mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆五悠♀(R18)

 

 

 

 

辺りが夜の暗闇に、静寂に包まれた6階建ての廃ビルの屋上に黒いスカートがヒラリと翻った。

辺りは静寂ばかりで風の音もなく暗いまま。しかしその中をただ、一人の少女が降り立っていた。

真っ黒な制服の中で紅いフードが一際目立っていた。

 

下の階に繋がる扉へ進もうとスカートから覗く白く健康的な足を動かすとそれに伴ってヒラリゆらりスカートが揺らめく。

扉に手を掛けようとした次の瞬間、少女はバッと後方に飛んで少し身を屈め足腰に力を入れると攻撃の体勢に入った。

 

言葉にすらなってない声を発しながら屋上の扉から出てきたのはこの世のモノとは思えない異形の異物の存在。

腕が不揃いに5つ、眼が体の至る所にギョロギョロと不確定に視線をさ迷わせていて普通の人間ならばこんな"モノ"を視たら恐怖の余り気絶するか逃げ叫ぶのだろう。化け物と。

けれど少女の仕事はこれを祓う事だ。だからその異形・呪いが動き出す前に目を大きく開き一瞬の動きすら見逃さないと顔を上げ、ググッと足に力を籠め走り出すと助走の助けもあって高く飛び上がる。

 

呪いの5つの腕がグニャリと伸び上がり細い棒状になって少女を捕らえらんとするが逆にその腕をグッと掴み取り1つに纏めると動きを封じた。

封じた腕を捕まえたままに呪いの真上から重力に従ってその巨体を踏み潰し、パッと封じた腕を離すと少女の細い掌がぐっと握り拳を作りボウッと透明なオーラのようなものが浮かぶとその拳で呪いを殴り飛ばした。

 

少女のパンチとは思えない程凄まじい威力で呪いは水上タンクの壁に勢いよくぶつかり、破裂音と共に血を撒き散らしながらピクリとも動かなくなって、息絶えた。

 

暫く起き上がらない事を確認してから少女は呪いを一瞥して背を向けると扉に向かい、ドアノブを捻って階段に足を下ろすと降ってそのまま二度と振り返らなかった。

 

階段を降りながら制服のポケットから携帯端末を取り出し何回かスクロールすると目的の人の番号を見つけ、タップして耳に当てる。

数回コールが鳴り続くと直ぐに繋がった。

 

「もしもし、伊地知さん?うん、終わったよー!うん、怪我どこもない。はーい、了解!うん、ありがと。じゃね、伊地知さんもお疲れさん!」

 

簡単に任務の報告をすれば少女…虎杖悠仁は携帯の向こうで無事で良かった、とホッとしてるであろう補助監督の伊地知に笑みを浮かべると労りの言葉を投げて通話を切り携帯を仕舞った。

 

廃ビルから出ると本来ならばこのまま近場で待機してるであろう伊地知の所まで行って呪術高専まで送ってもらうのが常なのだが今日は任務後の一時の休息を許されたのだ。

宿儺の器の身でありながら監視も付けずに一人で出歩くのは滅多にないがここは高専からそう遠くもないから今回限りで許された。

 

帳の結界が解けて静寂な夜から白昼賑やかな日常に戻っていくのを背後にしながら悠仁は軽い足取りで街へと足を向けた。

 

日曜日なのもあって周りには人でごった返している。見渡す限り人ばかりで高専の人の少なさに慣れてつつあった悠仁にはこんなにもたくさんの人が集まっているのを見るのは久しい事だった。

自分と同じように制服で集まってる女子グループが各々手に持っているタピオカジュースを美味しそう、俺も買おうかな、とワクワクしながらよくTVにも紹介されてる歓楽街通りを歩く。

先程見掛けた女子グループが持ってたタピオカジュースの売店を見付けると丁度空いてる時なのか余り人は並んでなくてラッキー!と思いながら愛想の良いお姉さんに出迎えられてミルクティーを頼んだ。

 

代金を払いジュースが出来上がるのを待ってる間、次は何を見ようかとリサーチして周りを見るとやはり流行りの店が多いからか女の子が多い。あとは外国人がたくさん居る。

 

外国の人は皆何で背の高い人が多いンだろ…?と頭1つ分高くてどこから見ても目立つ外国人を感心しながら見送ってると出来上がったのか、お待たせしました!ミルクティーのタピオカジュースになります!と笑顔を渡され同じく笑顔で礼を言いながら受け取った。

大して疲れてはいなかったのだけれど冷たいものを口に含んでサッパリとした感覚を味わった。

うん、美味しい。

 

文句なしの大変満足出来る味で悠仁はニコニコと次の所へ歩いた。特に目的もなく訪れたから宛はなく、ぶらりとするだけだ。気になった店を覗いて一通り見てからまた次へと、その繰り返しを何度かして悠仁は一時の一人の休息を楽しむ。

これと云ってパーカーが凄く好きって訳じゃないけど気が付いたらいつもパーカーばかり着てるからパーカーを見掛けると手に取っておぉ、格好いい…!!とつい欲しくなったが任務になると汚れたり、破られたりしてしまうからと悠仁は直ぐ諦めた。

 

あのジャージとか、釘崎カワイイって言いそう~。あ、あれ伏黒の玉犬に絶対似合うじゃん!買ってって着けて貰えないかなぁ?いや、伏黒怒りそう…。

 

同級生の事を思い浮かべながら色々物色した悠仁はお土産を各々に買って店を出た。

途中で小腹が空いて肉とキャベツたっぷりのケバブを買い食いしてソースが染み込んだ肉に目をキラキラさせてこれ美味しいねおじさん!と無邪気な笑顔を向けられてお店のおじさんは嬉しそうに返した。

 

粗方気になるお店は見て満足した悠仁は夕方になったしそろそろ帰ろう、と包み紙をごみ箱に捨てて踵を返そうとしたその時、ドンッと腰元に衝撃を感じて動きを止めた。

 

「うぉっ…?!」

 

慌てて下を見ると小さな男の子が尻餅を着いていた。どうやら走ってる所をぶつかったらしい。涙ぐんで今にも泣きそうな男の子の前にしゃがみ脇下に手を差し入れ持ち上げて立たせる。

 

「坊主気付いてあげられなくてごめんな~。怪我はない?大丈夫?」

 

短パンのお尻に付いてしまった汚れをパンパンッと払って悠仁が笑い掛けると男の子は涙ぐんでいた目元を擦りうん、と頷いた。

 

「…オレの方こそごめんなさい、余所見してた」

「うん、えらい!」

 

恥ずかしそうに謝る子供に悠仁はちゃんと謝れた事にニッと笑うとその頭をえらいえらい!と撫でた。

すると男の子も楽しそうに笑うのに悠仁はやっぱり子供って素直だよなぁと思う。

しゃがみ込んでいた体勢から立ち上がると丁度向こう側から子供の母親であろう女性が慌てたように名前を呼びながら此方に向かっていた。

子供が気付くとパッと嬉しそうに駆け出す。

しかし数歩駆け出した所で立ち止まって悠仁の方を振り返るのに悠仁はん?と首を傾げる。

 

「男のお姉ちゃんバイバイー!!」

 

大きく手を降り身を翻して駆けていくのに一瞬固まり目を見開いたが悠仁はその小さな背中に「もう余所見するンじゃねーぞ!」と声を掛けた。

 

何事もなく無事お母さんの所まで辿り着いたのを見届けて子供が悠仁の方を指差しながら何事か話すとお母さんが小さく会釈をしたので悠仁も軽く会釈を返した。

人の間に消えていくのを見送り手を振る子供に手を振り返して悠仁も背を向けた。

 

「男のお姉ちゃん…ってどっちだ??」

 

それは男なのか?女なのか?たまに子供はよく分からない事を言うな。てかそんなに女に見えないかなー?と悠仁は子供の言葉を思い返していた。

信号待ちをしてる間に自分の体を見下ろすがまぁ…顔から下を見れば女か。巨乳とまではいかないが普通よりも大きい胸だ。動きやすいようにゆったりとした制服の上からでもくびれているのが分かり、足はスラリとしてるけど鍛えてあるからがっしりしている。身長も高い悠仁は良い身体をしている。

問題はこの髪型かな…でも髪を長くすると呪いと戦う時に邪魔くさいンだよなぁ…。

 

長髪になった己が戦う姿を思い画いてうん、邪魔だな、長髪なんてナシだわ。と思っていた所に下の方から声が掛かる。

 

「オイ、小娘」

 

悠仁は下を方…自分の左手の掌を見下ろすとそこには口が浮かび上がっていた。

 

両面宿儺。

 

悠仁の体の中に封じられている宿儺が言の葉を交わすのに悠仁の体の一部を借りて現れるのだ。悠仁は周りに不自然に思われない程度に髪をかき上げるフリをして掌を耳元に持っていく。

 

「こんな人の多い所で声を掛けるなよ。どうしたの宿儺」

 

聞こえないぐらいの声量で出てきた理由を問い掛けると宿儺は馬鹿が、気付け。と毒付いた。ああん?と喧嘩腰になる悠仁だったが宿儺が口を開き続けたので黙った。

 

「オマエ、付けられてるぞ」

「姉ちゃん一人?」

 

宿儺の言葉にえ?と溢すのと声を掛けられたのに果たしてどっちが早かったか今や知る術もない。

悠仁は後ろを振り返るとそこにはまるで絵に描いたようなチンピラが3人。

何回も髪を染めたからか傷んでくすんだ金髪と至る所にピアスを開けたのとこれ見よがしに腕に入れ墨を彫った奴。

宿儺はいつの間にか消えていたが裡でジッと男たちの動向を探っている気配が伝わった。

 

「うん、一人だけど何か用?」

 

チンピラ3人の目的は分かっている。

同級生には馬鹿だの鈍いだのと言われてる悠仁だけど男たちの目の奥にある下卑た思いにはこれでも気付いてるし分かっている。

ニヤニヤと品定めするかのように下から上を見られて悠仁は体を向き変えた。無感情に男たちに用件は?と返す。

 

「一人ならこれから俺達と楽しい所に行こうぜ、絶対に損させないよ?」

 

ピアスだらけの男がニコリと人の良さそうな笑みを浮かべるが見るからして胡散臭いのが分かる。援護するように他の二人も勿論金の心配はいらねぇ、女に金出させるなんて男じゃねーからな!姉ちゃんは楽しめば良いと宣うのに悠仁は顔には出さず内心呆れていた。

こんなあからさまな誘い方に今まで乗ってきた子がいるのだろうか、分かりやす過ぎて魂胆が見え見えだ。

 

勿論、悠仁は断る。

だけれどこの雰囲気からしてしつこそうだし、宿儺も"付けていた"と言っていた。これは人の居ない所を狙ってあわよくばと思って絶対に着いてきそうだ。

腕っぷしなら悠仁が優位に立っている。男が3人掛かろうが悠仁の敵ではないのだ。過信で言ってる訳でもなく事実そうなのだからしょうがない。コンクリートの壁を素手で割れる悠仁に普通並みの人が敵う訳もない。

ここで断ってあしらっても良いけれど周りには人の目があり騒ぎになるような事は避けたかった。

秘匿処刑される身でありながら自由に動き回れるのも呪術高専に身を置いているおかげなのに騒ぎなんか起こして迷惑を掛けるのは悠仁の得策ではない。

 

悠仁は男達が返答を待つ数秒でもっとも迅速で最善な策を考えて人気のない所で軽くさくっと眠らせれば良いかな、宿儺もそれで問題ないよね?と裡に居る宿儺に問い掛けると好きにしろ、と面倒くさそうに返答が返り悠仁はくすりと笑った。

 

事案してたような表情から笑顔に変わった悠仁の表情にこれは良い返事を貰えそうだと男たちがニコリと厭らしい笑みを笑顔の下に隠す。

それに気付きながら知らないフリして悠仁も男たちに笑みを返した。

 

良いよ、と悠仁が口を開き掛けたその時…ぬっと悠仁の背後から腕が伸び出て来て悠仁の動きを止めた。

腕を認識するまで全く気配に気付かなかった悠仁は臨戦体勢に入ろうと身を固くしたが首に掛かる腕と背中が凭れたであろう人物の甘い香りがふわっと鼻を擽って、それがよく知っていた…慣れ親しんだ者のもので意識するよりも先に体が無意識に力を抜いていた。

 

「僕の彼女に何か用かな?」

 

悠仁の背後から気配もなく現れたのは白髪以外全身真っ黒な身長190㎝以上もあるであろう大男。悠仁を大事そうに腕の中に囲って男たちを見下ろして薄い唇に笑みを浮かべるが目元を黒いマスクで隠してるからその表情は窺い知れずそれが反って男の得体の知れない恐ろしさを際立たせていた。

急に現れた黒い大男に見下ろされて余りの迫力に悠仁に声を掛けた3人は蛇に睨まれた蛙のように固まり口までも動かないようでピクリとも身動き出来ていない。

 

ん?と促すように男が首を傾げるとやっと金縛りから解けたように男達は青ざめた顔で勢いよく首を左右に振り何でもないです僕達はこれで!と角度45°お辞儀すると脱兎の如く背中を見せて逃げ去っていく。

車並みに足の速い悠仁はその逃げ足の速さにおぉ、意外と速いじゃんと場違いにも感心すらしていた。

 

小さくなった男達の背中を既に興味は失せたとばかりに男は視線をフイと逸らし腕の中に大人しくされるがままの悠仁を見下ろした。

視線に気付いて悠仁は顔を上げるとニッと笑い掛けた。

 

「五条先生!」

 

男、五条はたった先程まで危機が迫っていたとは思えない程明るく笑い掛けてくる悠仁に苦笑して囲っていた腕をほどいて頭をポンポンと撫でてやる。

 

「ん。悠仁今着いて行こうとしたでしょ?」

 

頭を撫でた手をそのまま下ろし体の横に大人しくしている手を握り締めて足を動かした。

悠仁は繋がれた手が指と指を絡めた所見恋人繋ぎという事に気付いたが特に何も指摘せずに自分からも手を握り返すと五条の後に続いた。

歓楽街通りに戻り賑わう中をゆったり歩いてるともっとくっつきたくて悠仁は体を五条にピタリと寄せて腕にぎゅっとしがみつく。

すると自然と悠仁の発達途中の豊満な胸がむぎゅっっと五条の腕に押し当てられてて内心五条はニヤニヤが止まらない。

けれどそれを表に出す程思春期真っ只中の子供じゃないからなに知らぬを貫き通している。

 

「うん、だってあの人達しつこそうだったし人が居ない所で撒いとけば良いかなって」

 

それに五条ははぁ~あ…と額に手を置いて溜め息を吐いた。

確かに悠仁は強いしあの男たちにも劣らないだろうけどもしその連れてかれた場所に呪いが潜んでたら?優しい悠仁は自分をどうにかしょうと企んでいた男たちでも助けようとするのだろう。刺激しないように動けない悠仁は好き勝手されるかもしれない。

想像なんてしたくないから思うだけで留めた五条はしかしそれでも怒りで周りを破壊させてしまうかもしれない。

 

「だからって着いて行っちゃダメでしょ?知らない人には着いて行かない、小学生でも分かる事だよ。僕を余り心配させないで」

 

五条は分かった?と横に並ぶ悠仁を見下ろして返事を求めたが悠仁は眉根を下げて口をモゴモゴさせでも、と五条を見上げる。

 

「…あそこで断ってたら騒ぎになると思ったんだ。俺が騒ぎ起こしたら一番に先生に迷惑掛かるじゃん…」

 

しゅん…と悠仁に犬の耳が生えてたらぺちゃんこに伏せっていた事だろう。

その可愛さにぐっと奥歯を噛み締めて五条は僕の恋人可愛いーッッ!!!と叫び出したくなったのを堪えた。

繋いでる手にぐっと力を入れて着いて行っちゃダメ、でも騒ぎも起こしたくない。じゃあどうすれば…?とぐるぐる考え込んで落ち込む悠仁に五条は軽い口調で切り出した。

 

「じゃあね、また今回のようにナンパされたら僕を呼びなさい」

「…え?」

 

キョトンと悠仁は目を見開いた。

逃げられないけど電話を操作出来ない訳じゃないでしょ?直ぐに僕を呼んで。と言うが五条は気軽に呼べるような人じゃない。

五条にしか対処できない任務は多く、今だって任務から帰って来たばかりなのだろう。僅かに血の匂いを漂わせている忙しい五条にそんな事で呼べる筈もない。

悠仁が困った顔で逡巡していると五条が更に続けた。

 

「躊躇する事ない。僕は悠仁の恋人でもあり保護者だよ?仕事の事を気にしてるのならそんなの僕にとっては朝飯前の事だからさっさと片付けて悠仁の元にトぶよ」

 

だから迷わずに僕を呼ぶこと。

再度分かった?と念を押し返事を促すと今度はおずおずとだが悠仁は頷き小さく笑って分かった、と返事を返した。

それに満足して五条も微笑む。

 

「ねぇ先生」

「うん?」

「どこ向かってるの?」

 

五条が歩いた時から方向が呪術高専じゃない事は分かっていた。体を前のめりにして五条を横から見上げると五条は悠仁はどこに行きたい?と行き先を悠仁に委ねた。

んー?と楽しそうに事案する悠仁を横目に見つつ五条は目に入った可愛らしい名前のお店を指差した。

 

悠仁、あそこ入る?確かあそこのカフェ前に悠仁がTVで見て入ってみたいって言ってたでしょ」

 

どれどれ?とお店を見た悠仁は瞬時に目を輝かせた。どうやら気になっていたお店で間違いないらしくて繋がれた手とは反対の手で袖を掴まれた。

 

「良いの先生?!」

「勿論良いよ」

 

可愛い恋人のお願いならいくらでも聞いちゃうよ、と目隠しで見えないがパチンッとウィンクしたであろう五条に悠仁は嬉しさをそのままに五条に抱き着いた。

 

「わーい!先生大好きっ!」

「僕も悠仁が好きだよ~!」

 

ウフフ、アハハと二人の間をハートと花が飛び交った。先生早く!早く入ろ!と悠仁に手を引かれながら五条は嬉しそうにはしゃぐ悠仁に早めに仕事終わらせてきて良かった、と満足そうに愛し子を見つめ、後に続いて店の中に入った。

 

 

 

**

 

「ただいまー!!」

 

呪術高専の寮に帰り付いた悠仁は元気いっぱいに休憩スペースに入った。

あの後、お店入った五条と悠仁は二人席のテーブルに向い合わせで腰を落ち着け、TVで特集されていた可愛いと評判の苺のパンケーキとボリュームたっぷりの抹茶パフェを頼んだ。

 

可愛いと評判なだけあって悠仁は楽しそうに写真を1枚ずつ撮ってからナイフとフォークを手に取り美味しそうにパンケーキを頬張った。口に入れた瞬間に口の中にメープルシロップと苺の酸味と甘味が効いたパンケーキの生地の甘さが広がってもの凄く美味しい!とまだ咀嚼しているから目線で五条に報告していた。

 

それに五条は片手で頬杖をしながらもう片方で抹茶アイスをスプーンで掬い取って口に入れ良かったねーと微笑み掛ける。

半分食べた所で徐に悠仁が一口サイズを切り取りフォークに乗せると五条の口元に差し出す。

 

はい、先生!あーん?と笑顔のオマケ付きときた。オマケではないな、メインだった。

と五条は目まぐるしく頭と体を駆け巡る欲望と奮闘しながら差し出されたパンケーキをパクっと食べた。

 

なるほど、悠仁が笑顔になるのも分かるね、美味しい。と甘党の五条もパンケーキにご満悦だ。美味しい?と首を傾げて問い掛けてくる悠仁にうん、美味しいよ。と返すとえへへ良かった!とまるで自分の事のように笑うものだから五条はもう堪らない。

お返しにと五条の抹茶パフェも一口掬って悠仁に差し出すと悠仁は躊躇いなくパクっ!と口に入れた。そしてまた美味しい!!と目を輝かせるのだ。それだけで五条は世界一幸せな気持ちになる。

 

恥ずかしがる事もなく女性向けのカフェでカップルで訪れ女の子にとっては憧れでも男にとっては周りの目線もあって試練だろうと云える"はい、あーん"と食べさせ合いっこする強者の二人は周りの視線を奪っていたのだけれど他人の目線を気にしない二人は何事もなく何回かあーん、と楽しそうにイチャつき食べ終えると勘定を済ませて店を出て行った。

二人が消えたお店の中では店員も含め客達がざわめいていたが五条と悠仁がそれを知る由もなかった。

 

お店を出た二人は既に暗いこともあって高専に帰宅したがカフェでデザートを食べただけというちょっとしたデートでも悠仁は嬉しそうに五条先生ありがとう、と見上げてくるので五条はまた出掛けよう、と固く決意する。

そして高専に帰って来た頃には時計の針は9時を指していて同級生たちも夕飯を済ませていた頃だった。

 

皆で使う寮の休憩スペースに入るとソファには伏黒と釘崎が寛いでいた。

寛いでいたといっても伏黒は勉強をしていたのか教科書とノートを広げていて釘崎はそれにたまにちょっかいを出してるらしかった。

ヨッ!と手を上げる悠仁に二人も手を上げて挨拶を返す。

その後ろで五条も居るが二人はいつもの冷たい態度であ、今日はこっち居るんですね?と返し五条はもー仕方ないな、と肩をくすめただけだった。

 

 

「アンタ買い物に出掛けてたの?」

「…任務じゃなかったのか」

 

釘崎が悠仁が両手に持ってる複数の紙袋を見て首を傾げるのに伏黒が確か任務だった筈だと返すのに悠仁は紙袋の中をあさり出した。

探してる目当ての物を見付けると袋から取り出しジャジャーン!とセルフで効果音を言いながら不思議そうに眺めていた二人に差し出した。

 

「はい!二人にお土産っ!」

 

伏黒と釘崎が悠仁が差し出した両手に視線を落とすと伏黒の前には玉犬を思い浮かべたのだろう、1つのチェーンに繋がったデフォルメデザインの白と黒の犬の小さいぬいぐるみのキーホルダー。

そして釘崎の前には赤とピンク色のグラデーションがかかっている大きめのハートのピアスだった。可愛いものと目立つものが好きな釘崎に似合うだろうと一目見て直ぐに買うと決めていた。

 

二人は黙って悠仁の手から各々のお土産を受け取り示し合わせたかのように視線を合わせた。

 

「ありがとう虎杖、このピアス可愛いわ」

「…サンキュな」

 

悠仁の頭を褒めるようにわしゃわしゃと撫でる二人に悠仁はわわ、二人ともくすぐったいって!と楽しそうに笑っている。

悠仁に甘いと自覚してる二人は手に持っているものをずっと大切にするだろう。

 

釘崎が耳に当てて悠仁にどー?似合う?と聞くと悠仁は頷き、うん!思った通り凄く似合ってるよ!と眩しいくらいの笑顔で返すのに釘崎も嬉しそうに笑った。

伏黒は貰ったキーホルダーを大切にポケットに入れたが部屋に戻ったら携帯に着けようと考えていた。

 

3人のその様子を後ろの壁で眺めていた五条はうん、青春だね!先生は大変満足です!と微笑ましく眺めていた。

お土産を渡した後は少しの間だけ五条も交えて四人は今日の出来事の報告に課題の成果、明日の議題にちょくちょく世間話を交ぜながら談話して遅くなった事もあり各自部屋に戻って休むこととなった。

 

「おやすみ、虎杖、伏黒」

「おぅ」

「おやすみー!また明日な!」

 

欠伸を噛み殺して先に戻っていく釘崎の背中を見送って悠仁も立ち上がった。

伏黒も教科書やノートをまとめると立ち上がり戻っていく。手を振って見送りお土産が入ってた空の紙袋を手に片付けようと悠仁は踵を返す。

 

悠仁

 

ごみ箱に紙袋を小さくまとめて捨てた所でずっと黙って悠仁の様子を見ていた五条が悠仁を呼び寄せた。

首を傾げながら先生なぁに?とトタトタ近付くと五条が身を屈めて悠仁の耳元に口を寄せた。

ふっと耳に吐息が掛かってピクリと肩をくすめた悠仁に笑みを浮かべて五条は秘め事を紡ぐように囁いた。

 

「部屋に戻ったらお風呂に入ってから僕の部屋に来な」

 

その言葉の意味を理解して悠仁は僅かに頬を赤らめた。屈めた身を戻して五条がニコッと見下ろすと悠仁は何も言わずに小さく頷いた。

悠仁の頬をするりと撫でてから五条は悠仁の横を通り抜け休憩スペースを出て行った。

残された悠仁は暫し五条が出て行った後をボーっと見つめていたが赤くなって熱くなった頬を両手で挟み込み、ヤバい…五条先生やっぱりカッコイイ…と照れくさそうにポツリと溢すのであった。

 

 

部屋に戻った悠仁は荷物を机の上に置いてから制服の上着を脱いだ。

今日の任務は三級程で悠仁には難なく終わらせる事が出来、服も破れてないし大して汚れてもいなかった。燃えるゴミに出さずに済みそうだと安心して悠仁はタンクトップだけの姿になると制服の埃を軽く払ってハンガーに掛けてからお風呂場に向かった。

 

タンクトップとスカート、下着を脱ぎ篭に入れると浴室に入りコックを捻り水の温度を調整して一日の汚れを熱いシャワーで洗い流す。

頭を洗って体を隅々まで念入りに洗う。この後先生の所に行くのだし…綺麗にしとかないと…と頭を掠めた所で後で訪れるであろう甘い夜にボッ!と赤くなり声にならない叫び声を上げて壁に額を押し付けた。

 

既に先生とは何回も夜を共に過ごしてきた。

目隠しを下ろした顔だって、無機質な淡い瞳の奥が感情に寄って色んな色に変わるのも知っている。幼く見える顔が夜伽になると顔に影を落とし雄の顔になっていく様も知った。

それなのに胸をキュッと締め付けるトキメキはいつまで経っても止められないし慣れる気がしない。普段は表に出さないようにしてるけど一人になってしまえば五条への好きが溢れて止まらなくなる。

本当は今日も声を掛けられた時だって男達を見下ろしただけで追っ払ったのには凄くキュンと来たしカッコ良かった。

だけどそれを口にしてしまえば公共の場でありながら頬を染めて我慢出来ず五条をずっと見つめていただろう。

 

「小娘、感情が乱れおって五月蝿いぞ」

 

はぁ…熱い吐息を吐くとシャワーに打たれていた悠仁の掌にまたしても突如、宿儺が現れた。

 

「…すくなぁ…」

 

苛ついたような宿儺の声音にも悠仁は怖がる訳もなく甘ったれた声で名前を呼ぶ。

すっかり甘えきった悠仁の声にはぁああ…と重く長い溜め息を吐いた宿儺は落ち着け、と感情が高ぶった悠仁を宥める。

 

あの唯我独尊の呪いの王が、宥める。

己以外どうでもよく女や子供であろうと鏖殺だと豪語するあの宿儺がだ。その様子を他の呪術師が見たら仰天する事だろう。

初めて宿儺と対話した時だって押し殺されて身体を乗っ取られたかもしれない緊迫した中だったし心臓は抉られ、生得領域で面と向かって会話出来たと思えばあっさり敗けて"縛り"の賭けで殺された事もあった。

悠仁は既に何回も宿儺によって殺されていた。

 

それなのに宿儺は悠仁に甘くなった。

悠仁も宿儺にどうでも良いことでも話し掛けているし最初の頃のように二人の間には殺伐とした空気は最早ない。

 

「宿儺ぁ…どうしょ…心臓が凄くドキドキしてて…死にそうだよぉ…」

 

壁に凭れて掌に頬を寄せる。

その頬は赤く染まっていて色付いた唇から吐き出さられる吐息は熱を孕んでいて甘い。潤んだ目を伏せるとまつ毛が健気にふるふると震えていて宿儺の他に誰かその場に居たとしたら艶のある悠仁のその姿にゴクリと生唾を飲み込んだ事だろう。

色気も何もないこの小娘にオンナの顔をさせるとは…あの呪術師やるな、と少なからず五条に感心しながら裡から悠仁のその様子を眺める。

 

「何回もまぐわっておる癖に何を今更…」

 

呆れた、と震えて小さくなる悠仁にいい加減慣れろ、感情が高ぶる度に五月蝿くて落ち着いて眠れも出来なんだ、と続けるのに悠仁は唇を尖らせてそこに宿儺は居ないのに視線を逸らした。

 

「うぅっ、だって…好きなんだもん…何回ヤっても慣れないし恥ずかしい…」

「だからと云って何時までそうしているつもりだ。あの呪術師が待っているのであろう?」

 

此処でのんびりして居って良いのか、と宿儺が完全に座り込んで立てた膝に顔を埋める悠仁を諭すように声を掛けるとハッと我に返って悠仁が勢いよく顔を上げた。

 

「あっ!そうだった!どれくらい経った?!!」

 

慌てたように立ち上がる悠仁に先程まで愁いを漂わせ色香を放っていたというのにこの変わり身の早さ…ほんに飽きん奴だ。ヤレヤレ…と肩をくすめる宿儺はバタバタと動き回る悠仁を再度落ち着かせようと口を開く。

 

「慌てるな慌てるな。そう騒々しいと滑って転ぶぞ。鼻っ柱が赤くなってるのを見られたいか」

 

宿儺の言葉に悠仁はうっ…と呻き動きを緩めて言われた通り慌てずゆっくりとコックを捻ってシャワーを止めた。

こういう時は素直に言う事を聞くのだから愛くるしいものよ。

クツリと嗤う宿儺に悠仁は失敗を見られて照れくさそうに笑い徐に掌を額にすり寄せるとホッと安堵して息を吐く。

 

「…ありがと、宿儺」

 

宿儺が居るから俺、落ち着いて先生の所に向かえるよ…と小さく溢す悠仁に宿儺は一瞬沈黙したが間を置いてもう落ち着いたのか?と静かに問い掛けた。

 

「うん」

「ならばオレはもう眠る」

「…うん、おやすみ宿儺」

 

額に軽く触れるような感覚を感じ、掌を下ろすとスゥ…と消えていく宿儺に悠仁は優しい笑みを返した。

そして目を閉じ、ゆっくり深呼吸をしてから悠仁は目を開くと両頬をバシッと叩いて気合いを入れ浴室を後にした。

 

黒のキャミソールと短パンに着替え、その上にフード付きのパーカーを羽織ると悠仁はその身だけで部屋を出て五条の部屋に向かった。

廊下を進む足取りは軽く宿儺と話してる内に気持ちが落ち着いたお陰だ。寝静まった辺りはシーンとしてて呪いとかと相対して生活していない一般の人だったら不気味に思っていただろう。

五条の部屋の前に辿り着くと控えめにノックをする。すると間を置かずに五条の入っておいで、という少しくぐもった声が返ってきて悠仁はドアノブを回して中に身を滑らせた。

 

五条も既に風呂に入り終わったのか黒いのは変わらないがラフな格好と目隠しを外してサングラスをかけてベッドに腰を掛けていた。

いつもの格好もカッコイイがこのラフな格好も凄く好きで悠仁はドキッ…と胸が高鳴る。

 

「少し遅いと思ってたから寝ちゃったかと思ったよ」

 

悠仁を見つめながら腕を広げるのに迷うことなくその腕に飛び込んで悠仁は自分を抱き締める五条の首元にすり…と頬を擦り付けた。

口元に弧を描きながら五条は今にもゴロゴロと鳴きそうな悠仁の喉元を指の腹で擽り撫で上げると悠仁は治まった筈の胸の動悸がまた高鳴り始まるのを感じながら口を開く。

 

「眠ってないよ…先生の事考えてたらドキドキが止まらなくて…時間忘れちゃってた」

 

気持ち良さそうに五条を見上げるのに五条はへぇ…?と一層笑みを浮かべる。可愛いことを言われて喜ばない男はどこにも居ないでしょ。

どれどれ、と下着の着けてないキャミソールの中に手を突っ込んで柔らかい胸に腕を挟まれながら心臓の辺りに手を押し当てると確かに心臓がいつもよりも早く運動していた。

 

「っ、先生ぇ…」

 

いきなり手を突っ込まれて悠仁はきゅっと身を震わせ目を強く瞑り心臓がドキドキしてるのを本人に知られて羞恥にぶわっと耳や項まで赤く染め上げた。

 

まるで初めてヤるみたいな初々しいその反応に五条が堪らず舌舐めずりをする。

好きな子は大切にしたい、と常日頃から思ってるのだけれどふとした瞬間にもっと啼かせたくなるという思いが頭を過っていく。

それも悠仁が涙を浮かべた目で無垢に見上げてくるものだからひどく嗜虐心を煽られてその感情を押さえ付けるのが大変な程だ。

 

心臓に押し当てていた手を動かし五条の大きな手をもってしても持て余る程の立派な胸を下から掬うように持ち上げる。そのまま強弱をつけて揉むと悠仁は小さく声を上げて顔を背けた。

 

「ゆーじ」

 

ふるふる震えながらも体の力を抜いて完全に五条に全てを預けきってる悠仁に己でも自覚する程の甘い声で呼び掛けた。

するとゆっくりと目を開けた悠仁が五条を見上げ、手を伸ばしてサングラスを外すと顔を寄せてくる。五条も悠仁の方に顔を寄せて美味しそうに色付いた唇に口付けた。最初は悠仁が好きな触れるだけの口付けを繰り返し次いで唇の割れ目を舌でゆっくりなぞると心得たとばかりにおずおずと口が開らかれた。

うっそりと五条は笑みを浮かべると慎ましいキスから凶暴そのものの勢いで喰らい尽くさんばかりに噛みついた。

 

「んぅっ!」

 

肩を跳ね上がらせた悠仁の体を拘束し逃げられないように後頭部に手を回して口腔に舌を滑らせ奥で縮こまる舌を誘い出す。

腰に甘い痺れが走り、その手が首筋から耳へと近づけば、身体が勝手に跳ね上がり悠仁はきゅっと五条にしがみついた。

 

誘い出されるがままに恐る恐る舌を差し出せば絡め捕られ甘噛みされてはぢゅうっと吸われる。ゾクゾクと快感が背中を走り抜け頭が朦朧として悠仁は五条から与えられ食われるがままになっていた。

思う存分悠仁の口腔を舐め回した五条はやっと離れると肩で息をして目元を赤く染め飲み切れなかった唾液を溢しながら見上げてくる悠仁の口周りを舐めて綺麗にしてあげて目尻の下の傷に口付けた。

 

「ごじょ…せんせ…」

「ふふ、悠仁可愛い…」

 

普段の悠仁は可愛いと言われてもキョトンと首を傾げてそぉ?と返すのだけれど五条とヤる時に可愛いと言うと打って変わって恥ずかしそうに目を伏せ顔を隠すように俯く。

それがまた可愛くて五条は再度可愛い、と耳元で囁くとびくっと震えて悠仁は泣きそうな顔でダメ、と五条を睨む。

 

そんな迫力の欠けた顔で睨まれても怖くもなく痛くも痒くもないし余計に酷く虐めたくなるだけなんだけどな?と五条は悠仁の唇の淵を親指でなぞる。

 

「何がダメなの?」

「…可愛いって言っちゃダメ」

 

可笑しい事を言う。事実可愛いのに言っては駄目だというのに五条は片眉を上げると禁止!と赤く染まった顔で未だに睨み付けてくる悠仁に訊いた。

 

「可愛いのに言っちゃダメなんだ?」

「…先生に言われると、恥ずかしいの」

 

また可愛いと言った!ムッとしながら恥ずかしそうに目を逸らす悠仁に五条は辛坊堪らず抱き締めるとそのままベッドに押し倒した。驚いたように目を見開く悠仁のパーカーと短パンを脱がせ、自分も上着を脱ぐ。

悠仁の上に乗り上げ覆い被さると期待に満ちた目が見上げてきて伸ばされた手が五条の頬を優しく包んだ。

その暖かい手に心地良さそうにすり寄り掌にキスを落とすとふわり、と悠仁が柔らかく微笑んだ。

 

「…悠仁

 

いい?と言葉なく隠しもしない熱く欲望の孕んだ目に見つめられて悠仁は求められる喜びに身を震わせた。

 

「いいよ…」

 

そっと、秘密を教えるような掠れた声音で悠仁はどうぞと自らを五条に差し出した。

許可が下りた途端に五条は悠仁の唇に噛み付いて先程とは比べ物にならない程に息を吸わせる間も与えずに情熱的に蹂躙した。

歯列をなぞりくちゅくちゅっと艶かしい音を立てて舌を擦られる。そして舌を絡めきゅーっと痛い程強く吸い上げられて全身に痺れが走り体に力が抜けて魂まで持っていかれそうな激しい口付けに悠仁は頭の芯まで蕩けそうになる。

 

数えきれないくらい、たくさんキスをしてきたのに五条から与えられる口付けは体に力が入らなくなってしまう程に気持ち良い。

況してや今まで恋愛とは無縁の生活を送っていた悠仁には軽く触れるだけのキスですら未経験のものだったから直ぐにふにゃけてしまう。

キャミソールを大きくたくしあげるとぷるんっと五条の目下で乳房が揺れた。

 

「あっ、先生…」

 

声を上げる悠仁を見下ろしながら両手をまろやかな乳房に伸ばしてまさぐって揉みしだくと悠仁はびくんと震え、声を出すのが恥ずかしかったのか口を手で押さえた。

それを今は許す、と五条はそのまま構って欲しそうに佇むピンク色の突起を指で摘まんだ。

 

「あぁっ、ん、んっ」

 

痺れるような甘い疼きに声を我慢出来なかった悠仁は身悶えて指の隙間から声を上げた。仰け反って身動ぎすると胸が目の前に迫ってそれがまるで自ら食べて欲しいと言ってるようで五条は身を屈めて刺激されすっかり立ち上がったピンク色の乳首を口に含んだ。

ちゅっと啄むようにそこを吸うとひっ、と悠仁は矯声を上げて胸に埋まる五条の頭を抱えた。

ぎゅっと頭を抱き締められて頬を柔らかい乳房が包んだが五条は構わずねっとりと舌先で悠仁の乳首を舐め、時折甘噛みして引っ張ったりすると堪らないと悠仁は声を上げて身体を震わす。

びくびく震える悠仁の乳首から口を離すとそこは赤く熟れていて唾液に濡れて美味しそうだ。たわわな左右の乳房を両手で寄せると五条は白い肌にちゅっちゅっと音を立てて口付けを落とし点々と紅い花弁を散らす。

 

「はぁっ…せんせ…痕そんなに付けちゃ…」

 

紅い痕が散らばった胸の間から五条を見下ろすと五条は楽しそうに含んだ笑みを浮かべて悠仁の目を見上げる。

 

「誰も見ないんだから別に良いでしょ」

 

それとも誰かにこの身体を見せるつもりなの?と乳首を柔らかく噛むとびりっと雷に打たれたような愉悦が走り喘いで悠仁はびくんと腰を跳ねさせた。

 

「ひぅ…み、見せないよ…先生以外、誰にもっ…」

「うん、誰かに見せたら……分かるよね?」

 

艶かしい笑みを浮かべた五条だったけれどその醸し出す空気が一瞬で変わり、ピリッと殺気が肌を刺してその先を言わなかった事でその誰かを五条が本気で殺りかねない、と悠仁は確信してそのような事は絶対に起きないと首を左右に振った。

 

「僕から離れないでね悠仁

 

じゃないと僕何を仕出かすか分からないから、にこりと笑って五条は悠仁の唇に軽く口付けた。

揶揄ではなくそれが本気の言葉である事に気付いてる悠仁はうん、と頷き五条の首に腕を回して自分から口付けを求めた。

応えてやりながら五条は悠仁のたくしあげられたままだったキャミソールを脱がすのに一瞬だけ口を離したが直ぐさま脱がし再度唇を触れ合わせる。

ショーツのみとなった悠仁のくびれのラインを触れるか触れないかの瀬戸際で指先を掠めると甘い声が上がる。

 

そのまま手を下に這わせるとショーツに触れて指を滑らせ布越しにくちゅり、と粘着質な音と共に五条の指を湿らせた。

あ、と悲鳴を上げた悠仁が条件反射で太ももをぎゅうっと閉じるのだけど五条の手を挟み込んで余計敏感なそこに押し付ける形となって羞恥のあまり耳朶まで真っ赤に染めて声にならない叫びを上げた。

 

自ら墓穴を掘る悠仁にクツクツ笑うと五条は手を挟まれたままそこをそろりと撫で上げた。

 

「やぁ、あっ!」  

 

ざわっと戦慄が背中を走って悠仁は仰け反る。ぐっと体に力が入り次いで力が抜けて太ももの拘束が弛むと五条はショーツの隙間から指を潜り込ませて直に濡れそぼった秘部を撫でた。

敏感な所に直に与えられた快感に悠仁は悶えて生理的な涙を浮かべて五条に縋る。

 

「あ、あっ、あ…ごじょう、せんせぇ…っ」

悠仁のここ、もうこんなにトロトロ…」

 

嬉しそうに五条の指がくちゅりと淫らな音を立てて悠仁の中へと潜り込せる。

この音聴こえる?とわざと悠仁に聴かせるようにくちゅぐちゅっ、と大きく音を響かせながら指を3本に増やし掻き回して奥へと進ませると快感と羞恥が折り重なってぽろぽろと涙を流して悠仁は喘ぎ身体を震わす。

 

「やぁっ!やだ、音ッ…や、あぁ、んんッ」

 

頭を左右に振って悶える悠仁のその様子にうっとりと熱い視線で見つめながら五条は息を吐く。その額には汗が滲んでいて汗が頬を伝い、顎先で留まるとポタッと悠仁の頬に落ちた。

悦楽で目の前が霞む中、頬に落ちた水滴に悠仁が視線を上げて五条を見つめると愉しそうに淫らな音をまるで言葉責めのように悠仁に聴かせていたのにその顔に笑みはなく、影を落としたその表情に悠仁はドキッと胸を衝かれて息を呑む。

 

目を大きく見開いて五条のその顔に目が離せなかった。薄い色素の瞳の奥が濃く色付き、色を変えて悠仁を捕らえて離さない。

そして目を細めて悠仁を見つめながら、微笑んだ。

悠仁は泣きそうになった。何故か分からなかったけど胸が切なくなって痛い程に締め付けられて顔が泣きそうに歪んだ。

 

五条がそんな悠仁にどうしたの?と優しい声音で囁くのにもう我慢出来ず悠仁は強く目を瞑ると震える口を開いた。

 

「……ぃ、」

「え?」

 

余りにも小さ過ぎて聞き取れなかった五条が聞き返すと顔を赤く染めて悠仁が目を開け切なさを滲ませた潤んだ瞳で真っ直ぐ五条をみつめながら今度はハッキリと声を出した。

 

「…今すぐ、先生がほしい…」

 

五条は軽く目を見開いて悠仁を見下ろした。

思い詰めたように愁いを帯びたその表情にどうしたのだと問い掛けるよりも早く来て、と両手を伸ばした悠仁の方が早かった。

 

「ーーー…」

 

何も言わず五条は秘部から指を抜き、その刺激だけで身体を震わす悠仁を一瞥してからぐっしょり濡れて既に役に立っていないショーツをくたりと力の抜けた足から抜き去り己もスエットを脱ぐと充分に勃ち上がり濡れそぼった自身を足を開かせた悠仁のそこに当てがった。

 

熱く固いものが押し当てられて期待に震える悠仁が五条の背中に腕を回し五条は悠仁の唇に噛み付いた。そして口付けしたままぐい、と花びらを押し開き突き上げながら悠仁の中に捩じ込まれる熱杭。

 

「ん、んっ、んぅ…っ」

 

口付けされたまま五条の太く固くて熱いものが中を進むのに悠仁はくぐもった矯声を上げながら背中に回していた手に力を入れた。

トロリと密が溢れて固い屹立をもっと奥へと呑み込もうと襞が蠢き五条を包む。

 

「ひぁ、あ…っ…あっ」

「…悠仁

「ご、じょう…せんせ」

 

唇を離し至近距離で見つめ合い、掠れた声で五条が悠仁を呼ぶと点滅する視界で悠仁はきゅっと五条の背中に爪を立てて同じように呼んだ。

熱く熟した内壁を、熱杭が抉る。まだ挿入しただけなのに既に悠仁の四肢はガクガク震えていて、それでも五条を離すまいとギリギリで理性を保っていた。

けれどそれもここまででこりっ、と奥にある部分を擦り上げられ、目を見開いてその刺激に指先にまで痺れを生み全身が痙攣すると固く強張った。

 

「あ、あ、あっ…!!」

 

五条がそれに気付いてチカチカと点滅する視界の中で悠仁が五条の口元が弧を描くを見て待ってと口を開く前に大きく内壁を擦り上げられてその先端が先程の突起に当たる。

 

「やぁぁああっ!あ!や、っ!」

 

悠仁の悲鳴が五条の部屋に響いた。

一気に引き抜かれ、じゅくっと音を立てて思いきり穿たれ、擦り立てられて突き刺され何度も感じる所を激しく抉り潰される。

その度に悠仁は恥ずかしいと思う間もなく無我夢中で五条に縋り付きながら声を張り上げた。

 

「好きだよ、悠仁…」

 

身悶える悠仁をキツい程に抱き締め攻め立てながら耳朶をかじり愛を囁くと悠仁の中がキュンッと締まり五条自身を締め付ける。

くっ…とキツい締め付けに耐え五条は小さく声を溢して笑うとまた好きだよ、と今度は首筋に唇を押し付けながら言えばまたキュンと締め付けられる。

 

悠仁ッ、好きだよ?」

 

抱き締めたまま額同士をくっつけ飽きる事なく好意を伝えると悠仁は止めどなく生理的に流れる涙をはらはらと溢しながらおれもすき、ごじょうせんせいすき、と舌っ足らずに好きと必死に返した。

 

それに嬉しそうに五条は微笑むと悠仁の体を強く抱き締め、ギリギリまで引き抜くと勢いよく中を突き上げた。

悠仁は背を仰け反らせたが強く抱き締められて身動き出来ず襲い来る快感を逃せずその身に受け止めて痙攣するが五条は止まらず二、三度、激しく突き立てた。

 

「せ、…せぇ…!っあ、も、…イっ…あ、ぁんっ…」

「うん」

 

激しく敏感な奥の突起を何度も何度も抉り擦られて蓄積された愉悦が爆発して絶頂に押し上げられた悠仁はびくびくっと体を跳ね上がらせてきゅうっと足の指先を丸めた。

今度は我慢せず身震いした五条は悠仁の最奥に熱を吐き出した。

 

「ーーーあ、っ…あ!!!!!」

 

それは火傷しそうな程に熱く、悠仁は確かに内側から五条に焼かれた。

けれどそれは蕩けそうな甘い愉悦を孕んでいて悠仁は頭から爪先まで感じる幸福に目をゆっくり閉じた。

 

 

 

 

***

 

「ぅ、ん…」

 

悠仁は鼻を擽る美味しそうな匂いにもぞもぞ身を動かすと毛布の中から這い出て目を開けた。

パシパシする目を手で軽く擦ってから完全とまではいかないが覚醒すると隣に五条の姿はなく、美味しそうな匂いの正体はどうやら五条が朝食を作ってくれているらしい。

 

美味しそうな匂いで目が覚めるのって凄く幸せだなぁ…とボウヤリとベッドにぺたりと座り込んだまま惚けてると扉が開いて五条が入ってきた。

 

悠仁起きた?」

「ん…おはよ、せんせ」

 

未だ毛布にくるまったまま座り込んでボウヤリしながらもちゃんと朝の挨拶をする悠仁に五条は笑みを溢すと近付いて身を屈め悠仁の額にキスをした。

 

「おはよう悠仁

 

くすぐったそうに、ふにゃりと笑顔を見せる悠仁が可愛くてしょうがない五条はぎゅうと自分よりも細い体を抱き締めた。嬉しそうに笑うその表情がもう堪らない、とばかりに体を震わす。

せんせ?と不思議そうに見上げてくるのに五条は何でもないと首を振ると朝から下半身が元気にならないように身を離した。

 

「おいで、朝食にしょう」

「うん」

 

掌を差し伸べる五条の手に掌を乗せて悠仁はやっとベッドから降りて離れた。毛布を肩から落とし昨夜着ていたキャミソールを着てる事から昨夜落ちた後に五条が着替えさせてくれたのだろう。

しかしキャミソールから覗く胸の谷間や首筋、悠仁から見えない背中には紅い痕が散らばっていて五条の悠仁に対する愛情と独占欲が相見える

これ、ジャージに着替える時絶対に見えるよなぁ…とちょっと気にしてる悠仁を見て五条はニヤニヤしているから完全な確信犯だがそれに悠仁が気付く事はない。

 

テーブルに着くとその上には立派な和食が並んでいた。美味しそう!と目をキラキラさせた悠仁が早速席に着くと五条も席に着く。

そして二人揃って手を合わせ、いただきます!と声を合わせる。それだけで二人はふふ、と微笑み合い箸を持って食べ始めた。

 

食べ盛りの悠仁はパッと美味しい!と勢いよくご飯を掻き込む。昨日激しく動いた事もあって気付かなかっただけでお腹は空腹を訴えていたようだった。

幸せそうに五条の手料理を食べる悠仁に向かい側に座る五条がサングラス越しに愛しそうに悠仁を見つめる。

 

朝食を終えると悠仁が今日も美味しいご飯を作ってくれたからお皿は俺が洗うね!と天真爛漫な眩しい笑顔で言うので五条はお礼を言って悠仁の横でカフェオレとココアを作りTVの前にあるソフィアに座ってテーブルに置いた。

水の流れる音が止まるとニュースを流し見してた五条の後ろから悠仁が手を伸ばして首元に抱き付く。

 

「先生、終わったよ!」

「ありがと、悠仁

 

どういたしまして!と微笑む悠仁に五条は僕の天使可愛いな、と思いながら隣をぽんぽんっと叩き隣に座るよう悠仁を促した。

行儀は悪いけどこのまま背凭れを越えちゃおうかな、とふと悠仁が思ったその時、あ!と思い出したのだ。

 

悠仁?」

「五条先生!ちょっと待ってて!」

 

急に大声を出す悠仁に五条が不思議そうに肩越しに振り返るとその悠仁は直ぐに戻るから!と身を翻して寝室の方に走っていく。

首を傾げる五条だったが悠仁は言葉通り直ぐに戻ってきた。しかしその手には掌ぐらいの大きさの茶色い紙袋があった。

昨夜は身一つで来ていたのでどうやらそれはパーカーのポケットに入れていたらしい。悠仁は五条の隣に座るとテープで留められた所を剥がし紙袋を開けて手を突っ込み中のものを取り出した。

何なんだ?と思っている五条に実は…と悠仁が口を開いた。

 

「昨日のお土産ね、伏黒や釘崎のだけじゃなく先生の分も買ってたんだよね」

 

はいこれ!と手渡され五条は受け取って見た。それはドッグタグみたいな細長くて平べったい一見シンプルなキーホルダーだったけど裏返し見てみると下の部分に、そこには"虎"の一文字が彫られ器用にも小さな虎の絵が描かれていた。

 

悠仁を見返すと照れくさそうに笑い紙袋にまだ入ってたのかそれを取り出し摘まんで見せた。五条に手渡したものと同じものだけど悠仁が裏返し五条に見せるように近付けると五条の方にある"虎"の文字とは違い、悠仁の方には"五"と彫られてあった。

文字違いのペアルックのキーホルダーだ。

 

何も知らない人が見たら何も思うことはないのだろうが二人を知っている者はその文字がお互いを示すものであると直ぐに分かるだろう。柄にもなく女子高生っぽい事をしちゃった、と悠仁は溢す。

 

「五条先生…付けてくれる?」

 

黙ったままなのが子供っぽいと思われたと悠仁が不安そうに上目遣いで五条を見つめると五条は掌にある宝物を壊さないように気を付けながらぐっと握り締め、ズイッと悠仁の方に顔を近付けた。

急に迫られて背中を仰け反らせた悠仁は片手で体を支えてぱちくり、と目を瞬かせて五条を見上げる。

 

悠仁

「う、うん?」

 

真顔な五条にどしたの?先生、と戸惑う声を上げる悠仁に五条は頭を過った言葉をそのまま口にした。

 

「結婚しょう」

「…へっ?」

 

突拍子もない五条の言葉に悠仁は目を開いた。しかし待てど暮らせど冗談だよ、と五条はからかわず返事を待って何も言わない事からえ、本気なんだ?と固まった。

 

いつになく真剣な五条のその様子に次第に頬を赤くさせながら悠仁はきゅっと唇を引き結び五条を見つめ…花が綻ぶように笑った。

 

 

 

END

 


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