◆高土
※土方さん女体化
※高杉さんが冷血ではなく優しいです。
※二人とも都合良くキャラ崩壊の少女漫画並みww
高杉は血に汚れた両手を拭きながら、壁に背中を預けて座り込む女子生徒を振り返る。
女子生徒…土方十四乃を襲われていた所をひょんなことから高杉が助けたのである。
「………。」
高杉は怯えながら虚ろな目で自分を見上げる土方を見下ろした。
高杉は学校に登校はするが教室には余り行かないので良くは知らないが高杉が知ってる土方は女でありながら男のような言動と手足の早さ、スパルタな厳しさで周りからは‘鬼の副長‘と恐れられており、自分よりも大きい大の男にも怯む事無く、逆に血祭りにして制裁を降すような女だ。
だが、今目の前にいる土方は大の男を倒すことは出来ないと断言出来る程、弱々しい姿だ。
…面倒くせェ……。
高杉は隠すことなく舌打ちすると、土方に近付き学ランを脱いで目線を合わせるようにしゃがんで土方に学ランを被せた。
それだけでびくっと怯えて震える土方は高杉をじっと揺れる瞳で見つめると震える声で紡いだ。
「……た…高、杉…?」
「……。」
高杉は何も言わず、無言で手を伸ばした。
またもやびくっと怯える土方だが伸ばされた高杉の手が寸の所で止まり、何か待っているように伸ばされたままでいるのを困惑した表情で首を傾げた。
分からないと首を傾げる土方に高杉は淡々と告げる。
「…その格好のままじゃ、いやだろ。助けたのは俺だし最後まで面倒みてやる…触れられるのはいやだろうが掴め。保健室まで連れてってやる」
そう言われて土方は改めて自分の姿格好を見下ろした。
制服とスカートが見るも無残に引き裂かれ、下着も切られて肌のあちこちに吸われたであろう鬱血が散らばっていた。
土方は先程の出来事を思い出して顔を青ざめると無意識に学ランをぎゅっと引き寄せて肩を震わせた。
「……ほら、」
自分から無理に触れることをせず、土方自身から来るのを短気であった高杉は辛抱強く待った。
土方もそこら辺に転がる男達がいつ起きるのか分からない為、早くこの場所から去りたい一心で高杉に腕を伸ばして首に腕を回して縋った。
だが、土方の心配を余所に男達が目を覚めすこと等ない、全ての機能をしばらく動かなくしてやったからだ。
回された腕がしっかりと掴まっていることを確認して高杉は土方の背中に右手を添えて左手を膝裏に差し入れて持ち上げた。
いうなれば、‘お姫様抱っこ’だ。
土方は何も言わず、ただ必死にしがみ付いて高杉の肩に額を押し付けて視界を遮断した。腕の力が強く、息苦しいと思うものの高杉は何も言わず無言で真っ直ぐ保健室へと向けて歩いた。
*
保健室に着くとノックもせずドアを開けて高杉は遠慮なく入る。
いつもなことながら保健医は居らず、居ないことを良いことに窓際に近いベットのカーテンを引いて土方をゆっくりベットに下した。下ろしてもいつまでも腕を離さないから高杉が土方の背中を軽く叩いて大丈夫だということを伝えると土方は渋々腕を解いた。
「これでもう平気だろ。じゃな」
面倒事は避けたい。
背を向けてドアの方に向かって踵を返す所でワインレッドシャツをガシッと力強く掴まれた。そのことに高杉はやっぱりか…と進むことを諦めて、ため息を吐きそうになったがなんとか堪えて肩越しに土方を見下ろして口を開いた。
「……誰か呼ぶか?」
「ぃ、やっ……!」
今の姿を見せたくないのに、人を呼ぶことなんて出来ないだろうに…無神経だったな。
高杉は折れんばかりに首を左右に振る土方に今度は隠すことなくため息を吐いた。
ここは俺ではなく誰か親しい女の友達を呼んだ方が良いんじゃないのか?男の俺を引き留めたって俺に何が出来る…。
「…ならどうしろと?」
見下ろして聞くと、土方は瞳を涙で潤ませて高杉を見上げ必死に引き留めようとシャツをクイッと引っ張る。
「…傍にいてっ…!!」
「………。」
土方の震えながらも決して離すまいとシャツを握る手を見て、高杉は肩を竦めて仕方なく土方の隣に腰を下す。
すると土方は高杉のシャツから手を離して未だ恐怖で震える腕で高杉の体に腕を回したと思ったら肩に頭を預けて目を閉じた。
その行動に多少驚きながら、やはり高杉は何も言わずに好きなようにさせた。
しかし、かれこれ2時間が経つと高杉は土方の背中を驚かさないように、怯えぬようにゆっくり摩りながら声を掛けた。
「…土方」
高杉の声にピクリと微かに身を動かして、土方は顔を上げて高杉を見つめた。
その顔はまだ怯えている様子だったが気分は少し落ち着いているようで高杉は続けた。
「このまま授業受けるのは辛いだろ?その制服はもうダメだろうし学ランそのまま貸してやる、帰れるか?」
高杉の問いに土方は弱々しくも頷き、ベットから降りた。続いて高杉も立ち上がると土方に学ランを腕に通らせてからキッチリとボタンを留める。
土方と、ついでにこのままサボるから自分のカバンを持って来るために保健室を出で行くと土方も高杉の後を着いて行く。
「お前も来るのか?」
歩きながら問い掛けると土方は無言で頷くが、その表情は一人になりたくないと物語っていて高杉は何も言わずゆっくり歩調を合わせて進んだ。
3年の廊下を渡って教室にたどり着くと覇気のなくダルそうな声音で教科書を読み上げる銀八の声がしんとした教室に響いていた。
その静寂をガラッとドアを開くことで破り、高杉は教室に入る。
土方は廊下で待つことにしたのか、教室に顔も出さなければ入って来ない。
静寂を破った高杉に銀八と教室中の視線が集まるが高杉は気にも留めず自分のカバンを持ってからスタスタ土方の席に向い机の中にある物全部カバンに無造作に入れてチャックを閉めると用はないと教室を出ようとしたが、出ようとした所で引き止められた。
「高杉―、来て早々堂々とサボりか。後、そのカバン大串くんの物でお前のじゃねーよ?それも堂々と盗むのか、お前は大串くんが好きだったんだな。だが残念なことながら大串くんはお前に脈などないぞ、潔く諦めろ。というか、学ランは?」
長々と思いっ切り誤解をして声を掛けてきたのは銀八だった。
高杉は掛けられた言葉に否定も固定もせずに、ゆっくり振り返って銀八の方を向いた。
「………悪ィか?」
「いや、別に悪かないけど…いや、悪いっちゃ悪いけどな!てか何に対しての悪いか?!」
「何で高杉が土方さんのカバン持ち帰ろうとしてんでさァ」
目を窄めて高杉に言ったのは可愛い面して悪魔もビビる腹黒い沖田総悟だ。
周りも疑問に思っていたので高杉に視線が集中して高杉は気分悪く舌打ちする。
「土方は早退だ」
「大串くんどっか悪いの?」
「…そんな感じだ」
「トシは大丈夫なのか?」
「……大丈夫だろ」
「なら何で高杉が土方さんのカバンを持ってくんでぃ」
周りからの質問攻めに高杉は埒が明かないといい加減イラついていたら、高杉の惨状を廊下で聞いていた土方がドアから顔だけを覗かせた。
それに気付いて高杉が振り返ると銀八達も気付いたのか近藤が席を立って駆け寄ろうとした。
「トシ!具合は大丈夫なのか?」
「土方さん!」
近藤に続いて沖田と山崎もすかさず席を立つが、土方はその前に顔を引っ込めてしまった。
近藤は土方が何故隠れるのか何が何なのか分からず困惑しながらどうしたもんかと沖田達に目を配っている。
高杉は動揺している近藤達に目もくれず廊下にいるであろう土方の様子を見る為、教室から出ずに上半身だけ出して横下を向くと腕が伸びてきてガシッといきなりシャツを掴まれて驚いたが、掴んだ本人の肩が大きく震えていた。
「…や、やっぱり無理っ…!帰れない…っ!」
「………、」
小さく、声が震えていたので余り聞こえなかったが高杉にはハッキリと聞き取れた。
どうやら、襲われたことによって親しかった近藤達でも恐ろしいらしい。
完全に男子恐怖症だな…と冷静に判断した高杉は土方のシャツを掴む手を離させてその手を握り締めると土方の震えが少し治まった気がした。
「どうしたんだ、トシ?」
近藤は戸惑いながらも土方に声を掛けるが、声を掛けられた土方がびくりっと肩を震わせて高杉は完全に教室を出ると土方に教室を覗かせない様に自分の方に抱き寄せて銀八と近藤達を振り返った。
「…明日話してやるよ。…行くぞ土方」
去っていく高杉と土方に近藤達は声を掛けることも出来なくてただ見送った。
昇降口で互いの上履きを靴に履き変えて、高杉は土方を振り返ると問う。
「家はどこだ?」
「……、」
「土方」
「………帰りたくない」
「そうはいかねェだろ。家族は?」
「…海外、」
「…一人暮らしか」
高杉はクラスの女子の誰かに泊めてもらうか、と考えたが男子恐怖症だから無理だと思い至った。
志村妙は眼鏡の弟がいるし、猿飛はなんかヤバそうで返って酷くなりそうだ色々と…。柳生九兵衛の家はほぼ男ばかりで泊めてもらうこと等出来ないだろうな…。
どうしょうかと考えていた高杉はふと、というかそもそも女子は大丈夫なのか?と思った。
「………。」
結論が出なかった高杉は、土方を誰かの所に泊まらせる事を止めて結局自分の自宅に泊まらせることに決めた。
何故か知らないが土方は高杉のことだけは怖くないらしいし、今のとこ自分がやるしかない。
助けた以上、最後まで面倒見ると言ったのは高杉だから責任は持つ。
「…帰りたくないンなら、俺の所に来るか?」
続