下ろして目を閉じる。高杉の腕から抜け出そうとしたが以前は太っていたから密着しても肩が触れるだけで高杉の腕が背中に回ってぎゅっとされるのも、頬に柔らかい双方が触れる事もなかったから初めて触れる温もりに土方は思わず大人しくなる。

暖かい…。

 

大きな腹で腕が伸ばせず高杉を抱き締めるなんて出来なかったが今はつっかえるものもないし土方はおずおずと高杉の背中に腕を回して抱き返した。

 

この瞬間に土方は高杉が好きなのだと自覚した。

 

 

 

 ***

 

 

 

 まだ続きます!

後程書き足して更新します😅

取り合えず土方さん誕生日おめでとうー!!

 

◆高土

 

 

「晋助、起きろ」

「…ん…」

 

肩に凭れる高杉の体を軽く揺すって起こせば小さな声を溢して隻眼の碧の目が開いた。

まだ意識がハッキリとしないのか眠そうに右目を擦るのに土方が笑みを溢して乱れた髪を直してやった。

 

「…十四郎、」

 

髪に触れる土方の手にすり寄り気持ち良さそうに目を細めるのにまるで猫だと思った。

いつも飄々とした高杉が寝起きの時は幼子のように甘える姿にギャップを感じて土方は好きだった。

 

可愛い。

 

そう土方の表情が語っていた。

街を歩けばすれ違う老若男女問わず高杉の容姿に惹かれて誰もが振り返る。

滲み出る色気もそうだが今は主流となっている煙草ではなく、江戸の頃に遊女等が使用してた煙管を燻らす姿がこれまた粋で人の目を惹き付けるのだ。

 

切れ長の澄んだ碧の瞳に見つめられたら足の爪先に頭を垂れて服従してしまう程に高杉のカリスマ性には逆らえない。

高杉は周りを惹き付ける人間だった。

 

「高杉起きた?」

 

土方と高杉が居たのは街中にあるカフェテリア。

奥の席に座ってたのは土方と高杉だけではなく、腐れ縁とでも云うのか昔から顔を合わせては口喧嘩をしてきた銀時の他に桂、坂本、ついでに土方の犬である山崎も居た。

週末は時間があったら何となく集まるのが習慣となっていてこの日も集まっていたのだ。

大学の事や世間話をしてたら昨夜遅かったのか隣に座ってた土方の肩に凭れ高杉が眠ってしまった。

 

高杉を甘やかしてる皆は笑みを浮かべて少し休ませてあげてたが店に入って隣の席に座った女子グループが此方を見て色めき立つのに土方がこれ以上高杉の寝顔を無料で見せる訳にはいかないと起こしたのだ。

 

銀時がまだ眠そうにしてる高杉に声を掛けるとあぁ、と頷いた。

 

「晋助何か頼むか?」

 

テーブルの横にあるメニューを取りながら土方が聞くとエスプレッソと返ってきて土方は頷き、店員を呼びエスプレッソとついでとばかりにパンとセットのスクランブルエッグと銀時が苺が盛り沢山のパフェを頼んだ。

 

店員が下がるのを見届けて銀時はそれにしても、と溢す。

 

「高杉と土方っていつから一緒に居るっけ?」

「さァな、俺も覚えちゃいねーよ」

「高校の時にはもう一緒ではなかったか?俺と銀時と高杉は幼馴染みだからな、よく覚えている」

 

お茶を啜りながら桂が思い出すように明後日の方向を見上げるのに銀時がそうだっけ?と首を傾げた。

 

ワシはお前らとは中学の時に会ったからのぅ!高校上がった時には1年間海外に行ってたし戻ってきたら高杉と土方が一緒にいるの普通だっだぜよ、と坂本が笑いながら言う。

 

話題になっている二人もいつからなんて思い出せないのか頭を捻っていた。

思い出せない程に高杉と土方はいつの間にか、自然と一緒にいるのが当たり前になっていたのだ。

 

確かに桂の言う通り、高校に上がってからそこで高杉と土方は初めて出会ったのだがいつから一緒にいるかは分からなかった。

あの頃は高杉もヤンチャばかりをしてて銀魂高校の頭を張る程に喧嘩三昧だったし風紀を乱す者を粛清するのが仕事だった土方とは相容れない立場に立っていた筈だった。

 

相容れない筈の二人がいつの間にか一緒にいて、幼い頃から熟知してる高杉の人間への無頓着さを知ってるだけに大学に入っても今もずっと共に過ごしているのに銀時が疑問に思うのも不思議ではない。

 

一緒にいるだけなら親友と云えるがそんな軽いものではない。

共に過ごす内に二人の間に何か芽生えたのか高杉と土方は付き合い、唇を合わせるようになり、自然と身体も重ねるようになってお互いしか見えなくなった。

 

しかもそれを隠す気もないのだから高校と大学で二人の噂は直ぐに広まった。

それで影口を言われてたみたいだが他人に無頓着な高杉と利にならないことに興味がない土方には堪える事はなく時間が経つに連れて二人の仲は公認となっていった。

 

周りの偏見を無視してまで付き合う二人が当時は分からなくて周りは何回も問い掛けたものだ。 

 

その度に二人はアイツだけだから。と答えにもなってない答えが返ってきた。 

 

「てめェもしつけェな銀時。何で一緒にいるかなんて俺ァ十四郎しかいらねェからに決まってっからだろォ?」

 

何回も繰り返された疑問に呆れはしたが高杉は律儀に今まで言った事を繰り返した。

 

だから何でそうなったかを聞いてるんだけど、と銀時が溜め息を吐くと土方が前世から俺と高杉は恋い焦がれてたからで良いんじゃねーの?と笑った。

 

良いなァ、それ。

 

ニヤリと目を細めて酷薄に笑った高杉にだろ?と土方が同意し目を合わせた。

 

「はいはい、お二人さんはお熱いって事でファイナルアンサー?」

 

ファイナルアンサー、と高杉と土方以外が頷いた。これから先も高杉と土方はずっと一緒に居るのだろう。

 

二人が一緒にいるのが自然なように。

 

 

END

◆逃走不可能3

 

路地裏で倒れている所を持ち帰られて土方家に居付いてから一週間が経った。

 

十四乃と名乗った頭が可笑しいと思った女は思っていた程に異常ではなくてどちらかと云うと極普通だった。

何をされるかと警戒したが特にこれといって何もない。ただ共に過ごしているだけだし監禁されている訳でもない。

警戒してるこっちが馬鹿らしくなる程に十四乃は、その家族はまるで此方を以前から過ごした家族のように扱ってくれる。

 

一見普通に見えるが紛れもなく異常だ。

普通の人間ならば得体の知れない者を家族のように扱ったりしない。友人ならばまだ分かるが丸きり初対面の人間によくまぁ、ここまで良くしてくれるモンだと気味悪く思ったものだ。人間は平気で嘘を吐き自分の可愛さ故に他人を蹴落として嘲笑う所業は人間の浅はかだ。

幼い頃からそんな浅はかな人間を見てきた高杉には土方家の人間は何かしら裏があると思っているが今の見当たらなかった。

よく出来た人と言えば聞こえは良いがそんな出来た人間がいつか痛い目に遭うのはよくある話だ。

 

勘繰ってもしょうがないと高杉は使えるものは遠慮なく使う主義の男だから匿って貰えるのであればと大人しく土方家に腰を落ち着けた。

拾った十四乃も容易く高杉を手放すとは思わなかったから何かを仕出かすような事が起こらないように見張っているとも言える。

 

高杉を欲しがった十四乃が匿う代わりに高杉に求めたのは二つ。

 

一つ、十四乃とその家族以外とは許可なく話さないこと。

二つ、何があっても必ず十四乃と傍を離れないこと。

 

十四乃が高杉に求めたこの二つの条件を受け入れるのなら何をしてもいいと、十四乃は告げた。

 

こんな条件を出された高杉は勿論渋い顔をしたが守れない訳でもなかったし一人で過ごすのが好きである高杉は土方家を出てまで誰かとお喋りしたい訳でもなかったから一つめの条件は難なく受け入れた。

何故ここの人間以外はダメなんだと聞けば他の人と話してる所を見るのが嫌だと唇を尖らせて言う。嫉妬かよ…と呆れるとだから晋助は俺のだって言っただろ?と十四乃は高杉の腕に抱き付きながら笑った。

 

ただ二つめの条件は簡単に受け入れる訳にはいなかった。

 

 何があっても傍を離れない。

それは訳ありな高杉にとっては容易に約束出来るものではなかった。今は匿って貰っているがいつ何が起きるか分かったもんじゃないのだ。

高杉が難しい顔でそう告げたが土方がそれでも構わない、何があっても最後に晋助の帰る場所が俺の所だと覚えていれば良いから。と真っ直ぐな目で告げられ高杉は思案の末頷いた。

 

それから高杉は十四乃からアプローチを掛けられ軽くかわしながら共に過ごしていた。

ここの生活は思ったよりも快適でビックリした程だ。特にあれこれと過去や何をしていたか詮索されないのは助かったし好きに過ごしても何も言われない。

 

夜に勝手に拝借した日本酒を片手に縁側で庭を眺め、月見をして快適に過ごしてるくらいだ。十四乃が隣にいて膝を枕代わりされたが嬉しそうに何も言わず寝ているだけだから好きにさせている。

 

一体何がそんなに気に入ったのか聞きたいが今更聞いても十四乃が手を離す事はないのだろうと諦めている。

体を少し動かすと動きに伴って首輪に繋がれた細い鎖が金属音を鳴らすのを見て思う。

 

 

 

 

**

 

 「出掛けよ、晋助」

 

台所で十四乃の母、葉子の手伝いでお昼の食事を作ってた高杉を十四乃は外へ誘った。

 

ここに来てから随分経つが日がなボーッとするのも飽きた高杉が暇潰しに葉子が料理してた所を何か手伝うか?と申し出たのを切っ掛けに高杉は家事をするようになった。

 今も肉じゃがを作っている最中で黒のエプロンをかけてる姿を知己が見たらあの高杉が?!と戦くだろう。

高杉は昔から家事をやった事はなく他の人に任せっきりだったから何も出来ないというか労力を使わないのだが器用なものだから教えられたらあっという間に料理までこなせるようになった。

 

十四乃はこの家に馴染んでいる高杉の姿を見ると嬉しそうに表情を綻ばせる。

 

白のカットソーに黒の短パンに身を包む十四乃をチラリと見、高杉は前菜の用意をしてた葉子を見ると葉子は快く頷いた。

 

「後は私がやっとくから晋助くんは十四乃ちゃんと出掛けてらっしゃい」

 

前菜は後はトッピングするだけだし、主菜の肉じゃがは余分な水分を飛ばす為に数分煮込むだけだから問題だろう、味噌汁は最初に作ってあったからもうやることはない。

大丈夫だろうと高杉はエプロンを脱いで壁に掛けた。待っている十四乃の所まで行くと寸時に腕を絡め取られて玄関へと向かった。

 

「どこ行くンだ」

 

サンダルを履いてる十四乃を玄関の扉を開けて見下ろしながら問い掛けると服を買うのだと返ってきた。

服?オシャレには無頓着だと思っていたがそんな事でもなかったのだな、と感心していたがどうやら十四乃の服ではなかったらしい。 

 

「晋助の服を一緒に買おうと思ってな」

 

腕に抱き付く十四乃はどんな服が似合うかと楽しそうにしている。

服なんてどれも一緒だろ、と思いつつ近くのデパートまで歩くと腕を絡ませるように掴んでた小さな手が指を絡めてきた。

どうした、と見下ろすと十四乃は勝ち誇ったように笑みを浮かべながら高杉を見上げた。

 

「ふふ、晋助って本当イイ男だよな?周りの女たちの視線が凄ぇ」

 

言われて周りをチラリと見渡すと確かに女の視線が集まっていた。

確かに自分の容姿は人目を惹くと少なからず自覚しているが、一番人目を引くのはこの首にある首輪の所為じゃないのかと思う。

首輪だけならチョーカーで済まされるが鎖があると何かしらのプレイだと勘違いされているだろうなと他人事のように思った。

 

てめェだって男の視線を惹き付けてるぞ、と返すと事も無げに俺は晋助しか興味ないからどうでもいいと返される始末だ。

 

羨望の視線を跳ね退けて自分の男を自慢するように女たちに視線を寄せる十四乃は誇らし気だ。

独占欲が強過ぎるのも考えものだな、と苦笑いしてしまうが最近では頑張って口説き落とそうと躍起になる十四乃が可愛く見えてきた高杉は空いてる手で頭を撫でた。

 

すると強気な笑みを浮かべていた十四乃がキョトンと目を見開くと次第に頬を染めて高杉から視線を逸らした。

あんなに積極的に口説いてきたり密着したりするくせに高杉から触れてくると十四乃は途端に大人しくなって照れるのだ。

 

その変わりように高杉は笑った。

飼われるつもりはないが十四乃と居ると退屈せずに済む。十四乃は照れて顔を俯かせるが繋いだ手はそのままに、二人はデパートの中へと入っていった。

 

服を選んでる所に高杉の事を知っている者が現れて十四乃と揉めたのはまた別の話。

 

 

END

◆九狐の来訪(高土)

(※【蛟の守り神】の続きです)

 

 

やっぱりか。

土方は重い体を引き摺って帰宅を急いだ。

 

 

銀魂高校に通う普通の高校3年生である土方十四郎はやたらと憑かれやすかった。

 

以前、あり得ない数のモノに憑かれてしまい家の裏の神社で蛟の神様を祀っている昔から通っていた社に寄った所をそこの主である高杉が余りにも引き連れていた土方に乗っかっているモノを祓ってやった時から土方は頻繁にその神社に通うようになった。

 

普通の高校生は憑かれないのだがそこを除けば土方は本当にただマヨネーズが好きな男子高生なのだ。

 

今日も学校からの帰り道にどっしりと肩が重くなり憑かれてしまったと確信して震えた。

 

一体どんなモノが肩に乗っているのか想像するのも恐ろしくて後ろを振り返れないでいる土方だ。

何故こんなにも憑かれやすいのか疑問になるのだが高杉曰く、そういう体質で土方に心の拠り所を求めているのだと。

 

だからって視える訳じゃないから拠り所を求められても困るンだが…。というのが土方の意見だ。

 

憑かれて困るのは肩が重くなる事だけだが好かれやすい体質だからどこを歩くにしても引き連れてしまう。

それが巡りめぐっていつか悪いモノも連れてしまえば体調が更に悪くなり、周りにまで悪影響を及ぼしかねないと高杉に説明されてそういうモノが恐いものなのだと改めさせられて視えなくて良かったと心底思ったものだ。

 

高杉は神様だから自分の意思で姿を視せる事も出来るみたいだから神様というものは本当に万能だなと感心したのは記憶に真新しい。

 

肩に憑いているであろうモノを高杉に祓って貰おうと家に帰る前に神社の裏に赴くといつもなら社の方の階段辺りに座っている高杉が見当たらなくて土方はあれ?と首を傾げた。

 

「…寝てンのか?」

 

橋を渡って社に近付くがどこにも高杉の姿がない。

まだ社の中なのかな、と社の中に向かって呼び掛けようとした所で社の裏手からバシャッと水の跳ねる音がしたと思ったら高杉の呼ぶ声がした。

 

「ここだ、十四郎」

 

声のする方へ足を動かして移動するとそよ風に紫紺の髪を靡かせながら高杉が尾びれを池に下ろして座っていた。

 

膝に白い毛玉を乗せて。

 

 

 

「?……晋助、何だその毛玉…」

 

モフモフとした白い毛玉が気になって土方の視線は下に向く。

高杉の元へ近付き、隣に腰を下ろすとその白い毛玉がもぞりと動いた。

 

「え、生きてンのかそれ?!」

 

毛布かやたらとモフモフした毛糸玉と思っていた土方が動いた毛玉を見て高杉にひしっと抱き付いた。

それに高杉が笑いながらこんなモン危険でもなんでもねェから大丈夫だと背中を撫でる。

撫でるついでに肩に憑いていた残りカスを祓ってやった。(高杉の社は神聖な結界で守られてる為、高杉の領域に入った瞬間に憑いていたモノは五体満足で無事では済まされないので高杉に近寄った時点で既に半分消えているのだ。)

 

「こんなモンってお前失礼な奴…」

 

もぞりと動き、高杉の膝に乗っていた毛玉の中から顔らしきものが出て来て高杉と土方の方を向き紅い眼が覗いた。

さっきは丸まっていたから毛玉に見えたが体を伸ばして全体図が現れるとその姿は狐の獣だった。尻尾が九尾もあるのだけれど。

 

てか…喋ったぁぁぁあ!!!!!?

 

「こ、コイツ喋ったぞ?!!!」

「あのね、生きてるンだからそら喋るだろーが」

 

いや獣は普通喋らねぇから。

もっともな事を言いながら毛玉を警戒してるとその毛玉は呆れたような溜め息を吐くと高杉の膝から降りた。

 

「ったく…ギャーギャーうるせぇなぁ…発情期かよ」

 

大きな口を開けながら欠伸をする毛玉はそのまま跳び跳ねて空中で一回転する。

え?と土方が驚いてるとドロン!と周り一帯が煙で見えなくなるとその中から一人の男が立っていた。

 

白の着物と中に黒のインナーを身に纏ったあちこち跳ねてる銀色の髪色の持つ男の頭の横には銀と書かれた狐のお面があり、その後ろには大きな九本の尾が揺らめいていた。

 

いきなり現れた死んだような魚の目をしている男を見上げて土方は声もなく驚く。

そんな土方を怠そうに頭をポリポリ掻きながら見下ろすと何かに気付きパチクリと目を見開いた。

 

「あれ?この子って高杉、噂のお前の愛し子じゃん」

 

…愛し子?

 

キョトンと噂って?と首を傾げる土方だったが高杉はそれがどうした、と否定しなかった。

高杉にとって土方はこの世で一番大切にしたい唯一の人間だから愛し子で間違いない。 

 

「ははーん…道理でここ最近ひどく付き合い悪ィ筈だわ。愛し子が変なモンに好かれやすかったら気軽に留守に出来ねーわな?」

 

ニヤニヤ笑いながら銀色の尻尾で高杉の頬をうりうりとつつく男の尻尾を高杉は邪魔そうにべしっと叩いた。

 

「るせェよ銀時。理由なら分かったろ、ヅラ達にはてめェから言っとけ」

 

狐のお面の男、銀時を睨み付けて高杉はフイ、と顔を反らした。

 

 ツンケンとした態度の高杉だけど二人は仲が良さそうだ。高杉はいつも一人でいるから自分と会話してる時の雰囲気しか知らなかった。

けれど銀時という男と話す高杉は年相応というか親しい間柄なのか落ち着いていた。いつもと違った雰囲気の高杉を見て土方は新鮮な気持ちになる。

 

高杉と銀時の顔を交互に見てたら高杉があぁ、そう言えば…と土方の頬を撫でた。

 

「十四郎。コイツは九狐の銀時だ」

「九狐…?コイツ神様じゃなくて妖怪なのか」

 

中国の妖怪だって聞いた事がある。と高杉に言うと銀時が確かに妖怪だけど本当なら高杉も蛟という毒を撒き散らす妖怪なんだぜ?なのに人間に崇められて神の枠に進出しやがって。と続けた。

 

「ふ、好きで神に進出した訳じゃねェよ」

 

ぼやく銀時の言葉に高杉は目を閉じて小さく笑った。

知ってるよ。面倒くさそうに銀時は溜め息を吐き、急に空気が重々しくなって高杉にくっついたままどうしたら良いか分かんなくて固まる土方を見下ろしこの空気を壊すかのようにやる気のない声で自己紹介をした。

 

「どうも~。九狐の坂田銀時でーす。そこの眼帯野郎とは昔からの腐れ縁です~」

「…土方十四郎だ」

「え?大串くん?瞳孔開き過ぎじゃない?その年でもうニコ中とか将来苦労するよ?」

「生まれつきだわ!死ねこのクソ天パ!!」

 

名乗ったにも関わらず間違えてるし初対面でいきなりなんて失礼な奴なんだ!と土方は声を張り上げた。

 

銀時も髪の事を若干気にしてたのか天パと言われてはぁぁぁ?!サラサラヘアーだからって調子乗ってンじゃねェぞコノヤロー!!!と二人はバチバチと火花を散らして睨み合った。

 

小学生並みのレベルの低い喧嘩に高杉は呆れて落ち着けやてめェら、と煙管から口を離し火花を散らす二人の間にフゥー…と紫煙を吹き掛けて注意を反らした。

 

「くだらねェ喧嘩してンじゃねェよ」

 

天パのどこがくだらないんだ?!!お前ボンボンでサラサラヘアーで調子乗ってるかもだけど低杉くんなのは変わらないからなっ?!!と矛先を高杉に変えるが高杉ははいはい、と適当にあしらう。

 

もう何度目かも知れないこのやり取りに頭に来たのはもう昔の話だ。慣れたもんで高杉は天パを気にする銀時をスルーする。

 

「はぁ…まぁいいや。取り合えずヅラや辰馬は兎も角、神威の所にはたまに行ってやれよ」

 

土方の肩を抱いてさっきからその頭を撫でてる高杉が聞いてないと気付くと銀時はガックリと項垂れて諦めた。

それと、 と続いて出た名前に高杉は片眉を上げて銀時を見る。

 

「あのガキがどうした」

「お前に会えなくて暇だって暴れるンだよ。神楽も兄貴が構ってくれないって拗ねるしで大変なんだから早めに何とかしろ」

 

 何だその理由は。ガキじゃあるまいし。

高杉は呆れてものも言えないようだった。土方もそう思っているのか呆れた顔で銀時を見ている。

 

しかしどうやら孤独を好んでいると思っていた高杉は、かなり好かれているみたいだと土方は分かった。

何の用でここに来たのかは分からないが銀時は高杉に他の仲間の元へ顔を見せに来て欲しいと先程言っていた。それもその他の仲間が高杉が元気にやっているのか気になっているらしいと察する。

 

それに銀時も憎まれ口を叩いてるように見えたが土方が来る前から高杉の膝に眠っていたから言わずとも高杉の事を好いているのだろう。

素っ気ない態度だけれど高杉も銀時を蔑ろにしてはいなかったし膝に眠る獣姿の銀時を見下ろす表情は柔らかかった気がする。

 

土方は高杉の膝に眠る銀時を思い出して急に胸の辺りがモヤモヤして気持ち悪くなった。

眉間にシワを寄せると目付きが鋭くなって高杉を心配させた。

 

「あ~…そろそろ俺行くわ。恋路の邪魔して馬に蹴られたかねーし、邪魔者はさっさと退散しますよ~っと」

 

 寸時に土方の抱いてるものに気付いた銀時は気を使い踵を返す。

 

その背中に高杉はただ一言アイツらによろしく言っとけ、と掛けると銀時は背を向けたままひらりと手を振り、獣の姿になって空を駆ける。

 

高杉が入れ込んでるだけかと思ったら向こうの方も相当じゃねェか…。

 

小さく笑って銀時はそのまま遠くへ消えた。

 

 

 

 

 

***

 

「何だったんだアイツ…」

 

いきなり意味不明な事を言って帰って行った銀時を変な奴だと思いながら高杉を見返ると高杉は土方をじぃ~っと見つめていた。

 

碧の目に見つめられてドキリと胸が大きく高鳴るのに土方が頬を染めて不思議がっていると高杉が土方の頭を撫でいた手を滑らせて頬に指先を添え輪郭に沿って撫でる。

 

くすぐったくて身を捩りながらも逃げ出さずクスクス楽しそうに笑う土方に高杉の口元にも笑みが浮かぶ。

 

「…お前って奴ァ本当可愛いよなァ」

「晋助って目ェ悪いンじゃねぇの?」

 

こんな目付きの悪い男が可愛いってそらねぇよ、と高杉を可笑しそうに見返す土方だが高杉は甘い眼差しで何言ってやがる。俺にとって十四郎、お前が一番可愛いンだよ。と頬を撫でていた手を引き寄せて顔を寄せるとそのまま土方の目元に唇を落とした。

 

いつだったか、具合が悪くなって新鮮な空気と生気を与える為に高杉が土方の顔中に唇を落とした時から高杉はよく土方の頬や額に唇を落とした。

抱き締められたりスキンシップも多いが土方は嫌な気持ちになった事はなく、照れたりする事はあるが高杉と触れ合う事に抵抗はなかったから高杉から頬にキスされたりするのに直ぐに慣れた。

 

今日も高杉が触れてくると心がポカポカして何故か心地が良い。自分から高杉の手にすり寄ると高杉の目がスッと細まる。

その表情が好きで土方の表情は嬉しそうに綻ぶのを高杉は今直ぐにでも喰らい付きたくなるのを我慢するのに苦労した。

 

十四郎が愛しくて仕方ない。

 

愛しいこの気持ちが余りにも甘く切なくて高杉の表情は優艶になる。 ふわりと柔らかい風が二人を包み、髪を揺らして顔に影を作る。

 

土方が笑みを浮かべて高杉を見つめると高杉は土方の肩を抱き羽織の中へと誘って体が冷えないように抱き締める。

されるがままに土方は身を委ねて幸せそうに目を閉じた。

 

 まだ土方は己の想いに気付いてないのだけれど、それもまた時間の問題だろう。

 

 

 

 

 

END