mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆宇善

 

 

「ん……」

 

冬の肌寒さに自然と目を覚ます。

重たい瞼がすっと開き目の前に飛び込んできた景色は暗闇だった。

どうやらまだ鳥たちが眠っている真夜中に起きてしまったらしく辺りには静けさしか存在しなかった。

 

寒さに身震いをすると自分の肩を抱く。子供特有の体温の高さをもっていても寒いものは寒いのだ。

 

喉が渇いたついでにベッドから降りてキッチンの方へ向かうとリビングの明かりが付いていた。まさか…こんな時間なのにまだ起きてたというの…?

 

自然と眉間にシワが寄るのが自分でも分かった。文句の一つでも言ってやらないと気が済まなかった。

 

リビングの部屋のドアを開けると案の徐、遅くまで起きて仕事をやっているらしい年上の恋人、宇髄さんが眼鏡を掛けて難しい事ばかり書いてある紙と向き合っていた。

 

「……ちょっと。」

 

「ん?あぁ、トイレか?」

 

声を掛けると検討違いな事を言ってくるのにイラッとさせられる。

ホントにこの人は俺をイライラさせる天才だよね!?顔も良いし身長も高くて身体付きも良いし…性格にはかなりの難があるけどそれでも女が放っとかない男前なのだ俺の恋人サマは!なのにそんな男前が特に何の取り柄もない俺なんかを選んで欲情するのが信じられなくて何回も一悶着を起こしたか知らないけど、もう諦めた。

 

この人を自分のものだと思うには俺にはかなり荷が重いと何回逃げても手を離さず捕まえてくれたし抱き締めてくれたこの人をもう、信じるしかなかったからだ。

 

正直に言うと、俺だって宇髄さんが好き。

大切だ。だから無理して欲しくないしちゃんと休んで欲しい。なのにこの男と来たら何をこんな真夜中まで仕事してるんだよ?!バカなの?!!バカだろ!!!!

 

「いい加減休んで下さいよ、いくらアンタでもちゃんと休まないと」

 

「ん、これ終わったら休むからお前も早く部屋戻れ。冷えるぞ」

 

いつもは言わない心配してるって事を言ったのにしらっとあしらわれた。

ホントにもう…!!!頑固過ぎない?!!急ぎの仕事でもないだろうに何をそんなに全部終わらそうとするのか。体を壊したら元も子もないだろうに。

 

善逸は仕方なく、奥の手を使う事にした。

未だに背を向ける宇髄に近付き、袖のシャツをきゅっと引っ張った。

するとやっとこっちを向いてくれた宇髄の顔はなんだよ、と書いてあったが気にせず口を開けた。

 

「もう寝ようよ。それ急ぎじゃないでしょ?」

 

宇髄が口を開き掛けて善逸は何かを言わせる前に続けた。普段から言わないからこれを言うのは本ッッ当に恥ずかしくて嫌だけど!これを言えばこの人なら絶対に言う事聞いてくれると分かってるから。

 

「…アンタが隣にいないと…寒い…」 

 

宇髄は驚いたように目を見開いた。

善逸も普段言わない甘えるような事を言って頬が熱くなるのを自覚したが気付かなかったフリをして宇髄の袖を引っ張って立たせる。

すると案の徐、宇髄は未だに固まったままだったが大人しく立ち上がった。

 

テーブルには宇髄が持ち帰った仕事が散らばってたが片付けるのは明日でも大丈夫だろうとそのままにした。宇髄の袖から手を離し変わりに大きな手を握って部屋まで誘導する。何も言わず大人しく着いてくるので何か大きな動物を手懐けたみたいな感じだ。

 

部屋に着くと人が居なかったからか随分と中が冷えてしまっていた。

後ろを振り返りじっと自分を見つめる深い色の瞳を見上げる。仕事から離れてやっと疲れを自覚したのかその顔はくたびれている。

 

善逸は宇髄のシャツに手を伸ばしてボタンを一つ一つ外す。なされるがままの宇髄は無言で自分よりも小さな手がボタンを外すのを見下ろしている。

ボタンを外し終わると腕からシャツを抜き取って脱がして部屋着に着替えさせた。

下は流石に自分で脱がさせて着替えさせると宇髄の背中を押してベッドに入らせた。

 

奧に宇髄が横たわったのを見届けて善逸も宇髄の横に少し間を空けて横たわった。

休んで欲しくてなんか自分から恥ずかしい事を言ってしまったがやっぱり自分から寄り添う事なんて出来る筈もなくて善逸は距離を取って背中を向けていた。

 

すると項に吐息を感じてびくりと肩が震えると、ずっと黙ったままだった宇髄が善逸の項に唇を寄せて口を開いた。

 

「善逸…寒いンじゃねぇのか」

 

優しい声音で宇髄が言った。

いつものようにからかった感じで言うのではなく善逸を甘やかす時みたいな声で善逸はこの男が本当に好きで泣きそうになった。

 

「……宇髄さん…寒い…」

 

ちいさく、だけど宇髄には聞こえる声で溢すと背中を向ける善逸を振り向かせて宇髄は正面から小さな体を覆うように抱き締めた。

広い背中に手を伸ばして息を吸うと宇髄の匂いが善逸の鼻を擽った。冷えていた体が瞬時に暖まる。

 

はぁ…と息つく声が上から聞こえて善逸は背中に回してた手を上下にして背中をあやすようにさすった。お疲れ様です、と口にしなかったが善逸の言いたい事が分かってる宇髄はぎゅっとまた抱き締める事で返事をした。

 

冬は寒くて人肌が心地良い季節だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆宇善♀(R18)

 
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不毛だと分かっている。

 

こんな事が世間一般から許される事なんてない。こんな事がバレたら私だけじゃない、色んな人に迷惑が掛かるし世間の目があっという間に攻撃してくるだろう。

 

だから、この一回限りで良いんだ。この一回だけで私は前向きに生きていける。泣いてしまう時もあるだろうけど、思い出として強くなれると思うんだ。

 

だから、今回だけはどうか許して…。

 

 

 

 

 

カーテンを締め切った暗くなった部屋の中で二人分の息遣いがこだまする。

 

無意識にちいさな体が逃げようとするが寸時にたくましい腕がちいさな体を抱き締めて引き止める。

 

息が止まりそうな程に強くかき抱かれて身動き出来ない。噛みつくような口付けは奥に縮こまってる舌を捕らえてきつく吸い上げた。

 

「んっ…んんっ…!」

 

黄茶の瞳が震えて初めての快感に涙ぐむ。

息ができないほど乱暴に口腔を舐られ、くちゅくちゅと艶かしい音を立てて舌を擦り付けられ、その激しさにたちまち善逸の頭の芯がぼうっと霞んでしまう。

 

「ふぅっ、んっ……んん…ふぁ……」

 

酸欠になりそうになる寸前で口付けは解かれフラついた善逸の体は寝台の上へ沈んで倒れた。

 

「自分から誘ったくせにこんくらいでへばってンじゃーよ」

 

しゅるっと音を立ててネクタイをほどいて善逸を見下ろしてるのはキメツ学園の一人の先生である宇髄天元だ。

いつもは地味だからと薄銀髪の肩まで届く髪をターバン風に仕舞ってるのだけど先程善逸の手によって取られて端整な素顔が晒されている。

 

赤みがかった鋭い目に見下ろされて善逸はかぁっと顔が赤くなるのを自覚する。

宇髄の大きな手が密着した際にシワになった善逸のシャツに掛かった。ビクッと震える幼い体にふっと笑みを浮かべながらボタンをひとつ、またひとつ…とわざとゆっくり外す。

 

指が僅かに体に触れる度に善逸はドキドキと心臓が煩く鳴るのを感じて今にも逃げ出したくなった。こんなにもドキドキしてるのがバレるのではないかと気が気ではない。

最後のボタンが外されるとシャツの前を広げられて淡い黄色の下着に覆われた日に余り焼かれてない白い肌の胸が宇髄の前に暴かれる。

 

スッと宇髄の目が細まるのを見て善逸は羞恥の余り腕を交差して顔を隠し体を横向きにして宇髄の目から逃げようとする。

 

「~~~ッッ!そ、んな…見ないで下、さい…」

 

腕から覗く頬が赤く染まっている。

宇髄は顔を隠されたのが気に入らずその腕を外す。大した力も入れずに細い腕は素直に顔からどき、赤くなって潤んだ目が宇髄を見上げる。

その表情に宇髄は舌舐めずりする。

 

まだ高校生でガキだと侮っていたがこんなにも艶のある表情もするのか。普段は人の目も憚らず泣き喚いて醜態を曝しているガキだとは思えない表情をする。

 

1度だけで良いからと誘ってきたのはこのガキで、一体どういうつもりか知らないがガキ相手に勃つ訳ねーだろうと最初は断った。が、思いがけず体は熱くなっている。慣れない行為にモタモタし、口付けも初めてなのか震える姿はどうしてか…加虐心を擽られる。

 

徐に宇髄の手が下着を着けたままの善逸のまろやかな胸をまさぐった。

善逸はびくんと身体を震わせる。今まで誰かに胸を触れた事も弄ばれた事もなくて全身に走った未知の感覚におののいた。

 

「んぁッ…」

 

甘い声が上がるのが恥ずかしくて口を手で押さえようとすると気付いた宇髄がそうはさせず代わりに再び善逸の口腔を舐りながら、柔らかな胸を円を描くように揉みしだいた。

そうしてブラをずらし、現れた快感で固くなりつつある赤い突起を親指と人指し指で摘まんだ。

 

「んんっ…!!」

 

なにか痺れるような甘い疼きが胸の先から下肢に走って善逸は目を見開いて身震いした。

なに、何…?今の、雷に撃たれたみたいな、身体の中を走った衝撃は何…?!

 

唇を離した宇髄が訳が分からず困惑してる善逸に見上げられてにやぁと笑みを浮かべる。

 

「気持ち良いだろぉ?」

 

さっきのが気持ち良い…って事…?

初めての事だらけで善逸はさっき身体を駆け抜けたのが快感だって事を知る。そしてたったあれだけで何か可笑しくなりそうだったのにまだ行為は始まってすらいない事を恐れた。

恐れに善逸の目が揺れると宇髄は善逸の申し訳なさそうに鎮座する赤い乳首を口に含んだ。ちゅっと音を立てて、啄むようにそこを吸うと善逸の全身にずきんと痛みにも似た痺れが走って声を上げる。声を抑えようと口を閉じると空かさず宇髄がそれを止める。

 

 「声。我慢すんなよ」

 

宇髄はねっとりと舌先で善逸の乳首を舐った。いやいやと頭を左右に振り声を上げようとしない善逸を乳首を舐めながら宇髄は見つめる。白い頬が赤く染まる瞬間が幻想的な光景のようで美しかった。

ぬるりとした唾液にまみれた乳首がさっきよりも硬く凝ってくる。声を我慢しょうとするが我慢しきれない声が口の隙間から漏れる。

 

「あっ、あ…や…宇、髄せんせ…」

 

胸を弄られてる間にブラが外され、スカートやシャツも脱がされて善逸はブラと同じ淡い黄色のショーツだけの姿となった。

まだ完全に大人になりきれてない身体を晒す事に恥ずかしがるも胸を愛撫された事により善逸は意識がぼんやりしてみるみる全身が熱く火照ってきた。

 

ぞくぞく背中を駆ける快感に上がる声が甘くなっていく。宇髄の薄い唇が掠めるように乳首を擦っただけで吐息が熱く甘くなるのを善逸は自覚して頬を染める。

 

「はぁ…あッ…やだや、だ…恥ずかし、い…」

「は…まだこっからなのに今恥ずかしがってどーする」

 

宇髄の大きな手で覆われてしまう程の小振りな胸を両手で寄せ、白い肌にちゅっちゅっと音を立てて口付け、そのまま赤い痕を残す。

口を離すと白い肌に綺麗な赤い花びらが咲いて散る。そしてまた、凝って硬く立ち上がった乳首を口に含み舌を絡み付かせながら強く吸い上げた。

 

「ぃやぁっ、あぁっ…やぁっ」

 

じくんじくんと甘い疼きがそこから生まれて腰の奥がかぁっと熱くなって善逸は身体の奥がざわざわして熱くなる事に戸惑い胸元に顔を埋める宇髄の頭に手を置き髪を掴んだ。

宇髄の歯が乳首を柔らかく噛むとビリっと雷に打たれたような愉悦が走る。激しい疼きに思わず腰がびくんと跳ねる。

 

ど、どうしょう、身体が変だ。なんか、なんか奥がざわざわする…!!

 

身体の異変にもじもじしてるとふいに宇髄が善逸の片足を持ち上げると足の付け根、その奥に手を滑らせた。うわぁっ、と小さく悲鳴を上げてバッと顔を隠した善逸を横目に見つつ手元を見るとショーツが僅かに染みを作り濡れていた。

 

「はっ…濡れてるなぁ?」

 

ショーツの表面をなぞり、ぬめった粘液が指に絡み付いてくちゅり、と音を立てる。指先で伸ばしたりして遊んで宇髄は笑う。

声にならない叫びを上げて善逸は指の隙間からこの男っ…!信じらんない!!とキッと睨んだ。睨んだのだけど、その目は潤んでいて目端には今にも零れそうな涙が光っている。そして、赤く染まっている顔で睨まれても大して威力はない。

 

まだ理性が残っている事を確認して宇髄は最後の砦であるショーツを足から抜き脱がした。

誰にも見せたことない秘部を暴かれて心の準備がまだ出来てない善逸は悲鳴を上げて膝を持ち上げると宇髄の目から隠そうとした。

 

しかし僅かに太脚ですり合わせただけで完全には隠せず黄色の下生えが宇髄の目に止まる。

 

「へー…お前こっちも黄色なんだな」

「っ…や、そんなとこまじまじと見ないで下さいっ!!!」

 

善逸は羞恥の余り、耳朶まで真っ赤に染めて叫んだ。叫んだ拍子に目端に溜まってた涙がポロっと零れ落ちた。

頬に流れ落ちる涙を首筋に落ちる前に宇髄が舐めとりながら薄い黄色の毛に覆われた秘部を、宇髄の指がそろりと撫で上げた。

 

「ひっ……!」

 

ざわっとした戦慄が背中を走り、善逸は仰け反った。宇髄の指が、黄色の茂みに潜り込みつつましく閉じていた割れ目をそっとなぞったからだ。未知への恐れが善逸を襲った。

 

「や、いやだっ…」

 

身体を小さく震わして悶え、宇髄の手を遠ざけようと腕に手を掛けようとした善逸を見下ろして宇髄は口を開いた。

 

「善逸」

 

その声に善逸はピタッと腕を止める。一言、名前を呼ばれただけなのに抗えない。宇髄を見つめた。

そうだ。この行為はそもそも自分から誘って始めたことだ。怖がっている場合ではない。

 

善逸は腕を引っ込めて閉じていた膝をそろそろ…と開き宇髄が動きやすいようにした。よく出来ましたと褒めるように善逸の柔らかな頬を撫でると心地良さそうに善逸の目がとろんと緩められる。

 

善逸の気持ちが落ち着いた所で宇髄は手の動きを再開させた。くちゅり、と淫らな音を立てて指が割れ目に潜り込んだ。ひやりとした指が内部に潜り込む感触に善逸はぶるっと身を震わせて恐怖と、甘い悦楽を含んだ何かに息を弾ませる。

 

「あ、あっ…」

 

入口をぬるぬると指で掻き回され、甘い疼きが下腹部からどんどんせりあがって善逸は声をあげてしまう。なにか、とろりと熱いものが溢れて太股を濡らしてる。

 

善逸が怖がらないように顔中に唇を落として落ち着かせながら宇髄は淫らな音を響かせて指を奥へと進ませる。

 

「あっ!やぁ…宇髄、先生っ…」

「大丈夫だ、善逸…大丈夫」

 

奥に進む指に善逸が宇髄の肩に爪を立てる。宇髄は声を掛けてやりながら指を更に進める。狭い中の壁が宇髄の指に絡み付き締め付ける。

 

怖いのに、襲ってくる甘い疼きに善逸は喉を仰け反らして悶えた。胸がふるっと揺れた。

 

指っ…宇髄先生の、入ってきてる…っ!

 

 

 宇髄は善逸の白い首筋に舌を這わせた。

次第に上に上がってきた舌が善逸の小さな薄い耳朶の後ろを舐ると、ぞわっと悪寒にも似た刺激が走って嬌声が上がる。

 

「あっ!や、それっ…やだぁっ…」

 「耳が弱いのか?」

 

善逸はびくんびくんと腰を震わせて身悶えた。普段、何も感じない身体のありとあらゆる箇所がひりつくように疼いてしまう。

 

宇髄は善逸の性感帯を捉えて耳朶の後ろを熱い舌で何度もしつこく舐る。

舌がひらめく度に下肢が蕩けそうな程に感じてしまい、中がきゅうきゅうとうごめき宇髄の指に絡み付ききつく締め付ける。

 

善逸は耳がすこぶる良いのだ。動物並みに小さな音や振動でも聞こえてしまう為、直接耳朶の裏を愛撫されると音と感覚に犯されて悶えてしまう。

熱く潤む粘膜を宇髄の指がぐちゅぐちゅと掻き回す。善逸の喘ぎ声が甘いすすり泣きに変わる。

 

「あっあ…やらぁ、耳ッ…やっ…」

 

ふいに、宇髄の指先が割れ目の上に上がり頭をもたげていた小さな粒を探り当てて、つんつんと突いた。

すると途端に、びりびりと脳心まで貫くような快感が走った。

 

「っ、ひあぁっ…!!!あ、なにっ…なに…っ?!」

 

びくびくと全身をおののかせて善逸は悲鳴を上げた。新たな熱いなにかが下腹部の奥からとろとろと流れてくるのが分かった。

 

善逸は耐えきれない悦楽に身を震わせて宇髄に訴えた。

宇髄は婉然と笑うと快楽に身悶える善逸の可愛い表情を愛しげに見下ろした。

 

「善逸。もっと啼け」

 

残酷な宣告とも言えるその言葉に善逸は目を見開いて頭を左右に振って震える。

震える善逸を宥めながら、宇髄は充血した実を指の腹でくりくりと擽るように擦り上げると頭が真っ白になるような法悦に善逸は息を詰まらせる。

過ぎる快感に涙がぽろぽろと零れ落ちて善逸の頬を濡らす。

 

「善逸…もっとだ。可愛い所を見せろ」

 

低く艶めいた声音で熱い息を耳に吹き掛けられ善逸は鼓動が速まり胸の奥がきゅんと痛くなって切なくなり、違う意味で泣きそうになった。

 

そしてかりっ、と実を爪で擦られ目眩がする程の激しい愉悦に、声を上げることすら出来ず善逸らびくんと腰を突き上げて息を詰めた。 

 

「ッッ……!!!!」

 

 脳裏で悦楽の火花がぱちぱちと激しく散って足の爪先がくっと引きつった。

 

ガクガクと震える善逸の身体を見下ろす宇髄が笑みを浮かべた。あ。と善逸が声を上げる前に宇髄の指がまた、強く実を擦った。

すると善逸の最後の理性の欠片が弾け飛んだ。

 

「だ、めッ……ぁっ、あぁぁぁあッッ…!!」

 

善逸の目の前が真っ白に染まった。

一瞬、気を失ってしまい善逸は目を閉じる。しかし宇髄に頬を撫でられて瞼を震わせるとぐったりと弛緩した身体にふっと意識が戻り目を開いた。

 

シャツを脱いだ宇髄が善逸の顔の横に手を置き覆い被さる。引き締まった筋肉質の身体はイタリアとかによくある彫像の神のように美しい。

ぼんやりとしていた善逸はけれど、次の瞬間ビシっと固まって血の気が引きサァーっと顔を青ざめた。宇髄がスラックスの中から取り出した、生まれて初めて目の当たりにした昂る男の欲望…宇髄自身を見てしまったからだ。

 

は…?え、え…?ちょっ、嘘、ちょっと待って!あ、あんなの入る訳ないよね…?!!!

 

禍々しく凶暴に反り返ってるモノを見て善逸は身を起こし逃げ腰になって後ずさる。あんなのが入る訳ないじゃん!何あれ、凶器??!壊れちゃう、死んじゃうっ!!!

 

「まっ、待って、」

「コラ逃げんな」

 

静止の声を掛ける善逸だったが宇髄は逃げる善逸を許さず逃げる細い腰を掴んで引き戻すと無駄な肉のない細い脚を大きく割った。

 

いやいやと怯える善逸のまだ悦楽の余韻が残る入口にぴとっと熱い亀頭を押し付ける。びくりと震え、怖い筈なのに何故かそこがじんじんと疼く。

 

宇髄は熱い息を漏らして、ゆっくりと腰を沈めた。傘の張った欲望の先端がひりつく壁を押し広げて進むのに善逸は身体を仰け反らせた。

 

「やぁっ……!」

 

狭い中がみしみしときしみ、引き裂かれるような激痛が走って善逸は涙をぽろぽろと流しながら宇髄の腕にしがみついた。爪が肌に食い込み宇髄に傷を付ける。

 

「っ…きつ…善逸、力を抜け」

 

ゆっくり腰を進めながら宇髄が掠れた声でぎゅっと目を瞑って身体を固くする善逸に声を掛ける。

しかし善逸は力の抜き方なんて分かる筈もなくなくふるふると首を左右に振って身体を強ばらせる。

すると宇髄が顔を寄せて善逸の耳朶の後ろに舌を這わせて優しく囁いた。

 

「善逸。ゆっくり息を吐け、大丈夫だ」

 

感じる所を舐られて思わず息を吐くと善逸の身体の緊張が緩んだ。その瞬間を逃す宇髄ではなく一気にぐっと奥まで貫いた。

 

「あ、んんっ…!!」

 

自分の中に宇髄のモノがすっぽりと収まってるのを感じ善逸は目を見開いた。

 

熱、い…やっと、一つになれた…。

嬉しさに善逸の目から涙が溢れる。好きなのだ、宇髄が。例え、一生この想いが許されなくても今回の思い出だけで、幸せになれる気がする。

 

宇髄は深いため息を一つ吐くと顔に落ちる前髪をかきあげて中が馴染むまで暫しじっとする。繋がった所を見下ろすと破瓜で血が中から滴り落ちていた。

 

目を細めてそれを見つめるとそれから徐に、腰を穿ち始めた。

 

「んぁっ!ぁ、待、…先、生ッ……」

 

善逸は声を上げながらぐらぐらと揺さぶられ、引きつるような痛みに宇髄に助けを求める。

宇髄は善逸の滑らかな頬を伝う涙を唇で受け止めながら低く甘い声で言う。

 

「こっから良くなる、それまでの我慢だ」

 

突き上げるような圧迫感に声を上げると宇髄が善逸の唇を覆った。たちまち上がる声はくぐもって宇髄の口に消える。舌が絡み合うと痛みが気にならなくなり善逸は必死に宇髄の舌に応えた。

意識が甘く蕩け、次第に痛みよりもじんわりとした快感の疼きに変わる。奥になにか熱いものが生まれ、それが宇髄が奥を突く毎に次第に膨れ上がってきて善逸の身体を熱くする。

 

「は、ぁんッ…あぁ、ぁっ……」

 

中が甘く疼き、口から喘ぎ声が止まらず漏れだして身体を震える。

 

宇髄は息を荒くしながら次第に腰の動きを速めた。ひりつく壁を擦り上げられる度に熱く燃え立つような快感が生まれ全身を蕩けさせていく。さっきまで破瓜の痛みに震えていた中が今は悦びにうごめきながら宇髄自身に絡みついて離さない。

 

「やぁ…あ、ぁ…激し、ぃっ…!」

 

善逸は喉を反らし、甘い喘ぎ声を上げ続けた。既に脳裏は何度も押し寄せる快感にのまれて何も考えられない。

 

くちゅぐちゅっと淫らな音を立てて抜き差しを繰り返し、溢れた蜜が破瓜の血で薄桃色に染まって寝台のシーツを汚して濡らしていく。

 

「ひぁっ、あ…や、もう、だめっ…」

 

激しい動きに新たな愉悦が生まれて善逸は嬌声を上げるしか出来ない。未知の感覚に怯えながら、どんどん高みに追い上げられていく。

 

宇髄が力強く突き上げる度に善逸の脳裏で火花が散る。全身が淫らに燃え上がり気持ち良くて苦しくて、もうなにがなんだか分からない。

そして奥をぐりっと抉るように突かれて善逸は最後の大波に呑まれて意識が真っ白になって声を上げた。

 

「ひぁっ…あ、あぁ、や、やぁああぁぁっ!」

 

びくんびくんと身体を震わせ、大きく仰け反った善逸の身体を宇髄が力強く抱き締めた。

その瞬間、

 

「ぁ…!」

「ッ…」

 

宇髄が低い吐息を溢して腰を細かく震わせた。どうっと熱い奔流が善逸の中で弾ける。じんわりと広がる熱いものを感じながら善逸はしがみついていた宇髄の腕にすり…とすり寄るとふっ…と思考をとぎらせた…。

 

 

 

 

 

 

ふっと善逸は意識が浮上すると目を開けた。

目を擦って身を起こすとズキッと身体に痛みが走り、疲労で身体が重く怠かった。

 

自分の身体を見下ろすと綺麗になっていてバスローブを身に纏っていた。先程の行為がまるでなかったかのようだった。

けれど腰の痛みがそれが嘘ではない事を教えてくれた。

 

「起きたか」

 

ベッドの上でぼんやりしてると今までシャワーを浴びていたのか上半身を剥き出しのままで濡れた髪をタオルで拭いてこっちに歩み寄ってくる宇髄。

 

善逸は宇髄の姿をぼんやりと見つめる。

 ベッドに腰掛けて宇髄が大丈夫か、と善逸の頬を撫でると善逸は泣きそうになるのを我慢して笑顔を作った。

 

「…宇髄先生、今回はありがとうございました」

 

頬に触れる大きな手を、名残惜しく感じながらそっと外させて善逸は宇髄から顔を背けると痛む身体を無視してベッドから足を下ろして立ち上がる。

 

フラついたが踏み止まって気丈に振る舞う。この人には、大事な人がいるんだ。その前に教師と生徒の関係だ。それなのに危険を承知で自分なんかと寝てくれて…初めてを貰ってくれた。これ以上甘える訳にはいかない。

 

「私の我が儘で…初めてを貰ってくれてありがとうございます。もう、忘れて大丈夫ですから」

 

宇髄から背を向けながら素早く下着を着けてシャツを腕に通す。スカートを穿き、チャックを上げるとネクタイを結ぶ。

平常を装っているけど、声は震えてないだろうか。

 

「クソガキが…」

 

ひやりと冷たい声が後ろから聞こえてびくりとする。目を見開いて後ろを振り返ると宇髄がタオルを投げ捨てて立ち上がる所だった。

 

近付いてくるのに後ろに下がって距離を取ろうとするも歩幅が全く違うものだからあっという間に追い付かれてしまい壁に追い詰められた。

 

怖い表情で見下ろされて身体が恐怖で震えて動かなくなる。身長の高い宇髄に見下ろされると威圧感が半端なくて心の蔵が今にも止まりそうだ。

 

「お前…俺が何の責任もなく手を出したと思ってるのか。あ?」

 

ギロッと凄まれて善逸はガタガタと震える。

涙がポロっと零れそうになるのを我慢して宇髄を見上げた。

 

「せ、責任なんて…私がお願いした事なので先生が気にすることなんて……」

 

ない、と言おうとしたが宇髄の手がダンッ!と大きな音を立てて壁に手を着いた事によって最後のまで言えなかった。

人生で初めて壁ドンされたのに全然キュンと来なかった。怖い。

 

固まった善逸を睨みながら見下ろし宇髄は冷たい笑みを浮かべた。

 

「教師が生徒に手を出した、それもまだ未成年のだ。その時点で責任は取らざるを得ないんだよ。それを忘れて下さいだぁ?俺はそこまで無責任男じゃねぇ」

 

まるでお前が悪いんだろうが。と責められてるようで善逸は胸が痛くなって胸元をぎゅっと抑えた。けれど悪いのは自分なのだ。だからこそ責任なんて宇髄にはない。

お互いに今回の事を一生誰にも言わなければ済む話だから何故宇髄がこんなにも怒ってるのか善逸は分からなかった。

 

冷たい目が自分を見下ろしてるのが怖くて舌が悴むのをなんとか動かし尚更忘れた方が先生の為ですと伝えるとはぁ…と思いきり溜め息をつかれた。

顔を片手で覆ってコイツ、バカだ…と言わんばかりの宇髄の顔に次第に恐怖よりも善逸は怒りが込み上げてくる。

 

教師が生徒に手を出したのがバレたらヤバいのは良く分かっている。分かっているから先生には忘れて欲しいのに何でそこで怒る訳?意味分かんない!それにアンタ、嫁さんがいるじゃん…!!

 

「お前、俺の事好きなのに忘れられて良いのか」

 

は…?

 

善逸は目を見開いて宇髄を見上げた。赤みがかった目が見下ろしてきて宇髄の言葉を頭の中で繰り返す。好き。そうだ、自分は宇髄が好きだから誘って一生の思い出として初めてを貰ってもらったのだ。けれど、好きだなんて一言も伝えてない。

そりゃそうだろう、美人な嫁さんがいるのにこの想いを告げても私なんかが勝てる訳じゃないから。

だから今回も最後まで渋ってた宇髄先生をなんとかその気にさせて手を出すしかない状態に追い込んだ。それだけなのに何で私の気持ちがバレてる訳…?!!!!

 

固まる善逸を見下ろして宇髄がん?と首を傾げる。

 

「お前覚えてねぇの?意識落ちる前にお前好きって溢してたぜ?それに、お前が好きでもない男に処女捧げるとは思えねぇし」

 

その言葉に善逸は顔を両手で覆った。

まさか、自分から想いを告げていたなんて…!!!確かに意識が落ちる前に何か言った気がする。かぁぁっと赤くなる顔を俯く事で隠し善逸は泣きそうになって涙が今にも溢れそうになる。

 

好きなんて、伝えるつもりなんてなかったのに。 

 

黙って俯く善逸の両手を外し、宇髄は両手で善逸の頬を包み顔を上げさせた。善逸の目から一滴の涙が流れた。

 

「ま、そんな訳で?頑張って誘っただろうお前が俺はこれでも凄く気に入ってんだ。忘れろなんて言うじゃねぇ」

 

さっきまで体が冷えそうな程に冷たい目をしてたのに宇髄の表情は優しく甘い眼差しで善逸を見下ろし濡れた目元を親指で拭った。

せっかく拭ったのに、善逸は信じらんないと目を見開いて箍が外れたのか目からは止めどなく涙が溢れた。

 

「だ、って…アンタ…嫁さんいるでしょ…」

「あぁ。けど言ってねーが嫁3人いるから」

 

は…3人?!!驚愕した善逸が宇髄を見上げたまま固まった。そりゃ、こんな横暴だし自称・祭の神を宣うとんでもない派手派手とかうるさい男だけど素顔が男前だから女が放っとく訳ないと思ってたけど、嫁3人…?!!

そんなの許されるの…?!!!余りの驚きに涙が止まった善逸の頬を撫で、抱き締めた。

 

「既に3人いるし嫁が一人増えても大した事じゃねぇ。だから善逸…」

 

責任取らせて俺の嫁になれ。

 

せっかく止まった涙がまた溢れた。

こんな、事あっていい訳?これってもしかして私の都合の良い夢?まだ起きてないのかな私…だって、こんな、嬉しい事を…言われてるなんて信じらんない。

 

嗚咽が溢れ、つーんと鼻の奥が痛んだ。

いつまでも応えがないのに宇髄が善逸の頭を撫でて優しく返事は?と促すと小さな手が恐る恐ると宇髄の背中に回されて、こくっと頷いた。

行為の最中でも決して背中に回されなかった手が宇髄の背中にやっと回された。

 

ふっと笑って宇髄は小さな体を強く、世界から隠すように抱き締めた。

 

 

 

END

 

◆気付けば。


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俺にとって朝の登校はいつも命掛けだ。

学校は家からちょっと遠く電車で1つ駅を越えなければならない。歩ける距離ではあるのだけどそうすると学校に着く頃には多少疲れてしまうから余程健康に気を使ってる人や運動が好きな人でなければ歩かないだろう。

 

ただ登校の為に平日の朝の電車に乗る度に善逸は歩いた方が良いんじゃないか?っていつも自問自答を繰り返してる。

 

今も自問自答してる。やっぱり歩いた方が良かったんじゃないのこれ?だってさ、今通勤ラッシュで凄い満員電車な訳でドア付近にいる俺は人と人に潰されてンの。

これが美人なお姉様方とかだったら良いけど(むしろ幸せだ)スーツ着てるオッサンばかりだ。死にそう。

 

凄く苦しい!!!ホントに歩いた方が良かったかもしれない!でも昨日も一昨日もそう思ってたけどやっぱり歩きたくないの!何で寂しく一時間弱もする距離を一人で歩かないといけない訳??それだったら学生らしく友達というのとキャッキャッウフフと楽しく登校したい。何が悲しくてぼっちで登校しないといけないんだ!

 

でもやっぱり電車ツラい!!たった一駅なんだけどその一駅が長いのだ。電車が線路を曲がる度に連れてその度に人に潰されてぐえっなんて情けない声が上がる。

 

そして、音が多過ぎる。

この惨状に苦痛を感じてるのは俺だけじゃなくて色んな所から音が聞こえる。苛立ってる音が一番大きくそのイヤな音がダイレクトに頭に響いて電車に乗ってるのもあって酔いそうだ。

 

グラグラしてきた頭にまだ駅に着かないの?!!って危険信号を送ってくる脳に焦る。このままじゃ倒れてしまうわ!こんな満員の中で意識を失うなんて冗談じゃない!駅に着いた瞬間、出ていく人の流れに流されて踏み倒されるに決まってるじゃんか!!朝から人に踏み倒されるって不幸過ぎるでしょう?!!

 

なんて思ってた矢先に次第に周りの音が聴こえなくなってきた。

 

あれ?なんか音が遠、い…?段々と体に力が抜けてきてあぁ、いよいよ意識が無くなってしまうのかと他人事のようにグラつく視界で目を閉じかける。

すると丁度駅に着いたのかアナウンスが流れてドアが開いた。力の入らない善逸は人の流れに流されて押されるがままに押し出されてホームに倒れそうになった。

 

人に踏み倒される心配はなくなったけど朝から地面と挨拶するなんて最悪だ…と地面とキスする衝撃に備えて目をぎゅっと瞑るとお腹に何か回されて倒れずに済んだ。

 

あれ?と思い目を開けて後ろを振り返った。そこには、

 

「え…宇髄、先生…?」

 

見上げる先には宇髄先生が居て善逸はビックリして目を見開く。倒れそうになった善逸を間一髪で助けてくれたらしい。お腹に回された逞しい腕が力の入らない善逸を未だ支えてくれている。

 

「小さいと潰されて大変だな」

 

支えてくれる腕は優しいのに口はホントに最悪だなコイツ!アンタは良いでしょうよ2メートルくらいあんだから!何を食べて生きていけばそんなにでかくなる訳??意味分かんないわ天井にぶつかってしまえ。

 

「ソウデスネ…」

 

口答えする元気もなくて適当に返すとおや?という顔をして宇髄が善逸をちゃんと立ち上がらせる。

一瞬立ち眩みがしてフラついたがそれを我慢して一応助けてくれた宇髄にお礼を言おうと口を開いたが言葉は発する事は出来なかった。

 

「わ、え、ちょっと?!何っ?!!」

 

宇髄は自分のカバンと善逸のリュックを片手で持つと片腕で善逸を持ち上げたのだ。

腕の所に丁度座る感じで持ち上げられて慌てて首に腕を回してしがみつく。背の高い宇髄に持ち上げれると見える景色が上から見下ろす感じでいつもと違って見えた。

 

てかこの持ち上げられ方ってまるで子供じゃねーか?!!!いや確かにまだ子供だけど?!!それでも高校生にもなってこれはないわ!!!人はそんなにいないけど見られてる訳で凄っい恥ずかしいンですけどぉ?!!!!

 

「ちょっと、宇髄先生降ろしてっ…!」 

「うるせぇよ。地味に暴れるな!具合悪いンだろーが。このまま学校向かうぞ」

 

確かに具合は悪いけど何もこの格好で学校に向かわなくても…!!絶対に目立つじゃん!!恥ずかしいって事が分からないのかこの野郎!!?

 

何を言っても降ろしてくれなかった宇髄はホントにこのまま学校に向かって善逸は色んな所から向けられる好奇の視線に耐えかねて宇髄の肩に顔を隠した。

なんて奴だ…俺の学校生活終わったぞ。絶対に噂になるし禰豆子ちゃんの耳にも入るじゃんか…。

メソメソしてるとガラッと引き戸を開ける事に顔を上げた。保健室だった。

 

「暫くここで休んでろ。担任には俺から言っておく」

 

ベッドに下ろされ、頭をグシャグシャにかき混ぜられながら言われて大人しく頷く。

抱っこされての登校はホントに死にたくなったが宇髄先生からはずっと心配してくれてる音がしてたから強く文句なんて言えない。

 

「あの、ありがとうございます…」

 

 小さく、だけど真っ直ぐに見上げてお礼を言うと宇髄先生はフッと笑ったかと思うと身を屈めて顔を寄せてきた。

整った顔が一気に近付いてきてドキッとする。

 

「な、何?」

「礼ならこっちな」

 

ちゅっ、と可愛らしいリップ音が鳴った。

 

え、は?てか…え?今、何したよコイツ。

セ、セクハラだ!ここどこだと思ってンの??ざけんなよ滅びろよイケメンがっ!!!!

 

ワナワナと赤くなって目の前の男を唖然と見つめるとしてやったりといった顔した憎たらしい男は再度俺の頭を撫でて今にも鼻歌を歌いそうな勢いで楽しそうに保健室を出ていった。

宇髄先生の音は凄く楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

具合が大体良くなり教室に戻って途中から授業に参加するとあっという間にお昼になった。

善逸はリュックからお弁当だけを持って教室を出る。進む廊下は騒がしく購買の売れ切れ前に急ぐ生徒が全力疾走していてそれを先生が注意していた。

階段を上がって屋上に続く扉を開けると青空が視界に広がる。

 

「おっせぇぞ!!!!」

 

青空に似合わない太い声に善逸は声の方に視線を向けると伊之助が日陰の方で胡座で座りながら善逸を睨んでいた。

 

「いや、お前がいつも早いだけだからね?」

 

伊之助の傍まで歩み腰を下ろすと扉が開いた。伊之助と善逸が振り返ると炭治郎といつものようにフランスパンをくわえた禰豆子で善逸は禰豆子を見つけるとだらしない表情になった。

 

「禰豆子ちゃん~!!おはよう!いやもうこんにちはかな?朝会えなかったから凄く会いたかったよ!!」

 

ハートを飛ばす勢いで話す善逸に炭治郎は苦笑いをしながら二人に近付き禰豆子と共に腰を下ろした。

今日もセーラー服な禰豆子ちゃん可愛いな、とデレッデレな善逸を炭治郎が禰豆子と自分の分のお弁当を広げながら声を掛けた。

 

「善逸、具合は大丈夫なのか?朝に宇髄先生から具合悪いから保健室で休んでいると聞いたんだけど」

 

宇髄。善逸はその名前を聞いて禰豆子を見つめて頬を染めていたのに一瞬にしてイヤな事を思い出した、とでも言うように顔をしかめた。

保健室での出来事を思い出したのだ。

 

「あぁ、うん…もう大丈夫大丈夫。電車に酔ってしまっただけだから心配しないで」

 

の割りには表情が可笑しいぞ善逸。と言う炭治郎に善逸は気にしないでイヤな事を思い出しただけ!って改めて宇髄に恨み言を頭の中で吐き捨てる。

 

お昼が終わる前にさっさと食べようと善逸も弁当を広げた。中身は栄養を考えたバランスの良いものばかりでいつもながら美味しそうだ。

 

「善逸のお弁当は今日も美味しそうだな」

 

天ぷらにかぶり付いてタレで頬を汚す伊之助の頬をハンカチで拭いてあげながら炭治郎が善逸のお弁当の中身を見て微笑む。伊之助が止めろと騒いでるがお構いなしの長男。流石だ。

禰豆子は玉子焼きを持った箸を兄に向けると気付いた炭治郎がパクっと口に含んで礼を言って禰豆子の頭を撫でる。

 

「うん、爺ちゃんがいつも作ってくれるから」

 

言われてお弁当を見下ろしながら善逸は小さく笑みを浮かべた。

善逸は訳合って孤児で親が居ないのだけど今一緒に暮らしている爺ちゃんが何故か引き取ってくれたのだ。

 

まぁ家に着いていけば爺ちゃんは剣道の道場の師範らしくて俺を跡継ぎにと引き取ってくれたのが分かった訳だけど。

弱い俺はいつも逃げてばかりで爺ちゃんを困らせて怒らせてばっかりだけど爺ちゃんはいつも厳しくして俺を見捨てる事はしなかったしいつも愛情の音がしていた。殴られてばっかで何回タンコブが出来たか知らないけど。

お弁当も購買で買うから大丈夫だよと言ったのに育ち盛りの男が購買だけなんて体に悪い!と何故か殴られてわざわざ毎朝早起きしてくれて弁当を作ってくれるのだ。

殴られた意味は分からないけど凄く嬉しかったのを今でも覚えている。

 

「良かったな善逸」

 

ニコニコとまるで自分の事のように嬉しそうに言う炭治郎に善逸は唐揚げを口に運びながらうん。と頷いた。

 

食べ終わる頃には昼休みも後半分の所で各々弁当を片付けてのんびりしてると校庭の方が何やら騒がしい。

禰豆子と伊之助が気になるのか二人がフェンスに近寄り校庭を見下ろすのに習って炭治郎と善逸も後に続く。

 

見下ろす先にはボールを自由に扱って綺麗に生徒をかわしながらドリブルしゴールインさせて生徒から歓声を浴びる、サッカーをしていた煉獄先生がいた。

走るのに邪魔にならないようにかいつもしてるネクタイを外し、ボタンを二個ほど外して汗を流す姿は何故かキラキラしている。

体育系は汗と泥でむさ苦しいイメージなのにそんなに事がない。アイドルが運動してるような光景のように眩しい。

太陽の日差しを浴びて黄金に輝く髪がキラリと光ってるように見える。あの綺麗な髪が地毛だなんて、煉獄先生は外国の血でも入ってるのだろうか。

 

善逸が隣に視線を向けると丁度煉獄先生がゴールインする所を目にしたのか炭治郎がキラキラと目を輝かせながら煉獄先生を熱心に見つめていた。

 

うん。煉獄先生カッコ良かったよな。伊之助が悔しいがやっぱりアイツスゲー…!!って興奮してるのもホントに煉獄先生って慕われてるなぁ…と実感する。善逸も煉獄先生は生徒に対して分け隔てなく接してくれる。何度も騒ぎに巻き込まれて大変な事が起きるけど煉獄先生はいつも大変だったな、大事ないか?って聞いてくれる。

風紀員のくせに騒ぎを直ぐに治められないのかって責められる事なんてなかった。人が良い煉獄先生は頼れる兄貴って感じでこの人に褒められたいからこの学園には歴史の点数が低い生徒は居ない。だから善逸もloveではなく、Likeで煉獄先生が好きだ。

 

でもそんな煉獄先生が唯一特別扱いしてる生徒が一人いるけど。

 

生徒とハイタッチしていた煉獄先生がこっちに気付いた。あ、と隣で声がした。煉獄先生がこっちに向けて笑顔を見せて手を振ってくれたのだ。

隣の炭治郎が頬を赤く染めながら手を振り返しているのに善逸は炭治郎が本当に煉獄先生大好きだよなぁって改めて思う。

 

「炭治郎ってさ」

「へ?うん?」

 

ホワホワ嬉しそうな炭治郎に善逸は言う。

 

「煉獄先生の事本当に好きだよね」

 

固定も否定の言葉もなくてあれ?と善逸が思うと炭治郎は耳や首まで赤くなって両手で顔を覆っていた。

 

「えっ?!ちょ、ちょっと炭治郎?!なんかごめんよ?!!」

 

今にも倒れそうな炭治郎を慌てて扇ぐと禰豆子と伊之助が不思議そうにこっちを振り返った。何でもない、と言うと伊之助はまた煉獄先生の方へ視線を戻して禰豆子は炭治郎にぴとっと腕に寄り掛かる。

 

心配してくれてありがとう禰豆子、兄ちゃんは大丈夫だよ。と炭治郎が禰豆子の頭を撫でるのに本当にこの兄妹は仲が良いなと微笑ましくなる善逸。本当は俺も禰豆子ちゃんと手を繋いだりとかしたいけどね!!!!

 

「…俺ってそんなに分かりやすいかな?」

「ん?煉獄先生の事?分かりやすいというか、俺は音が聞こえるから分かるというのもあるけど…でもそうだな、炭治郎顔に出やすいし」

 

恥ずかしそうに聞いてくる炭治郎に善逸は考える素振りで斜め上を見上げながら今までの炭治郎の反応を思い返してみる。

音で感情を分かってしまう俺には炭治郎がさっき煉獄先生を見ていた時に凄く嬉しそうな、こっちまで照れてしまうくらいのドキドキするような音が聞こえたのだ。その音を聞いてるとこっちまで幸せな気持ちにさせられるから本当に炭治郎の音は優しい。

 

「そんなに分かりやすいのか俺…」

「でも煉獄先生からも同じ音がするよ」

「えっ?」

 

煉獄先生と炭治郎が並んで話してると二人からは同じ音がするのだ。その音が重なりあって綺麗な音を奏でるのを聞くと二人は想い合ってる事が凄く分かる。

それを伝えると炭治郎は今にも泣きそうな顔ではにゃ…と花が咲くように綻ぶような綺麗な笑顔で微笑んだ。

 

 

 

 

 

長かった1日が終わり、明日から休日だ。

生徒は足早にそのまま帰宅する者とどこかに寄ってから帰宅する者で別れる。例外なのは大会に向けて練習中の運動部だけだ。

校庭から聞こえる掛け声に頑張ってるなぁと思いながら善逸は委員会の仕事である校内の見回りを終えて教室に戻り自分のリュックを持ち上げる。 

 

伊之助は病院に行くというひささんの付き添いでさっさと帰ってしまっていた。口は悪いが伊之助が里親のひささんの事を大事に思ってる事にこっちまでが嬉しくなる。山で暮らして猪に育てられたなんて想像できない暮らしだっただろうが愛してくれる人が引き取ってくれて伊之助は今幸せなのだろう。

炭治郎は煉獄先生の手伝いで残るみたいだし(多分そのまま一緒に帰るんだろうな)禰豆子ちゃんは同じクラスの真菰ちゃんと帰っていった。

俺は一人でこれから帰宅だ。禰豆子ちゃんと帰りたかったな…風紀員ではなければ一緒に帰れたのに。しゅんと落ち込みながら善逸は下駄箱で上履きから靴に履き替える。

 

昇降口を出ようとした所で善逸は一人の声に引き止められた。

 

「おい、そこのチビ」

 

しかめた面で善逸が声の方を向くと宇髄先生がこっちの方に向かいながら歩いてくる。

何で最後の最後にコイツに呼び止められるのかな?!!!ホンっトにツいてない!!!!!

 

「…何ですか?言っときますけど俺がチビなんじゃなくてアンタが規格外にデカいだけだからな!!」

「はいはい。てか今日は一人で帰るのか。いつものガキ供は?」

「炭治郎は煉獄先生の手伝いで居残り!禰豆子ちゃんは別の子と帰ったんです!伊之助はお婆さんの付き添いでもう帰ってますよ!」

 

俺はこれから一人で帰るんですが何か?!と宇髄を見上げて何も言わせんぞと威嚇する善逸。

 威嚇してくる善逸の頭を上から撫でるとぶへっと奇声が上がった。

 

「ふぅん?じゃあ一緒に帰るか」

 

「ちょっと!一々人の頭グシャグシャにしないでくれます?!あと一緒に帰るなんて俺は…、え?今なんて?一緒に帰る?」

 

何て事ないように平然と言うもんだから善逸は一瞬聞き逃しそうになったがん?と違和感を感じて先程の言葉を反復して思い返し宇髄を見上げた。

 

「何だよ。俺と帰るのに文句あんのかコラ」

 

どこのヤクザだよ。

折角乱された髪を整えたばかりなのにあ"ぁ?とドスの効いた声でメンチ切られてガシッ!と大きな手に頭を掴まれる。

文句言わせる気なんてねーじゃねぇかよ!!!理不尽!!!

 

「イエ、ウレシいデス」

「最初からそう言いや良いんだよ」

 

手が頭からやっと離されたがその腕は善逸の肩に回されてグイッと引き寄せられた。

そのまま歩き出したから宇髄につられて善逸も歩き出すが善逸は回された腕をぺちぺちっと叩きながら宇髄を見上げる。

 

「宇髄先生この腕は何ですか。邪魔です歩き難い」

 

このクソガキ!とピキッと青筋を浮かべる宇髄がこのまま首を絞めたろうかと不穏な事を考えてる事なんて善逸は露知らず。

しかしそんな事はせず宇髄は閃いたとばかりに笑みを小さく浮かべると少し身を屈めて善逸の耳元に口を寄せた。

 

「なぁ…帰る前に俺ん家上がれよ」

 

色気のある声音でそっと息を吹き掛けるように囁かれて善逸はバッと囁かれた耳元を手で押さえて赤く染まった顔で宇髄を信じられないと見上げた。

教師がこんな路上の真ん中で何を生徒に言ってるんですか?!!!信じらんないわコイツ!!!?

 

「仕事終わったんだしこれからはプライベートだから良いんだよ」 

 

 なぁ、ちゃんと送るし寄るよな?てかお前に拒否権なんてねーけどな。と先を進む宇髄にされるがままに善逸はこんな男に胸を締め付けられる事を悔しく思った。

 

俺は禰豆子ちゃんが好きな筈なのに、こんな筋肉の塊みたいな男にドキドキするなんて…どうかしてる!!!!

 

善逸が赤くなった顔を俯く事で隠そうとしてるみたいだったが宇髄からは耳や首筋まで赤くなってる事が丸見えだった。 

こんな生意気なガキにいつの間にか心を動かされて無意識に視線がいつも探していた。具合が悪いと分かればヒヤッとして一刻も早く安全な所で休んで欲しいと焦る。

 

けれどそう思う自分が嫌いではない。

 宇髄は更に善逸を引き寄せた。今度は文句を言う事なく善逸はされるがまま、宇善の懐で落ち着いた。

 

 

end

 

 

そして家に送ってくれたのは夜の22時頃だった。

 

 

 

 

◆煉炭と宇善

 

 

今日は何時もに増してどこも騒がしい。

音が頭の中に響きぐわんぐわんと脳ミソをかき混ぜられるようで気分が酷く最悪だ。

何故自分がこんなにも音に敏感なのかは知らない。生まれた時からこうだったのか知らないが、物心ついたときから僅な小さな音ひとつでも全て鮮明に聴こえてしまう。

 

余りにも良過ぎて心臓の音だけで人の感情を聞き取れてしまう程に、耳が良かったのだ。

だから昔は人との付き合いが苦手だった。今ではどう人と接すれば良いか学習したからそんな事はないが、それでも余りにもたくさんの音が耳に入ってくると頭がパンクして割れそうになる時がある。

 

今がそうだ。どこかで祭りでもやっているのかドンドンドン!と太鼓を叩く音、人の楽しそうな賑わった音に、そんな祭りの音に誘われてざわめく動物たちの音。

一気にたくさんの音を頭が処理しょうとするけどそんなの無理な訳で俺は今、最高に頭が痛いしグラグラするしで静かに休みたい訳なんですよ。なのに、

 

「何で…アンタが居るんすか…」

 

夏休みの間、勉強合宿という名目で歴史の古い煉獄さんの大きな屋敷にいつものメンバーで寝泊まりしているのだ。

勉強は朝からお昼の間に済ませていて今は夕方で煉獄さんと炭治郎たちは夕飯の準備をしていて居間にはいない。

俺は気分が酷いからと寝転んで休ませて貰ってるンだけど、何でここに呼んでもない宇髄さんが居る訳??誰だよコイツ呼んだの!

 

宇髄さんは寝転ぶ俺の頭の上で腰を下ろすとニヤリと見下ろしてきた。

 

「あ?丁度通り掛かったから煉獄に一声掛けようとしたら煉獄から上がれって言われたんだよ。俺に会えて嬉しいだろ喜べ」

 

誰が喜ぶか!

本っ当に偉そうだなアンタ!俺は気分が悪いから休みたいのにアンタが居たんじゃ休めるもんも休めない訳!!?分かる?!!だから早く帰ってくれませんかね?!!

 

そう言いたいのに声を出すのも怠くて突っ伏す。すると何を思ったのか宇髄さんがいきなり首元に触れてきた。

 

「ッ…!」

 

夏なのにちょっとひんやりしてる指にビックリして宇髄さんを見上げると真剣な表情をしていた。

何…?もしかしてこれは心配…してくれてる感じ?いつも何かと絡んできて口喧嘩してたまに手も足も出るのにこんな時に心配してくれんの?何それ…顔だけじゃなく性格まで男前かよ滅べよマジで。

 

何故か赤くなる顔を見せたくなくてまた突っ伏すと首元に触れていた手が脇に向かってひょいっと簡単に体を持ち上げられた。

 

「えっちょっと、何何何…ッ?!」

 

青ざめる俺なんかお構い無しに宇髄さんは俺にタオルケットをぐるぐる巻き付けるとそのまま胡座をかいた膝に乗せて頭を胸元に押し付けられた。

ちょっ、タオルケット…暑いんだけど?!手足がタオルケットで巻き付けられてるから大した抵抗も出来ずにバタバタしてると宇髄さんがぎゅっと俺を抱き締めて小さな声で溢した。

 

「大人しく俺の音だけ聞いてろ」

 

びっくりしてバタバタもがいてたのを止めてしまった。目線をそろそろ…と上げると未だに真剣な表情をしてる宇髄さんの素顔が目の前にあって口から心臓が飛び出るかと思った。

いつも人をバカにしたような笑みばかり浮かべてるクセに何で急にそんな真剣な表情を見せる訳…ズルくない?男前ってだけでも腹立つのに…こんな、俺だけドキドキさせられるのって本当にムカつく!!!

 

自称祭りの神を宣う宇髄さんの音は、静かだ。研ぎ澄まされた刃のように鋭いのに、聴こえてくるのは静寂だ。心臓のトク…トク…と規則正しいリズムで動くのですら本人の性格に似合わず静か過ぎて最初の頃はこの人何かに取り憑かれてるンじゃないのかって思った程だ。まぁ、そんな事はなかったけどね。

 

タオルケットで赤くなった顔を隠し押し付けられたままに宇髄さんの胸元に耳を当てて心臓の音を聞く。すると今まで聞こえてた騒音が遠退いて宇髄さんの音だけが耳に残る。

さっきまで具合が悪かったのが嘘のように良くなってきて、宇髄さんの手が頭を撫でる心地好さに眠気を誘われる。

 

「眠っとけ」

 

夕飯の時間、と頭の隅で思ったが頭を撫でる大きな手と体を包み込む暖かさに抗える事なんて出来る筈もなく、意識が落ちていった。

 

眠った善逸の顔を見下ろし、頬を輪郭に添って撫でて前髪を掻き分けると額にそっと唇を落とした事を知ってるのは庭の木に止まっていた二羽の鴉しか知らない。

 

 

 

 

 

「善逸大丈夫かな…」

 

台所では炭治郎がじゃがいもの皮を剥きながら居間で休んでいるであろう善逸の心配をしていた。

傍らで煉獄が野菜を水で軽く洗いながら小さな笑みを浮かべて大丈夫だと答える。

 

「我妻少年の傍には宇髄がいるから心配する事はないさ」

 

炭治郎が煉獄を見返すと煉獄はニコッと再度大丈夫だ、と安心させるように笑った。

それに炭治郎は煉獄が言うのだから大丈夫なのだろう、とやっと笑みを浮かべる。

 

「それにしても、宇髄さんって家が確か反対側の方でしたよね?こっちに通り掛かる程の用事ってなんだったのでしょうか?」

 

炭治郎が首を傾げて煉獄に分かりますか?って聞かれるのに煉獄はキョトンと目を見開くが次の瞬間声を上げて笑った。

 

「はははっ!宇髄も素直に言えば良いものを!」

 

分かっていない炭治郎はえ?え?っていきなり笑い出した煉獄に困惑するがズイッ!と顔を寄せられてぱちくり、と大きな目を見開く。

 

「夏休みの間、竈門少年に長らく会えないのが我慢出来ずに勉強合宿を名目に誘って会いたくなった。それと同じだ」

 

目をスッと細めて赤い目を見つめると丸く柔らかそうな頬がボンっ!と擬音がつく程に赤く染まった。

ぷしゅ~と湯気をたてる炭治郎に愛らしくて堪らず煉獄は自分の持っていたものと炭治郎が持っていたじゃがいもやピーラーを取り上げて端に下げると小さな体を抱き締めた。

 

「はは、竈門少年は本当に愛らしいな!」

 

赤くなりながらも抵抗せずされるがままになりながら炭治郎は煉獄の背にそっと手を回した。

夏休みの間、会えなくなるのが寂しかったのは自分だけじゃなかった。

炭治郎は嬉しくて顔がニヤけそうになるの煉獄の胸元に顔を埋めて隠した。

 

 

 

end

 

◆宇善

【揺れる。】

 

 

 


「おら、行くぞ」


は?え?ちょっ、宇髄さん?!訳も分からず一人ボンヤリと公園のベンチで座ってたら首が痛くなる程見上げなければならない宇髄さんがいきなり音もなく背後から現れて首根っこを掴まれて引き摺られる。

俺は意味が分からないし首が締まって苦しいのに宇髄さんはそんな事もお構い無しに俺を引き摺ってどこかへ向かって歩いてく。


「うへぇッ、ちょっ、マジで苦し…ッ」

筋肉で硬い腕をぺちぺちっなんて可愛い音ではなくベシベシッ!!と叩くと仕方なしっていう感じで解放された。
はぁ…死ぬかと思った。いやマジで。ホント何なのこの人。俺に何か恨みでもあんの?恨みなら俺の方がいっぱいあるけど?男前だからって何でもかんでも許される訳じゃねーからね?分かってます?男の俺から見ても男前って分かるから嫁さんが3人も居るんでしょうねチクショウ羨ましいわ爆発しろよこの野郎。

恨み妬みを脳内で吐き捨ててると首根っこを解放された代わりにと手を握られた。指と指をぎゅっと絡める恋人繋ぎっていうヤツを。

は?…いや、だから何…、


ギョッとして文句を言おうと宇髄さんの顔を見上げたら有無を言わせない表情をして俺を見下ろした。何でそんな顔してんの…俺何かしました?
結局何も言えず手を繋がれたまま黙って宇髄さんが歩いてくままに俺も足を動かした。何で…今日は黙りなんだよ…いつもだったら派手派手とかうるさいのに…俺まで黙ってしまうだろうが馬鹿野郎…。


暫く歩いてたら目的地に着いたらしくて顔を上げると目の前に飛び込んできた建物は宇髄さんが住んでる家だった。何故宇髄さんの家を知っているかは前に一回だけ訪れた事があったからだ。

あの時は煉獄さんが宇髄さんに用があったからその時一緒にいた炭治郎も連れて行かれたからそのついでって感じで俺と伊之助も着いてったのだ。

だけどあの時は煉獄さんが居たからここを訪れる理由があるけど、今は理由がない。俺何で宇髄さんに家に連れてかれてんの?俺の頭の上にはいくつものハテナマークが浮かび上がってる事だろう。マジで何でよ。


「あの、宇髄さん…何であんたの家に、」

言い終わらない内にまだ繋がれたままの手を引っ張られて家の中へと入ってしまった。玄関先で1度二人して立ち止まる。沈黙が耳に痛くて宇髄さんを見上げた。
さっきからホントにどうしたのこの人。俺何かしちゃったか不安になってたけどいい加減イライラしてきたんですけど?なんで好き好んでもないのに男と手を繋がらなければならないのだ。男なんかと繋ぐよりも禰豆子ちゃんと手を繋ぎたかったわボケ!

「あんたいきなり連れ出してきて何なんだよ!さっきから黙りだし何か文句でもあるんですか?!!横暴なのもいい加減にし…、」


今度は我慢ならず文句を言おうと開いた口は言葉の途中で途切れた。宇髄さんが身を屈めて俺の手首を押さえ付けると口を塞いだからだ。背中が玄関のドアに押し付けられて大きな熊にでも覆い被さられたみたいに影が俺を覆う。

「んぅっ、」

乱暴に奪われた唇だったけどその後は優しく触れるだけの口付けを何度もそれはしつこいくらいにされる。熱くて柔らかな唇が自分の唇と触れ合う度に耳に心臓があるじゃないかって思うくらいドキドキうるさい心拍音に頭がクラクラしだして玄関のドアに預けてた背中がどんどん下がってずり落ちていく。
完全に落ちる前に逞しい腕が腰を掴まえて支えてくれる。

唇もやっと解放されてやっと息を吐くと知らず知らずその息が甘い熱を籠って二人の間を掠める。

「い…きなり、何するんですかあんた…」

腰を支える腕に掴まり、爪を立てて睨み上げる。するとさっきまで怖いくらいに黙りを決め込んでた無表情の顔がいつものようにニヤリと憎たらしい笑みを浮かべた。

「俺は神だ。俺のものに何しょうが俺の勝手だろ?」


本当ヤベぇ奴だよ。

え?てか待って。今"俺のもの"って言わなかった?それって何が?もしかしてそれって俺のこと?俺いつの間に宇髄さんのものになった訳?本当に横暴なのもいい加減にしろよお前!自称神だからって好き勝手していい訳ないからね?俺ものじゃないし出来れば禰豆子ちゃんのものになりたいわ!炭治郎もいい加減禰豆子ちゃんと俺との交際を認めてくれても良いんじゃないの?

善逸は白い目で宇髄を見上げて現実逃避をしてたら宇髄はそんな善逸を軽々と抱き上げると無造作に靴をポイポイッと放り出すと騒ぐ善逸を意に返さず2階へと続く階段を上がって自室へ入った。

宇髄の身長に合わせて作ったオーダーメイドのベッドなのか広く大きいそこへ善逸を落とした。顔から突っ込んでぐえっと潰れた蛙みたいな不細工な悲鳴を上げた善逸は直ぐに起き上がると宇髄を見上げてギャーギャーと声を荒げて喚いた。

うるさそうに顔をしかめる宇髄は徐にいつも巻いてる頭の包帯とキラキラ眩しく輝く大きなダイヤが幾つも埋め込んであるのも外した。

すると肩まで届く案外柔らかい髪がはらっ…と宇髄の顔に影を作り部屋を取り巻く空気も変わる。

空気が変わったのを感じとった善逸は喚くのを止めると背中に冷や汗が流れるのを感じた。この空気はヤバい…緊張感が部屋を包んで善逸は宇髄の目を見つめたまま無意識に逃げようと後ろへと体が後退る。


宇髄はそんな善逸を見下ろしながら少しずつ近付き上着のボタンを外し、脱ぎ捨てると今度はYシャツのボタンをゆっくり外しながら善逸の目をずっと見つめていた。

ボタンを全て外し終わると善逸はベッドの真ん中で尚も逃げようとしていて宇髄はベッドに片膝を乗せた。両手をベッドに着けるとYシャツが開き宇髄の鍛え上げられた胸筋や腹筋が影を彩り善逸の目前に迫る。


な、な、なん、何で脱いでんの?!何で近付いて来んの?!!そんな顔で俺に近付いて来ないでくれます?!!!


想像したくもないが宇髄とこの部屋の空気で善逸はこれから何をされそうになってるのか頭で分かってしまった。女が、禰豆子ちゃんが好きなのに何故宇髄の真剣な表情と鍛え上げられた体を見ただけでこんなにもドキドキしてるのか善逸は戸惑って頭の中が混乱する。

逃げたいのに体が動かず、これ以上後ろへ逃げられずとうとう後数センチの距離でキスが出来るまでに宇髄に追い付かれてしまった善逸。

大きな手に丸くて柔らかな頬を触れられてビクッ!と体を震わせると赤くなった顔が宇髄を見上げて大きな目を潤わせた。


「…宇、髄さん…」


善逸は余りにも胸がドキドキして苦しくなってくる。
原因は目の前の男だけれど、この場で助けてくれるのもこの男しかいないのを知っている。

頬に触れる手に寄り添って目を閉じた。
ふっ…と低い笑い声が聞こえると空気が揺れて目を閉じたままでも影が覆い被さるのが分かった。

 

 

 

 

end

 

 

次は多分エロ突入かな?w

美琴が煉獄さん好き過ぎるのはこんな所が素敵だから!!

 

煉獄さんという人間に惚れ過ぎて原作を読むだけで泣いてしまう美琴です。

 

今回は煉炭の良さについて、そして煉獄さんという人間について美琴が想ってる事をつらつらと語ります。

 

先ず最初に煉獄さんを初めて見た時、頭と目が派手なヤバい人だ…(;゜∇゜)と思いました。

そして笑顔でキリッ✨と炭治郎と禰豆子を斬首する!って言いましたのよ、煉獄さんは。当時の私は「は?え?可愛い炭治郎と禰豆子を斬首ってこの人何言ってンの?ヤバい人だ💢顔良いけど!」って思ってましたよ!

でも煉獄さん炭治郎と禰豆子の事を「鬼と鬼を連れた隊士」としか見てなかったから仕方ないですよね、もし私もその場でそんな事を言われたら同じ事を言うと思うし。この世界では鬼はもっとも危険な存在だから鬼を連れてるなんてどんな事情があれ、許されない事ですもんね。でも禰豆子は鬼だけど人間を守る事が出来る子なので死なせてはいけないです!!ホントに!!禰豆子可愛いンです💕

ただ煉獄さんが禰豆子が嫌いだから斬首すると言ったのではなく隊律違反で鬼を人間が連れて人を食ってしまえば取り返しがつかないから手遅れになる前にそう言っただけだと私は思ってます。

実際に身内が鬼になってしまってこの子は人を食べないって庇う人がいたけど結局やっぱり食べられてしまう人ばかりだったからそう簡単には鬼を認める事は出来ないよね。

ただやっぱりヤバい人だと分かってても煉獄さんは凄くカッコ良い人だって思ってたw

一々発言が可愛いンです!「むぅ…!」って何??!可愛いよ!!横顔美人!でも凛々しくてカッコ良いから反則だった!!!

今見るともうね、ヤバいです目茶苦茶好き💕💕

しかも炭治郎がまだそこまで力がないのに「鬼舞辻無惨は俺と禰豆子が倒します!!」って言うのに柱の皆笑ってたのに煉獄さんだけ良い心掛けだ!って斬首すると言ってたのに一人だけ炭治郎に感心してたのよ???ズルくない?? 惚れるわ(真顔)

 

そんで次に炭治郎と煉獄さんが回顧したのが無限列車の所です。炭治郎が自分の技に関して煉獄さんに訊ねる為に無限列車に乗り込んでた煉獄さんに会いに行くんです!

めっちゃ食いしん坊みたいにお弁当を箱11個食べてたんです…何それ可愛い()

うまい!うまい!と連呼しながら綺麗に箸を持って綺麗に食べてるんですよ?お弁当作って食べて貰いたいよ…煉獄さん可愛い💕

溌剌とした話し方をする人で目がちょっとアレだけど凄くいいなぁ…って思いながらジャンプ読んでた記憶があります!

そしてやっぱり初対面の時の斬首する!っていう発言が大きかったからいきなり「俺が面倒見てやろう!もう安心だ!」っていうのにえ?!面倒見てくれるの?!ってビックリした…こんなに面倒見良い人だったんだぁ~。って煉獄さんを見る目が変わった瞬間でした。

炭治郎が切符の事を知らず聞くとちゃんと教えてくれる所にもキュン💕としたです。何この人、ホントに面倒見良いんだけど?!!って煉獄さん出てまだ一話なのにハマり込む予感しかなかったです。鬼が出た瞬間にも気付き一瞬にして瞬殺したのにはもう完全に惚れました(真顔)一瞬にして煉獄さんに惚れた。

煉獄さん強ぉ~!!!🙌って次のページを捲った瞬間、目の前に飛び込んできたのが煉獄さんと炭治郎が肩を寄せあって眠ってる場面でした()

 

は…?え…??た、炭治郎…????

ってなりました()炭治郎お前、長男だから人に寄り掛かられるのは想像出来るけど、炭治郎が寄り掛かるの?!!!って激しく萌えた…炭治郎が煉獄さんの肩に頭を乗せてるの。めっっっちゃ可愛い(真顔)

鬼滅は単純に面白くて炭治郎が可愛くて読んでた筈なのにここで一瞬にして腐として目覚めて煉炭に落ちました。単純な美琴…😌

公式で煉炭だった!!!(泣)公式ありがとうー!!!!!って叫んだ。仕事仲間のねべちゃんに今週のジャンプがヤバかったね?!!煉獄さんと炭治郎に落ちたよ!!!って興奮して語ってたな…✨

だってホントに可愛い。煉獄さんが肩を貸してるのも煉獄さんに寄り掛かる炭治郎もホントに可愛いかった…今もマジで何回見ても可愛いわ。可愛くてツラいわー()

煉炭に落ちてから毎週の月曜日が楽しみになり、どんどん煉獄さんにのめり込みました♥

しかもまさかの煉獄さん弟が居る!!道理で面倒見が良い筈だよ!!納得!弟の千寿郎くんめっちゃ可愛いし兄弟似過ぎてヤバい可愛い。煉獄さんは眉毛がキリッ✨としてるのに対して千寿郎くんは不安気な垂れ眉毛なの!!マジで天使💕💕

そんな兄弟がお互いに大好き過ぎる件についてはホントにズルかった…。煉獄さんわざわざ膝をついて目線を合わせて千寿郎くんと会話をするんだよ??何このお兄ちゃん。私も煉獄さんお兄様に欲しいよ…😭💕

煉獄兄弟可愛い過ぎる、尊い好き!!!🙌✨

 

「お前には兄がいる、兄は弟を信じている」とか、言われてみたい…(><)💕

泣いてる千寿郎くんをぎゅっと抱き締めるのなんて、もう…もうね!ダメ、落ちない訳がないじゃないですか!!!!!!

 

煉獄さん~!!!💕💕ってなっていく毎週月曜日が私の生きる力になってました(><*)💕

仕事に行く前にコンビニに寄り、ジャンプを立ち読みして「あぁ~ッッ!!煉・獄・さ・ん…!!😂🙌♥」って毎日が薔薇色のようにウキウキしてたのに、あの上弦の三…猗窩座が現れてから…!!!💢💢💨

 

最初の方はおぉ、また新たな敵キャラ来た~。って感じで読んでたのですが猗窩座が煉獄さんを「鬼にならないか?杏寿郎」っていきなり呼び捨て?そんでスカウト…というかプロポーズ??💢💢何それ。ってなりました!

煉獄さんにはね、炭治郎という可愛い愛し子がいるの!!!でも煉獄さんが受けっていうのも有りだって事を教えてくれてありがとう!!💢💢💨ってなったのだけど煉獄さんと猗窩座のバトルできゃ~~ッッ煉獄さんカッコ良い~!!!😆🙏💕ってなったのは2週間くらいでどんどん雲行きが怪しくなってまさかの煉獄さんの死亡フラグ…え?待って、え?え?ちょっと…ここ、大丈夫だよね??って朝立ち読みする時にはもう気になり過ぎて仕事にならず、有り得ない失態とか失敗する始末…()

 

まさか自分がここまで一人のキャラを思って生活に支障を来すとは思わず驚きました。

でも恋にも似た感情で煉獄さんが好きになっていたので当然とも言えます( ̄^ ̄)✨

どう生きていけば煉獄さんみたいに「人は老いるからこそ愛しく尊いのだ」ってどう思えるの?煉獄さん何歳なの?ねぇ、教えて!!

煉獄さんが出る月曜日を待つ時間で煉獄さんへの想いが募ってく一方で原作での死亡フラグが高まり、落ち込みまくり…仕事になりませんでした()

 

フラグの時点で信じられなくて信じたくなくて泣いてしまう美琴はもうダメだった。毎週泣いてた。猗窩座絶対に許さない😢💢🔪🔪🔪

「死ぬな杏寿郎」とか言うンだったらさっさと消えてくれないかな???😭😭😭💢💢お前の所為で煉獄さんが~ッッ!!!💢💢どうしてくれるの?!!ってもう、もうね、泣いてた。

今これを打っている美琴も泣きそうというかもう泣いてる…煉獄さんを返して(泣)

結局希望虚しくも煉獄さんは死んでしまうという…月曜日が待ちきれず土曜日に発売されるお店でジャンプを買って来たのですが66話のセンターカラーを見ただけでもう号泣…家路に付きながら煉獄さんって号泣しながら部屋に戻るとページ開いてに2、3ページでもう涙で読めなくてそこから一時間は泣いてた()

 

ここまで泣いたのって初めてで煉獄さんがホントに好きだった。煉獄さんを返してよ、もっと煉獄さんが動くところや話す所、炭治郎に技を教える所とかもっと読みたかったし煉獄さんが何が好きなのか知りたかった()

 

何でここで死なすの?1ヶ月くらいはもう再起不能だった美琴です…煉獄さん…(泣)

 

 

 

 

 

 

 

◆煉炭

 

瞼が重い。体が言うことを聞かない。

まるで金縛りに遭ったかのように炭治郎の体はピクリとも動かず、意識も朦朧とし始めた。

 

その時、

 

「竈門少年」

「…煉獄、さ…ん…?」

 

昔に、聞いた事のある忘れたくない声音が炭治郎に降り掛かった。

重かった筈の瞼がその声に応えるかのように徐々に持ち上がって炭治郎は目を開いた。そこには、会いたくて堪らなかった、守りたくても守れなかった、年を重ねてもいつまでもその背中を追い掛け続けてた、かの人…煉獄が見下ろして居るではないか。

 

炭治郎は驚きに赤い目を見開き、反射のようにポロポロと目端から涙が溢れ落ちていく。

 

「煉獄さ、んッ…?」

 

未だに信じられなくて恐る恐るといった風に炭治郎が再び呼び掛けると煉獄は笑みを浮かべてしゃがみ込み炭治郎の顔に覆い被さって口を開いた。

 

「あぁ!久方ぶりだな、竈門少年!」

 

あぁ、やはり…煉獄さんだ!!!

 

炭治郎は動かなかった体が嘘のようにガバッと起き上がるとその勢いのまま煉獄にかじりついた。その勢いに煉獄はおぉ?と驚きながらもその口許は笑みを浮かべたままで炭治郎に押し倒されたような形で後ろに倒れた。

 

「煉獄さん、煉獄さん、煉獄さん」

 

もうどこにも行かせまいと煉獄の服をぎゅっと握り締めて首元に顔を埋め言葉を忘れたように何度も煉獄の名を口にする炭治郎の背中を撫で擦りながらも煉獄は空が広がる景色を見上げた。

 

「少年、俺はどこにも行かんよ。ここに居る。君は俺の腕の中に居る」

 

だから、もうそうなに泣くんじゃない。

 

煉獄は優しい声音で言いながら嗚咽を上げて体を震わせる炭治郎を抱き締めてやった。

 

 

 

「君を迎えに来た」