mikotoの呟き

美琴の小説、日記やお知らせ置き場*^^*

◆高土(ショタ方さんの続き)

 

 

「……晋助、これは一体…」

 

高杉はあの宿で一晩だけ寝泊まりして朝一に起きると幼くなった土方を連れて鬼兵隊のアジトである船に戻ってきた。

船に戻って自室に戻ろうとした時に丁度通り掛かった万斉と鉢会い、昨日と同様に片腕で土方を抱えている首領を見て万斉は部屋で作詞をしつつ楽しもうと持っていた熱燗を落として固まった。

 

その後にガラスの割れる音に反応してまた子もやってきて子供を抱えている高杉を見て悲鳴を上げてわなわなと震え出すのに我に返った万斉が押さえつけて高杉の部屋にお邪魔して冒頭の台詞に繋がる。

 

万斉は気が付くとふらっといつの間にか消える高杉に頭を悩ませて困っていたが、まさか子供を連れて帰って来るなんて、普通は思わないだろう。

一体何が、と頭を抱える万斉だったが当のその首領は知らぬフリで煙管を吹かしている。

 

 

「し、晋助様ぁ~!!!その子供どこの女に孕ませたっスかぁ!!」

 

また子が涙ぐんで高杉の傍らに駆け寄り眠いのか胡座をかいた高杉の足の間に陣取って欠伸を一つ溢して目を擦る子供を指差して声を張り上げた。

万斉とまた子とは初めて会うだろうに土方は怖がる素振りも警戒する素振りも見せてない。真選組の連中には逃げ出す程に警戒していたのに、高杉が傍に居るからだろうか、今にも目を閉じて眠りそうだ。

 

「勘違いするな。これは土方十四郎だ」

 

目を擦る手を止めさせて向かい合わせになるように小さな体を抱き上げて体勢を変えて凭れさせると眠気のせいか体温の高い背中をゆっくり撫でてやる。

すると眠りを誘う高杉のその手に土方はうとうとと目を閉じた。

 

その一連を眺めていた万斉とまた子は子供の正体がまさか真選組土方十四郎だった事よりも高杉が子供をあやした事によっぽど驚いて目を見開いている。

 

「……え?」

「……は、?」

 

また子と万斉は余りの驚きに開いた口が塞がらなかった。

そんな二人を高杉は放っておき、眠ってしまった土方をあやしていた手を離すと今気付いたとばかりに吹かしていた煙管を懐に仕舞う。

気にする必要はないだろうけど一応腕の中にいるのは子供なのだし、何かしら影響を受けてしまったら面倒くさい。

 

「……その子供が土方十四郎だとして、それが何故お主と一緒に居るのだ」

「そうっスよ!土方と言えば真選組副長、アタシらの敵じゃないっスか!!」

「もし真選組土方十四郎がここに居ると知れば総攻撃を受ける事になるでござる。どうするつもりだ、晋助」

 

万斉が神妙な顔持ちで切り出すのにまた子も事の重大さと総攻撃を受けるアジトを想像して表情が強張って固くなる。

しかしそんな緊張を走らす二人をいざ知らず高杉はあぁ、そんな事か。とあっさりとした返事を返す。

 

真選組には既に知れている。コイツを持ち帰ったのは真選組の前だったからな」

 

今度こそ万斉とまた子は動きを止めて息も忘れたかのように固まった。

 

その後、お腹が空いたのかぐきゅ~と可愛らしい音を立てて起きた土方が高杉を見上げるのに気付き、小一時間くらい固まっていた万斉を蹴飛ばして飯を持ってくるように命じる高杉。

万斉は何十年分も老けたかのように疲れた顔で部屋を後にするのだけど高杉はそんな万斉も苦労も気にしていない。

 

また子と言えば万斉が蹴飛ばされたのに巻き込まれて床に転がったがそのおかけで我に返り意識が戻ったが高杉の命令が第一なまた子には高杉が殺さず土方を連れて帰って来たということは面倒を見るという事で間違いないだろうと一人納得した。

 

だったらまた子は晋助様に従うのみっス!!

 

羨ましい限りで高杉の膝で寛ぐ土方を見下ろしてまた子は意気込む。

そんなまた子を土方がじぃっと見上げていた事を膝に乗せている高杉しか分からなかった。

 

数分もすれば万斉が土方の為に子供用の軽い朝ご飯と高杉の為に一つ酒を持ってきた。

土方を膝から降ろし、台の前に座らせると高杉はまた子がお猪口に注いだ酒を口に運ぶ。

けれど土方は箸を持つこともなく目の前の料理をじっと見つめている事に気付いた高杉が声を掛ける。

 

「どうした。きらいなもんでも入ってたか?」

 

土方は高杉を振り返って見上げると首を横に振り、今度は万斉を見上げてぼそっとマヨネーズ…と溢した。

万斉はマヨネーズ?と首を傾げたが土方が望む通りにマヨネーズを厨房から持ってくると土方に手渡した。

すると土方は嬉しそうに、あろうことかマヨネーズを丸々一本をぶっちゅ~っと何の迷いもなく目の前の料理に見えなくなるまで掛けたのである。

 

万斉とまた子はピシッと固まった。

流石の高杉も多少驚いたのか口に運ぼうとしていたお猪口を持つ手が止まる。

 

「ギャァアアア!!ちょっ、アンタ何やってるっスかぁ?!!何の嫌がらせっスか!!」

「そんなにマヨネーズを掛けると体に悪いでござるよ」

「万斉先輩それズレてますっス!!」

 

万斉とまた子が土方の傍で騒いでるのに対し、高杉は可哀想になァ…真選組での仕事で頭がやられて味覚までも可笑しくなっちまったンだなァ、と土方に対し全力で哀れんでいた。

攘夷時代の時は戦火が激しくてまともに食事にもありつけず豚の餌でも平気で食べれる高杉であったが流石にマヨネーズの海は未知の世界だったようだ。

 

「良い。好きに食べさせてやれ」

 

高杉に言われて万斉とまた子はぴたりと夫婦漫才のようなコントを止め、大人しくなる。

土方は高杉を見上げてこてっと首を傾げる。

 

「好きなんだろ。構わずに食べろ」

 

土方は高杉に言われるがままに嬉しそうにマヨネーズの海になってしまった目の前の料理にありつけた。

にこにことマヨネーズの味だけであろう物を頬張る土方を見下ろして高杉は小さく笑みを浮かべた。こんな可笑しなものを食べていてよくもまぁ真選組の副長に治まっているのだからひどく可笑しい。

 

万斉は顔に出さないものの、それは美味しいんでござるか?とありありと顔に書いており、また子は気持ち悪いのか明後日の方向に顔を向けて鼻を押さえている。マヨネーズの酸っぱい匂いだけでダメみたいだ。

 

止めていた手を動かし酒を再び呑み始めると不意に土方が高杉を振り返る。

ん?と見下ろすと土方は小さい腕を伸ばして高杉に向けてマヨネーズだらけになってしまった哀れな卵焼きだったものを差し出したのだ。

 

「……あ?」

 

片眉を上げて高杉が怪訝な顔をしていると土方が尚も腕を突っ張って高杉の口に目掛けて手を伸ばすものだから土方の意図に気付き困惑した。

別に食べたい訳ではなかったのだが。

 

「それはおめェのだろ?俺ァ良いから食えよ」

 

首を振ってやんわり断る高杉に土方は真っ直ぐな目で返した。

 

「何で?食べないと動けなくて死ぬ」

 

きょとり、と何の躊躇いもなく死を口にする子供に高杉や万斉たちは目を見開く。

 

幼くなったからと云って純粋無垢な子供とまでは戻ってないらしい。この子供はちゃんと自分の置かれている状況、居る場所の危険性が死との隣り合わせで立っている事を理解している。

だから食べないと体力を失い、動けなくなり弱った隙に斬られるという事を分かっている。

 

「ククッ……そうだなァ…動けねェと困るもんなァ」

 

え?!晋助様食べるんスか?!!!と身を屈めた高杉を見てまた子が悲鳴を上げる。

土方が持つスプーンいっぱいのマヨネーズを口に入れて高杉は甘酸っぱい酸味のそれを咀嚼した。

やはりほぼマヨネーズだったが食べれない事はない。

 

迷うことなく咀嚼した高杉に万斉とまた子はもう何も言えなかった。

今日は驚かされる事ばかりで一々リアクションを起こすのも疲れてしまった。

土方は食べた高杉を確認して嬉しそうに笑って子供らしく頬を赤く染めて微笑んだ。

 

自分の口に運んで食べると今度は高杉の口許に運ぶ、その一連の流れを繰り返して土方は自分の食事をしながら高杉にも食べさせていた。

高杉は特に拒否せず黙って土方が口許に運ぶものをぱくっと素直に口を開けて咀嚼する。

 

あぁ…晋助様が犬の餌を食べている…!!とまた子は青褪めた顔でオロオロと止めさせようか、でも黙っている晋助様を止めて良いのか分からず途方に暮れた。

 

図らずも土方に翻弄される高杉の部下たちであった。

 

 

「それで晋助、土方をどうするつもりで此処に?」

「どうもしねェよ。コイツに聞け」

 

食べ終わって満足したのか土方は高杉の首に腕を回して抱き付きながら頬を緩めている。

それは丸で親の傍で安心仕切った子供だ。

好きにさせながら高杉は万斉の問い掛けに淡々と応えつつも、その頭の中には懐に仕舞った煙管を吸いたいと別の事を考えていた。

 

万斉が高杉から視線を外して土方を見ると土方は高杉と引き離されるとでも思ったのか首に腕を回したまま高杉の背中に隠れて顔を半分だけ覗かせると万斉を吊り目な円らな蒼い目でジトッと見つめる。

それに苦笑いするしかなかった。

 

「いや、拙者何もせぬよ…」

 

悪の総代将とも言える高杉がまさかここまで子供に好かれるとは思わなかった。

まぁこの子供に限ってだと思うのだが…。

 

しかしこのままこの子供を此処に置いて良いのか万斉は些か困った。

この子供がただのそこら辺に居る子供だったら別に何の問題もないのだけれどこの子供は敵対組織の副長。真選組の頭とも言える立場のこの子供を奪還しょうと真選組は躍起になって此処を探すだろう。

 

簡単に見つかるつもりはないがこれまで以上に慎重に動かざるを得ないだろう。

縛られるのが嫌いな高杉の気儘な散歩も止めさせないといけないのだろうが…それを聞くような高杉ならこっちも苦労はしない。

 

何者にも捕らわれない高杉だからこそ、今まで着いてきたのだ。それは今の危機的状況でも揺るぎはしない。

 

まぁ、何とかなるのでござろう。

万斉はあっさりと考えるのを放棄して携帯カメラで高杉が崩れ落ちそうな土方を片手で支えてやる姿を写メって鍵付きフォルダに保存し待受にしてから冷えないように高杉の肩に羽織を掛けた。

 

 

 

END