mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆視えてる仁王と安全地帯真田の話

 

幼い頃から、仁王はこの世に留まるいわゆる霊的なモノが視えた。

ソレは至るところに存在していてこの世への未練故かあわよくば生者を死へと引きずり込もうとする。

ソレが視えて怯えた時、祖母に泣きつけば祖母から自分が視えやすい体質で非常に引き寄せやすいのだと言われた。

それからはソレを無視して生活してきたがそれでも視えてしまう分、当てられて体調を崩しやすかった。

 

ソレが視える生活に慣れた頃にテニスにハマり、夢中になっている時はソレたちを気にする事はなかった。

中学に上がるとテニス部に所属し遊ぶ暇がないくらいに練習していく中でソレらを引き寄せない体質の男を見つけた。

真田弦一郎。1年生にして名を知られる強者だ。

 

ソレらはどうやら真田の熱苦しい程の気迫に近付けないらしく、真田の周りは非自然なほどにソレらが遠巻きにしている。

 

あそこなら、息がしやすいかもしれない。と漠然とした思いが浮かんできた。

しかしレギュラーでもない仁王が真田と自然に話をする事は出来ないからただ思うだけで行動には移さなかった。

 

相変わらず体調は直ぐに崩してしまうしで散々だけど表には出さず、テニスを楽しんで周りをよく観察してその技を自分の物にしていく。

後期になると3年生は部活から受験の勉強に移行した。部活を仕切るのも次の部長である2年生だ。それから新たなレギュラーの選抜も始まり1年では幸村、真田、柳、仁王と決まり他は2年の名が連なった。

 

レギュラーになった事で真田との接点が出来た。

思った以上に真田の傍は安全だった。真田と居ると具合は悪くならないしソレが視界に入る事もない。ソレを認識してから生まれて初めての事だった。

 

それ以来、真田と同じ空間に居る間はとても息がしやすかった。けれど真田と離れるとソレは途端にこっちまで来て存在を気付かせようとする。

 

家には祖母が神社から貰って来てくれたお札があるから休めるもののやはり真田の傍程じゃない。仁王が唯一安らげる場所は家と真田がいる部活動の空間だけだった。

上手く生活していたがある時期になるとソレらが頻繁に動き出す。

日中にも関わらず身動き出来ないほどの至近距離に空気が淀んで見えて息が詰まった。

フラつき、思わず壁に寄り掛かればソレが追い掛けて囲むように覆った。これは本格的にマズイな、と意識が混濁した時に真田の声が聞こえた。

 

目が覚めると保健室にいた。

意識がなくなる直前に真田の声を聴いた気がしたのじゃが、と身を起こせばパサっと自分のではないブレザーが落ちた。

 

それは男物で、内側を確認すれば真田と書いてある。どうやらあの声は幻聴ではなかったみたいだ。

真田が長らく着用してるのもあってか線香の香りが仄かに匂った。気付けばソレは一つも見当たらなかった。

 

それからの仁王は早かった。真田の私物を御守り代わりにすればソレは近寄ってこないのだと気付いた。

視えることは伏せて真田の物を持っていれば体調が悪くならないから部活にもこれまで以上に身が入る、と言えば真田は疑うこともなく躊躇する事もなく私物を貸してくれた。

 

最初は小物のハンカチが多かったけれどそれは不定期で真田が持つものだからか効力が弱かった。真田にそう言えば真田は考える素振りを見せてじゃあこれならどうだ?とネクタイをその場で解いて渡してくれた。

 

それはほぼ毎日真田が身に着けていたものだから効果は抜群だった。

ネクタイを借りる代わりに仁王は自分のネクタイを真田に渡した。図らずもまるでカップルみたいにお互いのものを交換する事になったが普通の生活を送るためだ。

それに意識を失った時、余りにも酷い顔をしていたからなのか真田が気に掛けて来るようになった。具合が悪いと知るや否や直ぐに上着を脱いで肩に掛けて安静にしてろ、と甲斐甲斐しく世話を焼いてくる。

 

まさかここまで気に掛けてくれるとは思わず呆気に取られてしまう。でも真田が気に掛けてくれる時は本当に危うく感じた時なのでとても助かってしまうのだ。

 

真田のカーディガン、ネクタイ、リストバンドを借りて過ごし体調が悪くなって机に突っ伏せば何で分かったか不明だけどわざわざ真田が保健室まで運んでくれた。

最初の頃は周囲に色々言われるのが面倒で真田のものを借りている事を隠していたが2年に上がれば隠すのも面倒になり、カーディガンなど堂々と着るようになった。身に合わないカーディガンは見るからに男物だから噂好きの女子たちは誰のだと聞かれるけどその度にお守りじゃ、としれっと返す。

 

ただぐったりすると真田が直ぐ駆け付けて来るから言わずとも周囲は身に着けてるものが真田のだと察しているようだった。

ここまで来ると流石にもうただの優しい世話焼きのチームメイトの関係では到底収まらない。既に真田が居なくては普通の日常生活は送れないし真田も仁王という己が庇護しなければならないという存在に慣れてしまい今更何もなかったかのような関係を良しとしなかった。

 

自然と二人が付き合うようになるまでそう時間は掛からなかった。

寄り添う様に歩いた次には指を絡めるように繋いでいた。身を預けるように寄り掛かるのにも抵抗はなかったしもっと欲しいとも思うようになった。どっちかが告白した訳じゃないのにそうなるのが当たり前のように二人の間に交際を拒否する事なんてあ

りえなかった。

 

交際も始まった事なので仁王は真田に視えること、真田の傍に居るとソレが近寄って来ず息がしやすい事を告白すれば真田は真面目に聞いてくれて俺が守れてるようで良かったと安堵していた。

 

俺が傍に居る時は俺が守る、居ない時は俺の物を遠慮なく身にまとえと自ら進んで私物を差し出した。

お陰で仁王は46時中、今まで以上に安全に過ごす事が出来るようになった。一応そつなく一通りの事は出来る仁王だけど真田は案外面倒をみるのが好きみたいで甘えるのも得意な仁王は遠慮なく真田に甘えた。

正反対な二人だが交際は案外上手くいっている。

 

 

End

◆幸あれと願ってくれた(初ムク♀)

※骸さま視点です。

・妊娠、赤ちゃんが出てきます

・ジョットが骸さまに無理矢理手を出す表現があります。

 

 

 

 

 

お腹に触れると小さな鼓動を感じた。

望んでいた訳じゃないのに、僕の元へと来てしまった命に知らず知らずのうちに涙が溢れてしまう。

 

こんなに泣くのは、本当に久しぶりだった。

罪にまみれ、山を築く程の死体を作りあげたこの手でどうやって尊い命を抱けるというのか。血縁など作る事なく果てるだけだったこの身に命を宿すなど、あってはならない事だ。

僕が犯した罪は全て僕だけのもの。子供に受け継がれないために血縁者を作る予定はあり得なかったのに。

 

それなのに、生きようとする己の子を産まれてすらいないのに殺すことなんて出来ようもない。

だからこんなにも涙が溢れて止まらないのだ。

 

「骸、泣くな」

「…ジョット…なぜ、何故ですか!この僕に…っ!」

 

腹の子の父親となる男は、ボンゴレを創設したジョット。

僕を輪廻に巡らせた原因のマフィア界の頂点に君臨していた男。

部下たちの生存の為にマフィアに首元を鎖で繋がれようと決して赦す事はないと誓ったのに、ジョットに迫られて抗うことも出来ずに何度も、何度も過ちを繰り返した。

 

その過ちの象徴が、この腹の中にいて、息づいてる。

 

「俺は、凄く嬉しいよ」

「貴方は分かっていない!罪しかない僕が、母親になれる訳がないんです…っ!!」

 

叫ぶ僕を、ジョットはそれでも離してくれない。

涙で濡れている頬を優しく拭られ、強く抱き締められる。ジョットの胸に身体を預けながら思い至る。

 

「…貴方、僕を嵌めましたね…」

「何の話だ?」

「いつから避妊具を使わなかったんですか」

 

顔を上げてジョットを見つめると否定も肯定もなくただ柔く微笑まれた。それだけで、計算した上での計画だったのだと強く確信した。

 

「ジョット…!貴方って男は…!!」

「怒るな骸、お腹の子によくない」

「誰の所為で怒っているんだと…!!」

 

ドンっと拳でジョットの胸を殴ってもジョットが堪える様子はない。

逆に嬉しそうに力を込め過ぎて震える両手の拳を包まれて額にキスされる。避ける為に後退りするも追いかけられて結局逃げられなかった。

 

「骸と同じ美しい青い瞳の子が良いな、男でも女の子でもどちらでも構わないよ。骸との子ならお前ごと守るから何も心配する事はない、大丈夫だ」

「っ…う、く…」

「もう、諦めて俺と一緒になろう骸」

 

悪びれる事なく清々しいくらいの笑顔で言われてその顔を殴りたくなった。手を掴まれているから実行出来なかったけれど、手が自由だったら平手打ちだけじゃ絶対に済まさなかった。

 

周りの人間はこの男を温厚やら物腰の柔らかい好青年と評価しているが僕からしたらとんだ食わせ者の頑固でズル賢い男でしかない。一体どこをどう見ているんだ。

騙し討ちなんて出来ない顔して拒否する僕に迫り孕むのを計画するような男だったのだ。

 

「…貴方なんて、嫌いだ…」

「それは残念だ。俺は骸がとても好きだよ、誰よりも愛している」

「……本当に、馬鹿ですね…」

 

それがジョットの事なのか、または抵抗するのも諦めて大人しく抱き上げられて運ばれる僕の事なのかは、考えたくもなかった。

 

それからジョットは表向き長期任務と申請して僕を仕事から遠ざけ、自分も海外出張だと綱吉くんに告げて同じ時期にボンゴレ本部から出て隠れ家の方に匿われた。

隠れ家には二人だけで暮らし、お腹が大きく膨らんで中で赤子が腹を蹴る時期になっても変わらずジョットは僕から片時も離れることなくいつも近くで守ってくれていた。

必要不可欠な日用品や食材は部下の者が調達してくれているらしいのでジョットは離れる事はない。

 

身体が重くなって思うように動けない時も、気分が優れず投げ遣りになってもジョットは嫌な顔一つせず僕を抱えて移動したり快適に過ごしやすいように家事全般をやったりと全力で僕のサポートをした。

隠れ家に来てから46時中そんな調子なものだから憎んで邪険にするのも馬鹿らしくなり、もう良いか…とジョットの想いに応える事にしました。

 

だから僕の所に来てしまった子供を哀れと思うことなく僕とジョットの子供としてちゃんと産みます、とジョットに伝えるとジョットはもの凄く喜びその日はずっと僕にしつこく好意を囁いてきた。

 

上手く情報を誤魔化してるからか襲撃も来訪もなく僕は何事もなく臨月を迎え、出産予定日にボンゴレお抱えの口の硬い医者の手によってジョットとの子が元気に産声をあげた。

出産の疲労で意識がぼんやりする中でタオルにくるまれた我が子を看護師によって腕に抱かされて見下ろすと紅葉のような小さな手をきゅっと握って泣いている。

 

目はまだ開いていないがその面影はジョットそっくりで、本当にジョットの子を産んだのだと実感した。

壊さないように、そっと頭から頬にかけて優しく撫でると泣き止んでまるで手にすり寄るかのようにもぞもぞと動いた。

 

僕が、母親に…お腹の中で腹を蹴っていた時から少なからず親になった自覚はあったけれどこの子に会って更に強く自覚する。

会って分かったのが…この子を愛しているのだと、守りたいのだと今更になって気付いた。

 

思わず笑みがこぼれてお産の時からずっと僕の手を握ってくれてたジョットに視線を向ければ腕を上げ、この子を抱いてあげて下さい、と赤ん坊を渡した。

ジョットは僕から赤ん坊を受け取り、その顔を見つめて徐に涙を流して笑った。

 

「あぁ…愛しいな。産んでくれてありがとう、骸…。君も…俺たちの所に生まれてきてくれてありがとう…」

「っ……は、ぃ…」

 

赤ん坊を抱えながら僕の頬にキスして泣いて感謝するジョットに僕まで涙が溢れてしまった。

たくさんの罪で血に染まった両手だけど、ジョットと二人一緒なら大丈夫だろうと思った。

 

それから暫くの間は医者の元で過ごし、母子ともに異常はないと判断されてからは元の隠れ家に戻り、赤ん坊の体調を考えて半年経ってから本部に戻る事となった。

誰に似たのか赤ん坊は大人しくて夜泣きもそんなにひどくなくて余り大変な思いはしなかった。

2週間もすると赤ん坊は瞳を開いてその目の色を見せてくれた。

僕と同じ、青い瞳だった。

 

ジョットは嬉しいと言っていた。ジョット似の、僕の青い瞳を受け継いだジョットと僕の子供。

将来、とんでもない子になると予想してしまう、それくらい我が子はとてもお利口で可愛かったのだ。

 

ジョットは我が子をとても可愛がってくれて良き父の見本みたいだった。

親の愛情というものを知らない僕だったけどそう思うほどショットは赤ん坊の面倒もおむつ交換もミルクをあげるのも率先としてくれているのだ。

だから僕は育児に疲れることもなく、ゆっくりしたい時にはジョットが代わりにあやしてくれてとても助かっている。

 

一日が終わる頃になり、赤子が眠るとジョットは今度は僕を甘やかす。喉が渇いたな、とふと思った時にはタイミングよくココアを淹れてくれてつまめるブラウニーも欠かさなかった。

寝転んでいると足と腰を重心にマッサージをしてくれるしお風呂上りは髪を乾かして優しく梳いてくれるのだ。

僕はお姫様か?ってくらいの至り尽くせりな状況に僕は慣れつつもこれじゃあジョットの方が疲れてしまう、と僕はジョットに赤ん坊の世話だけ良い、僕の世話まで焼かなくても大丈夫ですよと告げた。

 

「何故だ?」

 

ジョットは不思議そうに首を傾げ、骸の事が可愛いから好きで勝手にやっている事だ、疲れても傍にお前とあの子がいれば疲れなんてあっという間に吹っ飛ぶ。それくらい俺は今幸せなんだよ、と抱き上げられて言われた。

そのまま寝室に運ばれて、あの子が産まれてから初めて最後まで閨を共にして朝日がのぼるまで愛し合った。

 

3人で過ごす時間はあっという間に過ぎて、そろそろ本部に戻ろうかという事になった。

一年と半年も仕事から遠のいていたから身体も訛ってしまっている。帰還することに異論はなく、僕とジョットは子供を連れてボンゴレ本部に帰った。

 

本部に戻ると僕がジョット似の子供を抱いてるから当然、大きな騒ぎとなった。犯罪歴がある僕が産んだことに難癖つけようとする者は居たがそれを口に出すこともジョットが許さなかったため、僕らに向かって直接何か言う者はいなかった。

僕は後から聞いたが否を唱えた者がいたらしく、何処かに追いやられたらしい。殺さない所はまだ優しいなと思うが当人からしたらクビみたいものだから今頃悔やんでいる事でしょうね。

 

現在のボスである綱吉くんは帰って来た時に泡を吹いて今にも倒れそうだったが僕がジョットの想いに応えてまた家族が増えた事をとても喜んでくれた。

本当に、甘い男だ…と相変わらずな事に呆れてしまうと同時にそんな男だからボンゴレに居着く事を選べたのだ。

綱吉くんは仕事の合間を見つけては子供に会いに来て遊んでくれたから将来、この子は綱吉くんに懐くと予想出来た。

 

僕が任務で留守にする時は子供の面倒をジョットが見てくれている。

これ以上ない世界一最強なボディガードで僕も安心して任務に行けるのでジョットが旦那で本当に良かったと思った。

任務から帰るとジョットと子供、それと綱吉くんがいて同じ面影の顔が揃って僕の方に笑顔を向けてくるから少々面白いのだ。

 

綱吉くんが以前、ハッと思い出したかのように骸が家康さんの奥さんってことは実質俺と骸って家族じゃん!と大発見!と目を輝かせていた事があった。

確かに、ジョットは綱吉くんの叔父にあたるからその通りなのだが…そう改めて家族と言われると歯がゆいくて落ち着かなくなってしまう。

 

「うわ〜…骸と家族かぁ、なんか嬉しいなぁ」

「そう、ですか…」

「うん、凄く嬉しいよ」

 

何とも言えない顔していると綱吉くんはこれからも改めてよろしくな、骸!と屈託ない笑顔を見せるものだからそうですねと嫌がらせで抱き締めてやれば綱吉くんの顔が胸にのめり込んでジョットに怒られてしまいました。

甥でもそれは駄目らしい。その後、まだ何も分からない子供を綱吉くんが預かって僕はジョットにベッドの上で説教されてしまったので今後は気を付ける事を決めた。

 

ローム達も僕が決めた事に否を唱える筈もなく、僕がジョットの女になったことと子供を産んだことをとやかくいう事は一切なかった。

本当に可愛い部下たちである。子供を抱かせると受け入れて可愛がってはものの数分でメロメロになっていた。

僕の子供だから可愛いのだと言っていた。僕に盲目的で異常なほど忠誠心を捧げてくる子たちだ。

 

思ったよりも、僕は今悪くない人生を歩んでいる。

こんな僕でも愛する男がいて、可愛い子供が産まれて、僕の幸せを願う家族が増えて、昔のように犬たちの生活を守るのに泥水啜ったりせずに済んで衣食住に、お金の心配もない。

今の僕なら余程の規格外じゃなければ殺されるほど弱くもないし、順風満帆だ。

 

これからもマフィアを赦す事はないし、悪と定めた組織を破滅させていくがボンゴレの元…ジョットの隣で生きて行こうと決意するには充分、僕は幸せだった。

 

 

続?

骸さまの幸せが私の幸せです😌

◆気付いたら愛が生まれてた(初ムク♀)

 

綱吉は霧の守護者の骸の事をそんなには知らない。

初めて会った時は善良な生徒の振りをして騙されたし体を狙われてとても怖い思いをしたし友達を傷付けられて絶対に許せないと思った。

 

だけど骸にも骸なりの理由があってマフィアを憎んでいると分かって心底嫌いになる事が出来なくなった。

リボーンには骸の事を許しちゃいけないと言われたけど俺には母さんがいて幼い頃から何不自由なく暮らせたんだよ、友達は居なかったけど人並みに恋もしていたんだ。

 

俺が布団の中で温まりながら寝ている別の場所では骸がいつ襲われるかもしれない危機感の中で蹲って浅い眠りを繰り返していたかと思うと…悔しくて仕方ないんだ。

分かっているんだ、そんな子供は骸だけじゃないんだって。でも俺は骸と出会って、知り合ってしまったから骸の事を放って置く事が出来ない。

 

だからお前は甘っちょろいんだ、と言われようとこれからは骸が不自由なく生きて欲しいって思うんだよ。

 

それでも骸は平気で人を殺したりするしおっかない人である事には変わらないから会う時はちょっとドキドキしていたけど今じゃ骸は仲間の事をとても大切にする奴であんな憎まれ口を叩くのにいざ困った時には力を貸してくれる頼れる強い俺の守護者だって、俺はそう思っている。

 

リボーンと出会ってから仲良くなった皆とは既に5年以上の付き合いになる。

何かと手助けしてくれて困った事もあれば皆で対処するとあっという間に片付いて今じゃ少しだけ時間に余裕が持てるようになった。

だから守護者の皆の様子も落ち着いて観察出来て俺は今、骸の事を見ていた。

 

「離せ」

 

「骸」

 

「離せ」

 

「骸、手をどかしてくれ」

 

「嫌です!」

 

ボンゴレ本部の廊下の突き当りの所で骸と、俺の叔父になる家康さんがもみ合ってた。

何あれ…思わず困惑した俺は立ち止まって二人を眺める。家康さんの手は骸の腰を逃がさないように掴んでて、何故か口を塞いでる骸の手をもう片手で添えて外そうとしているみたいだ。

 

いや、これどういう状況なの…??

 

「照れているのか?」

 

「違います!拒否しているのが分からないのですか?貴方の目は節穴か!?」

 

背中を精一杯のけ反らして家康さんから距離を取ろうとしてる骸は苛付いたように青筋を浮かべながら家康さんの口元を両手で塞いで顔を背けてる。

家康さんが腰を抱いてるから距離が取れないみたいだけど…嫌がる骸に家康さんが迫っているという図にしか見えないし骸があんな切羽詰まった声を上げるのを初めて見た。

 

「む、骸?叔父さんも何やって…」

 

廊下だから二人の様子は控えめに言ってもめっちゃ目立ってて声を掛けるとこっちに気を取られた骸が僅かに手の力を緩めた隙を逃さなかった家康さんが骸の手を避けると油断した骸にあろうことか、キスをした。

 

「ん、んぅー…っ!!」

 

「ひぃぃぃいや何でぇ~?!!」

 

身内のキスシーンに顔がぼわっと一瞬で赤くなったのが分かった。

いやでも何でこの二人が?!家康さんが骸に迫る理由が分からないし骸はマフィアを憎んでるから家康さんの事も嫌っていた筈だった。

さっきも骸は拒絶していたしそれに間違いはないようだけど叔父さんが骸に迫っているのが本当に意味分からない。どゆこと?!!!

 

「いや、叔父さん何やってんのー!??」

 

視界を手で隠しつつ思い切り叫べば生々しい水音の後に骸の掠れた息遣いが聞こえた。

その合間にちゅっちゅっと啄むような可愛い音も聞こえてきてその音の発信源が目の前の身内かと思うと居た堪れなくなってきた。

 

「っ…は、しつこいっ!」

 

骸が声を荒げて家康さんを怒る。濡れ場が終わったみたいだから視界を遮る手をずらすと骸が家康さんを見上げて睨んでいる所だった。

怒る骸とは裏腹に家康さんは世の女性が見れば赤くなる事間違い無しの笑みを浮かべながら微笑んで骸の背中に両腕を回していた。

 

「怒っている顔も美しいな、骸」

 

「僕はマフィアと慣れ合うつもりはないと言いましたよね?」

 

「マフィアの前に俺とお前は男と女だろ」

 

今にも武器を取り出し殺しそうな雰囲気なのに家康さんは骸の殺気を物ともせず受け止めている。こっちはさっきから肌を刺すような痛みに襲われてるのに叔父さんマジで強ぇ~!と感心してる場合じゃなかった。

 

「む、骸も!その辺で!!部下たちが今にも倒れそうだからっ!!」

 

慌てて二人に駆け寄って骸を宥める。

この騒動に気付いた部下数名が何事かと駆け付けたのは良いが骸の殺気にやられて顔を青くして立つのもやっとな状態なのだ。

 

沢田綱吉…!」

 

ギロリと骸に凄まれてビクッと肩が跳ねた。骸の怒りの矛先がこっちに向けられてしまったみたいでもう滅茶苦茶に怖いです。

 

「ひぃ!な、何ぃ?!」

 

「君の所為で…!」

 

「骸、気を抜いたのはお前でツナヨシは何も悪くないよ」

 

声を掛けたことで油断してしまったのを骸は怒っているようだ。

しかし家康さんが俺は何も悪くないんだとフォローしてくれたけどその前に先ず家康さんが骸に迫らなければ俺が睨まれる事はないんじゃ…と思ったがそんなこと怖くて言えなかった。

 

俺は言えなかったけど骸が凄い剣幕で本はと言えば貴方の所為です!!と家康さんを怒った。全くその通りです、と内心頷くとチラリと家康さんがこっちを向いた。

 

やば、心読まれた?と挙動不審になってしまったが家康さんは特に何も言わずそのまま骸の腰を抱いたまま行ってしまった。

骸はずっと抵抗しているけど家康さんに敵わず、終いには赤ん坊のように抱き上げられて連行されていた。成す術もない骸なんて初めてみた…と半ば啞然と二人を見送る。

 

その日から家康さんが骸に迫っている場面を度々見掛けるようになった。

普段は冷静沈着な骸なのに家康さんの前だと嫌悪感丸出しの表情で家康さんを邪険にするのにそんな事も些細な可愛い抵抗とばかりに骸を追い掛けていた。

あんなに拒否されているのに、叔父さんはよく諦めずに追い掛けるよな…俺だったらくじけてしまうのに。と家康さんの鋼のメンタルに称賛を称えてしまう。

 

一度だけ、骸の事を気にして家康さんに嫌がっているし骸のことはもう諦めたら?と遠回しに言った事がある。

今でも何であんな怖い物知らずのように聞けたのか分からないけど、まぁ骸が心配だったからなんだけど…聞いた時に家康さんは俺に言ったんだ。

 

″骸の幸せを心底望んでいるのは俺だから、骸を幸せにするのも俺なんだ。″

 

家康さんは俺にそう言って愛しそうに微笑んだ。

それだけで家康さんが骸のことをとても愛しているんだと理解したから俺は心の中で骸がいつか諦めて家康さんの愛を受け止めると良いな、と応援した。

 

それから3年ほど経って俺もボスとして何とか上手くやっていけてるなと思っていたし家康さんは変わらず骸を追い掛けて骸はそんな家康さんを断固拒否していたと思ってたら骸のお腹が若干膨らんでないか?とふと思ったのが切っ掛けに骸が長期任務で本部に寄り付かなくなった。

 

それに伴い、家康さんも海外の方に出張に行ってしまって寂しいなぁと思いながら過ごした一年半後、骸と家康さんが帰って来た。

帰って来たんだけど、骸の腕の中には家康さんにとても似た顔の赤ん坊が抱かれていたしその子の瞳は骸と同じ青い瞳だった。

 

本部は勿論、同盟ファミリーも騒然となったのは言うまでもない。

 

 

 

◆さなにお♀SS

 

初めて肌を重ねた時、真田は勿論自分も初めての経験で手探りでお互いに触れたが真田は触ってしまったら壊してしまいそうだ、と恐る恐る脆いガラスを触ってる感じで触れて来るものだから初体験で緊張していた心も身体も男の様子ですっかり落ち着いてしまって、自らの手を重ねて真田に触れても大丈夫だとこれくらいじゃ壊れたりしないと何度も教えては初夜を無事に終えたものだった。

 

二度目の時もまだ躊躇する武骨な手を掴んで自分の柔らかい乳房に触れさせ、何度も平気だと触れても痛みなんてないから安心して欲しいと囁いた。

 

何度もそうやって真田を安心させるように真田の上に乗っかり、頭を抱き締めながら腰を動かして閨を共にしたおかげで真田が触れる手に躊躇する素振りが徐々に消えていった。

なんなら今では余程の力を出さない限り壊れたり傷付けたりする事はないのだと理解した時から真田は遠慮する事がなくなり、最初はリードしながら安堵させていた筈なのにリードする隙もなく揺さ振られるようになった。

 

「あっ、は、んぁっ…あっ!あぅ!」

「…まさはるっ」

「ぁんっ、げん…げん…!」

 

グッグッ、と最奥まで真田を受け入れた中は抉られて擦られる度に摩擦による快感にキュンキュンとヒクついては真田自身に絡みついた。

子宮をノックされる度に瞼の裏が激しく点滅して襲う来る快感に身悶えて真田の逞しい背中に爪を突き立てる。

波のように快感が押し寄せてきてこれ以上はもうダメだと、訳が分からなくなると真田の胸に甘えて制止を求めた。

 

「や、だめっ…もぉムリじゃ、げん…っ!」

 

頭を振り、無意識に体が逃げ出そうと腰が引けるも真田は許してくれず腰を掴まれてグイっと引き寄せられた。

そうすると繋がっていたのが更に奥深く押し込まれて声を上げる余裕もなくて息が詰まった。

 

「逃げるな、雅治」

 

逃げるなんてせん、そう言いたかったけど体が無意識に真田の下から這い出ようとしてたから言葉にはならなかった。

不慣れだった頃の真田が懐かしく感じる。ガクガク震えて息もままならないのを口付けで息の仕方を教えるようにふっと吹き掛けられてやっと息を吸って吐いた。

 

「は、ぁ…は…っ…げんいちろ…」

 

真田の体格に見合った大きさに何度も愛し合っていても息を詰めらせるものだからその宥め方も真田は既に熟知していて、抜かないままでも動かずに落ち着くのを待ってくれている。

前に一度だけ落ち着くのを待たずに揺さぶられた時には理性を飛ばしてしまい暫くぼんやりして使い物にならなくなったみたいでそれ以降真田は無茶させるような事はしなくなったがその分、時間を掛けて責めて来るようになった。

 

「んっ、げんいちろぉ…も、無理じゃ…なぁ、はよイってくんしゃい…」

 

何度もイかされてるこっちと違って真田はまだ1回しかイってなかった。何故ここで耐えるのか分からない。

指一つ動かすのだって億劫だしこれ以上の快感は出来れば受けたくない。そう思って負けず嫌いなのを折り曲げて懇願するのに返って真田自身が大きくなり身悶える事になってしまった。

 

「ひぃっ…!!じゃから、もぉ嫌じゃって言ってんのにぃ~っ!!」

「ハッ…憎たらしい口を開くお前がこんなにもしおらしくなるなんて…たまらんな、雅治?」

 

とんでもない事を言い出しおった。

ぎらついた視線と悦が含んだ笑みを浮かべる真田に嫌な汗が背中を伝う。Sのスイッチが入ってしまっている。

真田は至って普通の筈なのに自分にだけは時折Sっ気が混じってしまうのだ。本人曰く反抗的な猫が成す術もなく快感に降伏するのがグッと来るんだとか…紛れもなくSである。

 

「ぴ、ぴぇえ…っ!い、いやぁ…!許してくんしゃい、弦!!」

「可笑しな事を言うな。何も悪い事してないのだから許すも何もないだろ?」

 

首を傾げてる男は己が如何にヤバい顔をしているのか知らない。

これから襲って来る恐怖にガタガタ震えてるのを寒いのか?と勘違いしてる真田に違うのだと言っても全く聞き入れやしないのだ。

都合が悪い時ほど人間は耳が遠くなるようだ。意思が通じ合えない。

 

今夜はまだ眠れそうにないみたいじゃ…。

 

 

 

End

◆沈黙は是となる 初ムク

 

 

骸は一つの所には決して留まらない。

幾つものファミリーを壊滅させた骸はボンゴレに身を置いていても破壊的なその力故か恨まれ、疎まれ、畏怖されていた。

敵が多くあわよくばと狙われる事も多かった。

 

だから同じ所には居着かない。ボスである綱吉も骸の居場所は知らず連絡手段は携帯端末のみ。その携帯端末もころころ番号が変わる為、難儀しているが骸はどういう理屈なのか綱吉が連絡がしたいタイミングで連絡をくれるのだ。

だから連絡先が頻繫に変わっても居場所が分からなくても綱吉はそれで良かったし骸が無事だと信じていた。

だけどまるで猫のようにするりと居なくなっては現る骸が、ようやく一つの場所に留まるようになった。

 

「骸」

 

蜜をふんだんに詰めたような甘く柔らかい声音が睦言の最中のように大切にその名を呼ぶ。

見つめる琥珀の目は優しく、愛情が感じられた。

 

「骸」

「はい」

 

二度も甘い声に呼ばれた骸は返事を返す。

素っ気なく感じるが男はちゃんと分かっていたからそれに傷付く事はない。

 

「骸…綺麗だ」

 

余り日に当たる事がない白い頬を大きな手がそっと撫でる。

まるで割れ物でも扱ってるかのような手付きに骸は自分を膝に乗せる男、ジョットを見つめ返した。

 

「フフ…お前の眼はとても美しいな…」

 

長い睫毛が骸の眼の下に影を作り、伏せた瞼の上にジョットは唇を寄せる。

細い腰を抱いていた手を背中に移動させて体を更に密着させた。

 

ジョットの肩に頭を凭れさせて骸は広い背中に手を回し、抱き返した。

こういう時の骸は、とても静かでジョットの好きにさせてくれる。普段は何を考えているのか分からない笑みを常に浮かべているのに、ジョットの腕に収まっている骸は何も言わず、笑みも浮かべずただ静かにジョットが愛を紡ぐ言葉に耳を傾けているだけ。

普段を知ってる者からしたらその変わりように驚くだろうけどジョットは胸をくすぐられるようで嬉しかったのだ。

物静かな骸の姿が暗にジョットの前で取り繕う必要はないのだと、ここが安らげるのだと物語っていたからジョットはいつも溢れんばかりの愛を骸に注ぐ。

 

「骸、骸…俺の骸…」

 

背中に回していた手は冷やさないように細い肩を暖め、額に鼻先に、頬に幾つもの口付けくを落として好意を余すことなく示す。

骸は沈黙を保ったままだったがその目は気持ち良さそうに微睡んでいた。

 

ジョットの愛を一身に注がれている骸だが、二人の始まりは実は骸からだった。

現在の二人を見るとジョットが骸に愛を乞うたように誰もが思うだろう。しかし現在に到るまでの経由を、きっかけを作ったのは紛れもなく骸からだった。

 

ボンゴレをジョットと同じく若くして継いだ綱吉だったが沢山の困難を仲間と共に乗り越えたもののその困難は前線が主だって目立ち、政治的や内政での戦いは未だに未熟だった。

その為、綱吉はボンゴレを継承したが勉強中のため本部よりも各国を回って家庭教師のリボーンの指導の下で政治の事を学んでいた。

なので現在、綱吉が不在の代わりとしてジョットが本部を動かしていた。

 

全ての報告はジョットへと行くからボンゴレの幹部である骸もジョットと顔を会わせることはあった。

骸の得意としているのは暗殺と潜入だからか頻繁にという訳ではないが月に2回は報告書の義務提出と任務を言い渡す際に会って少し話していた。

 

顔を会わせて何カ月か経った頃、骸は執務室で一人仕事をしていたジョットの元へふらりと現れた。

その手には一般的な茶色の封筒があり、その中に報告書が入っている事が分かり任務は無事に完了したのだとジョットは安堵した。

安堵したのも束の間で普段なら笑みを浮かべている骸が何も喋らず沈黙したままジョットの前まで来ると封筒をデスクに置いた。

 

「骸?」

 

挨拶もない骸にジョットは違和感を感じ、訝しげに骸の名を呼んだ。

それでも骸は表情を動かす事なくデスクを回り込んでジョットに近付いた。

物言わぬ骸にジョットは医務室という文字が頭をよぎったが取り敢えず様子を見ようと骸の動向を観察した。

 

傍まで近付いた骸は、ジョットの肩に触れるとあろうことかキスをした。

顔が近付いた時ジョットは避けられた。だが骸が何をしたいのか分からなかったから避ける事なくキスをされた。

ジョットは驚愕に目を見開いた。

骸からそんな素振りはほんの少しも感じ取る事はなかったから疑問ばかりが頭を占めた。骸は触れるだけのキスをすると執務室に入った時とく変わらない表情でそのまま霧となって消えた。

 

「…何だったんだ?」

 

ジョットは困惑したが嫌悪はなかった。

それからだ、骸がジョットが一人でいる時にだけ静かなまま現れては触れるだけのキスをして消えるようになったのは。

最初は骸が何かしらの術に掛かったのかと思ったが感じた限りでは骸は何の術にも嵌っておらず骸自身の意思しか感じない。

キスされるだけで他には何もなく殺意も敵意もなかったのでジョットは骸の望む様に従った、だからかキスを交わすのも両手の数を超える時にはジョットは骸の事を女として見ていた。

 

「骸」

 

またしても沈黙を貫く骸はいつものようにキスだけ済まして消えようとした。

只、今回はジョットは引き留めるように骸の手を掴み、指を絡めるように繋げる。

留まる事になった骸はジョットを見つめる、その琥珀の眼が咎めているのではないと分かるとそのままジョットの膝に腰を下ろし額をジョットの肩口に甘えるように摺り寄せた。

 

子猫が親に甘えるかのようなその仕草に琥珀の眼が途端に甘くなった。

絡めていた指を解き、ジョットは骸を抱き締めた。そのままこめかみにキスをすれば伏せていた顔を骸は上げる。

お互いにジッと見つめ合うと磁石のように引き合い、一方的にではなく同じ意思の元でジョットと骸はキスを交わした。

 

それからは恋に、そして愛に変わるのは早かった。

いつから骸がジョットの事を好いていたのかは骸がまだ教えてくれないから分からないがジョットが骸に愛を紡ぐのにそう時間は掛からなかった。

一つの場所に留まらない骸がジョットの傍に気が付けば居るようになった。

 

「骸」

「…ジョット、」 

 

涼やかな声がジョットを求めていた。

求められる事がこんなにも歓喜に満ちるものなのだとジョットは骸が手を伸ばしてくれるまで知る事はなかった。

だから骸にも知ってほしくてジョットは過剰なまでに骸に愛を囁くのだ。

 

「愛してるよ、骸…手を伸ばしてくれてありがとう」

「クフフ…はい」

 

物言わなかった骸はジョットが愛を紡ぐ度に、花開くように柔らかく笑みを浮かべるようになったのだった。

 

 

 

続?

◆スノーホワイト/氷の王国 ※オリキャラ有

フレイヤが余りにも可愛くてそれなのに不憫過ぎてモヤモヤしたのでオリキャラで幸せにしょうと思った二次創作ですw

設定と軽い流れ。

 

※原作を壊されたくない方は読まないで下さい、責任を負いかねます。

 

 

 

 

話は幼い頃、親を亡くし身を休める場所や食い物に困っていた時にフレイヤの軍隊に拾われる三つ子から始まります。

 

長男のロイ

長女のリファ

次男のディラルド

 

他の子供たちは親元から強引に引き離れた為、フレイヤの事をよく思ってないが三つ子は衣食住を与えられて更に強くなれるように剣を与えてくれたフレイヤに心からの忠誠を誓う。

今まで助けてくれた大人は居なかったしこんなに良くしてくれるのに逆らう理由もなかった。

 

恐れながら訓練に挑む周りと違い、三つ子はフレイヤの為にと激変ともいえる速さで成長する。

 

ロイは剣を、リファは槍を、ディラルドは弓を極めた。勿論、それぞれ他の武器の扱い方は一人前だ。

恋に落ちたエリックとサラがフレイヤの元から去ろうとした時には殺そうとしたが手柄を手に入れたい他の者にここは俺達に、と言われじゃあやって見ろよ。とフレイヤの後ろに控える。

 

しかしエリックとサラの強さは他の子たちよりも上で押される。やっぱり俺達で、と前に出ようとした時にフレイヤが二人を阻む様に氷の壁で割いた。

エリックとサラは互いに幻を見せられ、サラは幽閉されてエリックは川底へと捨てられた。

 

しかしエリックは生きていたようでフレイヤは失敗を叱るもののサラが恋人がいなくなり気力がなくなったのに満足した。

 

それから数年経ち、フレイヤの元にラヴェンナが内倒れたとの知らせが入った。

エリックの元へ向かわせたサラにより姉が使っていた鏡を取り返し、ラヴェンナを蘇らせた。

そして王国を広げようと企むとエリックと裏切ったサラがラヴェンナフレイヤの前に現れた。

その頃三つ子はフレイヤからのお使いで城から出ていたが直ぐに踵を返してフレイヤの元へ急ぐ。

 

戦いの最中、初めてフレイヤは子供を殺したのは恋人を洗脳したラヴェンナだと知る。

そして怒りでラヴェンナを攻撃するもラヴェンナの魔法で貫かれる。

氷を崩して中に入れた三つ子は直ぐにフレイヤに駆け寄りラヴェンナに剣を向けた。エリックも加えて戦うが実体のないラヴェンナは切り刻んでも直ぐに再生してしまう。

倒れるフレイヤはディラルドに抱き起されながら瀕死の状態で魔法を使い、鏡を氷で囲うとその意図に気付いたエリックが鏡を壊し、ロイとリファがラヴェンナを真っ二つにして悪は消え去った。

 

皆が敵を打倒したと歓声を上げる中、フレイヤは抱擁し合うエリックとサラを見て愛は信じられるものなのだと思い出していく。ただ騙されたのだ、姉に。

なんて幸運な人達…そう零して自分の子供を想いながら目を閉じた。

 

城に歓声が響いてる時も、三つ子はフレイヤの傷口を塞いでいた。

フレイヤの傍に居れば、こんな事にはならなかったのに。後悔する三つ子にエリックとサラが三つ子にもう自由だと告げるが三つ子は元々自由だったと睨み付けた。

他の奴らは攫われた子供だったから反発するのだと理解している三つ子は自由になったのならここから消え去れと裏切った者達を前に武器を構える。

 

親元から離され、無理矢理戦わされたんだぞ。その女は死ぬべきだ、と声を上げた男にリファは槍で刺し殺す。

私の前でフレイヤ様の侮辱は許さない、と男を捨てると周りも武器を構えて警戒する。

エリックとサラは戦うのは無意味だ、武器を下げろと双方に聞かせるもリファはフレイヤ様の前に立ちはだかるのなら皆私たちの敵、問答無用で切り捨てる。と宣言した。

 

せっかく自由になったのに、そりゃあねぇだろ!と憤る同期達にリファは今すぐここから立ち去り二度とフレイヤ様の前に現れないと言うのなら追撃はしない。否と言うならば…と槍を突き出し目を光らせる。

同期たちは不満そうな顔を隠しもせず、しかしリファに敵う訳もないと後退る。

 

けれど数人の内は前に出てフレイヤ、ロイ達の首を狙うがリファの槍に貫かれ、ディラルドの弓に倒れる。

ロイがフレイヤを抱き上げて玉座まで下がればリファとディラルドも下がってロイの左右に控える。

 

たった三人だ、と思う者たちの考えを嘲笑うかのようにロイ達はその名を呼んだ。

 

アレキサンドラ(ジャガー)

アンバー(鷹)

オブシディアン(狼)

 

低い唸り声が聞こえると奥の扉から現れたのは三つ子が従えている巨体な猛獣たちに皆が目を丸くさせる。

 

オイオイそんなの有りかよ…と怯える同期。

アレキサンドラたちはフレイヤの傍で警戒態勢に入り、ロイはフレイヤを死んでも守れと命令し、三つ子は前に出る。

 

フレイヤ様は誰にも手出しさせん。ここからは俺達がお前たちを狩る番だ。

エリックはサラ達を連れてフレイヤの城を後にする。逃げず、立ち向かおうとした他の者らはロイ達に始末される。

 

こうしてフレイヤが強奪した子供たちは瀕死の女王と三つ子を残し氷の王国から自由になった。

 

 

 

 

 

◆初ムク

 

宵の口が更けた夜。

 

ボンゴレ本部の奥にあるジョットの寝室の前に人影があった。辺りに人はなく、人影は霧のように消えたかと思うと扉が開かれる事なく部屋の中へと入っていた。

中央にあるベッドにはジョットが休んでおり、規則正しく胸が上下に動いている。

 

人影は足音を一切立てる事なくベッドに近付き、ジョットの様子を見る。

深く眠っていて、起きる気配がないと分かるとそっとベッドに乗り上がってジョットに手を伸ばす。

後もう少しで触れそうになった途端、眠っていた筈のジョットが目を覚まし伸ばされた手を掴んで体を反転させて相手に圧し掛かるようにベッドに押し倒した。

 

「…っ、」

「……骸…?」

 

ジョットは寝室に侵入してきた相手を確認すれば驚きに目を見開く。

侵入してきたのは甥の綱吉の霧の守護者、六道骸だったのだ。骸は両手をジョットの片手に頭上で拘束されて身動きが出来なかった。

 

「…クフフ、気配は絶ってた筈なんですがね」

 

申し開きする事なく骸は笑みを浮かべてジョットを見上げた。

拘束する手をそのままにジョットは疑問に思っている骸の呟きに答えた。

 

「気配は消されていた、超直感だ」

「なるほど。…綱吉君といい、本当に厄介な力ですね」

 

気付かれた理由を知り、骸は溜息を吐いた。

 

「骸、これは何の真似だ」

「クフフフ、見ての通りなんですがね」

「……」

 

ジョットは口を噤んだ。拘束してる骸の姿を見下ろして確認すると、骸の格好からして夜襲を仕掛けた訳ではないと察する。過去に綱吉を乗っ取ろうとした事もある骸だが今は綱吉の霧の守護者として任務は完璧にこなしており、今更寝首をかくような骸ではない。

マフィアを根絶やしにする目的を捨てた訳じゃないが綱吉があの性格なままな限り、骸が綱吉の為に力を貸してくれる事をジョットは疑っていない。

 

だからジョットを殺す為に骸が来たとは思っていなかった。骸の格好は、薄っすら透けた紫のネグリジェだった。

透けた布の奥に下着に覆われた豊満な膨らみと下肢が目に入りジョットは目を細めた。

 

「夜這い、しに来ました」

 

口を噤んだジョットの代わりに答え合わせするかのように骸は言った。

攻撃するつもりがないと分かればジョットは拘束していた骸の腕を解放した。ついでに骸の上から身をどかせば骸は起き上がってジョットと向かい合わせになる。

ジョットは苦笑いして骸を見つめる。

 

「何故なんだ?」

「貴方の子供を産もうと考えたんです」

 

突拍子もない話にジョットは一瞬だけ息が止まる。ジョットが驚いている事に気付いていながら骸はそのまま話を続けた。

 

「貴方の子供を産めば腐りきった老人たちの悔しがる顔が見れそうですし、五月蠅いハエが辺りを飛ぶ事もない。僕も仕事がやりやくなりそうですからね…綱吉君が跡を継ぐのは当分先ですし、僕の為に貴方の子供を産むつもりでした」

 

貴方が起きてしまったので失敗してしまいましたが、と肩を竦める骸。

何も言わないジョットに骸は微笑むと足を床に下ろしベッドから立ち上がる。ジョットの目がその背中を追う。肩越しに振り返って帰ると告げた。

 

「貴方は起きてしまいましたし大人しく帰ります」

 

完全に気配を消しており、ジョット程の手練れでさえも気付かないほど骸の隠密能力はスバ抜けていたが超直感によって阻まれた骸は二度と訪れる事はないのだとジョットは確信した。

 

扉に向かっていた骸の腕を掴み、ジョットは再び骸をベッドに押し倒していた。

細い体が柔らかなベッドに抑え込まれて今度は骸が驚きにオッドアイを見開いた。

 

「Ⅰ世…?」

「ここまで来てくれた女を何もせず帰すのは礼儀として失礼だろ?」

 

骸の手を取り、指先に口付けるとジョットは熱の籠った目で見下ろした。

礼儀と言ったがジョットは相手が誰であれ、何もせずに帰えした。ただ骸だけが例外なのだがそれを今言うつもりはなかった。

 

皆まで言わずとも骸は察した。

ニヤリと笑みを浮かべると足を上げ、ジョットの腰に巻き付けてグッと引き寄せる。至近距離から琥珀の瞳を見つめる。

 

「それはつまり、了承したと捉えて良いのですね?」

「あぁ」

 

頷いたジョットに骸は優悦な表情で笑った。その表情を真正面から食らったジョットはドクンと動悸が大きく高鳴った。

 

「クフフフ…男を、産んで差し上げます…」

「…男でも女でも構わない、お前との子なら」

「んっ」

 

利害の一致から始めるにしてはジョットと骸のお互いを見つめる目は熱が籠っていた。

それに気付かない程二人は鈍くはない、しかし互いに指摘することなく建前で言った子作りをする為に衣服を脱ぎ去り、肌を撫でては言葉無き愛をぶつけるように息もつかぬ口付けを交わした。

 

 

 

 

翌日、朝日が昇る時間帯にジョットと骸は寝室に備え付けてあるシャワールームから出て来た。

数時間前の情事の跡を洗い流す為に入った筈なのにシャワールームから出て来た骸はのぼせたように頬を赤くして上手く立てないのかジョットに支えられており、中で何を行われたか察せられる。

 

「骸、抱き上げるぞ」

「ン、はい…」

 

自分の足で歩こうと頑張っていた骸だが今にも倒れそうで見てるだけじゃ我慢出来なかったジョットは抱き上げて運ぶ事にして一応断りを入れた。

このままじゃ転ぶ事になると踏んだ骸は頷いてジョットの首に腕を回した。腕が回ったのを確認すると抱き上げてベッドまで向かった。

 

「…そう言えば、着替えはあるのか?」

 

昨夜の情事の残るシーツを剝いで新たなシーツに替えたベッドに骸を下ろした後、傍らに落ちてあるネグリジェを見てジョットは問いかけた。

 

「心配ありません、幻術でどうにもなります」

 

ニコリと笑って骸は答えた。着替えは持ってないようだった。

ジョットは困ったように笑って自分のシャツを骸の肩に羽織らせた。骸の実力なら何があっても見破られる訳がないと分かっているが些か心配で気休め程度だがシャツがあるのとないのでは全く違うだろう。

 

「心配になるから着ててくれ」

「クフフ、部屋に戻るだけでも全く問題ないんですが…」

「俺の心の問題だ」

 

なら仕方ないですね、と骸は体に巻いていたタオルを外し、ネグリジェの上からジョットのシャツを羽織った。丁度お尻が隠れるまでの長さだが如何せん見えそうで見えないのが男を妙な気分にさせる。

幻術で覆い隠すと分かってもジョットは誰にも見せたくない気持ちだった。

 

「……夜までここで過ごさないか?」

 

思わずそう口走っていた。

きょんとん、と幼い表情を見せる骸にジョットは年甲斐もなく子供じみたことを口にした自覚があってバツの悪そうな顔で視線を逸らした。

 

「クフフ、今日一日中ずっと子作りですか?大変魅力的なお誘いですが綱吉君から仕事を言い渡されましてね…」

 

残念ながらそのお誘いは後日にでも、と骸は珍しいジョットの表情が見れて嬉しそうに膝の上に乗り上げると頬にキスをした。

 

「…はぁ、部屋まで送るよ」

「そう残念がらないで、僕も残念なんですから」

「明日、一緒にディナーでもどうだろうか?」

「えぇ、喜んで」

 

骸にキスしてジョットは部屋まで送る為にシャツとスラックスを着て骸をエスコートしながら寝室を出た。

廊下を移動してると突き当りの部屋から数人の話声が聞こえた。

まだ目覚めるには早い時間だが夜勤で警護の任に就いてる者たちだろうか?とジョットは思ったが仕事を放棄して何やっているんだろうか、と勘が働く。

そのまま話声が聞こえる部屋に近付くと何の話か、聞こえて来た。

 

「Ⅰ世にも困ったものだ」

「そうだな、早く何とかせんと…」

「跡継ぎを早々に決めんとな、甥の子を跡継ぎにするなんてとんでもない」

「そうだそうだ、Ⅰ世の血を受け継いでおらんと…私に娘がいるのだがこれまた美しいのだが…」

「それなら私の孫も…」

「いやいや、ここは少し年上の女をだな、」

 

部屋の中では各地の領地を任している老人たちが上辺だけの笑みを浮かべてⅠ世の後釜になろうととしている話をしていた。気配を消してそれを聞いた骸は嫌悪に視線を鋭くさせた。ジョットの肩に寄り掛かり、耳元で囁く。

 

「老人どもは本部であんな話をするなんて、どうぞ疑って下さいと言ってるようなものですね」

「…こんな時間だろうと誰が聞いてるか、分からないのにな」

「クフフ、まさか袖にしょうとしている本人が聞いているとは思わないでしょうねぇ…」

 

これだから権力にしか魅入られない者は嫌なのだ。Ⅰ世の為と謳いながら己の身内を道具として使い、実権を握ろうとする。民の為ならば良いがここにいる狸たちは保身のため贅沢がしたいが為だけの理由なのだ。

骸は蔑んだ目で身内を売り込もうと盛り上がっている男たちを睨んだ。

 

「…ボンゴレは大きくなり過ぎた、警察でさえ手出し出来ない程に。だからボンゴレを欲する者が多いんだ」

ボンゴレに対抗しょうと、違法な手段を取る者も増えましたしね。どこで誰が繋がっているのか、根が深そうですよ」

 

ジョットは愁いた表情をすると骸の肩を掴み抱き寄せてその場を離れる。盛り上がる男たちは最後まで二人に気付く事はなかった。

 

「貴方の子供を早く身籠ると良いですね」

「そればかりは、運次第だな」

「おや、僕は運任せにしませんよ。望むものは自分の手で掴み取ります、だから頑張って下さいねⅠ世」

 

骸のその言葉にジョットは優しい表情で笑いながら頷いた。