mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆銀魂カフェ(高土)

 

銀魂カフェ。

先日面白いお店が欲しいと万事屋にいくつもの願望の依頼が入り、万事屋は面倒くせぇと重い腰をあげたくなかったみたいだが子供たちがこれも仕事ネ!それに稼いだ金はこっちのものだから開くヨロシ!と乗り気なものだから開く事になったお店だ。

 

ただ借りた店がかなりの大きさで3人だけじゃ回せないって事で助太刀を頼むことになった。 

真選組ならまだ分かる。何故か手伝ってくれと言ってもないのにどこから聞き付けたのか桂が真選組が居ようと変装してまで手伝ってくれたのだ。単に誘ってくれなくて寂しかったのだろうけど。構ってちゃんの桂だから。

 

あり得なかったのが宇宙にいる筈の高杉と神威も来てくれた事だった。

 

嫌がる高杉を坂本が引っ張って来たらしい。

神威はタダ飯食えるなら手伝うけど?と無償では働かないと脅したからこのお店が終わったらかなりの食費が嵩張るだろうと予想出来た。売上もその食費で消えてしまいそうな予感が僅かにした。

たくさんの知人が来てくれたおかげでお店が回せそうだと依頼者の待望でやっと開く事になった。

制服はそれぞれのイメージカラーと白の市松柄の着物で紺色の袴、そして黒のショートブーツに決まったのだがこれが中々に皆似合っていた。

 

制服も決まり、役割分担をすると裏で調理をするのが普段からも家事をする手先器用の銀時、サポートに回るのが新八と同じく調理の土方にサポートの山崎だ。

接客に回るのが神楽、真選組の近藤と沖田。桂に坂本と高杉と神威の7人だ。

 

銀時がおいおい、アイツらに接客なんて出来んのか?真選組はまだ分かるがヅラと辰馬はアホだし高杉なんかは愛想がねーだろ。務まるのかよ、と不安を覚えていた。

 

しかしそんな銀時の不安をそよに桂達は女性の客に偉く評判だった。

 

それもその筈。黙っていれば顔は良い者ばかり集まっているからだ。

天然バカと云われる桂だがやれば出来るしオーダーを取ると客はそのサラサラの黒髪ロングに見とれている。

辰馬は図体も声もデカいが人懐こいおおらかな笑顔は緊張をほぐし親近感と安心感を覚えさせられるのか客と自然と笑顔になっていく。

高杉は無愛想で笑顔らしい笑みを浮かべないし左目を包帯で隠してるという近付きがたい雰囲気なのだがやはりそこはあの顔。高杉の綺麗な顔と澄んだ碧の目に客の心をごっそり奪ってしまった。

 

お店は大評判で開店から閉店まで外に行列が出来る程の人気店になっていた。

 

 

 

「オイ、新規のオーダーだ」

 

お昼時、忙しく立ち回る店内では店員の声と客の賑わう声が響いていた。

高杉は新しくとったオーダーをキッチンで汗を軽くかきながら調理する土方に伝える為に1度裏に下がってきた。

 

「高杉。オーダーは?」

 

「同窓会プレートと団長の麻婆春雨丼」

 

「分かった。ついでにこれも三番テーブルに持ってけ」

 

フライパンを握った手元を見たまま土方が出来上がったばかりの北斗七軒のラーメンだったものを高杉の前に出した。

 

北斗七軒のラーメンだったものだ。

 

「……オイ」

 

思わず高杉はそれを凝視して低い声が出た。

土方があ?何だよ、さっさとそれ持ってけ冷めるだろうがと苛立った声を上げるのに高杉はギロッと睨んだ。

 

「てめェ何勝手にマヨネーズ乗せてんだ」

 

北斗七軒のラーメンの上には麺が見えなくなるまでにたっぷりと白い悪魔のマヨネーズが乗っていた。こんなメニューはなかった。

 

「マヨネーズあった方が美味しいだろ」

 

 悪気もなく土方はきょとんと返した。

大のマヨラーの土方だ。他の者もマヨが嫌いじゃないだろうと親切心でマヨを掛けたのだろう。けれどマヨネーズは嫌いじゃなくてもこんな量のマヨネーズは誰も好まないのを分かっていない。

 

悪気があれば殴ってやったが土方のこれは100%善意だ。高杉は小さく溜め息を吐くとラーメンを一瞥して土方に新しいのを作り直せと腕を組んだ。

 

「はぁ?せっかく作ったのに出さないのかよ」

 

「あのなァ…世の中誰しもマヨラーじゃねぇンだよ。これはオレが食べるからちゃんとしたのを作れ、十四郎」

 

せっかく作ったのに無駄にするのかと土方が顔をしかめたが高杉は声音を柔らかくして嗜めた。名前を呼ばれたのに土方が目元を柔らかくする。

お前が食うの?と土方が高杉を見ると棚から箸を取り出し、白い悪魔に埋もれた哀れな麺を掬って事も無げに食べてた。

 

「え?!高杉何食べてンの?!」

 

入ってきた注文を片っ端からかなりのスピードで調理してた銀時がズルズルッという啜る音に疑問を持ち振り返ると高杉が犬のエサになったラーメンを食べてるのを見て目を見開いて慌て出した。

サポートに回ってた新八と山崎は足りないものを補充しててこの場に居なかったから止められなかったのだ。

仕事をサボって食べている事に対してではない。体に悪そうなマヨネーズを大量に食べようとする事に対してだ。

 

「ちょっとちょっとぉ!お前、そんなモン食ったら腹壊すだろ?!!お前に何かあったらヅラと辰馬が煩いンだから今直ぐぺっしなさい!ぺっ!!」

 

神威も何を仕出かすか分かったもんじゃない!と調理器具を手放し、高杉から丼を奪う銀時だったがほぼほぼ平らげていて僅かなスープとナルトが底に残っているだけだった。

女性の為に考えられたメニューだからそんなに量もないもので平均男性ならペロリと食べられる量が仇となって高杉は犬のエサを完食してしまった。

 

銀時はガックリと項垂れた。

 

「おまっ…お前なぁ…!恋人だからって甘やかすな!平気で犬のエサを食べるンじゃありません!!?」

 

ご馳走さま、と銀時を無視して土方に言う高杉を銀時は怒り筋を浮かべながら叱るが何が犬のエサだ、てめぇの宇治銀時の方が犬のエサだろうが!!と土方が返した。

はぁ?!!何だと?!!!どっちのが美味いか勝負したろか?!と今にも殴り合いが始まりそうな険悪なムードの銀時と土方に傍らに立つ高杉が仕方なそうに肩を竦めた。

 

「いい加減にしろ。銀時、体調はこの通り何ともねェから入らぬ心配はするな。十四郎もちゃんと美味かったぜ」

 

睨み合う二人を引き剥がして、というか十四郎に不用意に近付くなと銀時を牽制して高杉は新しく作られた北斗七軒のラーメンをお盆に乗せて踵を返す。

 

新しく注文が入った事で銀時と土方は渋々と自分の仕事へと戻った。今日も銀魂カフェは大繁盛だった。

 

 

 

END

 

(所々書き直したり書き足すかもです)