mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆ 鎮魂

唯一の安らぎ

 

 

 

スクアーロは微睡みの中からふつふつと感じるピリッとした肌を刺す感覚で目を覚ました。

自分はさっき長期任務から帰ってきたばかりで任務だから余り気を抜いて眠れなかったから早く微睡みの奥深くに潜って休みたかったが、そうも言ってられないのだろう。

 

何故なら、オレの主が怒っているからだ。

 

既に夜間にも関わらず帰って来た時は主は城には居らず、明日の朝食の仕込みとドルチェを作っていたルッスに聞いてみれば主は緊急に本部に呼ばれてボンゴレに出向いてるとの事で早く主に会いたくて早めに帰ってきたもののすれ違いになってしまったようだ。

 

やっと会えると思ってたのに肩透かしを食らう。

仕方ないから報告書を一通り書き終わらせていつ主が帰ってきても直ぐに起きれるようにそのまま主の仕事部屋である執務室のソファで横になって待っていたのだ。

 

だんだんピリピリと肌を刺す殺気がこっちに近付くにつれてスクアーロもソファから身を起こして未だぼぅとする頭を振って目を擦ってから完全に覚醒する。

するとバァンッッ!!と重い扉が大きな音を立てて勢いよく開かれた。見ると主、XANXUSが今にも眉と眉がくっつきそうな程に眉間に皺を寄せて怒りを隠さず険しい表情をしてるではないか。

 

ここ暫くはこんなに怒りを露わにする主を見てなかったのに、一体本部で何があったのやら・・・。

XANXUSはこっちの存在に気付いたのかジロッと目線をこっちに向けた。普通の人間ならばここで顔を青ざめて悲鳴を上げて腰を抜かして逃げようとするものだが、主のこんな顔なんて何十年も見てきたスクアーロはあぁ、今日もオレのボスはなんて良い男なのだろう・・・と場違いにもズレた事を思っていた。

 

ソファの上でXANXUSを見つめてると目の前まで無言のまま移動してきて見下ろされる。重苦しい空気で充満する部屋。無言のままの主を見上げてスクアーロは怒りに渦巻く深紅の目をじっと覗く。

 

深紅の目の奥には色んな感情が渦巻いている。 怒り、苦痛、絶望・・・様々な感情が渦巻きこんがらがって大きな体が震えている。

 

昔なら物やオレに対してその身を焦がす程の怒りを発散させようと破壊と暴力を強いていたのに今では余程のことがない限り、手を上げられてない。

丈夫に出来てるから我慢せずオレで発散すればいいのにボスはどうしても手を上げることはなかった。

 

我慢した分、身に巣食う炎が怒りと同調して酷い熱を起こさせるのだけどその場合、主がどうやって怒りを発散させているかってぇ?

 

 

それは…、

 

「XANXUS」

 

スクアーロは徐に主に向かって両手を広げる。

主はぴくっと僅かに体を揺らすとスクアーロをじいっと見下ろした。その表情が変わることはなかったがスクアーロも見つめ返す。

 

暫く二人は動かないまま見つめ合ってたが最初に動いたのは以外にもXANXUSで、小さく溜息を吐いたと思ったら床に膝を着いて腕を広げたスクアーロの胸に顔を埋めた。

スクアーロは透かさずXANXUSの頭を抱き締めて頬を寄せながら頭を撫で、背中をゆっくりとさすった。

されるがままにXANXUSは頬に感じる柔らかい乳房の感触と馴染みのスクアーロの匂いに荒ぶる気持ちが次第に落ち着いてくるのが分かった。もっと直に感じたくてぐいぐいっと頭を押し付けると上から嬉しそうに笑う声が聞こえると同時に強く抱き締められた。

 

優しく己を包むオンナの腕の中で、いつの間にか身を焦がそうとする怒りが消えていた。 それでも尚、オンナはまだ己を離そうとはしない。

もう落ち着いていたが自らオンナから離れようとは思わずそのまま心地いい腕に収まった。

 

「・・・・・・今日はお疲れさんだったんだなぁ」

 

撫で撫で、と子供をあやすような手付きで頭を撫でられるが・・・本当に子供を相手してるような感じなのは気のせいだろうか・・・?

 

途端にムカっと怒りを覚えたがXANXUSは直ぐに諦めたように溜息を吐いて身動きをして落ち着く場所を探した。

オンナは先ほどまで眠っていたのだろう、名の通り魚類みたく低温体温の筈が今はやんわりと暖かい。

 

精神的に本部での事で疲れた体は今にも意識が薄れて沈みそうだ。 頬が動く度に胸や腕に当たる。触れ合った所からじんわりと体温が伝わってくる。体温だけじゃない、鼓動ーーーーーそれから吐息。全部が伝わってきてーーーーー温かい。

 

そして温もりがそのまま、熱になるのを感じる。

熱い、鼓動。

 

f:id:mikoto-xs:20161123070116j:image

 

急に呼ばれたからやり残した仕事はまだ残っていたがこのまま寝るのも悪くない。

思い立ったが吉日、XANXUSは身動ぎ、そのまま立ち上がった。その為に抱き締められたままのスクアーロは息をつめてXANXUSに抱き上げられた体勢となり首に腕を回し体勢を安定させて落ち着く。

 

「XANXUS?」

 

「寝る」

 

簡潔に言うとスクアーロはいつものように煩く言わず、心得たと笑みを浮かべて了承の意として軽くキスをした。

そのままXANXUSに抱き上げられていつも眠っている寝室へと消えた。

 

 

 

End