mikotoの呟き

小説(◆マーク)とお知らせや近況報告

◆気付けば。


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俺にとって朝の登校はいつも命掛けだ。

学校は家からちょっと遠く電車で1つ駅を越えなければならない。歩ける距離ではあるのだけどそうすると学校に着く頃には多少疲れてしまうから余程健康に気を使ってる人や運動が好きな人でなければ歩かないだろう。

 

ただ登校の為に平日の朝の電車に乗る度に善逸は歩いた方が良いんじゃないか?っていつも自問自答を繰り返してる。

 

今も自問自答してる。やっぱり歩いた方が良かったんじゃないのこれ?だってさ、今通勤ラッシュで凄い満員電車な訳でドア付近にいる俺は人と人に潰されてンの。

これが美人なお姉様方とかだったら良いけど(むしろ幸せだ)スーツ着てるオッサンばかりだ。死にそう。

 

凄く苦しい!!!ホントに歩いた方が良かったかもしれない!でも昨日も一昨日もそう思ってたけどやっぱり歩きたくないの!何で寂しく一時間弱もする距離を一人で歩かないといけない訳??それだったら学生らしく友達というのとキャッキャッウフフと楽しく登校したい。何が悲しくてぼっちで登校しないといけないんだ!

 

でもやっぱり電車ツラい!!たった一駅なんだけどその一駅が長いのだ。電車が線路を曲がる度に連れてその度に人に潰されてぐえっなんて情けない声が上がる。

 

そして、音が多過ぎる。

この惨状に苦痛を感じてるのは俺だけじゃなくて色んな所から音が聞こえる。苛立ってる音が一番大きくそのイヤな音がダイレクトに頭に響いて電車に乗ってるのもあって酔いそうだ。

 

グラグラしてきた頭にまだ駅に着かないの?!!って危険信号を送ってくる脳に焦る。このままじゃ倒れてしまうわ!こんな満員の中で意識を失うなんて冗談じゃない!駅に着いた瞬間、出ていく人の流れに流されて踏み倒されるに決まってるじゃんか!!朝から人に踏み倒されるって不幸過ぎるでしょう?!!

 

なんて思ってた矢先に次第に周りの音が聴こえなくなってきた。

 

あれ?なんか音が遠、い…?段々と体に力が抜けてきてあぁ、いよいよ意識が無くなってしまうのかと他人事のようにグラつく視界で目を閉じかける。

すると丁度駅に着いたのかアナウンスが流れてドアが開いた。力の入らない善逸は人の流れに流されて押されるがままに押し出されてホームに倒れそうになった。

 

人に踏み倒される心配はなくなったけど朝から地面と挨拶するなんて最悪だ…と地面とキスする衝撃に備えて目をぎゅっと瞑るとお腹に何か回されて倒れずに済んだ。

 

あれ?と思い目を開けて後ろを振り返った。そこには、

 

「え…宇髄、先生…?」

 

見上げる先には宇髄先生が居て善逸はビックリして目を見開く。倒れそうになった善逸を間一髪で助けてくれたらしい。お腹に回された逞しい腕が力の入らない善逸を未だ支えてくれている。

 

「小さいと潰されて大変だな」

 

支えてくれる腕は優しいのに口はホントに最悪だなコイツ!アンタは良いでしょうよ2メートルくらいあんだから!何を食べて生きていけばそんなにでかくなる訳??意味分かんないわ天井にぶつかってしまえ。

 

「ソウデスネ…」

 

口答えする元気もなくて適当に返すとおや?という顔をして宇髄が善逸をちゃんと立ち上がらせる。

一瞬立ち眩みがしてフラついたがそれを我慢して一応助けてくれた宇髄にお礼を言おうと口を開いたが言葉は発する事は出来なかった。

 

「わ、え、ちょっと?!何っ?!!」

 

宇髄は自分のカバンと善逸のリュックを片手で持つと片腕で善逸を持ち上げたのだ。

腕の所に丁度座る感じで持ち上げられて慌てて首に腕を回してしがみつく。背の高い宇髄に持ち上げれると見える景色が上から見下ろす感じでいつもと違って見えた。

 

てかこの持ち上げられ方ってまるで子供じゃねーか?!!!いや確かにまだ子供だけど?!!それでも高校生にもなってこれはないわ!!!人はそんなにいないけど見られてる訳で凄っい恥ずかしいンですけどぉ?!!!!

 

「ちょっと、宇髄先生降ろしてっ…!」 

「うるせぇよ。地味に暴れるな!具合悪いンだろーが。このまま学校向かうぞ」

 

確かに具合は悪いけど何もこの格好で学校に向かわなくても…!!絶対に目立つじゃん!!恥ずかしいって事が分からないのかこの野郎!!?

 

何を言っても降ろしてくれなかった宇髄はホントにこのまま学校に向かって善逸は色んな所から向けられる好奇の視線に耐えかねて宇髄の肩に顔を隠した。

なんて奴だ…俺の学校生活終わったぞ。絶対に噂になるし禰豆子ちゃんの耳にも入るじゃんか…。

メソメソしてるとガラッと引き戸を開ける事に顔を上げた。保健室だった。

 

「暫くここで休んでろ。担任には俺から言っておく」

 

ベッドに下ろされ、頭をグシャグシャにかき混ぜられながら言われて大人しく頷く。

抱っこされての登校はホントに死にたくなったが宇髄先生からはずっと心配してくれてる音がしてたから強く文句なんて言えない。

 

「あの、ありがとうございます…」

 

 小さく、だけど真っ直ぐに見上げてお礼を言うと宇髄先生はフッと笑ったかと思うと身を屈めて顔を寄せてきた。

整った顔が一気に近付いてきてドキッとする。

 

「な、何?」

「礼ならこっちな」

 

ちゅっ、と可愛らしいリップ音が鳴った。

 

え、は?てか…え?今、何したよコイツ。

セ、セクハラだ!ここどこだと思ってンの??ざけんなよ滅びろよイケメンがっ!!!!

 

ワナワナと赤くなって目の前の男を唖然と見つめるとしてやったりといった顔した憎たらしい男は再度俺の頭を撫でて今にも鼻歌を歌いそうな勢いで楽しそうに保健室を出ていった。

宇髄先生の音は凄く楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

具合が大体良くなり教室に戻って途中から授業に参加するとあっという間にお昼になった。

善逸はリュックからお弁当だけを持って教室を出る。進む廊下は騒がしく購買の売れ切れ前に急ぐ生徒が全力疾走していてそれを先生が注意していた。

階段を上がって屋上に続く扉を開けると青空が視界に広がる。

 

「おっせぇぞ!!!!」

 

青空に似合わない太い声に善逸は声の方に視線を向けると伊之助が日陰の方で胡座で座りながら善逸を睨んでいた。

 

「いや、お前がいつも早いだけだからね?」

 

伊之助の傍まで歩み腰を下ろすと扉が開いた。伊之助と善逸が振り返ると炭治郎といつものようにフランスパンをくわえた禰豆子で善逸は禰豆子を見つけるとだらしない表情になった。

 

「禰豆子ちゃん~!!おはよう!いやもうこんにちはかな?朝会えなかったから凄く会いたかったよ!!」

 

ハートを飛ばす勢いで話す善逸に炭治郎は苦笑いをしながら二人に近付き禰豆子と共に腰を下ろした。

今日もセーラー服な禰豆子ちゃん可愛いな、とデレッデレな善逸を炭治郎が禰豆子と自分の分のお弁当を広げながら声を掛けた。

 

「善逸、具合は大丈夫なのか?朝に宇髄先生から具合悪いから保健室で休んでいると聞いたんだけど」

 

宇髄。善逸はその名前を聞いて禰豆子を見つめて頬を染めていたのに一瞬にしてイヤな事を思い出した、とでも言うように顔をしかめた。

保健室での出来事を思い出したのだ。

 

「あぁ、うん…もう大丈夫大丈夫。電車に酔ってしまっただけだから心配しないで」

 

の割りには表情が可笑しいぞ善逸。と言う炭治郎に善逸は気にしないでイヤな事を思い出しただけ!って改めて宇髄に恨み言を頭の中で吐き捨てる。

 

お昼が終わる前にさっさと食べようと善逸も弁当を広げた。中身は栄養を考えたバランスの良いものばかりでいつもながら美味しそうだ。

 

「善逸のお弁当は今日も美味しそうだな」

 

天ぷらにかぶり付いてタレで頬を汚す伊之助の頬をハンカチで拭いてあげながら炭治郎が善逸のお弁当の中身を見て微笑む。伊之助が止めろと騒いでるがお構いなしの長男。流石だ。

禰豆子は玉子焼きを持った箸を兄に向けると気付いた炭治郎がパクっと口に含んで礼を言って禰豆子の頭を撫でる。

 

「うん、爺ちゃんがいつも作ってくれるから」

 

言われてお弁当を見下ろしながら善逸は小さく笑みを浮かべた。

善逸は訳合って孤児で親が居ないのだけど今一緒に暮らしている爺ちゃんが何故か引き取ってくれたのだ。

 

まぁ家に着いていけば爺ちゃんは剣道の道場の師範らしくて俺を跡継ぎにと引き取ってくれたのが分かった訳だけど。

弱い俺はいつも逃げてばかりで爺ちゃんを困らせて怒らせてばっかりだけど爺ちゃんはいつも厳しくして俺を見捨てる事はしなかったしいつも愛情の音がしていた。殴られてばっかで何回タンコブが出来たか知らないけど。

お弁当も購買で買うから大丈夫だよと言ったのに育ち盛りの男が購買だけなんて体に悪い!と何故か殴られてわざわざ毎朝早起きしてくれて弁当を作ってくれるのだ。

殴られた意味は分からないけど凄く嬉しかったのを今でも覚えている。

 

「良かったな善逸」

 

ニコニコとまるで自分の事のように嬉しそうに言う炭治郎に善逸は唐揚げを口に運びながらうん。と頷いた。

 

食べ終わる頃には昼休みも後半分の所で各々弁当を片付けてのんびりしてると校庭の方が何やら騒がしい。

禰豆子と伊之助が気になるのか二人がフェンスに近寄り校庭を見下ろすのに習って炭治郎と善逸も後に続く。

 

見下ろす先にはボールを自由に扱って綺麗に生徒をかわしながらドリブルしゴールインさせて生徒から歓声を浴びる、サッカーをしていた煉獄先生がいた。

走るのに邪魔にならないようにかいつもしてるネクタイを外し、ボタンを二個ほど外して汗を流す姿は何故かキラキラしている。

体育系は汗と泥でむさ苦しいイメージなのにそんなに事がない。アイドルが運動してるような光景のように眩しい。

太陽の日差しを浴びて黄金に輝く髪がキラリと光ってるように見える。あの綺麗な髪が地毛だなんて、煉獄先生は外国の血でも入ってるのだろうか。

 

善逸が隣に視線を向けると丁度煉獄先生がゴールインする所を目にしたのか炭治郎がキラキラと目を輝かせながら煉獄先生を熱心に見つめていた。

 

うん。煉獄先生カッコ良かったよな。伊之助が悔しいがやっぱりアイツスゲー…!!って興奮してるのもホントに煉獄先生って慕われてるなぁ…と実感する。善逸も煉獄先生は生徒に対して分け隔てなく接してくれる。何度も騒ぎに巻き込まれて大変な事が起きるけど煉獄先生はいつも大変だったな、大事ないか?って聞いてくれる。

風紀員のくせに騒ぎを直ぐに治められないのかって責められる事なんてなかった。人が良い煉獄先生は頼れる兄貴って感じでこの人に褒められたいからこの学園には歴史の点数が低い生徒は居ない。だから善逸もloveではなく、Likeで煉獄先生が好きだ。

 

でもそんな煉獄先生が唯一特別扱いしてる生徒が一人いるけど。

 

生徒とハイタッチしていた煉獄先生がこっちに気付いた。あ、と隣で声がした。煉獄先生がこっちに向けて笑顔を見せて手を振ってくれたのだ。

隣の炭治郎が頬を赤く染めながら手を振り返しているのに善逸は炭治郎が本当に煉獄先生大好きだよなぁって改めて思う。

 

「炭治郎ってさ」

「へ?うん?」

 

ホワホワ嬉しそうな炭治郎に善逸は言う。

 

「煉獄先生の事本当に好きだよね」

 

固定も否定の言葉もなくてあれ?と善逸が思うと炭治郎は耳や首まで赤くなって両手で顔を覆っていた。

 

「えっ?!ちょ、ちょっと炭治郎?!なんかごめんよ?!!」

 

今にも倒れそうな炭治郎を慌てて扇ぐと禰豆子と伊之助が不思議そうにこっちを振り返った。何でもない、と言うと伊之助はまた煉獄先生の方へ視線を戻して禰豆子は炭治郎にぴとっと腕に寄り掛かる。

 

心配してくれてありがとう禰豆子、兄ちゃんは大丈夫だよ。と炭治郎が禰豆子の頭を撫でるのに本当にこの兄妹は仲が良いなと微笑ましくなる善逸。本当は俺も禰豆子ちゃんと手を繋いだりとかしたいけどね!!!!

 

「…俺ってそんなに分かりやすいかな?」

「ん?煉獄先生の事?分かりやすいというか、俺は音が聞こえるから分かるというのもあるけど…でもそうだな、炭治郎顔に出やすいし」

 

恥ずかしそうに聞いてくる炭治郎に善逸は考える素振りで斜め上を見上げながら今までの炭治郎の反応を思い返してみる。

音で感情を分かってしまう俺には炭治郎がさっき煉獄先生を見ていた時に凄く嬉しそうな、こっちまで照れてしまうくらいのドキドキするような音が聞こえたのだ。その音を聞いてるとこっちまで幸せな気持ちにさせられるから本当に炭治郎の音は優しい。

 

「そんなに分かりやすいのか俺…」

「でも煉獄先生からも同じ音がするよ」

「えっ?」

 

煉獄先生と炭治郎が並んで話してると二人からは同じ音がするのだ。その音が重なりあって綺麗な音を奏でるのを聞くと二人は想い合ってる事が凄く分かる。

それを伝えると炭治郎は今にも泣きそうな顔ではにゃ…と花が咲くように綻ぶような綺麗な笑顔で微笑んだ。

 

 

 

 

 

長かった1日が終わり、明日から休日だ。

生徒は足早にそのまま帰宅する者とどこかに寄ってから帰宅する者で別れる。例外なのは大会に向けて練習中の運動部だけだ。

校庭から聞こえる掛け声に頑張ってるなぁと思いながら善逸は委員会の仕事である校内の見回りを終えて教室に戻り自分のリュックを持ち上げる。 

 

伊之助は病院に行くというひささんの付き添いでさっさと帰ってしまっていた。口は悪いが伊之助が里親のひささんの事を大事に思ってる事にこっちまでが嬉しくなる。山で暮らして猪に育てられたなんて想像できない暮らしだっただろうが愛してくれる人が引き取ってくれて伊之助は今幸せなのだろう。

炭治郎は煉獄先生の手伝いで残るみたいだし(多分そのまま一緒に帰るんだろうな)禰豆子ちゃんは同じクラスの真菰ちゃんと帰っていった。

俺は一人でこれから帰宅だ。禰豆子ちゃんと帰りたかったな…風紀員ではなければ一緒に帰れたのに。しゅんと落ち込みながら善逸は下駄箱で上履きから靴に履き替える。

 

昇降口を出ようとした所で善逸は一人の声に引き止められた。

 

「おい、そこのチビ」

 

しかめた面で善逸が声の方を向くと宇髄先生がこっちの方に向かいながら歩いてくる。

何で最後の最後にコイツに呼び止められるのかな?!!!ホンっトにツいてない!!!!!

 

「…何ですか?言っときますけど俺がチビなんじゃなくてアンタが規格外にデカいだけだからな!!」

「はいはい。てか今日は一人で帰るのか。いつものガキ供は?」

「炭治郎は煉獄先生の手伝いで居残り!禰豆子ちゃんは別の子と帰ったんです!伊之助はお婆さんの付き添いでもう帰ってますよ!」

 

俺はこれから一人で帰るんですが何か?!と宇髄を見上げて何も言わせんぞと威嚇する善逸。

 威嚇してくる善逸の頭を上から撫でるとぶへっと奇声が上がった。

 

「ふぅん?じゃあ一緒に帰るか」

 

「ちょっと!一々人の頭グシャグシャにしないでくれます?!あと一緒に帰るなんて俺は…、え?今なんて?一緒に帰る?」

 

何て事ないように平然と言うもんだから善逸は一瞬聞き逃しそうになったがん?と違和感を感じて先程の言葉を反復して思い返し宇髄を見上げた。

 

「何だよ。俺と帰るのに文句あんのかコラ」

 

どこのヤクザだよ。

折角乱された髪を整えたばかりなのにあ"ぁ?とドスの効いた声でメンチ切られてガシッ!と大きな手に頭を掴まれる。

文句言わせる気なんてねーじゃねぇかよ!!!理不尽!!!

 

「イエ、ウレシいデス」

「最初からそう言いや良いんだよ」

 

手が頭からやっと離されたがその腕は善逸の肩に回されてグイッと引き寄せられた。

そのまま歩き出したから宇髄につられて善逸も歩き出すが善逸は回された腕をぺちぺちっと叩きながら宇髄を見上げる。

 

「宇髄先生この腕は何ですか。邪魔です歩き難い」

 

このクソガキ!とピキッと青筋を浮かべる宇髄がこのまま首を絞めたろうかと不穏な事を考えてる事なんて善逸は露知らず。

しかしそんな事はせず宇髄は閃いたとばかりに笑みを小さく浮かべると少し身を屈めて善逸の耳元に口を寄せた。

 

「なぁ…帰る前に俺ん家上がれよ」

 

色気のある声音でそっと息を吹き掛けるように囁かれて善逸はバッと囁かれた耳元を手で押さえて赤く染まった顔で宇髄を信じられないと見上げた。

教師がこんな路上の真ん中で何を生徒に言ってるんですか?!!!信じらんないわコイツ!!!?

 

「仕事終わったんだしこれからはプライベートだから良いんだよ」 

 

 なぁ、ちゃんと送るし寄るよな?てかお前に拒否権なんてねーけどな。と先を進む宇髄にされるがままに善逸はこんな男に胸を締め付けられる事を悔しく思った。

 

俺は禰豆子ちゃんが好きな筈なのに、こんな筋肉の塊みたいな男にドキドキするなんて…どうかしてる!!!!

 

善逸が赤くなった顔を俯く事で隠そうとしてるみたいだったが宇髄からは耳や首筋まで赤くなってる事が丸見えだった。 

こんな生意気なガキにいつの間にか心を動かされて無意識に視線がいつも探していた。具合が悪いと分かればヒヤッとして一刻も早く安全な所で休んで欲しいと焦る。

 

けれどそう思う自分が嫌いではない。

 宇髄は更に善逸を引き寄せた。今度は文句を言う事なく善逸はされるがまま、宇善の懐で落ち着いた。

 

 

end

 

 

そして家に送ってくれたのは夜の22時頃だった。

 

 

 

 

◆煉炭と宇善

 

 

今日は何時もに増してどこも騒がしい。

音が頭の中に響きぐわんぐわんと脳ミソをかき混ぜられるようで気分が酷く最悪だ。

何故自分がこんなにも音に敏感なのかは知らない。生まれた時からこうだったのか知らないが、物心ついたときから僅な小さな音ひとつでも全て鮮明に聴こえてしまう。

 

余りにも良過ぎて心臓の音だけで人の感情を聞き取れてしまう程に、耳が良かったのだ。

だから昔は人との付き合いが苦手だった。今ではどう人と接すれば良いか学習したからそんな事はないが、それでも余りにもたくさんの音が耳に入ってくると頭がパンクして割れそうになる時がある。

 

今がそうだ。どこかで祭りでもやっているのかドンドンドン!と太鼓を叩く音、人の楽しそうな賑わった音に、そんな祭りの音に誘われてざわめく動物たちの音。

一気にたくさんの音を頭が処理しょうとするけどそんなの無理な訳で俺は今、最高に頭が痛いしグラグラするしで静かに休みたい訳なんですよ。なのに、

 

「何で…アンタが居るんすか…」

 

夏休みの間、勉強合宿という名目で歴史の古い煉獄さんの大きな屋敷にいつものメンバーで寝泊まりしているのだ。

勉強は朝からお昼の間に済ませていて今は夕方で煉獄さんと炭治郎たちは夕飯の準備をしていて居間にはいない。

俺は気分が酷いからと寝転んで休ませて貰ってるンだけど、何でここに呼んでもない宇髄さんが居る訳??誰だよコイツ呼んだの!

 

宇髄さんは寝転ぶ俺の頭の上で腰を下ろすとニヤリと見下ろしてきた。

 

「あ?丁度通り掛かったから煉獄に一声掛けようとしたら煉獄から上がれって言われたんだよ。俺に会えて嬉しいだろ喜べ」

 

誰が喜ぶか!

本っ当に偉そうだなアンタ!俺は気分が悪いから休みたいのにアンタが居たんじゃ休めるもんも休めない訳!!?分かる?!!だから早く帰ってくれませんかね?!!

 

そう言いたいのに声を出すのも怠くて突っ伏す。すると何を思ったのか宇髄さんがいきなり首元に触れてきた。

 

「ッ…!」

 

夏なのにちょっとひんやりしてる指にビックリして宇髄さんを見上げると真剣な表情をしていた。

何…?もしかしてこれは心配…してくれてる感じ?いつも何かと絡んできて口喧嘩してたまに手も足も出るのにこんな時に心配してくれんの?何それ…顔だけじゃなく性格まで男前かよ滅べよマジで。

 

何故か赤くなる顔を見せたくなくてまた突っ伏すと首元に触れていた手が脇に向かってひょいっと簡単に体を持ち上げられた。

 

「えっちょっと、何何何…ッ?!」

 

青ざめる俺なんかお構い無しに宇髄さんは俺にタオルケットをぐるぐる巻き付けるとそのまま胡座をかいた膝に乗せて頭を胸元に押し付けられた。

ちょっ、タオルケット…暑いんだけど?!手足がタオルケットで巻き付けられてるから大した抵抗も出来ずにバタバタしてると宇髄さんがぎゅっと俺を抱き締めて小さな声で溢した。

 

「大人しく俺の音だけ聞いてろ」

 

びっくりしてバタバタもがいてたのを止めてしまった。目線をそろそろ…と上げると未だに真剣な表情をしてる宇髄さんの素顔が目の前にあって口から心臓が飛び出るかと思った。

いつも人をバカにしたような笑みばかり浮かべてるクセに何で急にそんな真剣な表情を見せる訳…ズルくない?男前ってだけでも腹立つのに…こんな、俺だけドキドキさせられるのって本当にムカつく!!!

 

自称祭りの神を宣う宇髄さんの音は、静かだ。研ぎ澄まされた刃のように鋭いのに、聴こえてくるのは静寂だ。心臓のトク…トク…と規則正しいリズムで動くのですら本人の性格に似合わず静か過ぎて最初の頃はこの人何かに取り憑かれてるンじゃないのかって思った程だ。まぁ、そんな事はなかったけどね。

 

タオルケットで赤くなった顔を隠し押し付けられたままに宇髄さんの胸元に耳を当てて心臓の音を聞く。すると今まで聞こえてた騒音が遠退いて宇髄さんの音だけが耳に残る。

さっきまで具合が悪かったのが嘘のように良くなってきて、宇髄さんの手が頭を撫でる心地好さに眠気を誘われる。

 

「眠っとけ」

 

夕飯の時間、と頭の隅で思ったが頭を撫でる大きな手と体を包み込む暖かさに抗える事なんて出来る筈もなく、意識が落ちていった。

 

眠った善逸の顔を見下ろし、頬を輪郭に添って撫でて前髪を掻き分けると額にそっと唇を落とした事を知ってるのは庭の木に止まっていた二羽の鴉しか知らない。

 

 

 

 

 

「善逸大丈夫かな…」

 

台所では炭治郎がじゃがいもの皮を剥きながら居間で休んでいるであろう善逸の心配をしていた。

傍らで煉獄が野菜を水で軽く洗いながら小さな笑みを浮かべて大丈夫だと答える。

 

「我妻少年の傍には宇髄がいるから心配する事はないさ」

 

炭治郎が煉獄を見返すと煉獄はニコッと再度大丈夫だ、と安心させるように笑った。

それに炭治郎は煉獄が言うのだから大丈夫なのだろう、とやっと笑みを浮かべる。

 

「それにしても、宇髄さんって家が確か反対側の方でしたよね?こっちに通り掛かる程の用事ってなんだったのでしょうか?」

 

炭治郎が首を傾げて煉獄に分かりますか?って聞かれるのに煉獄はキョトンと目を見開くが次の瞬間声を上げて笑った。

 

「はははっ!宇髄も素直に言えば良いものを!」

 

分かっていない炭治郎はえ?え?っていきなり笑い出した煉獄に困惑するがズイッ!と顔を寄せられてぱちくり、と大きな目を見開く。

 

「夏休みの間、竈門少年に長らく会えないのが我慢出来ずに勉強合宿を名目に誘って会いたくなった。それと同じだ」

 

目をスッと細めて赤い目を見つめると丸く柔らかそうな頬がボンっ!と擬音がつく程に赤く染まった。

ぷしゅ~と湯気をたてる炭治郎に愛らしくて堪らず煉獄は自分の持っていたものと炭治郎が持っていたじゃがいもやピーラーを取り上げて端に下げると小さな体を抱き締めた。

 

「はは、竈門少年は本当に愛らしいな!」

 

赤くなりながらも抵抗せずされるがままになりながら炭治郎は煉獄の背にそっと手を回した。

夏休みの間、会えなくなるのが寂しかったのは自分だけじゃなかった。

炭治郎は嬉しくて顔がニヤけそうになるの煉獄の胸元に顔を埋めて隠した。

 

 

 

end

 

◆宇善

【揺れる。】

 

 

 


「おら、行くぞ」


は?え?ちょっ、宇髄さん?!訳も分からず一人ボンヤリと公園のベンチで座ってたら首が痛くなる程見上げなければならない宇髄さんがいきなり音もなく背後から現れて首根っこを掴まれて引き摺られる。

俺は意味が分からないし首が締まって苦しいのに宇髄さんはそんな事もお構い無しに俺を引き摺ってどこかへ向かって歩いてく。


「うへぇッ、ちょっ、マジで苦し…ッ」

筋肉で硬い腕をぺちぺちっなんて可愛い音ではなくベシベシッ!!と叩くと仕方なしっていう感じで解放された。
はぁ…死ぬかと思った。いやマジで。ホント何なのこの人。俺に何か恨みでもあんの?恨みなら俺の方がいっぱいあるけど?男前だからって何でもかんでも許される訳じゃねーからね?分かってます?男の俺から見ても男前って分かるから嫁さんが3人も居るんでしょうねチクショウ羨ましいわ爆発しろよこの野郎。

恨み妬みを脳内で吐き捨ててると首根っこを解放された代わりにと手を握られた。指と指をぎゅっと絡める恋人繋ぎっていうヤツを。

は?…いや、だから何…、


ギョッとして文句を言おうと宇髄さんの顔を見上げたら有無を言わせない表情をして俺を見下ろした。何でそんな顔してんの…俺何かしました?
結局何も言えず手を繋がれたまま黙って宇髄さんが歩いてくままに俺も足を動かした。何で…今日は黙りなんだよ…いつもだったら派手派手とかうるさいのに…俺まで黙ってしまうだろうが馬鹿野郎…。


暫く歩いてたら目的地に着いたらしくて顔を上げると目の前に飛び込んできた建物は宇髄さんが住んでる家だった。何故宇髄さんの家を知っているかは前に一回だけ訪れた事があったからだ。

あの時は煉獄さんが宇髄さんに用があったからその時一緒にいた炭治郎も連れて行かれたからそのついでって感じで俺と伊之助も着いてったのだ。

だけどあの時は煉獄さんが居たからここを訪れる理由があるけど、今は理由がない。俺何で宇髄さんに家に連れてかれてんの?俺の頭の上にはいくつものハテナマークが浮かび上がってる事だろう。マジで何でよ。


「あの、宇髄さん…何であんたの家に、」

言い終わらない内にまだ繋がれたままの手を引っ張られて家の中へと入ってしまった。玄関先で1度二人して立ち止まる。沈黙が耳に痛くて宇髄さんを見上げた。
さっきからホントにどうしたのこの人。俺何かしちゃったか不安になってたけどいい加減イライラしてきたんですけど?なんで好き好んでもないのに男と手を繋がらなければならないのだ。男なんかと繋ぐよりも禰豆子ちゃんと手を繋ぎたかったわボケ!

「あんたいきなり連れ出してきて何なんだよ!さっきから黙りだし何か文句でもあるんですか?!!横暴なのもいい加減にし…、」


今度は我慢ならず文句を言おうと開いた口は言葉の途中で途切れた。宇髄さんが身を屈めて俺の手首を押さえ付けると口を塞いだからだ。背中が玄関のドアに押し付けられて大きな熊にでも覆い被さられたみたいに影が俺を覆う。

「んぅっ、」

乱暴に奪われた唇だったけどその後は優しく触れるだけの口付けを何度もそれはしつこいくらいにされる。熱くて柔らかな唇が自分の唇と触れ合う度に耳に心臓があるじゃないかって思うくらいドキドキうるさい心拍音に頭がクラクラしだして玄関のドアに預けてた背中がどんどん下がってずり落ちていく。
完全に落ちる前に逞しい腕が腰を掴まえて支えてくれる。

唇もやっと解放されてやっと息を吐くと知らず知らずその息が甘い熱を籠って二人の間を掠める。

「い…きなり、何するんですかあんた…」

腰を支える腕に掴まり、爪を立てて睨み上げる。するとさっきまで怖いくらいに黙りを決め込んでた無表情の顔がいつものようにニヤリと憎たらしい笑みを浮かべた。

「俺は神だ。俺のものに何しょうが俺の勝手だろ?」


本当ヤベぇ奴だよ。

え?てか待って。今"俺のもの"って言わなかった?それって何が?もしかしてそれって俺のこと?俺いつの間に宇髄さんのものになった訳?本当に横暴なのもいい加減にしろよお前!自称神だからって好き勝手していい訳ないからね?俺ものじゃないし出来れば禰豆子ちゃんのものになりたいわ!炭治郎もいい加減禰豆子ちゃんと俺との交際を認めてくれても良いんじゃないの?

善逸は白い目で宇髄を見上げて現実逃避をしてたら宇髄はそんな善逸を軽々と抱き上げると無造作に靴をポイポイッと放り出すと騒ぐ善逸を意に返さず2階へと続く階段を上がって自室へ入った。

宇髄の身長に合わせて作ったオーダーメイドのベッドなのか広く大きいそこへ善逸を落とした。顔から突っ込んでぐえっと潰れた蛙みたいな不細工な悲鳴を上げた善逸は直ぐに起き上がると宇髄を見上げてギャーギャーと声を荒げて喚いた。

うるさそうに顔をしかめる宇髄は徐にいつも巻いてる頭の包帯とキラキラ眩しく輝く大きなダイヤが幾つも埋め込んであるのも外した。

すると肩まで届く案外柔らかい髪がはらっ…と宇髄の顔に影を作り部屋を取り巻く空気も変わる。

空気が変わったのを感じとった善逸は喚くのを止めると背中に冷や汗が流れるのを感じた。この空気はヤバい…緊張感が部屋を包んで善逸は宇髄の目を見つめたまま無意識に逃げようと後ろへと体が後退る。


宇髄はそんな善逸を見下ろしながら少しずつ近付き上着のボタンを外し、脱ぎ捨てると今度はYシャツのボタンをゆっくり外しながら善逸の目をずっと見つめていた。

ボタンを全て外し終わると善逸はベッドの真ん中で尚も逃げようとしていて宇髄はベッドに片膝を乗せた。両手をベッドに着けるとYシャツが開き宇髄の鍛え上げられた胸筋や腹筋が影を彩り善逸の目前に迫る。


な、な、なん、何で脱いでんの?!何で近付いて来んの?!!そんな顔で俺に近付いて来ないでくれます?!!!


想像したくもないが宇髄とこの部屋の空気で善逸はこれから何をされそうになってるのか頭で分かってしまった。女が、禰豆子ちゃんが好きなのに何故宇髄の真剣な表情と鍛え上げられた体を見ただけでこんなにもドキドキしてるのか善逸は戸惑って頭の中が混乱する。

逃げたいのに体が動かず、これ以上後ろへ逃げられずとうとう後数センチの距離でキスが出来るまでに宇髄に追い付かれてしまった善逸。

大きな手に丸くて柔らかな頬を触れられてビクッ!と体を震わせると赤くなった顔が宇髄を見上げて大きな目を潤わせた。


「…宇、髄さん…」


善逸は余りにも胸がドキドキして苦しくなってくる。
原因は目の前の男だけれど、この場で助けてくれるのもこの男しかいないのを知っている。

頬に触れる手に寄り添って目を閉じた。
ふっ…と低い笑い声が聞こえると空気が揺れて目を閉じたままでも影が覆い被さるのが分かった。

 

 

 

 

end

 

 

次は多分エロ突入かな?w

美琴が煉獄さん好き過ぎるのはこんな所が素敵だから!!

 

煉獄さんという人間に惚れ過ぎて原作を読むだけで泣いてしまう美琴です。

 

今回は煉炭の良さについて、そして煉獄さんという人間について美琴が想ってる事をつらつらと語ります。

 

先ず最初に煉獄さんを初めて見た時、頭と目が派手なヤバい人だ…(;゜∇゜)と思いました。

そして笑顔でキリッ✨と炭治郎と禰豆子を斬首する!って言いましたのよ、煉獄さんは。当時の私は「は?え?可愛い炭治郎と禰豆子を斬首ってこの人何言ってンの?ヤバい人だ💢顔良いけど!」って思ってましたよ!

でも煉獄さん炭治郎と禰豆子の事を「鬼と鬼を連れた隊士」としか見てなかったから仕方ないですよね、もし私もその場でそんな事を言われたら同じ事を言うと思うし。この世界では鬼はもっとも危険な存在だから鬼を連れてるなんてどんな事情があれ、許されない事ですもんね。でも禰豆子は鬼だけど人間を守る事が出来る子なので死なせてはいけないです!!ホントに!!禰豆子可愛いンです💕

ただ煉獄さんが禰豆子が嫌いだから斬首すると言ったのではなく隊律違反で鬼を人間が連れて人を食ってしまえば取り返しがつかないから手遅れになる前にそう言っただけだと私は思ってます。

実際に身内が鬼になってしまってこの子は人を食べないって庇う人がいたけど結局やっぱり食べられてしまう人ばかりだったからそう簡単には鬼を認める事は出来ないよね。

ただやっぱりヤバい人だと分かってても煉獄さんは凄くカッコ良い人だって思ってたw

一々発言が可愛いンです!「むぅ…!」って何??!可愛いよ!!横顔美人!でも凛々しくてカッコ良いから反則だった!!!

今見るともうね、ヤバいです目茶苦茶好き💕💕

しかも炭治郎がまだそこまで力がないのに「鬼舞辻無惨は俺と禰豆子が倒します!!」って言うのに柱の皆笑ってたのに煉獄さんだけ良い心掛けだ!って斬首すると言ってたのに一人だけ炭治郎に感心してたのよ???ズルくない?? 惚れるわ(真顔)

 

そんで次に炭治郎と煉獄さんが回顧したのが無限列車の所です。炭治郎が自分の技に関して煉獄さんに訊ねる為に無限列車に乗り込んでた煉獄さんに会いに行くんです!

めっちゃ食いしん坊みたいにお弁当を箱11個食べてたんです…何それ可愛い()

うまい!うまい!と連呼しながら綺麗に箸を持って綺麗に食べてるんですよ?お弁当作って食べて貰いたいよ…煉獄さん可愛い💕

溌剌とした話し方をする人で目がちょっとアレだけど凄くいいなぁ…って思いながらジャンプ読んでた記憶があります!

そしてやっぱり初対面の時の斬首する!っていう発言が大きかったからいきなり「俺が面倒見てやろう!もう安心だ!」っていうのにえ?!面倒見てくれるの?!ってビックリした…こんなに面倒見良い人だったんだぁ~。って煉獄さんを見る目が変わった瞬間でした。

炭治郎が切符の事を知らず聞くとちゃんと教えてくれる所にもキュン💕としたです。何この人、ホントに面倒見良いんだけど?!!って煉獄さん出てまだ一話なのにハマり込む予感しかなかったです。鬼が出た瞬間にも気付き一瞬にして瞬殺したのにはもう完全に惚れました(真顔)一瞬にして煉獄さんに惚れた。

煉獄さん強ぉ~!!!🙌って次のページを捲った瞬間、目の前に飛び込んできたのが煉獄さんと炭治郎が肩を寄せあって眠ってる場面でした()

 

は…?え…??た、炭治郎…????

ってなりました()炭治郎お前、長男だから人に寄り掛かられるのは想像出来るけど、炭治郎が寄り掛かるの?!!!って激しく萌えた…炭治郎が煉獄さんの肩に頭を乗せてるの。めっっっちゃ可愛い(真顔)

鬼滅は単純に面白くて炭治郎が可愛くて読んでた筈なのにここで一瞬にして腐として目覚めて煉炭に落ちました。単純な美琴…😌

公式で煉炭だった!!!(泣)公式ありがとうー!!!!!って叫んだ。仕事仲間のねべちゃんに今週のジャンプがヤバかったね?!!煉獄さんと炭治郎に落ちたよ!!!って興奮して語ってたな…✨

だってホントに可愛い。煉獄さんが肩を貸してるのも煉獄さんに寄り掛かる炭治郎もホントに可愛いかった…今もマジで何回見ても可愛いわ。可愛くてツラいわー()

煉炭に落ちてから毎週の月曜日が楽しみになり、どんどん煉獄さんにのめり込みました♥

しかもまさかの煉獄さん弟が居る!!道理で面倒見が良い筈だよ!!納得!弟の千寿郎くんめっちゃ可愛いし兄弟似過ぎてヤバい可愛い。煉獄さんは眉毛がキリッ✨としてるのに対して千寿郎くんは不安気な垂れ眉毛なの!!マジで天使💕💕

そんな兄弟がお互いに大好き過ぎる件についてはホントにズルかった…。煉獄さんわざわざ膝をついて目線を合わせて千寿郎くんと会話をするんだよ??何このお兄ちゃん。私も煉獄さんお兄様に欲しいよ…😭💕

煉獄兄弟可愛い過ぎる、尊い好き!!!🙌✨

 

「お前には兄がいる、兄は弟を信じている」とか、言われてみたい…(><)💕

泣いてる千寿郎くんをぎゅっと抱き締めるのなんて、もう…もうね!ダメ、落ちない訳がないじゃないですか!!!!!!

 

煉獄さん~!!!💕💕ってなっていく毎週月曜日が私の生きる力になってました(><*)💕

仕事に行く前にコンビニに寄り、ジャンプを立ち読みして「あぁ~ッッ!!煉・獄・さ・ん…!!😂🙌♥」って毎日が薔薇色のようにウキウキしてたのに、あの上弦の三…猗窩座が現れてから…!!!💢💢💨

 

最初の方はおぉ、また新たな敵キャラ来た~。って感じで読んでたのですが猗窩座が煉獄さんを「鬼にならないか?杏寿郎」っていきなり呼び捨て?そんでスカウト…というかプロポーズ??💢💢何それ。ってなりました!

煉獄さんにはね、炭治郎という可愛い愛し子がいるの!!!でも煉獄さんが受けっていうのも有りだって事を教えてくれてありがとう!!💢💢💨ってなったのだけど煉獄さんと猗窩座のバトルできゃ~~ッッ煉獄さんカッコ良い~!!!😆🙏💕ってなったのは2週間くらいでどんどん雲行きが怪しくなってまさかの煉獄さんの死亡フラグ…え?待って、え?え?ちょっと…ここ、大丈夫だよね??って朝立ち読みする時にはもう気になり過ぎて仕事にならず、有り得ない失態とか失敗する始末…()

 

まさか自分がここまで一人のキャラを思って生活に支障を来すとは思わず驚きました。

でも恋にも似た感情で煉獄さんが好きになっていたので当然とも言えます( ̄^ ̄)✨

どう生きていけば煉獄さんみたいに「人は老いるからこそ愛しく尊いのだ」ってどう思えるの?煉獄さん何歳なの?ねぇ、教えて!!

煉獄さんが出る月曜日を待つ時間で煉獄さんへの想いが募ってく一方で原作での死亡フラグが高まり、落ち込みまくり…仕事になりませんでした()

 

フラグの時点で信じられなくて信じたくなくて泣いてしまう美琴はもうダメだった。毎週泣いてた。猗窩座絶対に許さない😢💢🔪🔪🔪

「死ぬな杏寿郎」とか言うンだったらさっさと消えてくれないかな???😭😭😭💢💢お前の所為で煉獄さんが~ッッ!!!💢💢どうしてくれるの?!!ってもう、もうね、泣いてた。

今これを打っている美琴も泣きそうというかもう泣いてる…煉獄さんを返して(泣)

結局希望虚しくも煉獄さんは死んでしまうという…月曜日が待ちきれず土曜日に発売されるお店でジャンプを買って来たのですが66話のセンターカラーを見ただけでもう号泣…家路に付きながら煉獄さんって号泣しながら部屋に戻るとページ開いてに2、3ページでもう涙で読めなくてそこから一時間は泣いてた()

 

ここまで泣いたのって初めてで煉獄さんがホントに好きだった。煉獄さんを返してよ、もっと煉獄さんが動くところや話す所、炭治郎に技を教える所とかもっと読みたかったし煉獄さんが何が好きなのか知りたかった()

 

何でここで死なすの?1ヶ月くらいはもう再起不能だった美琴です…煉獄さん…(泣)

 

 

 

 

 

 

 

◆煉炭

 

瞼が重い。体が言うことを聞かない。

まるで金縛りに遭ったかのように炭治郎の体はピクリとも動かず、意識も朦朧とし始めた。

 

その時、

 

「竈門少年」

「…煉獄、さ…ん…?」

 

昔に、聞いた事のある忘れたくない声音が炭治郎に降り掛かった。

重かった筈の瞼がその声に応えるかのように徐々に持ち上がって炭治郎は目を開いた。そこには、会いたくて堪らなかった、守りたくても守れなかった、年を重ねてもいつまでもその背中を追い掛け続けてた、かの人…煉獄が見下ろして居るではないか。

 

炭治郎は驚きに赤い目を見開き、反射のようにポロポロと目端から涙が溢れ落ちていく。

 

「煉獄さ、んッ…?」

 

未だに信じられなくて恐る恐るといった風に炭治郎が再び呼び掛けると煉獄は笑みを浮かべてしゃがみ込み炭治郎の顔に覆い被さって口を開いた。

 

「あぁ!久方ぶりだな、竈門少年!」

 

あぁ、やはり…煉獄さんだ!!!

 

炭治郎は動かなかった体が嘘のようにガバッと起き上がるとその勢いのまま煉獄にかじりついた。その勢いに煉獄はおぉ?と驚きながらもその口許は笑みを浮かべたままで炭治郎に押し倒されたような形で後ろに倒れた。

 

「煉獄さん、煉獄さん、煉獄さん」

 

もうどこにも行かせまいと煉獄の服をぎゅっと握り締めて首元に顔を埋め言葉を忘れたように何度も煉獄の名を口にする炭治郎の背中を撫で擦りながらも煉獄は空が広がる景色を見上げた。

 

「少年、俺はどこにも行かんよ。ここに居る。君は俺の腕の中に居る」

 

だから、もうそうなに泣くんじゃない。

 

煉獄は優しい声音で言いながら嗚咽を上げて体を震わせる炭治郎を抱き締めてやった。

 

 

 

「君を迎えに来た」

 

 

 

 

 

◆煉炭

 

夏休みの真っ只中、中高キメツ学園の2階にある資料室の一角でPCに向かいながら歴史の授業で使うプリントを制作してるのは歴史の担当である煉獄杏寿郎だ。

 

夏の日差しを浴びる金色の髪が日差しの向きが変わる度にキラキラと輝き、赤い髪の所は柔らかく輝く。

 

首元までしっかりとボタンが留められてネクタイも締め、ネクタイが動くのを防ぐためのネクタイピンがキラリと艶を出す。

この部屋には冷房はあるのだが煉獄が余り冷房を好まず部屋の窓を全開に開けただけで時折そよぐ風が入ってくるだけだ。

裾を折って巻いた剥き出しの腕が汗で少し湿っていたが本人は微塵も暑さを感じさせず涼しげな表情でタイピングしている。

 

その後ろには煉獄のお腹に腕を回して引っ付き抱き付いている子が一人。

この学園の生徒で真面目な性格でどっちかというと優等生に分類されるのだが父の形見の花札のようなピアスを頑なに外さず着用してる事から風紀委員の人達からは不良と見なされている2年生の竈門炭治郎だ。

勿論、不良のように他人に暴力を振るったりカツアゲなどはしていない。中等部にいるフランスパンを加えた妹を溺愛する心優しい長男だ。

 

資料室にはソファーがあり、その前にテーブルもあって煉獄はそこにPCを置いて仕事をしていた。炭治郎はソファーと煉獄の間に入りその大きく広い背中にもたれ掛かっていたのだ。

夏にも関わらず隙間もなく密着する炭治郎に否を唱える事もなく煉獄は作業を続けている。炭治郎も暑い筈なのだが離れようとは思えずかれこれ数時間はこの状態が続いていた。

 

時計の針が14時を指した所で煉獄は顔を上げるとPCを閉じた。

 

「竈門少年、暑くないか!」

 

背中にいる炭治郎に問い掛けながらお腹に回された手に手を重ねる。

炭治郎はぎゅっと更に強く密着しながら大丈夫ですと答えた。暑いのだけど、そんな事で離れるのはまだイヤだった。

 

炭治郎がまだ離れたくないと感じ取った煉獄は小さく笑みを浮かべると体を捻って炭治郎を振り返り見下ろした。

 

「そんな背中にばかり顔を押し付けてると顔が見れない。前においで」

 

誘うと炭治郎は一度腕を離し、煉獄の脇の間から頭を出すとそのままいそいそと煉獄の膝の間に座り今度はお腹ではなく首元に両腕を回して密着した。

炭治郎の背中に手を添えながら煉獄は体を後ろに倒しソファーにもたれてると深呼吸を1回してリラックスする。

腕の中の重みが愛しい。体に腕を回して抱き締めると空かさず抱き返してくるのが堪らなかった。

 

煉獄には前世の記憶がある。大正時代の時の記憶だ。人を喰らう鬼という者が存在し、その鬼に対抗する為に鬼殺隊という組織が尊い命をかけながら闘っていたそんな時代だった。

そして自分が鬼殺隊という組織に入り最高位の剣士しか名乗れない柱になっていた事、上弦の三の鬼に腹を貫かれて命を絶った事も、覚えている。

 

煉獄の最期を見届けたのは、炭治郎だった。

勿論、その事も覚えている。泣き顔よりも笑った顔が見たいと、遠退く意識の中で思っていた事も全て鮮明に覚えている。

この時代で炭治郎と出会った時、炭治郎は記憶を持っておらず覚えていなかった。

 

煉獄はその方が良いと喜び、教師と生徒として接してきたが不思議な事に前世で関わった者たちは何の因果かこの学園に集まっていたのだ。だから前世の時に自分の腹を貫いた上弦の三の鬼である猗窩座も、この学園にいる。

前世は前世だ。鬼の存在は今はもう居らず少年たちが鬼舞辻を葬った事を表していた。だからもう人が鬼に喰われる心配もなく平和な時を刻むこの時代に煉獄は大いに喜んだ。やはり自分が信じた少年たちは立派に責務を果たして全うしたのだ。

 

前世で猗窩座に殺られたが煉獄は気にしていない。相変わらず勝手に呼び捨てにするし空手部に勧誘してくるしつこい男だが鬼ではないし人間を食べる事もない。鬼ではなく人間として生きているのだ、彼も。

価値観はやはり合わないから嫌いだがもう、何も気にするような事はない。

 

煉獄はそう思っていたのだが炭治郎は違ったようだった。いつものように教師として炭治郎の質問に答えいたら懲りずに現れた猗窩座を見て炭治郎が大正時代の記憶を思い出してしまったのだ。

涙を流し猗窩座から煉獄を遠ざけて近付くなと威嚇するのに煉獄は悲しくなったのを覚えている。悲しい記憶は思い出させたくなかったのだがもう遅かった。炭治郎は煉獄に抱き付きいつまでも涙を流して守れずごめんなさいと謝った。

もう過ぎた事だと、気にするなと伝えたが炭治郎はいつまでも気にするのだろう。けれど今と昔は違うのだと理解しているみたいだから猗窩座を敵として見なしていないが生理的に嫌いではあるらしい。

煉獄に近付く度に忠犬のようにガルルルッと威嚇する姿は本人に失礼だろうが愛らしい。

 

もとより煉獄は大正時代の時から炭治郎を好ましく思っていたのだ。目指す目的に向かって全力な姿勢は好ましく、無限列車の時に短い一時だったが妹の為ならどんな苦難も乗り越え仲間のために思いやりにかけた炭治郎は煉獄には眩しく暖かかった。

猗窩座に会って以来煉獄に引っ付くようになり煉獄しか頭になかった炭治郎と好ましく思っていた二人が好き合うのは時間の問題だった。

 

頭ではもう危険に脅かされる事はないと理解していても体は煉獄から離れる事をよしとせず駄々を捏ねる子どものように抱き付くクセがついてしまい、今に至る。

 

授業中は流石に抱き付く事はないが視線はいつまでも背中を追っていて煉獄はこんなにまで想われる事が嬉しくくすぐったかった。

前世の記憶を思い出してしまったのはやはり悲しいが炭治郎は思い出して良かった、貴方を思い出せてホントに良かった!と煉獄に言うから煉獄も嬉しかった。

 

「煉獄さん、お仕事は終わったんですか?」

「うむ、一通りは終わった!」

 

終わったと伝えるとパッと起きた炭治郎は嬉しいそうに煉獄を見つめた。

 

「では一緒に帰りましょう煉獄さん!」

 

昔のクセでか炭治郎はよく"先生"ではなく"さん "で煉獄を呼んだ。今もまだ学校だから先生なんだが煉獄はあえて何も言わず炭治郎の頭を撫でて頷いた。

 

「あぁ、一緒に帰ろう!」

 

 

 

 

 

 

 

◆煉炭♀(R18)

 

 

呼び掛けてくる優しい声がする。

炭治郎は身をよじった。もう、朝なのだろうか。

再び声がして、返事をしょうとしたが声が上手く出せず駄々を捏ねる子供のようにんん、としか声を出せなかった。

 

しかしそんな炭治郎の唇に柔らかいものが重なった。甘いそれに何だろう?と思って重たい瞼を上げると太陽みたいに眩しい金色の髪が目に広がった。

そして金と赤に彩られた瞳に見下ろされて炭治郎はふにゃりと笑った。

 

「煉獄さん…」

 

太陽みたいな金色と毛先が炎のような赤い髪、そして鋭い金赤の瞳。高い鼻梁に笑みを浮かべる肉感的な唇…自分に口付けをしたのが煉獄だと気付き炭治郎は起き上がろうとしたがしかし煉獄によってそのままベッドに押し付けられてしまった。

疑問に炭治郎の首が傾ぐ。

 

「煉獄さん…?」

 

そのまま煉獄は体を伏せられて炭治郎の上にのしかかってきてまた唇が重なった。

疑問に思いつつ炭治郎は吸い上げられて舐められるがままに煉獄からの口付けを受け入れた。

 

「竈門少年…」

 

煉獄が唇を離すと普段の彼からは信じられないだろう小さな声で炭治郎の耳元で囁いた。

 

「んっ…」

「おはよう、良い朝だぞ」

 

ぴこっとライオンがもつ薄く丸い耳が動き、朝の挨拶をするにはその声音は低く睦事を囁くような淫靡な響きをもっている。炭治郎は目を見開きおはようございます…と反射のように挨拶を返しながら煉獄の瞳を見上げた。

 

深い、色をしている。

スッと眼が細くなり、光った。炭治郎の鼻が捉えたのは濃い発情の匂い。

 

炭治郎の肩を押さえ煉獄は先程よりも唇をより深く触れ合わせくちゅ、と小さな音があがって炭治郎を震わせた。

 

「ん、っあ…煉獄さん、待っ…」

 

待って、と首を左右に振る。つられて黒い長い耳もぱたぱたと揺れるが煉獄は止まらず口付けを更に深くさせる事にしかならず炭治郎は深く貪られて息が出来ない。

呼吸をしょうと隙間を作ってもまるで呼吸さえも自分のものにするかのように煉獄に吸い上げられて炭治郎は肩を震わせて顔を赤く染めた。

 

「や、ぁ…あっ…」

 

炭治郎の唇に煉獄の舌が触れる。熱い、形を辿って舐めあげられるとぞくぞくと快感が背中から首に掛けて這った。

重なってくる大きな体は熱くて炭治郎は先程捉えた匂いで煉獄が発情期を迎えたことを分かった。

だが、

 

「れ、煉獄さん…待って下さいっ…昨日もシたばかり…」

 

炭治郎と煉獄は昨夜も愛し合ったばかりで炭治郎の体は激しい運動でくたりと力が入らず怠かった。

腰はもう上がらず手足を動かすのにも億劫でまた抱かれるとなると自分は本当に動けなくなってしまう、青ざめた炭治郎に煉獄は顔を上げるとじっと炭治郎を見下ろした。

 

「炭治郎…」

 

名を呼ばれる。熱っぽいその声に胸の奥が震えた。こんな時だけ名前を呼ぶなんてずるい。炭治郎は赤くなる顔を自覚してため息をそっと吐いた。

愛しいとその声音が伝える、受け入れてくれと匂いが教える。拒否したい訳じゃない、自分だって太陽のように強くて優しい煉獄が愛しくて好きなのだ。炭治郎は肩を押さえる煉獄の手にそっと手を触れ合わせた。

炭治郎なりの、これからの行為を受け入れるという了承だ。煉獄は嬉しそうに笑うと炭治郎の唇とまた触れ合わせる。

 

「ありがとう、炭治郎…」

 

濡れた煉獄の舌が炭治郎の唇を割り、やっと呼吸が出来たものの入り込んだ熱い舌が唇の裏側を、歯列を舐め溶かされる刺激に早くも呼吸が出来なくなる。

炭治郎の口腔をまさぐる、先端でくすぐるように、頬を抉るように…弱く強く翻弄するように炭治郎の舌を絡めとってじゅく、と水音が響いた。大きな手が耳を柔らかく撫でる。花札のような耳飾りが音を立てて揺れた。

 

「ん、ふぁ…っ」

 

意識を持ってかれそうな快感に肩を跳ねさせる炭治郎の裸のままの背に煉獄の片方の大きな手が回る。抱き起こされると煉獄は炭治郎の小さな肩に噛みついた。

ライオンの歯は鋭い。鋭い八重歯が肩に食い込み炭治郎は小さく悲鳴を上げて耳が一瞬ビクつきぺたりと伏せた。本能が鳴らす警告を無視して煉獄の頭を抱えた。

 

「あぁっ、煉獄さん…っ…」

 

くっきりと残った噛んだ痕を見て満足した煉獄は手を滑らせて癒すように噛み痕をそっと撫でる。

 

「君の体は本当に良い匂いがするな」

 

薄明かりの部屋の中、金赤の瞳が光り煉獄はちろりと舌舐めずりをして笑った。まるでこれからご馳走を貪り食らう腹を空かせた獰猛な獣の表情に炭治郎は肩で息をしながらドキりとした。

煉獄は自分の事を良い匂いと言うが自分からしたら良い匂いなのは煉獄の方だと炭治郎は思っていた。

 

そう伝えようとしたが、口を開くと同時に口付けられ言葉にならず鼻に掛かった声しか出せなかった。

 

「ん、んんっ…」

 

先程から与えられる口付けに息も絶え絶えになった剥き出しのままの炭治郎の胸を煉獄が掴んだ。炭治郎はひっと悲鳴を上げて顎を引いた。

慎ましくて可愛いな、とくすくすと笑い声を立てる煉獄は小さな胸を掴んでは離し、離しては掴むことを繰り返して愛撫する。

その度に甘い疼きが生まれ、昨夜の行為で疲れてた筈なのに体は熱くなってこれから先に待ち構える快感に期待して震える。

 

煉獄の発情の匂いに当てられたのか、炭治郎は体がうずうずして大きな刺激をもっと欲したい、と頭の中を支配する。

発情期を迎えて我慢出来ない筈なのにゆっくりと焦らすように触れてくる煉獄に歯がゆい思いをして炭治郎は思考が蕩けるのを遠くに感じた。

口付けをしたまま炭治郎は口を開くと煉獄と唇を触れ合わせたまま更なる快感を求めた。

 

「もっと…煉獄さん、もっと…下さい…」

 

熱に浮かされて言うと煉獄の口元は弧を描いて笑みを浮かべた。

煉獄の強い手が炭治郎の腰に掛かった。引き寄せられて反射的に強く引き締まった両足をもうひとつの手が開くとしたたり溢すそこが外気に触れて炭治郎は身を竦めた。

そこに、濡れそぼった熱くて固いものが押し付けられる。

 

「昨夜したばかりだからな、こんなにも濡れているし慣らさずとも大丈夫だろう」

 

ぐい、と勢いよく捩じ込まれる。

いきなりな事に力む壁を押し開き敏感な肉壁を突き上げながら奥へと進む。蜜が溢れ固い屹立を呑み込もうとする。

 

「あ、あぁ…あっ…!!」

 

炭治郎が高い声を上げて背中を弓なりに曲げ強い快感を逃がそうとする。

熱く熟した内壁を固い先端が抉るとがたがたと四肢を震わせながらも炭治郎は甘い声をあげながらやっと得られた大きな刺激に悦んでいた。

 

勃ち上がった煉獄自身がぬめる襞を擦り上げると炭治郎の内部はまるで絡み付くように動き、もっと先を、もっと深みを求めて締め付ける。

 

「はは、凄い締め付けだ…気持ちいいか?炭治郎」

 

掠れた煉獄の声に、炭治郎はきゅん、として胸を締め付ける。

その呼気は荒く、頬から汗が滴り落ちて炭治郎の肌を濡らし掠れたその声に炭治郎を耳からも犯した。

ぶるり、と震える炭治郎の襞を押し広げながら煉獄は腰を進ませて炭治郎?と促した。

 

動く度に声を上げながら炭治郎はこくこくと頷き、赤く染まった顔で絶え絶えになって答えた。

 

「は…は、いっ…気持ち、い……で、す…っ」

 

答えた途端、こりっ、と体の奥にある部分が擦り上げられその刺激が指先にまで痺れを生んだ。全身が痙攣し固く強ばって炭治郎の目を見開かせ生理的に浮かんだ涙がポロっと大きな瞳から溢れ落ちた。

 

「ひぁっ…!!」

「可愛いな、炭治郎」

 

良い所に行き着いたと気付いた煉獄が大きく内壁を擦り上げてその先端が見つけた突起を執拗に押し上げた。

炭治郎の悲鳴が部屋に響く。

 

「あ、ダメ、こんな、ダメ、です…っ…」

 

内壁が尖りきった切っ先に突き上げられる。

一気に引き抜かれ、じゅく、と卑猥な音を立ててしまうが惜しむ間もなく炭治郎は再び穿たれ擦り立てられ突き刺され、良いところばかりを何度も擦り上げられた。

 

「こんなに溶けた顔してダメはないだろう?」

 

深く穿ったまま炭治郎の顎を掴みぐいと引き寄せて唇を合わせる。

 

「ひぃ、あ…っ」

 

口付けをしたまま穿たれそうされると突き上げられる角度が変わって炭治郎は体を震わせて甘い疼きに胸を締め付けられる。

煉獄は深く口付けたまま腰を何度も突き上げてふるふると震えてる炭治郎のふわふわの丸い尻尾を掴んだ。

 

「んんんっ、ん、く…っ!!」

 

悲鳴を吸い取られ塞がれた唇を震わせて炭治郎は身悶えた。尻尾はどの動物にとっても弱点といっていい程弱い場所である。

そんな所を掴まれたら堪ったものではない、尻尾と肌の境目を撫でられぞくぞくと襲う刺激に涙を流しながら身悶える炭治郎を煉獄はなおも攻め立てた。

その固く滾った煉獄自身で突き上げかき回し襞を広げて唇を吸い上げて歯を立て噛み、舌を滑らせて中を抉る。

 

したたる唾液を啜りあげ同時に下肢を突き上げて激しく炭治郎を追い詰めると炭治郎は呻いた。

 

「も、ダメっ……れ、以上、は…」

 

ふっと、煉獄は笑った。炭治郎の体の上に煉獄の熱い胸が重なって抱き締められる。強く抱き締められて温かく、心を和んでくるような快楽に炭治郎も煉獄の背中に腕を回して力いっぱい抱き締めた。

 

「…炭治郎、」

 

煉獄は掠れた、愛しさを込めた声音で炭治郎の名を何度も囁いた。続けて腰を揺すり立てて炭治郎の耳が揺れる程の突き上げを与える。

 

「ひぁ、あっ…っ!!」

 

炭治郎は大きく背を仰け反らせて痙攣する。炭治郎を強く抱き締め、煉獄は二、三度強く突き立て濡れそぼる中に包まれた煉獄自身がひときわ大きく膨らんで炭治郎は目を見開く。

 

「あ、……っ、あぁ…!!」

 

きつく反った炭治郎の体の奥で火傷しそうなくらいの熱が勢いよく吐き出された。

爪先まで仰け反る衝撃に炭治郎は強く太陽のように明るい煉獄の髪に指を滑らせて抱き締めて体を震わせた。

 

「君が好きだ、炭治郎」

 

忙しなく肩で息をする炭治郎の頬に頬擦りして目に溜まって涙を舐めながらキスをして囁く煉獄に炭治郎は目を閉じて答えた。

 

「は、い…俺も、好きです…」

 

 

 

 

 

あの後、熱が治まらない煉獄に付き合い三回程して昼過ぎにやっと解放された炭治郎はもう指先動かすにも億劫でぐったりと寝床にうつ伏せになっていた。

 

そんな炭治郎の傍らで煉獄も寝転び疲れた顔の炭治郎を心配そうに見下ろす。

 

「竈門少年、無理をさせて済まない…」

 

申し訳ないと眉を下げる煉獄に炭治郎は笑って気にしないで下さいと掠れた声で答える。

確かに体は辛いけど発情期を迎えてツラいのは煉獄の方だ。本当ならまだ発情症状は治っておらず今も体に熱が溜まっているだろうに自分が限界だからと途中で行為を止めたのは煉獄だ。

 

番として逆に申し訳ないと感じてるのは炭治郎の方だった。

 

「いえ…俺の方こそ、煉獄さんの方がツラいのに…煉獄さんこそ大丈夫ですか…?」

 

ぱたぱたと揺れる長い尻尾が背中を撫でるのにくすぐったいと思いながら金赤色の瞳を見上げるとその瞳が柔く細められた。

 

「俺の事は気にしなくて良い、大丈夫だ!君のおかげでだいぶ熱も治まった」

 

炭治郎は大丈夫と笑う煉獄を見つめるがまだ鼻が濃い発情の匂いを捉えてる。それに気付いて煉獄は困ったように笑みを浮かべる。

 

「君は俺より鼻が良いんだったな!確かに体は熱いがそれよりも俺は竈門少年が大事なんだ、だから気にしないでくれ」

 

ニコっと頭を撫でられて炭治郎はきゅぅんと赤くなる。こんなにも大切にしてくれる煉獄に炭治郎は切なくなる。 

 

「俺が、」

 

枕に顔を埋めてくぐもった声で切り出すと、煉獄がん?と優しい笑みで先を促すのに炭治郎は目だけ枕から離し煉獄を見つめると続けた。

 

「俺が元気になったら、頑張ります…」

 

最後は小さな声になり、言い終わると同時に炭治郎は羞恥に完全に枕に顔を埋めた。

見えてる耳が赤くなってる。煉獄は目を見開いたが次第に嬉しそうに笑みを浮かべて頭の上でぷるぷると震える毛並みの良い黒い耳を撫でて炭治郎を抱き締めた。

 

煉獄の気持ちを表すかのように長い尻尾がぱたぱたと揺れている。

 

 

 

 END