◆いつからか(高土)
開け放たれた窓から風が入り込み頬を撫でて髪を優しく揺らす。
風に乗って僅かに花の香りが鼻を擽って春に咲き誇る花たちを感じられた。
10階建てのマンションの8階にある高杉の部屋に土方は今日も訪れていた。
窓から入る風が白いカーテンを揺らしバルコニーに置かれた寝転べられる椅子に寝転びながら高杉は外の景色を眺めていた。
その傍らに土方が椅子の縁に腰を下ろして同じように8階という高さから眺める街並みを見下ろす。
二人の間に特に会話はなかった。
それでもお互いから流れる空気は針積めたものでもなく気まずくもない。
ゆったりとした空気が二人を包み言葉がなくとも落ち着いてる事が分かる。
土方は高杉の傍に居るのが好きだった。
だから何もない時は高杉の傍でただ同じ空間で過ごすのが日常だった。
高杉は寡黙な男だ。
不良だなんだと言われているが此方がアクションを起こさない限り他人に関わろうとしない。だからといって他人を見下してる訳でもなく、自分以外どうでもいいと思ってる訳でもない。
その証拠に高杉を慕う鬼兵隊と名乗る河上万斉を筆頭に来島また子、武市変平太、岡田似蔵が騒いでる所を咎める事なく端から見たら分からないが長く高杉を見つめてきた土方には微笑ましそうに眺めている事に気付く。
人を惹き付ける不思議なカリスマ性をもつ高杉に土方は何時しか惹かれて気付くと傍にいた。
高杉の他にも周りを惹き付けるカリスマ性をもつ男は他にもいる。
その一人に坂田銀時が入る。死んだ魚のような目をしている男だが時に心に響く言葉を向けてくる。ちゃらんぽらんに見えて実は情に厚い男だと知れば人は知れず彼の周りに集まり何かあれば手を差し伸ばさずにはいられない程に人を惹き付ける。
桂も同様だ。普段はまるで天然のバカだがいざという時は頼りになる頭のキレは銀時や周りが頼る程に素晴らしい。彼に着いて行けば正しいと思わせられる。だから普段バカには関わらないようにしょうと桂を放っておくが桂の周りにも人は絶えない。
坂本もそうだしこの四人が集まると自然と周りもこの四人がいればと心強くなるものだった。けれどやはり土方は他の3人を凄いと思うけれど何故か抗えない引力に引き寄せられ高杉に惹かれた。
そして土方が隣にいることを高杉は快く受け入れた。何も言わない。けれど二人には分かっていた。
言わずとも目の奥を覗けば何を求めているのかお互いに分かった。それはお互いに欲していたから分かることだった。
いつの時代もこの想いが変わることはない。
「…高杉」
優しい表情で見返してくれる高杉を見下ろして土方はふわりと笑った。
ただ傍に居られる事がこんなにも胸を締め付ける程に嬉しいと、素直に思えたのはもう何度目か。
武骨だけれど細くて長い指がそっと頬に添えられるのを目を細めて享受する。その手に手を添えて甘えるようにスリッと目を閉じた。
フッと柔らかな笑みが高杉から聞こえると頬に添えられた手が後頭部に回り引き寄せられるので逆らわず従えば土方は寝転ぶ高杉の上に体を倒した。
土方の方が幾分か身長はあるが高杉の身体は逞しく完成されていて引き締まった筋肉を感じて土方は自分で確かめるように高杉の体にに触れた。
まだ冷たく感じられた風が二人重なった事で別け隔すものがなくなり体温を分け合い寒さが緩和した。
触れ合って戯れる時間が土方は好きだ。離れた距離があとは服だけが隔てるだけで見下ろすと隻眼が見つめ返す。
距離をなくして唇を触れ合わせれば二人の間に笑みが溢れて空気にそっと消える。
飽きることなく顔中に唇を落とせば高杉の手がくしゃりと土方の髪を優しく乱す。
啄むような口付けが次第に激しくなると二人の目の奥に隠しようもない欲望の炎が灯る。
二人はフッと笑い、高杉が土方の背中に手を回すと腹筋だけで起き上がり膝裏に手を添えるとそのまま抱き上げて椅子から立ち上がった。
高杉の首に腕を回して二人は目を合わせると軽く口付けをして寝室へと足を踏み出した。
二人を送り出すように風が吹きカーテンが揺れた。
END
即席だからちょっと自分でも意味わかりませんがただ二人が一緒にいる事がただ幸せ。
土方さんお誕生日おめでとうございます💕