◆五悠
※書きたい所だけ書いてるので物語としてはかなり不足してます。
※封印されていた先生という設定
※原作軸ではないです多分←
「せ、んせ…っ」
ポタっ
少年を強く抱き締めるその腕は、寂しくて凍えていた少年に温もりを与えてくれた。
*
夜の静寂に包まれた寂れた教会を月明かりが照らす。
辺りには獣の気配もなくまるで世界から切り離されたかのような異質な空気がそこにはあった。
いつから此処にあったのか、小さな教会は既に崩れていて辛うじて十字架があることで此処が嘗ては人々が訪れ神に祈りを捧げていたのだと伺える。
入口の扉はなく、勝手に中に入ることが出来る。
中に進めば朽ち果てた外見とは違い、中はそこまで壊れていなかった。不思議と椅子やオルガンは綺麗なままで磨けばまだ使えそうな感じだった。
ステンドグラスを通して月の光が中を虹色に明るく照らし、神秘的な光景へと魅せていた。
奥の聖卓の上には大きな黒い木箱があった。
近付くとそれはただの木箱ではなく、棺桶だ。
つい最近置いたかのように棺桶は汚れも埃を被っておらずツルりと輝いている。
やっと、見付けた……。
表面を撫でて頬を寄せる。
それは冷たくて温もりはなく暖かくもなかったが構わなかった。
顔を上げて今にも涙が溢れそうになったがグッと堪えて蓋に手を掛けてずらすように開けた。
ズズズッと引き摺るような音を立てながら蓋を開けると棺桶の中には、青年が横たわっていた。
黒の衣服を身に纏い、雪をも騙す白い肌と白髪が一層目を引く。青年の顔は幼くみえ、しかし目を奪われる程…とても美しかった。
ポタ…
堪えていた涙が我慢出来ず頬を伝って零れ、青年の頬に落ちた。
少年はずっと捜していたのだ。
何十年も前から。ずっと。
やっと、やっと見付けた。
触れた頬は冷たく、あの頃のように温もりを分けてはくれなかったが少年はそれでも頬を合わせて自分の温もりを分け与えてるようにその体を抱き締めた。
涙が止まらず己と青年の顔を濡らす。
その涙が青年の頬を伝って僅かに薄い唇を濡らした。
青年を抱き締める少年の肩は震え、嗚咽を上げる。
少年は顔を伏せていたから気付かなかった。
涙が青年の唇を濡らしたその時、閉じていた青年の瞼がピクリと僅かに動いた事を。
そして、震える肩を誰も居ない筈なのに労わるように、撫でられた…。
少年は目を大きく見開いてバッと顔を上げると、目前にはうっすらと冬空を閉じ込めた双眸が開き、少年を見上げていた。
「ゆ……じ…」
何年も出されなかった声は掠れて聞き取りずらかったけれど、それでも充分だった。
その目に写してくれた、それだけで嬉しかった。
「五、条先生ぇ…!!!」
顔をくしゃくしゃにして少年…悠仁は五条の首に齧り付いてうわぁーんと声を上げて泣いた。
(君の涙で目覚めた)