mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆五悠♀

 

 

朝から悠仁の元気がない。

 

五条はとぼとぼ恵と野薔薇の後ろを歩く悠仁の背中を見つめて首を傾げた。

夜分に終わらせた任務を片付けてたった今呪術高専に戻って来た五条は昨日までは元気に手合わせして貰っていいー?!って飛び跳ねていた悠仁がしょんぼりしているのに疑問に思う。

一体何があったのだろうか。

 

可愛い生徒が、況してやそれが恋人ならば気にならない訳がない。

五条は悠仁の背後に近付きポンっと肩に手を置いて声を掛けた。

 

悠仁

「ッ…?!!」

 

手を置いた瞬間こっちが驚くくらいに悠仁は肩を飛び跳ねさせてバッと振り返った。いつもだったら『うわっ!五条先生かー!!』って眩しい笑顔を見せるのに怯えた表情を見せたのはこれまでにない反応だった。

 

五条が驚いていると悠仁は五条だと気付き目を見開いてあからさまにホッと安堵の息を吐くと泣きそうな顔であ、五条先生か…とポツリと零したのだ。

 

一体誰だと思ったというのか。

 

「おはよう、悠仁

 

これは只事ではないな、と確信した五条は安心させるようにニコりと笑って柔らかい頬を撫でる。

先を歩いていた伏黒と野薔薇がどうした?とこっちを見ているのに五条が先に教室行ってて!そんで僕が行くまで自習ねと伝えれば五条と悠仁の仲を知ってる二人は悠仁が落ち込んでるのを気付いていてずっと気に掛けていたから冷めた視線を寄越したものの仕方なさそうに背を向けた。

 

その間、悠仁は何も言わず五条の腕に抱かれていた。

 

 

 

 

 

廊下で突っ立ってたら落ち着いて話も出来ないからと二人は移動して以前、悠仁を匿うのに使用されていた地下部屋に来ていた。

悠仁が過ごしていた時のままの状態の部屋に着くなり五条は後ろから悠仁を抱き締めてソファーに座った。

顔が見えないのが嫌だったのか五条の膝に横向きに座って安定した姿勢を取るとそのまま五条の胸元に表情を隠してしまった。

 

悠仁?」

 

ぽんぽん…と背中をリズムよくあやすように撫でながら元気ないね、どうしたの?と聞けばキュッと指が白くなる程に服を握り締められる。

宿儺に何かされたか…?と悠仁の裡に居る宿儺に疑いを掛けたが裡の宿儺は濡れ衣だ、と顔を顰めているだろう。

 

五条がどうやって宿儺を懲らしめようか、とまだ宿儺が原因だと決まっていないにも関わらず頭の中で色々と泣かす方法を張り巡らさせていると口を閉ざしていた悠仁がやっと重い口を開いた。

 

 

「……にあった、」

「ん?」

 

服に声が吸い取られくぐもって聞き取れなかった五条はもう一度言って?と今度は聞き漏らすまいと悠仁に顔を近付けて耳を済ませれば耳に入ったその言葉に次の瞬間にはピシリッ!と固まった。

 

 

「電車で、痴漢にあった…」

 

何ですって??

思わず五条は険しい表情を浮かべて殺気を滲ませてしまった。

ビクリと身体を震わす悠仁にゴメンね、と安心させて殺気を抑えると僕の悠仁を穢した不届き者は一体誰だ、どう殺してやろうか?七海と協力してソイツを急いで特定して抹消してやる、と五条は憤る。

 

「…そっか、怖かったね」

 

守ってあげられなくてゴメンね悠仁

ギュッと抱き締めて謝れば悠仁は力無く頭を左右に振った。いつもそうだ、悠仁に危険が迫っている肝心な時に僕はそこに居なくて守れず後々から聞かされるんだ。

 

大切なのに、守れず何が教師だ。何が恋人だ。

 

「…せんせ、は何も悪くないよ。人いっぱいでぎゅうぎゅうだったから俺も何も出来なかったのが悪いし…」

 

いつもだったら速攻捕まえたンだけど、満員電車の状況じゃ出来なかったし駅に着いて扉が開いたら人に押し流されて誰だが判定出来なかった…。とポツリポツリと話すのを五条は背中を撫でながら黙って聞いていた。

 

「…別に触られた訳じゃないし、股間を押し付けられただけなんだけどさ…」

 

五条先生が好きな今、先生じゃない事が凄く気持ち悪かった。

 

落ち込んだその声音に五条は心を痛めると同時に己を求めた悠仁歓喜の余り体が底からゾクリと震えた。

 

「……僕が、嫌な記憶を上書きしてあげる」

 

一刻も可愛い恋人に嫌な思いをさせた愚か者を抹消したかったけれど今は頭の隅に追いやり五条は抱き締めていた悠仁の柔らかい太股に手を滑らせて内側に向かってつぅー…っとスカートの中にへ指を這わせた。

 

ひくり、と震えた悠仁は潤んだ瞳で五条を見上げたが抵抗することなく、逆に求めるように身を寄せた。

 

その無言の合意に五条は知らず知らず口許に笑みを浮かべさせる。

五条が顔を寄せれば悠仁も顔を上げる、そして、触れるだけのキスをした。

 

 

 

END