mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆初ムク

−壱話−

 

 

 

いつもは耳に痛いくらいの静寂に包まれた殺風景な景色の部屋が真っ赤に染まっていた。

どこに視線を向けても視界が赤で占められチカチカと目が痛んだ。


壁に背を預けて座っていた体制から立ち上がると瘦せた小さな身体が傾いてふらついた。
寸でのところで踏ん張り倒れずに済めば子供は部屋の外に続く扉に視線を移す。

 

この部屋は静寂に包まれていたが外は騒然としていた。
男の怒鳴る音、硝子や金食器が割れる音、発砲音…この部屋と違って外はたくさんの音で溢れていた。

 

赤と青の異なる色の瞳をもつ子供はこの部屋に向かって来る複数の足音に気付きながらもその場に留まった。
逃げた所で行く当てもない、子供が一人で生きていける訳もなく聡い子供は流されるしかないと達観していた。


子供を守る親はここにはいなかった。

居たけれど、母親はこの部屋を真っ赤に染めては片隅で動かなくなった。

父親は部屋の外だったが、もうダメなのだろう。
子供は自分が一人残されたのだと理解する。


「Ⅰ世、後はここだ」

 

部屋の扉の前で足音が止まり、男の声が聞こえた。
ドアノブが回され部屋の扉が開くと外の光が薄暗い部屋に差し込み真っ赤に染まった部屋の悲惨な光景が露わになる。

 

「こりゃあ…また派手に死んだな」

 

入ってきた一人の男、赤い髪をした顔の右側に刺青を彫った方が部屋の惨状を見て呆れたように零し、顔をしかめた。
すると赤い髪の男の後ろにいたもう一人の青年が前に出て部屋の惨状を見るよりも早く、ただ突っ立っていた子供に近付き床が汚れているにも関わらず膝を付いた。

 

「おい、Ⅰ世!」
「G、子供だ」
「…ったく、お前は…」

 

赤い髪の男、Gは仕方なさそうに溜息をつき淡い金髪の青年、Ⅰ世の背中の前に立った。

いつでも守れるようにだ。

 

Ⅰ世はそんな心配性なGに小さく笑みを浮かべ、何事にも全く興味なさそうに空虚を見つめる子供に顔を向ける。
部屋は真っ赤に染まっており、母親と呼ばれる者は動かないが子供には傷はなかった。

 

傷はなかった…けれど子供は随分と貧弱だった。
余り食べてないのか身体はやせ細っていて触れただけで崩れてしまいそうだった。

けれど一番に目を引いたのが異なる色の瞳だった。
左目は深い海の色を連想させ、右目は血の紅い色に「六」の文字が浮かび上がっていた。


自然に出るものじゃないと、一目で分かった。

左目の周りに薄っすらと手術跡が残っており、Ⅰ世とGは子供が実験に使われたのだと察した。


「…エストラが人を使った実験をしているという話は
本当だったな。まさか自分の娘まで実験台にするとは思わなかったが…どうかしてるぜ…」
「あぁ…こんな小さな子まで犠牲にするなんて許さない…」

 

Ⅰ世は無表情に見つめ返す子供を痛ましげに見つめ、手を伸ばした。
子供は不思議そうに目を瞬かせるとⅠ世の手が優しく頬に触れた事に目を見開いた。

 

「……、」

 

優しく撫でられた事がない子供は暖かい掌の温もりに戸惑い視線を揺らした。
小さく反応を返した事に気付いたⅠ世が子供を見つめれば無表情だった子供が不安そうに逃げたそうにしている。


優しくされた事がなく戸惑っているのだと分かったⅠ世はグッと込上がる感情を抑えて子供に対し微笑む。

 

「大丈夫、俺と行こう」
「……、」 

 

戸惑う子供に肩に掛けていた上着を羽織らせてⅠ世は
子供を優しく抱き上げた。
黙って見ていたGが先導して扉を開き、Ⅰ世は一人残された子供を連れてその部屋を出て後にしたのだった。

子供を連れたⅠ世とGは早々にこの場所から切り上げる。
子供が居たのは普通の長屋の一軒家だった。

一見、ただの家に見えるが近所の人から余り良い噂はなく、不気味な家だと囁かれていた。


それが先日、子供の悲鳴が何回も聞こえた、という連絡があった。
本来なら警察に任せるべきなのだろうけどこの長屋はただの一軒家ではなくエスネという暴力団関係者管理しているのだ。

ただの警察では手は出せないからと街の取り締まりを担うあさり組の一世代の頭だったⅠ世が真相を確かめるべく、ここに訪れた。

 

そして通報があった通り、この一軒家では子供を使った実験が行われていたみたいだった。
一体何の実験かはこれから調べてみないと分からないが実験台となってしまった他の子供たちは既に息がなく手遅れだった。

地下の実験室で無造作に放置された子供らの遺体が15人ほど居りどの子も身元が確認出来ない事からどこからか違法な方法で攫った子だろうと推測されるが、一人だけ別室にいたオッドアイの子供だけがエストラの一人娘だと分かったのは部屋に向かう途中で捕まえたエスネの統率者エストラが狂喜に瞳孔を開き喜々と娘はやはり特別なのだと喚き叫んでいたからだ。

生きている子供はこの子しか居らず、自ずとこの子が娘なのだと分かった。

 

後始末を部下に任せて屋敷を出る途中まで子供は今まで住んでいた屋敷をⅠ世の腕の中で静かに眺めていたが屋敷の壁は血で汚れていたり、エストラの部下が倒れ伏していたりと子供に見せてはいけない光景が広がっていたからⅠ世は子供の頭をそっと自分の首元まで導いた。


子供は大人しく従って顔をⅠ世の首元に埋めて目を閉じるけれど、 Ⅰ世はまだ子供の声を聞いていない事に気付いていた。

 

まだ子供なのにどこか達観している異なる色の目を見てⅠ世は自分の孫を頭に思い浮かべる。

あの子なら奪われたこの子の感情を取り戻してくれるだろうか…。

 

Ⅰ世は腕の中の子供を守るように抱き締めた。

 

 

 

 


**

 

Ⅰ世とGは表に止まってた車に乗ると車は直ぐに出発した。
助手席に座ったGがバックミラー越しに後部座席のⅠ世に視線を送る。

 

「そのガキ、どうすんだ?」
「…俺が引き取ろうと思っている」
「はぁ?何言ってんだお前」


疲れたのかいつの間にか眠ってしまった子供を見下ろしGの問い掛けにⅠ世は子供と対面した時から考えていた事を伝える。


するとやはりGはいい顔をしなかった。

怪訝な顔でⅠ世を睨み付ける。

 

「お前、まさか可哀想なガキがいたら何人も引き取るつもりじゃないだろうな?」

 

やめとけ、そりゃあただの偽善者だ。と遠慮なく切り捨てるGに運転してる部下が上司にそんな事言って良いんですか?!と戦慄いてる事を二人は知る由もない。

 

Ⅰ世はGを一瞥してまた子供に視線を戻す。

 

「そんなつもりはないさ。もし助けた身寄りのない子供を引き取っ ていたら今の家じゃ既に狭いだろうな」

 

Ⅰ世は暗に引き取るのはこの子で最初で最後だと伝えればGは尚更何でその子供なんだと理解出来ないことに口を閉ざす。

黙ってしまったGにⅠ世は口を開いた。

 

「…俺の超直感が’この子を手放すな’と云ってるんだ」

 

視線が合った瞬間にⅠ世は確信した。
この子供は自分に大きな影響を与えてくれる事を。

そして孫の綱吉にも良い影響を与えてくれること直感したのだ。

 

「!…お前の超直感なら、何も問題ねぇな」

 

顔をしかめていたGは超直感と聞くな否や半反対だったのを是と翻した。
Ⅰ世の生まれ持った超直感は一回も外れたことはなくその直感を周りは信じていた。


Gもその一人だ、だからⅠ世の超直感が告げるのであれば子供を引き取る事に異議を唱えるつもりはない。

Gが思うのは親友として、右腕としてⅠ世に危険が
及ばないかどうかだけだ。

 

「ありがとう、G」
「フッ…好きにすりゃいいさ、いつものようにな」

 

屋敷に帰ったらGは子供を引き取る手続きを直ぐ手配してくれるの だろう。
本当に良い親友をもったよ、と感謝するⅠ世は嬉しそうに笑みを浮かべた。


腕の中の子供はやはり栄養失調なのか段々とぐったりしている。

そしてよくよく見たら目の周りだけでなく身体の至る所に縫い目があった。

 

「…娘なのに酷い事をするな…」

 

痛々しい姿に狂気的な笑い声を上げてたエストラを
思い出してⅠ世は子供の頬を撫でるとこの子を必ず守ると固く誓った。 

 

数時間も走れば車は屋敷へと戻った。
門の横に車が停止すれば外にいる部下が後部座席のドアを開けてくれた。
礼を言ってⅠ世は眠る子供を起こさないように注意しながら車を出る。


Gは先に車から出ていて引き取りの手配を部下に指示していた。

自室に移動する間、ボスの戻りに挨拶しにくる部下がたくさん居たがⅠ世の腕の中に眠る子供を見つけると皆がキョトンとして言葉を失っていた。
それでも気付かない奴もいたがそれに対しⅠ世は笑顔で黙らせたのだった。


屋敷の奥の部屋、Ⅰ世の自室に着くと指示した通りに布団が敷いてあった、部下の仕事が早くていつも感心してしまう。
布団に子供をゆっくりと寝かせて布団を肩まで掛けてやればⅠ世はやっと一息入れる。

 

この子が…ここで暮らせるようになれたら良い。
早く声を聴いてみたい。
その声で名前を教えて、たくさん呼んであげたい…。

 

眠る子供の頬に掛かる髪を耳に掛けてやりながらⅠ世は柔らかい眼差しで見下ろし、そう思った 。

 

 

 

◆初ムク

 
   場所は浅利組・離れ。

 


「おや…ジョット。どうしました?」


骸は学校からの帰り、自分の部屋に戻るとそこにはジョットが待っていた。

日が落ちた後ならまだしも、今はまだ夕方。 
相談役として重鎮されてる彼は本家に居ると想定していたからか、日中にジョットが離れに訪れるのは珍しく思えた。

骸は不思議そうに首を傾げてスクールバックを机に置くとジョットの傍まで寄って隣に座った。

 

「何か急ぎのご要件が?」

「いや、急ぎの要件はないよ」

 

肩に凭れる骸の腰を引き寄せてジョットは骸の問い掛けに首を振り、柔らかく微笑む。

ならば一体どうしたんです?と尚も不思議そうな顔をする骸にジョットは顔を寄せて口を開いた。


「…さっき仕事を終わらせて戻る時に車の中で骸を見掛けた。隣に居たのは…羽馬組の息子か?」

 

問い掛けられて骸は目を見開いた。


ジョットは優しく微笑んでいる。

けれど言いようのない威圧感が漂っており骸は汗が滲むのを感じ怒らせる事は何もしていない筈…そう今日の行動を返りみて考えながら骸は頷いた。


「えぇ…羽馬組のディーノです。何度か会合で彼の父と挨拶に来てらっしゃいますが覚えてますか?」

「あぁ、覚えているよ」

 

ジョットは一度挨拶した者の顔は忘れない。
羽馬組とは何度も挨拶しているから既に旧知の仲なのだが、ジョットが何を聞きたいのか骸はいまいち掴めないでいた。


「…そのディーノがどうかしました?」

 

顔を寄せたジョットに反射で背を反らしてた骸は腰を抱き寄せられているから後ろに倒れる心配はないのだが心元なく不安定な姿勢からジョットの背中に腕を回して自分から身を寄せた。

 

傍から見たら抱き合ってるようにしか見えず、かなり密着しているが二人はその事には気にもとめず視線を交わして見つめ合う。

 

「…仲が良さそうだったな」

 

異なる色のオッドアイが大きく見開かれる。

それだけで聡い骸は察してしまった。察して、驚く。

 

まさか。

 

「…ディーノとはXANXUSとスクアーロを通して時折一緒に居るだけです。貴方が思っているような事はありませんよ」

 

嫉妬…。

愛しい男が同年代の男と居るのを見掛けただけで嫉妬してくれた。骸はそれだけで胸がキュンと締め付けられて表情が綻ぶ。

自分はジョットしか見ていないというのに、何を心配しているんです?

 

「ふふ、お前は俺を大人しい男だと思っているのか?好いた女が男と居れば俺だって少しは焦るさ」

 

先程まで滲ませていた威圧感がサッと消え、ジョットはいつものように物腰の柔らかい笑顔を浮かべた。

その表情を見て骸はジョットが少しだけ怒っていた事を知り、くすぐったい気持ちになる。

 

「おやおや…僕は貴方ほどの激しい男は知りませんよ?ずっと、惹かれてやまないのもジョットだけですもの」

 

クフフ、と笑みを零して骸はジョットの頬に指を滑らせるとそっと撫で軽く唇を触れさせた。

離れようとすればジョットが追い掛けて今度は深く唇を合わせる。

 

「んっ…」

「骸…」

 

ゾクリとするジョットの甘い声に骸は体の奥から火種が燃える錯覚が見えた。

自分からその先を求めて骸は両手を伸ばしジョットの首に回して引き寄せた。

 

 

 

END

◆宿虎SS

 

悠仁はただ、見てるしか出来なかった。


いつもなら反射のように体が動くのに今は体の力が抜かれたようにピクリとも動かすことが億劫な程、体が思うようにいかない。

その原因は目の前に佇む一人の男によってもたらされた。

 

両面宿儺。


史上最強の呪いの王に君臨した男だ。

宿儺の視線がつい、と合わさる。
ビクリと体が小さく跳ね上がって震えた。 

 

違う。

 

何で俺は怖がってんだ?

 

そんな筈ない…俺は宿儺なんか怖くない。


そう思う程、体が震えた。
己の体が震えて宿儺の視線から外れたいと萎縮する。
宿儺がスッと足を踏み出して近づいて来た。
ビクッ!とまた肩が跳ね上がり、ガタガタ震える。

 

違う…

 

震えたくないのに、本能的に体が宿儺の存在に恐怖している。

 

「ぁ…っ、や…だ」

 

蒼褪めて等々足に力が入らなくなり、悠仁はその場に崩れた。
座り込みそうになった時、直ぐ傍まで近付いていた宿儺が悠仁を背中を支えた。

 

「拒むか、小僧」
「う…っ…」

 

紅い眼を見たくなくて悠仁は宿儺の胸元に顔を埋めて隠した。
頑なな悠仁に宿儺は眼を細めて笑みを浮かべる。

 

「今更拒んでも既に遅い」

 

言い含ませるように言えば悠仁はイヤイヤと首を左右に振る。
だけど宿儺の腕の中から逃れる事は、出来なかった。


End

◆紅森♀設定(炎炎ノ消防隊)

◆現パロ

新門紅丸×日下部森羅♀


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家がご近所で小さな時から二人は面識があった。(引っ越してきた森羅)
ヒカゲとヒナタの面倒を見ていた事もあり、子供の相手は
苦手じゃない紅丸は森羅の面倒を見ていたこともある。
そして5歳の差がある二人。

紅丸(18)
森羅(13)

 

紅丸は古武術を営む道場(裏では893という噂)の跡取り息子で親は既に他界。
本当の息子じゃないが紅丸の強さ故に引き取られて今に至る。
幼い頃から紅丸が鍛錬する姿を眺めていた森羅は紅丸に憧れる
ようになり、いつの間にか紅丸の事が異性として意識して好きになる。

家の人たちが結婚し、その披露宴で紅丸も結婚するの?と
問いかける。


すると、まぁ…いつかはするだろうな。と返す紅丸。
じゃあその時は俺が結婚してあげる‼と笑顔で言う森羅。

何で上から目線なんだよ…と呆れる紅丸に森羅は紅丸兄ちゃんは強いけど、そんな紅丸兄ちゃんをヒーローの俺が助けるんだ!だって最強だってたまには疲れるでしょう?だから紅丸兄ちゃんが大好きな俺が結婚して癒してあげるの!と伝える。

 

生意気なことを言いやがる…と笑う紅丸だけど「なら森羅は俺の嫁さんだな」と森羅の頭を撫でてやった。
紅丸兄ちゃんのお嫁さん…!!と森羅は目をキラキラと輝かせた。
そしてその日からお嫁さんを意識するようになり、家事とかも率先してやるようになった。

オシャレにも目覚め服とかにも気を遣うようになると周りから
好きな男でも出来たのか?とからかわれると、紅丸兄ちゃんの
お嫁さんだから当然!と何故か得意気にどや顔で返す。

 

それを聞いてざわつく周り。紅…⁈と確認されるも紅丸は否定もせずまぁ…そういう事だ。と固定した。
その時に瞬く間に”森羅は紅丸の嫁”という話が広がった。

 

まだ森羅は子供だけど紅丸は一度交わした約束は違えるな、と教えられていたから森羅が大きくなってもまだ望むならと結婚をすることを前提にしている。

周りには公認となったしこの際、森羅の両親にも挨拶しに海外へ赴き、森羅が知らぬ内に親公認で婚約していた。

この時、紅丸はまだ恋愛感情よりも妹として接してる所があった。

 

 

まだ続きます

◆僕の初恋の人(ボンゴレⅠ世×骸♀)


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軽~い設定です。(※ロリショタ+捏造)

 

六道 骸♀(12才)
隣に住んでいる綱吉(5才)の面倒を見てくれるお姉ちゃんで綱吉のお祖父ちゃんであるジョット(沢田家康 30代)に想いを寄せている。

沢田 綱吉(5才)
甘え坊で天使みたいに可愛らしい笑顔で周りを癒してくれる。まるで大空のよう。隣に住む骸が大好きでいつも遊んでくれる。

沢田 家康(ジョット)
沢田家の大黒柱だけど既に隠居してる。綱吉のお祖父ちゃんで実は過去に骸を助けた人でその時から好意を寄せられるようになった。30代くらい…?周りからよく年齢詐欺って言われている。ヤのつく家業。

 

 

 

 

 

 

毎朝6時になると骸には欠かせない仕事をする為に向かう所がある。

年期が入り木材の匂いが鼻を擽るけども綺麗に保たれている長い廊下を歩き一番奥にある和室へと辿り着く。

他の部屋よりも襖に描かれている絵や和紙の造りからしてその出来は一目瞭然で格別だと分かる。

 

そっと襖を開けると部屋の中央には布団が敷かれていて上下にゆっくり膨らんでる。まだ眠っているようだ。

骸は笑みを零してそっと近付いて膝を付いた。

 

「家康さん、朝ですよ」

 

優しく揺さぶると布団の中からんー…と唸る様なくぐもった声が聞こえ、腕がもそっと出てきた。

どうやら起きてくれたようなので骸は手を引こうとして失敗した。

 

「ひゃっ?!」

 

出てきた手は離れていく骸の手を掴んでそのまま引っ張ったのだ。抵抗もしなかったから骸は引かれるがままに体を前に倒して布団の上へとダイブしてしまった。

顔を上げると琥珀色の瞳が骸を見つめていた。

 

「おはようございます、家康さん。いきなり引っ張るなんて吃驚するじゃないですか」

「あぁ、おはよう骸。離れていくのが惜しくてな。それと俺の事はどう呼べと…?」

「…ジョット」

 

じっと見つめられて骸はこの沢田家の前当主であった沢田家康、基ジョットが望むように名前を呼んだ。

するとジョットは満足そうに、それで良い。と目を細めて笑みを浮かべた。

 

そのまま身を起こすと骸はジョットの膝に乗るような体勢になり降りようとしたがその前に小さな体を抱き締められて叶わなかった。

 

「ちょっ、と…!ジョット、離して下さい」

「何故?」

「何故って…これじゃあ起きれないですよ」

 

愛している貴方にこんな事されたら僕の心臓が持たないです。

胸がドキドキと高鳴り、それをバレないようにするのが大変だ。顔は取り繕えるが心臓までは制御出来ないのだ。

骸は両手でジョットの胸板を押し返して突っぱねてみるが大人と子供、男と女では力の差は歴然でビクともしなかった。

 

「…嫌か?」

「んんっ!」

 

そんな悲しそうな顔をするなんて狡いです…!!

骸はジョットを心から愛している。だからそんな人の悲しい表情が見たい訳じゃないので己のちっぽけな羞恥心などさっさと捨て去る。

 

「嫌な筈ないです…乙女心を察して下さい」

 

ぶすくれた感じで言いながら骸は両腕を伸ばして自分からジョットの首に腕を回し、くっ付いた。

なるほど、乙女心か。覚えおこう、とジョットは納得して頷き骸をぎゅっと抱きしめた。

 

骸のひと仕事である。

 

 

◆勝デク♀(hrak)

※注意⚠

・妊娠ネタからの流産です。

 

 


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泣き疲れて眠ったデクを見下ろし自分よりも小さな手をそっと握ったかっちゃんは、本当は流産してしまって責任を感じているデクの側にいて支えてあげたかったけど自分じゃデクを変えられないと悟ったかっちゃんは病室を出た後ずっと断っていたし行くつもりもなかった海外(アメリカ)からの要請に頷いて逃げる。

そこで自暴自棄になってがむしゃらに敵を半分殺しにして荒れている所をデクが迎えに行くっていう設定までがセット。

自分なら無鉄砲に飛び出すデクを引き止められると自信があったからこそ、今回の事で自信を失くしデクの中で俺は瀬戸際で思い出してくれる程じゃなかったんだな…って無気力になる。

ヒーローだから人を救けるな、とは思わないし当たり前なんだけど今は身篭っている身だし庇う前にちょっとでも俺を思い出せるように愛したつもりだった、でも俺が…愛し足りなかった所為で愛した人との子供を亡くした、迎えに行けば良かった、一人にするんじゃなかった、もっと…ちゃんとやれば…。って自分を責めるかっちゃん。

いつものかっちゃんだったら、クソがっ!!勝手に俺から離れンなや!!って敵顔負けな程に怒るけど今回は身篭っていたから。

自暴自棄になって疲労困憊になっていた所で誰にも言わず海外で活動していたかっちゃんの所に数ヶ月かけて「やっと見つけた…帰ろ?かっちゃん…」って遥々追いかけて来たデク。
だけど俺は日本には帰らねぇ、お前だけ帰れって追い払うかっちゃん。何で…?僕がかっちゃんの言う事聞かなかったから?!って泣きそうになるデク。

でもかっちゃんはそうじゃない、俺じゃあお前を守れねぇって分かった。俺じゃ駄目だったンだよ…そりゃそうだよな、俺はお前を傷付けた事はたくさんあっても、大事にした事は少ねぇ…守れる訳ねぇ、プライドを優先してしまった結果だ。お前は何も悪くねェ…平和の象徴であるヒーローだ、だから人を救ける。お前は何も間違っちゃいない…だから自分を責めるな、本当なら俺が支えなくちゃいけねぇのにな…俺じゃあ駄目だったんだよ。

それを聞いてデク怒る、お互い拗れ過ぎて好き過ぎるし。

背を向けようとするかっちゃんの手を掴み、君が…っ!!簡単に諦めるなよっ!!僕を愛してるンじゃなかったのか?!!って大声を上げて睨み付ける。

するとかっちゃんもテメぇを愛してるから守れねぇ自分にイラついてンだろうが!!?って怒鳴る。

ここで逃げるなんて許さない、僕は悪くない?いや、悪いよ!!庇った人とそのまま横に避ければ良かったのに動かず庇ったから僕達の赤ちゃんを殺してしまったんだよ、他のヒーローを待てば良かったのに、僕はそうしなかった。だから僕が悪くないなんて、そんな事はない…。

いつも君が言っていたよね、僕が自分を顧みない事によって悲しむ人が居るんだと…ホントそうだよ、何で僕分からなかったのかな…あの時は僕だけじゃなかった、愛した君との赤ちゃんをお腹に身篭っていたのにヒーローとしての自分を優先してしまった。ホントごめん…っ、気付くのが今更だよね…こんな大きな代償を払うまで気付けないなんて僕はホントにバカだよ…やっと気付けた。

だから…君まで僕はから消えないでよ…君が居ないと駄目なんだよ僕は…帰ろうよ…かっちゃん…。

涙ながら零すデクにかっちゃんもいつの間にか泣いていた。

離さない、そう言うようにデクはかっちゃんの手を固く握り締めていた。かっちゃんはデクと日本に帰る。

ここまで切ない感じで、流産しちゃったけどそこはご都合主義の個性事故があるので大切なモノを取り戻せる個性に掛かって流産してしまった子は戻ってきます、ハピエンしか認めん!←

 

 

取り敢えずこんな感じの話を昨日妄想してました。

ハピエン厨

◆五悠♀

 

煩わしいあのスポットライトの下から逃げたかった。

何もかも面倒になって、全てを投げ出してただ身一つで遠くを目指した。

 

子供の頃に手を伸ばし憧れていた光景は既に遠い。だけど手が届かなかった訳じゃない。

早くに手が届き過ぎて拍子抜けしてしまったのだ。

 

自分が憧れていた、あの光景はもう…手に入らないのだと痛感してしまい、やるせなさに項垂れたのだ。

 

誰も自分を知らない所で何も考えずに過ごしたかった。

 

 

 

 

 

 

「悟さん~!起きてる?」

 

ぼんやりと居間の天井に出来たシミを寝転がりながら眺めていたここの一軒家の家主である五条は廊下まで響く玄関から自分を呼ぶ幼い声に視線を動かした。

 

「ん~…起きてるよー」

 

ゴロリと寝返りながら返事を返すと途端に廊下をバタバタ走る音が聞こえてきて五条はクスリと笑う。

笑みを零したと同時にスパンッ!と居間の襖が開かれて元気いっぱい!という表現が似合う高校生になったばかりの幼い顔の女の子が仁王立ちで寝転がる五条を見下ろした。

 

「おはよう悟さん!!」

 

太陽にも負けない元気いっぱいなその声に五条は笑顔を返した。

 

「おはよう、悠仁

 

 

五条が寝転んでいた体勢から身を起き上がらせると悠仁はトタトタと五条の前に座って持っていたタオルで汗を流す五条の額や首をとんとんと拭いてやる。

どっちが大人なのか分からない。悠仁は世話を焼くのが結構好きみたいで何かとダラしない五条の身の回りのお世話をするのが楽しいらしい。

 

28歳だが独り身の生活の方が長い五条だって自分の世話や家の事とかも一通り完璧に出来るのだが仙台に来てからは何一つやる気が起きず縁側でただぼーっと過ごしてたある日に悠仁が現れて、その日を境に何故か世話を焼いてくれている。

軽いと言われる五条だがこれでも人との付き合い方は上手くない。いや、上手い方なのだが相手の方が異様に高い五条のテンションと返されない会話のキャッチボールに疲れて五条を苦手意識し、どうも敬遠されがちなのだ。

 

それで困る事はないから五条は気にした事なかった。

けど、悠仁はそんな五条のテンションについていける珍しい子だった。