◆五悠♀
「先生…?」
「ん…どうしたの、悠仁」
五条の背中に張り付いていた悠仁がおずおずと控えめに五条を呼ぶ。
溜まりに溜まっていた報告書を放置し過ぎて学長からお叱りを受けた五条は渋々と嫌々しながら報告書を書き上げていた最中だったのだ。
部屋で1人で黙々と仕上げるのが退屈で滅入りそうだと思った五条が悠仁を呼んで傍に侍らせていた。可愛い恋人が居るのだから報告書なんてさっさと終わらせて2人でイチャイチャしょう!と五条の欲にまみれた作戦だ。
彼これ2時間くらい、報告書を書き上げていたのだがその間悠仁は大人しく五条の傍にちょこんと座り、時折邪魔にならない程度に頭を肩に凭れさせたり、じぃーっと五条の横顔を見つめて嬉しそうに微笑んだりとそれはもう1つ1つの行動が五条を悶えさせていたがそれを表に出さないように必死に耐えていたから悠仁はその事を知る由もない。
五条の部屋には何もないがリビングに行けば恋愛、バトル、ファンタジー、ホラー、韓流、と色んなジャンルのDVDがあり悠仁の退屈凌ぎにはなるから好きに観てて良いよ?と連れてきた時に言っておいたが悠仁は可愛らしい笑顔で先生の傍に居る!と言ってくれたのだ。
悠仁マジで天使過ぎるだろ…。思わず天を仰ぐのに五条にせんせ?と首を傾げた悠仁に何でもない、と返したのはつい数時間前だ。
やっぱり退屈だったかな?
「暇疲れしちゃった?」
ペンを置いて悠仁に体を向ければ悠仁は顔を左右に振って退屈ではないのだと否定した。
「えーとね…?先生の横顔見てたら構って欲しくなっちゃって…」
お仕事、まだ終わらない?と遠慮がちに上目遣いに構って欲しいと強請る悠仁に五条の中で何かが弾けた。
報告書なんてクソ喰らえ。天使に可愛くお強請りされたらそりゃもう大事な恋人を優先するに決まってるでしょ!!?
「うん、今終わった」
バサッと報告書を後ろに放り投げれば床にまだ白いままの紙がそこかしこに散らばるのに目を点とさせてえ?と驚く悠仁に五条は両手を広げておいで?と誘った。
床に散らばる紙と五条をオロオロと交互に見つめた悠仁だったけれど、大好きな人が両手を広げて待ってくれている。その腕の中には幸福感と安心感を悠仁にいっぱい与えてくれると知っている悠仁は一瞬躊躇して視線を彷徨わせたがええい!と直ぐに腕の中へ飛び込んだ。
腕の中の悠仁をギューっと強く抱き締める五条の表情は柔らかく仄かに太陽の香りがする髪に鼻を埋めさせて幸せそうに笑みを浮かべている。
仕事を途中で止めさせてしまった事に罪悪感を感じていた悠仁も五条の力強い腕に抱かれて次第に罪悪感よりも幸せ、それだけが頭を埋め尽くしていた。
2人は幸福に満ちていた。
END