mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆いつだってその手は(高土)

※3年Z組兄弟パロ

いつもの如く土方さんが高杉を大好き過ぎる

 

 

 

銀魂高等学校の3年Z組ーー…

教室の中はいつもと変わらぬ賑やかな光景が広がっていた。

 

グループを作って喋ってる子達もいればリコーダーを利用してチャンバラごっこしてる生徒もいる。高校生にもなってチャンバラごっことかって言う奴もいるがこの3年Z組の生徒達の頭の中は緩いから年は関係ないといっていい。

そんな騒がしくも比較的いつもよりも平和な教室の中を風紀員副委員長の土方は騒々しい周りを意にも返さず後ろの席でそろばんの教科書を開いて読み込んでる兄である高杉の所へ向かった。

 

「晋助、」

 

声を掛けると高杉は教科書から目を離すと弟の土方へ視線を向ける。

視線が交わると土方は僅かに笑みを溢し高杉に今夜は遅くなるのかと問い掛けた。

以前に神威が襲来した時から兄弟だと周りに知られてしまった時から土方は周りの目を気にする事なく遠慮せず高杉に声を掛け、共に帰るがあった。

 

しかし土方は剣道部に身を置いてる為、放課後になると体育館に居るのが殆どのため帰宅部の高杉とは毎日帰る事は敵わない。

だから高杉と帰れるのは剣道部が休みの時だけだが今日がその剣道部の休みだったのだ。高杉は気紛れな性分だからいつの間にか消えて先に帰ったクセに何をしてたのか、帰ってくるのが深夜遅くだ。

 

こうして聞いておかないとのらりくらりとされてしまうので教室に居る今がチャンスとばかりに土方は聞いたのだ。

帰る場所は同じだから別に一緒に帰る必要はないのだけれど1週間の内5日間は学校で顔を合わせるもお互い周りに仲間がいるから大して話せないし…長く一緒に居たいのが土方の気持ちだった。

 

まさか自分でも自覚する程のブラコンだったとは夢にも思わなかった土方だ。

 

「部活休みなのか」

 

土方が問い掛けた真意を瞬時に理解した高杉が返すと土方は頷いた。

すると高杉は目を細めて和らげるとそうか、一緒に帰るぞ、と口許に笑みを浮かべた。

 

いつも酷薄な笑みを浮かべてる高杉だが家族である土方には親愛の証といえば良いのか、向けてくる笑みが柔らかく暖かい。

 

見つめられたら隻眼の翡翠の目の前では嘘等通用せず全てを暴かれたような心地になる程に清みきってる高杉の目を含めその相貌は綺麗だ。

目付きの鋭さや酷薄な笑みを浮かべる薄い口許は畏怖を覚えさせられるけれどよくよく見ると高杉は美人と言われても可笑しくない程に目を奪われる。

 

それは土方も例外ではなく兄でもあるがその柔らかい顔に目を奪われるしドキリッと胸が高鳴り心臓がきゅーっとなり切なくなる。

改めて自分は兄が酷く大好きなのだと改めさせられる。

 

ほわほわっと高杉と土方の周りに花や蝶が舞う勢いで和んでいたらそんな二人をいつから見ていたのか、沖田が疑問を口にした。

 

「二人は最初からそんなに仲が気持ち悪ィ程だったんですかィ?」

 

気持ち悪いってなんだ、と土方が沖田を睨むけど二人があれこれと下らない言い合いをする事はいつもの事だから険悪な雰囲気はない。

 

しかし周りも鬼と恐れられるが優等生とも言える土方と銀魂高校最凶の不良というレッテルを貼られてる高杉が仲睦まじくしてる所を見てると沖田と同じ事を思っていたのか遠目にこちらを眺めていた。

 

その視線が煩わしくてチッと舌打ちする土方だっが律儀な性分の土方は違うと否定した。

それに沖田が不思議そうに目を瞬かせた。

 

そう、土方は最初から高杉が大好きだった訳ではない。高杉と土方は腹違いの兄弟だった訳だから産まれた時から一緒だった訳じゃなく、一緒に暮らし始めたのも高校上がって直ぐの頃だ。

 

初めて顔を合わせたのもその時だ。

まだ思春期の時期を抜け切れてなかった土方はいきなり『はい、お前のお兄ちゃんだよ』と言われても両手を上げて満面の笑みでわーい!お兄ちゃん!!ってなつく筈もないだろう。

 

自分のテリトリーに無遠慮に他人が入り込もうとするのが一番苦手な土方は急に現れた『兄』という存在をそれはもう訝しんだし無意識の内に拒否をしていただろう。

 

土方は朝練や放課後の部活で朝早いし帰りも遅い。高杉はいつも遅刻してるのか土方が朝起きる時はまだ眠っていたし帰りは土方がぐっすり眠っている深夜遅くで同じ家に居ても顔を合わせる事もなかったし付かず離れずな距離だった。

土方は自分が高杉を『兄』と認めず苦手としてるように高杉も自分を『弟』として認めてないだろうとずっと思っていたがある日を境にそれは違うと考えるようになった。

 

ある日、いつものように高杉と顔を合わせる事もなく1日を終えようとしてたが今日の部活に力を入れすぎて激しい疲労が反って土方の目を冴えさせた。

丁度明日は日曜日で部活は休みだから夜更かししても問題ないのだが規則正しい習慣が乱れる事を許せない土方は早く眠りたいとベッドに横たわり頑張って意識を沈めようと奮闘していた。

そんな時に下の階からガチャっと玄関の開く音が聞こえ土方はびくり、と肩を揺らした。

高杉が帰って来たようだった。時計の針は深夜の2時を指していて土方はこんな遅くまで遊び歩いてる高杉に顔をしかめた。

両親が共働きで家に居ないからって好き勝手し過ぎではないのか?と憤りを感じたが関わるのを良しとしない土方は心の中で高杉に文句を浮かべる。

階段を上がる音が聞こえるとその音が近くで聞こえてくるのを土方は不思議に思った。

高杉の部屋は階段を上がって左に行った奥の部屋で土方の部屋は階段を上がって右の奥で何故高杉が土方の部屋の方へ来るのか、分からなかった。

 

もしかして寝惚けて部屋を間違えてるのか?と土方が思うのと同時に部屋の扉が開けられて土方は思わず寝たフリをした。

何で部屋に入ってくるんだよ、早く自分の部屋に戻れ!と心の中で叫んでみても寝惚けていると思った割に聞こえてくる足音はしっかりとしている。

 

足音がベッドの横で止まると知らず知らず土方は息を止めていたのか丸で耳の横に心臓があるかのようにドクンッドクンッと心拍音が大きく聞こえた。

一体何だ、と土方が思ったその時、頭に温もりを感じて思わず僅かに身動きをしてしまう。

 

え?と何事かと驚く土方を余所に高杉のものであろう手が土方の頭を優しく起こさないようにしながら撫でて、そっと離れた。

そしてそのまま踵を返して土方の部屋を出て行くと自分の左の奥の部屋に行ってしまった。

 

目を見開いて土方は撫でられた頭をなぞるように触れると、高杉…?と更に眠れなくなり困惑した一夜を過ごした。

 

それから相変わらず二人は話す事も顔を会わす事もなかったが次の日部活が休みの時、土方は遅くまで起きて高杉が帰って来ると寝たフリをするようになった。

前に高杉が部屋に入ってきて頭を撫でられた時、土方は困惑した一夜を過ごしあれは高杉が寝惚けていたのだと納得しょうとしたが確信に迫らないと気が済まない性格だったから夜更かしして高杉が帰ってきたら寝たフリをしてどうなるかを、試したのだ。

 

すると試した結果高杉は別段寝惚けていた訳ではなく、確たる意思を持って帰宅した時に土方の頭を撫でてから部屋に戻ってくのだ。

もしかして今までずっと知らなかっただけで高杉はずっと眠っていた土方の頭を撫でていたのか?と知った土方は何を思ってそうしてるのか高杉に聞きたくてしょうがなかった。

 

この時から既に土方の中で高杉は苦手としたものじゃなくなっていた。

まだ『兄』という認識はないが自分を嫌っている訳ではないと分かった。わざわざ土方が眠っている時に頭を撫でていくのは土方が高杉を認めてないと分かっているからなのだろうか、高杉は最初から土方を受け入れていたのではないか、と色んな事が頭を過っては消えていく。

 

高杉のいつも手は優しかった。

高校生の割に掌が大きくて噂でいつも喧嘩ばかりで人を殴っている手だと知っているのにその手はいつも眠っていると思っている土方を起こさないようにそっと土方を黒髪をすいて撫でて離れていく。

 

それが幾度か目になるといつしか眠っている時ではなく起きてる時でも撫でて欲しいと土方は思うようになっていった。

だからそう思った日にまたも寝たフリしていつものように高杉が部屋に入り、頭を撫でてくれた時にさも今起きたかのように寝返りをうつと目を開けて高杉を見上げたのだ。

 

晋助…?と恐る恐る声を掛けると頭を撫でる手が一瞬動きを止めたがそれも一瞬で直ぐにまた頭を撫でてまだ遅い時間だから眠っていろ、と微笑んだのだ。

 

頭を撫でる手に添え、何で?と尋ねた。

高杉は添えられた手を握って土方が何故撫でるのかを知りたがっているのを理解して誤魔化す事も弁解もする事もなくただ、お前は俺の弟だから、と溢した。

 

それだけで十分だった。

土方はそれだけで高杉を『兄』と認めた。

自分の中に入る事を許した。この時にやっと二人は本当の家族で『兄弟』となった。

 

 

 

「土方さん?」

 

高杉を兄と認めた時を思い出して黙る土方に沖田が声を掛けるとハッと正気に戻ると何でないと返す。

 

「何でもねぇよ、てか俺と晋助の事は良いだろ別に」

 

高杉との事は二人だけが知っていれば良いし周りが知った所でからかわれるのが目に見えている。

好奇心の目から逃げるように土方は高杉の手を引っ張り取りながら沖田たちに向かってまた明日と返すと教室を後にした。

 

「十四郎」

 

引っ張られるがままに高杉が土方を呼ぶ。

振り返ると高杉が笑っている。

 

土方の頭を優しく撫でる手は、土方の手の中にあった。

 

 

 

END

(なんかよく分からなくなった…)