mikotoの呟き

美琴の小説、日記やお知らせ置き場*^^*

◆高土(土方さんショタ化)

 

 

 

ウィーン、ウィーン

 

パトカーのサイレンが町に鳴り響くのを宿屋の二階の窓で眺めながら赤い女着物を身に着け、左目を白い包帯で覆う隻眼の男が傍らに座る子供に問い掛けた。

 

「・・・・・・お前を探しているみたいだが?」 「・・・・・・・・・」

 

問い掛けられた子供は何も言わず、黙ったまま強く男の裾を握りしめた。

隻眼の男はため息を吐いて再び外に目を向けると煙管をくわえて事の発端を思い出す。 事の始まりは・・・・・・

 

 

 

 

隻眼の男、高杉晋助は久しぶりに地球に訪れていた。
食料と水の補給や他のテロ活動との会合も含めて色々と2週間地球に留まることになったのだ。

 

特に当てもなく、京都から江戸に軽い散歩に来ていたのだ。
重要指名手配犯にも関わらず余り警戒もせずのんびりと気ままに歩いていたら前方の方で騒然とした騒ぎに気付く。

顔を見せないように笠を手で押さえたまま様子を伺った。

 

騒然と騒ぐ所を見ると`真選組 屯所”だった。
何かと周りを嗅ぎ回って邪魔な存在だが、特に害にもならないから何もせずほっといている。

桂は真選組を粛正すると遊んでいるが、ほっとけばいいものを律儀に追っかけられて遊んでいる。よっぽど暇なんだろう。

 

しかし、この騒然とした騒ぎは何だ。

高杉は遠巻きにしながら様子を見ると真選組の門から勢い良く10才位の子供が出てきてあろうことか高杉に向かって突進してきた。
勢いよくぶつかったけれど高杉は体を揺らしただけで逆に子供が尻餅を付いて倒れた。

 


「あっ・・・!?大丈夫ですか副長!!」

 

慌てて門から出てきた隊の人が子供が倒れたことに気付いて走り寄ろうとするがそれよりも早く子供が顔を上げて真っ直ぐに高杉を見上げた。


  青い瞳・・・


高杉が子供を見下ろしていると子供は立ち上がってまた勢い良く高杉にぶつかるようにそのまま抱き付いた。
後ろから着いてくる隊士から逃げるように顔を高杉の着物に押し付けて。

 

「副長?!」

「ちょっ、副長!?」

 

見知らぬ男に抱き付いた子供に隊の若手達が青ざめた顔をして悲鳴を上げて慌て出した。

 

「中に戻りましょうっ!」

「ほら、局長が心配してますよっ」

 

各々言いながら子供の気を引こうとするも子供は頑なに首を振って仕舞いには隊士達に向かって大きな声を張り上げた。

 

「お前らなんか知らないっ!近寄るなァ!!」

 

子供に一括された隊士達はびくりと身を縮こまらせてオロオロとどうしたもんかと考え倦ねていた。

しかし、子供に抱き付かれて巻き込まれた高杉の方が余程困っている。
幸い、今は笠のおかげでバレていないもののいつバレるか分からない状態でこのままは流石に危険だ。

 

子供を引き剥がそうとしてその腕に手を掛けると、高杉のやろうとしてることを分かってか子供は抵抗して高杉の手を振り払うとぎゅうっと音がなる位抱き付く腕に力を加えた。


流石の高杉も公衆の場で子供を無理矢理引き剥がして叩っ斬る程狂ってはいない。

高杉は子供に好かれるような容姿でもないのを自分が一番分かっている。

 

しかしこの子供は確かに高杉の顔を見たのだ、しっかりと目が合った、子供と目が合えば大泣きされ大の大人ですら怯みあがる鋭い目付きと酷薄な笑みを浮かべる口端は狂気すら感じられるのに、この子供は一切の怯えを見せずに高杉を見据えて見上げた。

 

だから、あの青い瞳を見つけたのだ。


「おいっ、あれってもしかして高杉晋助なんじゃっ・・・!?」

「なっ、まさか?!」

 

高杉はハッと顔を上げると隊士達が刀を鞘から抜いて構える所だった。

どうやら子供に気を取られすぎて笠を押さえるのを忘れて顔を見られたらしい。
迂闊にも程があるが、こんな雑魚では脅威にもならず高杉は焦るでもなく慌てるでもなくただ静かに子供を見下ろした。

 

「おい」

 

ただ一声子供に声を掛ける。

すると子供は顔を上げると高杉を真っ直ぐ見つめて小さく呟いた。


「置いて行かないで・・・」

 

小さな呟きだが高杉にはハッキリと聞こえた、それが自分に言われたことも。

 

隊士の奴らが応援を呼んでいるのをどこか遠くに聞きながら高杉は子供の脇下に手を差し入れると抱き上げて、左腕に乗せ抱えるようにすると子供は透かさず高杉の首に両腕を回して逃がさないと言わんばかりに顔を首筋に埋めた。

 

しっかり掴まっていることを確認して高杉は隊士を軽く一瞥するとそのまま身を翻して隊士に背を向けて走った。

 

「おいっ」

「副長を連れて逃げたぞっ」

「追え、逃がすなっ!!」

 

背後から幾つもの怒濤の声が聞こえるが高杉は気にせず角を曲がると隊士達を巻いて光が届かず薄暗い路地裏に足を踏み入れていつの間にかゆっくりと歩いていた。

子供はじっと高杉に掴まって揺らされるがまま。

そして、この宿屋に入ったのだ。

 


「・・・・・・・」

 

面倒なものを持ち込んだとは思っている。

どこのガキとは聞かない、先程の奴らがこの子供を`副長”と呼んでいた。
真選組の副長と云えば、土方十四郎だった筈だ、間違ってもこんな10代半ばの子供ではない。けれど、当然恨まれるのは多いのだろうし爆弾やら変な薬を送られて子供になったって可笑しくない。

 

「お前、名前は」

「・・・土方、十四郎・・・」

 

やはり。

 

高杉は自分の憶測があながち間違っていないことを確信した。
どうせ恨みを買われて変な薬でも飲まされたか何かされたのだろうけど先ほど仲間に向かって知らないと叫んでいたから体を幼くするだけでなく、記憶操作の副作用もあるとみていいだろう。

しかしそれでもやはり、知らないとはいえ一直線にこっちに手を伸ばしたのは訳が分からない。

誇れるような事じゃないが自分でも子供に好かれるようなタイプじゃないと承知している。
泣かれて脱兎の如くに逃げれた事はあっても逃がさないとばかりに抱きつかれた事はなかった高杉は少々困惑していた。

 

「・・・・・・俺を知ってるか?」

 

一応、聞いてみるとやはり知らないと首を左右に振っている。
ま、知っていたのなら手を伸ばすのではなく刀を向けられていたことだろうな、と高杉は冷静に判断する。しかし、問題はこの小さい土方であろう子供をどうするかだ。

 

記憶障害があっても真選組の方が安全だったし土方の事を知っているのもあちらだ。

長年共に過ごしたっていうのに今の土方には世間から嫌われるテロリストの高杉の方が信用出来るとでも感じたのか。

 

「お前はどうしたい」

「・・・・・・」

 

問われて土方はじっと真っ直ぐに高杉を見上げた。
見下ろして高杉は何度目かの溜息を吐いた。土方は真選組に戻る気はないみたいだ。真っ直ぐに見上げられた青い目には雄弁に”連れていけ”と物語っていた。

 

ま、土方を連れても自分に大したリスクはない。良いだろう。


「十四郎」

 

呼びかけると、土方は高杉を見上げてきょとんと首を傾げた。


そんな仕草をするとあの真選組・鬼の副長 土方十四郎とは思えないくらい可愛らしい子供に見える。


実際、子供なのだから当たり前なのか。だったら子供だと思えばそんな事はこちら側としては大した問題じゃなかった。
真選組からしたら組織の要が子供になり、しかもそれが敵の手の中にあると知っちゃかなりのダメージであろう。真選組を動かしていたのはこの傍らに座る子供だったみたいだしその子供が居ないとなると真選組の指揮は下がっていつか腐り落ちるだろう。

こっちからしたら邪魔なものが消えて万々歳な話だ。

 

「高杉 晋助だ」

 

名乗ると子供は何度か覚えるように小さくその名を呟きパッと顔を上げた。
そして、

 

「晋助!」

 

嬉しそうに、花が咲くように綻ぶように笑ったのだ。