mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆嫉妬(高土)

 

 

「ッ…痛ェ…」

 

高杉は切れた口端に滲んだ血を指で拭いながら顔をしかめた。

 

天照院高校の番長である朧から受けた打撃は凄まじかったし身体のあちこちが鈍い痛みで軋んでいる。

 

あちこち喧嘩を吹っ掛けた覚えはないが何故こうも色んな奴等から狙われるのか分からない。

弱ェ奴等なんか眼中にねェし最強という称号の為に他校と殺り合うのにも興味がないしどうでも良い。

夜兎工業高校の神威にも因縁付けられてあわよくばと狙われる。(今はこっちの喧嘩を勝手に買って周りを跳び跳ねているが。)

 

全く、随分と恨まれたもんだなァ…。

 

 

「全くだ。お前は何でそう色んな奴から狙われるんだ…」

 

ソファで重い溜め息を吐く高杉の後ろからマグカップを2つ両手に持って土方が現れた。

高杉の隣に腰を掛けてコーヒーが淹れられたマグカップをテーブルに置いて拗ねたように眉間にシワを寄せている。

 

土方は何でもかんでも一人で背負おうとする高杉に腹を立てていた。

助けを乞うのが嫌い、周りからの干渉を受けるのを良しとしないのは分かっているつもりだが今回の事に関してはそうも言ってられない。天照院高校の奴らの相手は一人だけで出来る筈もないのに勝手に一人で行ってしまった高杉に土方は協力くらいさせても良いだろうが、と心の中でごちる。本当は止めるつもりだったがそれは出来ないと分かっていた。

 

朧に好き勝手殴られる高杉を見て本当に気分が悪かった。踏み出した足を銀八が止めなかったら高杉を奪うつもりだったのに。堂々と告げる気はないが自分の男をこんな傷だらけにしてくれて頭に来るというもんだ。

 

ムスッと拗ねている土方に高杉はくすりと小さく笑い、土方の肩に凭れた。

 

「好きで狙われてる訳じゃねぇンだけどな?」

 

見上げてくる高杉を横目に見下ろし今度は土方が溜め息を付いた。

朧ではなく最後に銀八が殴った僅かにまだ腫れている頬を撫でて土方は高杉にすり寄った。

 

「お前は本当…色んな奴にモテ過ぎて俺が見張ってないと駄目だな」

 

神威にも朧にも…銀八にも高杉は渡さねェ。

 

土方は頭に高杉を付け狙う3人の顔を浮かべながら固い決意を目に宿らせた。

そんな土方を見つめて高杉は目をスッと細めると顔を近付けた。

 

気付いた土方が同じように顔を寄せると二人は触れるだけのキスをして目を合わせふっと微笑んだ。

 

 

 

END